すべり腔砲

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すべり腔砲(かっこうほう[ちゅう 1][独自どくじ研究けんきゅう?]えい:smoothbore、スムースボア)は、砲身ほうしんうちライフリングほどこせじょう)が大砲たいほうのこと。

概要がいよう[編集へんしゅう]

L16 81mm 迫撃はくげきほう砲身ほうしん内部ないぶすべり腔砲)。ライフリングがきざまれていない
120mm迫撃はくげきほう RT砲身ほうしん内部ないぶほどこせじょうほう)。ライフリングがきざまれている

銃砲じゅうほう内側うちがわ螺旋らせんじょうのスジをきざみ、射出しゃしゅつされるたま回転かいてんあた弾道だんどう安定あんていさせる、ライフリングの概念がいねん発明はつめいされたのは15世紀せいきすえごろだが、ぜんそうしき先込さきごしき)での装填そうてん作業さぎょうせいおおきくおとるという問題もんだいから、本格ほんかくてき普及ふきゅうほう開閉かいへいできるのちそうしき大砲たいほうとも19世紀せいきすえごろからであった。それ以前いぜん砲身ほうしん火器かき誕生たんじょう以来いらいの、素通すどおしのつつであるすべり砲身ほうしんであった。20世紀せいき前半ぜんはんまでにほとんどの大砲たいほう命中めいちゅう精度せいど有効ゆうこう射程しゃていすぐれるライフルほうってわった。

20世紀せいき後半こうはん以後いご砲弾ほうだん性質せいしつとのいで戦車せんしゃほうと、軽量けいりょうていコストを追求ついきゅうしたしょう口径こうけい迫撃はくげきほうグレネードランチャーにおいてすべり砲身ほうしん復活ふっかつした。

戦車せんしゃにおいてはだい世界せかい大戦たいせん技術ぎじゅつレベルの向上こうじょうともな装甲そうこう防御ぼうぎょちから増強ぞうきょう顕著けんちょになり、これを撃破げきはするためにこう威力いりょくほうもとめられたものの、実用じつようじょう重量じゅうりょう制限せいげんからほうだい口径こうけいには制限せいげんいていた。そこで、HEATだんAPDSたま開発かいはつされ、以後いご対戦たいせんしゃ戦闘せんとうにおける主力しゅりょくとなったが、このふたつのたましゅには以下いかのようにライフリングによってくわわるたまたい回転かいてん不利ふり作用さようする特徴とくちょうがあった。

HEATだん
収束しゅうそくさせたメタルジェットで相手あいて装甲そうこう貫徹かんてつするため、ライフルほう発砲はっぽうすると、着弾ちゃくだんにメタルジェットが遠心えんしんりょく影響えいきょうけて収束しゅうそくせず、威力いりょく減衰げんすいしてしまう。
APDSだん
細長ほそながたまたい高速こうそく回転かいてんさせた場合ばあいぎゃく安定あんていせい低下ていかしてしまい、威力いりょく命中めいちゅうりつがともに低下ていかしてしまう。

上記じょうき理由りゆうにより、戦車せんしゃほう分野ぶんやにおいてはふたたび、すべり腔砲が主流しゅりゅうとなっている。APDSだんから発展はってんしたAPFSDSたまについても同様どうようのことがえる。戦車せんしゃよう砲弾ほうだん開発かいはつは、現行げんこう主力しゅりょくであるすべり腔砲よう優先ゆうせんされ、あと旧式きゅうしき戦車せんしゃ戦力せんりょく底上そこあげにレトロフィットされるのがセオリーとなっているが、これらのライフルほうでAPFSDSやHEATを射撃しゃげきする場合ばあいは、ライフリング砲身ほうしんないでの回転かいてん運動うんどう弾頭だんとうつたえないよう、弾頭だんとう外周がいしゅうにスリッピングバンドやベアリングを仕込しこむという手間てま状態じょうたいになっている。

一方いっぽうすべり腔砲がライフルほうして弾道だんどう安定あんていせいおと有効ゆうこう射程しゃていみじかいという定性ていせいには依然いぜんわりがない[ちゅう 2]

世界せかい最初さいしょすべり腔戦しゃほうは、イギリスロイヤル・オードナンスせい105mm ライフルほうL7対抗たいこうするためにソ連それんT-62搭載とうさいされた55口径こうけい115mmすべり腔砲U-5であるが、これは、APDSにおける装弾そうだんとう分離ぶんり問題もんだいしょうじたためで、積極せっきょくてきすべり腔砲の採用さいようとまではれない。U-5につづき、T-64戦車せんしゃ採用さいようされたD-68 115mmすべり腔砲、T-64とT-72採用さいようされた2A46 125mmすべり腔砲など、戦車せんしゃへのすべり腔砲搭載とうさいソ連それんさきんじた。西側にしがわではラインメタルしゃ44口径こうけい120mmすべり腔砲Rh120採用さいよう最初さいしょである。このように1960年代ねんだい-1970年代ねんだい以降いこう開発かいはつされた戦車せんしゃ大半たいはんすべり腔砲を装備そうびしているが、イギリスぐんチャレンジャー2戦車せんしゃなど、一部いちぶ戦車せんしゃはライフルほう装備そうびしている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ すべり腔」の表音ひょうおんは「かっこう」であるが、「かっくう」と誤読ごどくされる場合ばあいがある。「腔」自体じたい音読おんよみは本来ほんらいの「こう」以外いがい慣用かんようみとして「くう」が複数ふくすう漢和かんわ辞典じてんみとめられ、また、医学いがく分野ぶんやにおいては「腔」のを「くう」とむものの、「すべり腔」を「かっくう」と表音ひょうおんすることはみとめられていない。
  2. ^ 湾岸わんがん戦争せんそうアフガニスタン戦争せんそうにおける、だい3世代せだい主力しゅりょく戦車せんしゃ長距離ちょうきょり狙撃そげきにおけるレコードホルダーは、いずれもライフルほうえてこだわったイギリスのものである[よう出典しゅってん]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]