野砲やほう

野砲やほう（やほう、Field gun）は、大砲たいほうの一種いっしゅ。定義ていぎは時代じだいにより異ことなるが、口径こうけい100mmクラス以下いかの軽かるカノン砲ほう（加か農のう）。

概要がいよう

口径こうけいは基本きほん的てきに75mm~77mmが標準ひょうじゅんであるが、イギリスのQF 18ポンド砲ほうやQF 25ポンド砲ほう、ソビエト連邦れんぽうのM-60 107mm野砲やほうのような大だい口径こうけい野砲やほうも存在そんざいする。

主おもに軍隊ぐんたいの主力しゅりょく砲兵ほうへいである「師団しだん砲兵ほうへい（師団しだん隷下れいかの野砲やほう兵へい連隊れんたい等とうを意味いみする^{[注ちゅう 1]}）」が運用うんようする野戦やせん砲ほうたる軽けい砲ほうであり、20世紀せいき中頃なかごろまでは世界せかい各国かっこくで使用しようされていた。もともと大砲たいほうは攻おさむ城じょう兵器へいきであったが、ぶどう弾だん・キャニスター弾だんの発明はつめいにより三さん十じゅう年ねん戦争せんそうの頃ころから野戦やせんでも近距離きんきょり殺傷さっしょう兵器へいきとして使用しようされるようになった。しかし、牽引けんいん技術ぎじゅつや砲車ほうしゃの性能せいのうの制限せいげんのため、野戦やせんで使用しようできる大砲たいほうは4ポンド程度ていどの小型こがたのものに限かぎられていた。18世紀せいき中ちゅうごろに砲車ほうしゃが改良かいりょうされ、より大型おおがたの野砲やほうが歩兵ほへいに随伴ずいはんして移動いどうできるようになり、ナポレオン戦争せんそうで広ひろく使用しようされることとなった。18世紀せいき末まつに発明はつめいされた榴散弾だんが19世紀せいき初はじめ頃ごろから普及ふきゅうし始はじめると、遠距離えんきょりでも対人たいじん兵器へいきとして使用しようできるようになった。当初とうしょは馬うまで牽引けんいんしたが、6頭とう立だて以上いじょうになると効率こうりつが低下ていかすることもあり、馬うまの牽引けんいん力りょくによって野砲やほうの大おおきさは制限せいげんを受うけた^{[注ちゅう 2]}。しかし、機械きかい力りょくによる牽引けんいんが可能かのうになるとこの制限せいげんは無なくなり、より大型おおがたの砲ほうと統合とうごうされていった。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん時どきのアメリカ軍ぐんとドイツ国防こくぼう軍ぐんは師団しだん砲兵ほうへいの火力かりょく増強ぞうきょうのため、1930年代ねんだい末すえ頃ごろに（従来じゅうらいの野砲やほうに代かわり）軽けい榴弾りゅうだん砲ほうを配備はいびし口径こうけい150mmの重じゅう榴弾りゅうだん砲ほうと混成こんせい運用うんようしていたため、野砲やほうを実質じっしつ使用しようしていない。赤軍せきぐんと大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんなどは野砲やほうと軽けい榴弾りゅうだん砲ほうを混成こんせい運用うんよう、イギリス軍ぐんは野砲やほう・軽けい榴弾りゅうだん砲ほう兼用けんよう砲ほうを運用うんようしていた。

20世紀せいき後半こうはん以降いこうの先進せんしん各国かっこくの師団しだん砲兵ほうへいは戦闘せんとう教義きょうぎや兵器へいきの進化しんかもあり、空挺くうてい師団しだん・山岳さんがく師団しだんや機動きどう性せいを特とくに求もとめられる軽装けいそう歩兵ほへい師団しだんや海兵かいへい師団しだん（海兵かいへい隊たい）などを除のぞき、口径こうけい150mmクラスの長ちょう砲身ほうしんの榴弾りゅうだん砲ほうを運用うんようしているために、野砲やほうは事実じじつ上じょう榴弾りゅうだん砲ほうに統合とうごうされ、カノン砲ほうとともに消滅しょうめつした砲ほう種しゅである。

