一人ひとり内閣ないかく

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一人ひとり内閣ないかく(ひとりないかく)とは、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんだけで構成こうせいされる内閣ないかく以下いか日本にっぽんれい詳述しょうじゅつする。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

実務じつむじょう一人ひとり内閣ないかく[編集へんしゅう]

日本国にっぽんこく憲法けんぽうでは、くに行政ぎょうせいけんにな内閣ないかく合議ごうぎたいであることが前提ぜんていであるため、あらたに内閣ないかく総理そうり大臣だいじんとなったものすみやかにかく閣僚かくりょう任命にんめい合議ごうぎたい始動しどうさせることがもとめられる。しかし、首相しゅしょう任命にんめいなんにち以内いない組閣そかくしなければならない等々とうとう時間じかんてき制限せいげんされていない。どう憲法けんぽう成立せいりつした内閣ないかくのほとんどが組閣そかく人事じんじ早急そうきゅうませ、宮中きゅうちゅうでの首相しゅしょう親任しんにんしき閣僚かくりょう認証官にんしょうかん任命にんめいしき連続れんぞくしておこなわれるようにしているが、政治せいじ情勢じょうせいその事情じじょうにより組閣そかく順調じゅんちょうすすまないことがあり、そのような場合ばあいはとりあえず親任しんにんしきだけをおこなって内閣ないかく総理そうり大臣だいじん就任しゅうにんしたのちみずからにたいしてただちに各省かくしょう大臣だいじん兼任けんにんまた臨時りんじ代理だいり発令はつれい形式けいしきてき内閣ないかく発足ほっそくさせ、数時間すうじかんから数日すうじつかけて組閣そかくおこなう、という措置そちることが必要ひつようとなる。この首相しゅしょう一人ひとり内閣ないかく構成こうせいしている状態じょうたいのことを俗称ぞくしょうが「一人ひとりないかく」である。後述こうじゅつのように、実際じっさい一人ひとり内閣ないかく状態じょうたいとなったことが過去かこ4れいある。

なお、内閣ないかくほううえ主任しゅにん大臣だいじんつまり各省かくしょう大臣だいじんについてはかなら臨時りんじ代理だいりく(あるいは兼任けんにんする)ことがもとめられるが、内閣ないかくほうだい10じょう内閣ないかく総理そうり大臣だいじん各省かくしょう大臣だいじん臨時りんじ代理だいり規定きていおよ国家こっか行政ぎょうせい組織そしきほうだい5じょうだい3こう内閣ないかく総理そうり大臣だいじん各省かくしょう大臣だいじん担当たんとう規定きていにより措置そちした事例じれいがある(羽田はた内閣ないかく)。

それ以外いがい大臣だいじんポストについては事務じむ代理だいり事務じむ取扱とりあつかいくことは法的ほうてきには必須ひっすでないため、当該とうがい過去かこの4れいでも首相しゅしょうみずからにたいして前者ぜんしゃ兼任けんにん臨時りんじ代理だいり発令はつれいかしたことはないが、後者こうしゃ兼任けんにん事務じむ取扱とりあつかい発令はつれいについてはおこなわれなかったれいがある。

理論りろんじょう一人ひとり内閣ないかく[編集へんしゅう]

上述じょうじゅつのようなやむをない場合ばあいとはべつに、過去かこ実例じつれいはないものの、理論りろんじょう首相しゅしょうみずからの意思いし一人ひとり内閣ないかく状態じょうたいつくることが可能かのうである。とく衆議院しゅうぎいん解散かいさんかんしては、首相しゅしょう以外いがいぜん閣僚かくりょう解散かいさん消極しょうきょくてきまた反対はんたいしているような状況じょうきょうであっても、首相しゅしょう全員ぜんいん罷免ひめんによる一人ひとり内閣ないかく解散かいさん閣議かくぎ決定けってい可能かのうであることから、衆議院しゅうぎいん解散かいさんけん首相しゅしょう専権せんけん事項じこうばれる。もっともこれは衆議院しゅうぎいん解散かいさんのみならず、首相しゅしょう決定けってい事項じこうすべてについておなじことがえる。首相しゅしょう自身じしん方針ほうしん反対はんたいする大臣だいじん罷免ひめんして賛成さんせいにすげえるか、そのにん首相しゅしょう自身じしん兼務けんむしてしまえば内閣ないかく不一致ふいっちしょうじないこととなる。たとえぜん閣僚かくりょう首相しゅしょう方針ほうしん反対はんたいしたとしても、首相しゅしょう自身じしんがすべての大臣だいじん罷免ひめん兼務けんむしてでも方針ほうしん決定けっていすることが可能かのうであり、かくない不一致ふいっち最終さいしゅうてき兼務けんむというかたち解消かいしょうすることが可能かのうである。したがって、首相しゅしょう自身じしん賛同さんどうしゃのみで内閣ないかく構成こうせいすることが可能かのうであることから、内閣ないかく意思いしとはほぼ首相しゅしょう意思いしである[1]

