(Translated by https://www.hiragana.jp/)
パロット砲 - Wikipedia コンテンツにスキップ

パロットほう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
モリスとう配備はいびされる30ポンド・パロットほう砲弾ほうだん

パロットほう(パロットほう、Parrott rifle)とは、南北戦争なんぼくせんそうにおいてひろ使用しようされたぜんそうしきライフルほうである。

概要がいよう

[編集へんしゅう]
100ポンドほう
300ポンドほう砲身ほうしん破裂はれつしている

パロットほうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく陸軍りくぐん士官しかん学校がっこう卒業生そつぎょうせいであるロバート・パーカー・パロットによって開発かいはつされた。かれ1836ねん退役たいえきしたのちニューヨークしゅうコールドスプリングのウエストポイント鋳造ちゅうぞう工場こうじょう監督かんとくかん就任しゅうにんし、1860ねんには最初さいしょのパロットほう弾薬だんやく製作せいさくよく1861ねんには特許とっきょ取得しゅとくした[1]

パロットほう鋳鉄ちゅうてつ錬鉄れんてつわせて製造せいぞうされた。鋳鉄ちゅうてつ精度せいどのよい砲身ほうしんつくるのにてきするが、もろいため亀裂きれつはいりやすい。この弱点じゃくてんおぎなうため、錬鉄れんてつせい巨大きょだい帯状おびじょう金具かなぐほう補強ほきょうした[2]。こういったわせを採用さいようした大砲たいほうはこれ以前いぜんにも存在そんざいしたが、パロットは強化きょうか金具かなぐ溶接ようせつ革新かくしんてき技法ぎほうもちいたため、これ以前いぜんのものがっていた欠陥けっかん克服こくふくすることができた。この技法ぎほうでは砲身ほうしん赤熱しゃくねつしているあいだ強化きょうか金具かなぐ装着そうちゃくし、その砲身ほうしん回転かいてんさせながらほうくちまで冷却れいきゃくすいそそぐことにより、一定いっていして正確せいかく金具かなぐ装着そうちゃくすることを可能かのうとした[2]南北戦争なんぼくせんそう終結しゅうけつまでには、りょうぐんがこのタイプのほうひろ使用しようするようになった。

パロットほうは10ポンドほうからめずらしい300ポンドほうまでの多様たようおおきさのものが製造せいぞうされた[3]戦場せんじょうにおいては10ポンドと20ポンドのほう南北なんぼくりょうぐん使用しようされた。とくに20ポンド・パロットほう戦争せんそうつうじて使つかわれた最大さいだい野砲やほうであり、砲身ほうしん単体たんたい重量じゅうりょうでも1800ポンド(やく800kg)以上いじょうもあった。よりこのんでもちいられたものは口径こうけい2.9インチ(74mm)もしくは3.0インチ(76mm)で、20ポンドほうより小型こがたであった。みなみぐんはこの両方りょうほう口径こうけいほう使用しようした結果けっかそれぞれに適切てきせつ砲弾ほうだん供給きょうきゅうする必要ひつようしょうじ、弾薬だんやく供給きょうきゅう複雑ふくざつさせてしまった。一方いっぽうきたぐん1864ねんまでに2.9インチに口径こうけい統一とういつした。3インチ口径こうけいのM1863は射撃しゃげき特性とくせいふるかたているが、直線ちょくせんてき砲身ほうしんほうこうひろがりがないてん識別しきべつできる。十分じゅうぶん練度れんど砲兵ほうへいによれば、最大さいだい射程しゃていは2000ヤード(1800m)であった[4]

また、きたぐんがわ合衆国がっしゅうこく海軍かいぐんにて海軍かいぐん仕様しようの20、30、60、100ポンドほうがそれぞれ使用しようされた[5]海軍かいぐんがたの100ポンド・パロットほう仰角ぎょうかく25において6900ヤード(6300m)の射程しゃてい記録きろくしている。またこのほうは80ポンドだん仰角ぎょうかく30で7810ヤード(7140m)さきまでばすことができた[5]

パロットほう射撃しゃげき精度せいどたかく、おおくのライフルほうくら製造せいぞう容易ようい価格かかくやすかったが、一方いっぽう安全あんぜんせいたいする評価ひょうかひくく、おおくの砲兵ほうへいからけられた[6]たとえば1862ねんすえにはヘンリー・J・ハントポトマックぐん装備そうびからパロットほう排除はいじょし、3インチ・オードナンス・ライフルほうえようとこころみている。戦闘せんとうちゅうにパロットほう破裂はれつした場合ばあい砲手ほうしゅ鋭利えいり破片はへんのぞいて射撃しゃげき再開さいかいしたという[7]1889ねんには、ウエストポイント演習えんしゅうじょうでの連続れんぞく事故じこけてニューヨーク・タイムズ合衆国がっしゅうこく陸軍りくぐんしょうにパロットほう使用しよう完全かんぜん中止ちゅうしするよううったえかけている[6]