戦車せんしゃ・装甲車そうこうしゃが登場とうじょうした第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん以降いこうから20世紀せいき中頃なかごろにかけては、カノン砲ほうの高こう初速しょそくを活いかして徹とおる甲きのえ弾だんを発射はっしゃする重じゅう対戦たいせん車しゃ砲ほうや戦車せんしゃ砲ほうとして使用しよう・転用てんようされた例れいも多おおい。

野砲やほう一覧いちらん

前ぜん装そう式しき

フランス

グリボーバル・システム：野砲やほうとして、4ポンド砲ほう、8ポンド砲ほう、12ポンド砲ほうがあった。
共和きょうわ暦れき11年ねんシステム：野砲やほうとして、6ポンド砲ほう、12ポンド砲ほうがあった。
ヴァレ・システム：野砲やほうとして、8ポンド砲ほう、12ポンド砲ほうがあった。
12ポンドナポレオン砲ほう
ライット・システム：施ほどこせ条じょう砲ほう。野砲やほうとして、4kgおよび12kg砲ほう

イギリス

SBML 9 pounder 13 cwt
RML 13 pounder 8 cwt：後こう装そう式しきアームストロング砲ほうの信頼しんらい性せい不足ふそくのため、前ぜん装そう式しき施ほどこせ条じょう砲ほうに戻もどったもの。
RML 16 pounder 12 cwt：同上どうじょう

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

パロット砲ほう：前ぜん装そう施ほどこせ条じょう砲ほう。野砲やほうとして、10ポンド砲ほう、20ポンド砲ほうがあった。

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん以前いぜん（駐ちゅう退すさ機き採用さいよう以前いぜん）

フランス

イギリス

ドイツ帝国ていこく

7.7cm FK 96

ロシア帝国ていこく

日本にっぽん

三さん十じゅう一いち年ねん式しき速射そくしゃ野砲やほう

ド・バンジュ90mm砲ほう
12ポンドアームストロング砲ほう
7.7cm FK 96
M1877 87mm野砲やほう

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん

M1902 76.2mm師団しだん砲ほう

イタリア王国おうこく

オーストリア＝ハンガリー帝国ていこく

ベルギー

TR 75mm野砲やほう

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

大日本帝国だいにっぽんていこく

M1897 75mm野砲やほう
QF 18ポンド砲ほう
7.7cm FK 96 nA
7.7cm FK 16
M1900 76mm野砲やほう
M1902 76mm野砲やほう
三さん八はち式しき野砲やほう

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん

ソビエト連邦れんぽう

イギリス

QF 25ポンド砲ほう

ドイツ国こく

イタリア王国おうこく

Da 75/32

ベルギー

チェコスロバキア

Vz30 8cm野砲やほう

大日本帝国だいにっぽんていこく

ギリシャ王国おうこく

シュナイダーM1927 85mm野砲やほう

M1902/30 76mm野砲やほう
ZiS-3 76mm野砲やほう
7.5cm FK 16 nA
改造かいぞう三さん八はち式しき野砲やほう
機動きどう九きゅう〇式しき野砲やほう

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

^ 重じゅう榴弾りゅうだん砲ほうやカノン砲ほうといった重砲じゅうほうは、「軍ぐん砲兵ほうへい」や「軍団ぐんだん砲兵ほうへい」と称しょうす、軍ぐん・軍団ぐんだん隷下れいかの独立どくりつ部隊ぶたいが主おもに運用うんようする
^ 馬うま1頭とうの牽引けんいん力りょくは300kg程度ていどであるため、6頭とう立だてでは1800kgとなり、この程度ていどが野砲やほうの重量じゅうりょうの限界げんかいである。これ以上いじょうの重量じゅうりょうの場合ばあいは移動いどうのために分解ぶんかいするか、より多た頭あたま立だてで牽引けんいんする必要ひつようがあり、一般いっぱんに野戦やせん重砲じゅうほうに分類ぶんるいされる。