一人ひとり内閣ないかく問題もんだいてん[編集へんしゅう]

一人ひとり内閣ないかく状態じょうたいにおいては、内閣ないかく構成こうせいいん一人ひとりだけとなるため、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんけた場合ばあいまた事故じこがある場合ばあいに、閣僚かくりょうなかからあらかじめ指名しめいされてその職務しょくむ代行だいこうする内閣ないかく総理そうり大臣だいじん臨時りんじ代理だいり存在そんざいせず、内閣ないかく職務しょくむおこなうことが不可能ふかのうになる、という問題もんだいがある。

内閣ないかく官房かんぼうふく長官ちょうかん事務じむ担当たんとう)、かくしょう事務次官じむじかんなどの事務じむかたはいるため政府せいふ事務じむ遂行すいこうできるが政務せいむ遂行すいこう機能きのう不全ふぜんとなり、国会こっかいしん首相しゅしょう指名しめいされてつぎ内閣ないかく誕生たんじょうするまではその状況じょうきょうつづく。

過去かこ一人ひとり内閣ないかく[編集へんしゅう]

  • 片山かたやま内閣ないかく 1947ねん5がつ24にち午後ごご5親任しんにんしき) - 6月1にち認証官にんしょうかん任命にんめいしき
    • 即日そくじつ各省かくしょう大臣だいじん臨時りんじ代理だいり発令はつれいおこない、くわえて5がつ27にち物価ぶっかちょう長官ちょうかん事務じむ取扱とりあつかい発令はつれいしたが、大臣だいじんちょうとう長官ちょうかん総裁そうさい事務じむ取扱とりあつかい発令はつれいせず。
  • だい2吉田よしだ内閣ないかく 1948ねん10がつ15にち正午しょうご親任しんにんしき) - 10月19にち午後ごご6認証官にんしょうかん任命にんめいしき
    • 即日そくじつ各省かくしょう大臣だいじん臨時りんじ代理だいり発令はつれいくわえ、すべての大臣だいじんちょう長官ちょうかん事務じむ取扱とりあつかい発令はつれい地方ちほう財政ざいせい委員いいんかい委員いいんちょうについては、委員いいんちょうしょく前提ぜんていとなる委員いいん地位ちい補職ほしょくでなく任命にんめいようするレベルのものであったため事務じむ取扱とりあつかいとう発令はつれいなし。当時とうじ内閣ないかく官房かんぼう長官ちょうかん国務大臣こくむだいじんしょくではなかったため、どう長官ちょうかんかんしても発令はつれい必要ひつようなし。)
  • 石橋いしばし内閣ないかく 1956ねん12月23にち午前ごぜん11親任しんにんしき - 午後ごご850ふん認証官にんしょうかん任命にんめいしき
    • 即日そくじつ各省かくしょう大臣だいじん臨時りんじ代理だいり発令はつれいくわえ、すべての大臣だいじんちょうとう委員いいんちょう長官ちょうかん事務じむ取扱とりあつかい発令はつれい当時とうじ内閣ないかく官房かんぼう長官ちょうかん国務大臣こくむだいじんしょくではなかったため、どう長官ちょうかんかんして発令はつれい必要ひつようなし。)
  • 羽田はた内閣ないかく 1994ねん4がつ28にち午前ごぜん855ふん親任しんにんしき - 午後ごご615ふん認証官にんしょうかん任命にんめいしき
    • 即日そくじつ各省かくしょう大臣だいじん臨時りんじ代理だいり発令はつれいくわえ、すべての大臣だいじんちょうとう委員いいんちょう長官ちょうかん事務じむ取扱とりあつかい発令はつれい内閣ないかく官房かんぼう長官ちょうかん空席くうせきおこなわれたものとしては唯一ゆいいつで且初の内閣ないかく官房かんぼう長官ちょうかん事務じむ取扱とりあつかい発令はつれい事例じれい[2]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 坂東ばんどう太郎たろう (2019ねん12月19にち). “ところで日本にっぽん首相しゅしょうは「弾劾だんがい」できるのか”. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7a1f216ca3399d926ad88b3be832100205b1ecc9 2024ねん5がつ26にち閲覧えつらん 
  2. ^ 内閣ないかく官房かんぼう長官ちょうかん海外かいがい出張しゅっちょう内閣ないかく官房かんぼう長官ちょうかん事務じむ取扱とりあつかい発令はつれいは1992ねん4がつ10日とおか、1994ねん10がつ29にち、1995ねん9がつ3にちの3れいあり。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]