今日きょうでもすうひゃくのパロットほう砲身ほうしん残存ざんそんしており、戦争せんそう記念きねん公園こうえんぐん庁舎ちょうしゃ博物館はくぶつかんなどに展示てんじされている。これらにはウエストポイント鋳造ちゅうぞう工場こうじょう(West Point Foundry)のイニシャル「WPF」にくわえてロバート・P・パロット(Robert P. Parrott)のイニシャル「RPP」が刻印こくいんされており、容易ようい識別しきべつできる。最初さいしょ製造せいぞうされたシリアルナンバー1ばんのパロットほう砲身ほうしんも、ペンシルベニアしゅうハノヴァーのセントラル・スクウェアに、ハノヴァーのたたかいの追悼ついとう展示てんじひんとしてあたらしいほうとも保存ほぞんされている。現存げんそんする砲身ほうしん一覧いちらんはthe National Register of Surviving Civil War Artilleryにて参照さんしょうできる[8]

300ポンドほう

[編集へんしゅう]

1863ねんなつサムター要塞ようさい強固きょうこ要塞ようさいされたみなみぐん陣地じんちまえ苦戦くせんしていたウイリアム・シャーマン少将しょうしょうは、口径こうけい10インチ(250mm)のパロットほうをいくつかの小型こがたほうとも投入とうにゅうした。全体ぜんたいでは、80ポンド・ホイットワースほう2もん、100ポンド・パロットほう9もん、200ポンド・パロットほう6もん、そして300ポンド・パロットほう1もん配備はいびされた[9]きたぐんがわでは、貫通かんつう不能ふのうといわれ、みなみぐん不動ふどう忠誠ちゅうせいしゃ象徴しょうちょうとなったフォート・サムターの塁壁るいへきも、巨大きょだい口径こうけい10インチのパロットほうをもってすれば粉砕ふんさい可能かのうであるとひろしんじられていた[10]

The Washington Republicanは10インチ・パロットほう技術ぎじゅつてき功績こうせきつぎのようにつたえている[11]:

The breaching power of the 10-inch 300-pounder Parrott rifled gun, now about to be used against the brick walls of Fort Sumter, will best be understood by comparing it with the ordinary 24-pounder siege gun, which was the largest gun used for breaching during the Italian War.

The 24-pounder round shot, which starts with a velocity of 1,625フィート毎秒まいびょう (495 m/s), strikes an object at the distance of 3,500ヤード (3,200 m), with a velocity of about 300フィート毎秒まいびょう (91 m/s). The 10-in rifle 300-pound shot has an initial velocity of 1,111フィート (339 m), and afterward has a remaining velocity of 700フィート毎秒まいびょう (210 m/s), at a distance of 3,500ヤード (3,200 m).

From well-known mechanical laws, the resistance which these projectiles are capable of overcoming is equal to 33,750 pounds and 1,914,150 pounds, raised one foot in a second respectively. Making allowances for the differences of the diameters of these projectiles, it will be found that their penetrating power will be 1 to 19.6. The penetration of the 24-pounder shot at 3,500ヤード (3,200 m), in brick work, is 6インチ (150 mm). The penetration of the 10-インチ (250 mm) projectile will therefore be between six and seven feet into the same material.

To use a more familiar illustration, the power of the 10-in rifle shot at the distance of 3,500ヤード (3,200 m), may be said to be equal to the united blows of 200 sledge hammers weighing 100 pounds each, falling from a height of ten feet and acting upon a drill ten inches (254 mm) in diameter. — The Washington Republican、August 12, 1863
いままさにサムター要塞ようさい石壁いしかべたいして投入とうにゅうされようとしている10インチ・300ポンド・パロットライフルほう貫通かんつうりょくは、イタリア戦争せんそうにて塁壁るいへき粉砕ふんさい使つかわれた最大さいだいほうである24ポンドおさむしろほう比較ひかくすればもっと理解りかいしやすいだろう。

24ポンドほうでは弾丸だんがん初速しょそく毎秒まいびょう1625フィート(495m/s)、距離きょり3500ヤード(3200m)の標的ひょうてき攻撃こうげきでき、着弾ちゃくだんたまそく毎秒まいびょう300フィート(91m/s)である。たいする10インチ・300ポンド・パロットライフルほう初速しょそく毎秒まいびょう1111フィート(339m/s)、距離きょり3500ヤードでも毎秒まいびょう700フィート(210m/s)のたまそくたもつことができる。

力学りきがくてき法則ほうそくによれば、これらの砲弾ほうだんつことができる抵抗ていこうりょくはそれぞれ、33750ポンドと1914150ポンドの物体ぶったい毎秒まいびょう1フィートのはやさでげるエネルギーひとしい。2つの砲弾ほうだん直径ちょっけいちがいも考慮こうりょれても、24ポンドほう貫通かんつうりょくを1とするなら、10インチほうは19.6にもなる。24ポンドほうの3500ヤードにおける貫通かんつうりょくは、標的ひょうてきレンガである場合ばあい、6インチ(150mm)である。たいする10ポンドほう砲弾ほうだんおな条件じょうけんで、6から7フィートものレンガを貫通かんつうできる。

もっとわかりやすい表現ひょうげんをすれば、10インチライフルほう距離きょり3500ヤードの標的ひょうてきたいする貫通かんつうりょくは、直径ちょっけい10インチ(254mm)のえんかって200ほんの100ポンド・スレッジハンマーたかさ10フィートから同時どうじろし、あなけようとするとき貫通かんつうりょくひとしい。

— The Washington Republican、8がつ12にち、1863

スワンプ・エンジェル(Swamp Angel)

[編集へんしゅう]

もっと有名ゆうめいなパロットほうひとつとして、クインシー・アダムス・ギルモアじゅんしょうサウス・カロライナしゅうチャールストンを砲撃ほうげきするのにもちいた8インチ(200mm)ほう通称つうしょうスワンプ・エンジェル(Swamp Angel、沼地ぬまち天使てんし)がげられる。このほうはthe 11th Maine Volunteer Infantry Regimentによって運用うんようされていた[12]

1863ねん8がつ21にち、ギルモアじゅんしょうみなみぐんP・G・T・ボーリガード将軍しょうぐんたいし、モリスとうサムター要塞ようさいじゅう要塞ようさい陣地じんち放棄ほうきするか、さもなくばチャールストンのまち砲撃ほうげきするという最後さいご通牒つうちょうをつきつけた。翌日よくじつになってもみなみぐん陣地じんちから撤退てったいしなかったため、じゅんしょうまちへの一斉いっせい射撃しゃげき命令めいれいした。8月22にちから23にちにかけて、スワンプ・エンジェルはまち焼夷弾しょういだん中心ちゅうしんに32かい砲撃ほうげきおこない、まちではだい火災かさい発生はっせいした[12]。この戦闘せんとうハーマン・メルヴィル同名どうめい"The Swamp Angel"によって一層いっそう有名ゆうめいになった[13]

終戦しゅうせん、スワンプ・エンジェルはニュージャージーしゅうトレントンに移送いそうされ、Cadwallader Parkに記念きねんひんとして展示てんじされている。

サイズべつパロットほう一覧いちらん

[編集へんしゅう]
Parrott Guns by Size[5] [14][15] [16] [17] [18]
Model Length Weight Munition Charge size Maximum range at elevation Flight time Crew size
2.9-in (10-lb) Army Parrott 73 in 1,799 lb (816 kg) 10 lb (4.5 kg) shell 1 lb (0.45 kg) 5,000 yd (4,600 m) at 20 degrees 21 secs 6
3.0-in (10-lb) Army Parrott 74 in 1,726 lb (783 kg) 1,830 yd (1,670 m) at 5 degrees 7 secs
3.67-in (20-lb) Army Parrott 79 in 1,795 lb (814 kg) 19 lb (8.6 kg) shell 2 lb (0.91 kg) 4,400 yd (4,000 m) at 15 degrees 17 secs 7
3.67-in (20-lb) Naval Parrott 81 in
4.2-in (30-lb) Army Parrott 126 in 4,200 lb (1,900 kg) 29 lb (13 kg) shell 3.25 lb (1.47 kg) 6,700 yd (6,100 m) at 25 degrees 27 secs 9
4.2-in (30-lb) Naval Parrott 102 in 3,550 lb (1,610 kg) 6,700 yd (6,100 m) at 25 degrees
5.3-in (60-lb) Naval Parrott 111 in 5,430 lb (2,460 kg) 50 lb (23 kg) or 60 lb (27 kg) shell 6 lb (2.7 kg) 7,400 yd (6,800 m) at 30 degrees 30 secs 14
5.3-in (60-lb) Naval Parrott (breechload) 5,242 lb (2,378 kg) 50-lb or 60 lb (27 kg) shell
6.4-in (100-lb) Naval Parrott 138 in 9,727 lb (4,412 kg) 80 lb (36 kg) or 100 lb (45 kg) shell 10 lb (4.5 kg) 7,810 yd (7,140 m) at 30 degrees (80-lb) 32 secs 17
6.4-in (100-lb) Naval Parrott (breechload) 10,266 lb (4,657 kg)
8-in (150-lb) Naval Parrott 146 in 16,500 lb (7,500 kg) 150 lb (68 kg) shell 16 lb (7.3 kg) 8,000 yd (7,300 m) at 35 degrees ? ?
8-in (200-lb) Army Parrott 200 lb (91 kg) shell ? ?
10-in (300-lb) Army Parrott 156 in 26,900 lb (12,200 kg) 300 lb (140 kg) shell 26 lb (12 kg) 9,000 yd (8,200 m) at 30 degrees ? ?

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ Pritchard Jr, Russ A. Civil War Weapons and Equipment, p.82. Globe Pequit Press, 2003. ISBN 158574493X.
  2. ^ a b Gusley, Henry O. and Edward T. Cotham. The Southern Journey of a Civil War Marine, p.195. University of Texas Press, 2006. ISBN 0292712839
  3. ^ Jones, Terry L. Historical Dictionary of the Civil War, p.1047. Scarecrow Press, 2002. ISBN 0810841126
  4. ^ National Park Service: Gettysburg National Military Park. "Big Guns at Gettysburg" Archived 2008ねん1がつ17にち, at the Wayback Machine.. Retrieved January 18, 2008
  5. ^ a b c Norfolk Naval Ship Yard: Civil War Guns in Trophy Park Archived 2008ねん1がつ10日とおか, at the Wayback Machine.
  6. ^ a b New York Times, April 20, 1889. "Perils of Gunnery.; The Frequent Bursting of the Parrott Guns During Practice" Retrieved January 18, 2008.
  7. ^ Earl J Hess.Field Armies and Fortifications in the Civil War: The Eastern Campaigns, 1861-1864, p.271. University of North Carolina Press, 2005. ISBN 978-0807829318
  8. ^ National Register of Surviving Civil War Artillery, a listing maintained by Civil War artillery historian Wayne Stark
  9. ^ Johnson, John. The Defense of Charleston Harbor: Including Fort Sumpter and the Adjacent Islands, 1863-1865. Walker, Evans, and Cogswell Co, 1890. Digitized by Harvard University, August 9, 2006.
  10. ^ "The Big Gun: What the Three Hundred Pound Parrott is Expected to Do". New York Times, August 14, 1863.
  11. ^ "The Big Gun". Washington Republican, August 14, 1863.
  12. ^ a b Wise, Stephen R. Gate of Hell: Campaign for Charleston Harbour, 1863 Archived 2008ねん2がつ17にち, at the Wayback Machine.. University of South Carolina Press, 1994. ISBN 978-0872499850.
  13. ^ Vincent, Howard P. Collected Poems of Herman Melville. Packard and Company, 1947.
  14. ^ The Encyclopedia of Civil War Artillery: Parrot Rifles Archived 2006ねん3がつ30にち, at the Library of Congress Web Archives Accessed January 18, 2008
  15. ^ National Park Service: Artillery at Antietem. Accessed January 18, 2008.
  16. ^ Bigelow, John. The Campaign of Chancellorsville. Yale University Press, 1910.
  17. ^ mirkwood.ucs.indiana.edu Archived 2008ねん1がつ13にち, at the Wayback Machine.. Citing Martin, David G. "Data File 023: Civil War Heavy Artillery". Strategy & Tactics, No. 81, Jul/Aug. 1980
  18. ^ The Encyclopedia of Civil War Artillery: Projection Tables, citing "The Confederate Ordnance Manual". Accessed January 21, 2008.

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • United States War Department. Atlas to Accompany the Official Records of the Union and Confederate Armies. Washington, D.C.: Government Printing Office, 1880-1901.
  • Thomas, Dean, Cannons: An Introduction to Civil War Artillery, Thomas Publications, Gettysburg, 1985
  • James Hazlett, Edwin Olmstead, & M. Hume Parks, Field Artillery Weapons of the Civil War, University of Delaware Press, Newark, 1983
  • Johnson, Curt, and Richard C. Anderson, Artillery Hell: Employment of Artillery at Antietam, College Station, TX: Texas A&M University Press, 1995
  • Coggins, Jack, Arms and Equipment of the Civil War. Wilmington N.C.: Broadfoot Publishing Company, 1989. (Originally published 1962).

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]