三さん大だいピラミッド

三さん大だいピラミッド。左ひだり手前てまえから、メンカウラー、カフラー、クフ。

三さん大だいピラミッドと周辺しゅうへんの遺構いこうの位置いち関係かんけい。右みぎ上じょうからクフ、カフラー、メンカウラー。

上空じょうくうから見みた三さん大だいピラミッド

三さん大だいピラミッド（さんだいピラミッド）は、エジプト、ギザの砂漠さばくにある、3基きのピラミッドの総称そうしょう。英語えいごではGiza pyramid complex（ギザのピラミッド群ぐん）と呼よばれている。隣接りんせつするスフィンクスとともに、エジプトを象徴しょうちょうするイメージとなっている。

造営ぞうえい時期じきは現在げんざいから約やく4500年ねん前まえの、紀元前きげんぜん2500年ねん頃ごろとされ、いずれもエジプト第だい4王朝おうちょう期きに建設けんせつされている。古代こだいエジプト王国おうこくのファラオの陵墓りょうぼであり、被葬ひそう者しゃはクフ王おう、カフラー王おう、メンカウラー王おうとされる。また、それぞれのピラミッドには王妃おうひたちのピラミッドやピラミッド、参道さんどうやマスタバ墓はか群ぐんなどが付属ふぞくしており、いわゆるピラミッド複ふく合体がったい（ピラミッド・コンプレックス）を形成けいせいしている。カフラー王おうのピラミッドの参道さんどう入いり口くちにそびえたつギザの大だいスフィンクスも、このピラミッド複ふく合体がったいの一部いちぶに含ふくまれている。こうしたギザに広ひろがるピラミッド付属ふぞくの墓地ぼち遺跡いせきを総称そうしょうしてギザの墓地ぼち遺跡いせき（ギザ・ネクロポリス）と呼よび、メンフィスとその墓地ぼち遺跡いせきの一部いちぶとして世界せかい遺産いさんに登録とうろくされている。

前史ぜんし

クフによってこの地ちにピラミッドが建設けんせつされるまで、ギザの地ちは王おう墓ぼの地ちとなっていなかった。主おもに王おう墓ぼが建設けんせつされていたのはギザの南みなみにあるサッカラであり、世界せかい最古さいこのピラミッドとされるジェゼル王おうのピラミッドもサッカラに建設けんせつされている。このピラミッドの建設けんせつは後世こうせいに多大ただいな影響えいきょうを及およぼし、それまでのマスタバ墓ぼから代かわって以後いごはピラミッドが王おう墓ぼの中心ちゅうしん的てきな様式ようしきとなった。ジェゼル王おうのピラミッドはマスタバ墓はかを６段だん積つみ重かさねたような、いわゆる階段かいだんピラミッドであったが、その後ごピラミッドの建設けんせつ技術ぎじゅつは進化しんかしていった。クフの前まえの王おうであるスネフェルはダハシュールに屈折くっせつピラミッドを建設けんせつした。これはそれまでの階段かいだんピラミッドから一いち段階だんかい進すすみ、直線ちょくせんの稜線りょうせんを持もっていたものの、下部かぶを急きゅう角度かくどで建設けんせつしたために上部じょうぶで傾斜けいしゃ角かくを緩ゆるやかにせざるを得えず、上部じょうぶと下部かぶで傾斜けいしゃが異ことなって屈折くっせつしたように見みえるピラミッドとなった。スネフェルはさらにその後ご、同おなじくダハシュールに赤あかいピラミッドを建設けんせつした。これは美うつくしい二等辺三角形にとうへんさんかっけいの形かたちをした、世界せかい最初さいしょの真正しんせいピラミッドであり、ここでクフ王くふおうのピラミッドの建設けんせつを可能かのうとした技術ぎじゅつのかなりが出でそろうこととなった。建設けんせつ当時とうじは綺麗きれいに成形せいけいされた石灰岩せっかいがんの化粧けしょう石せきが全体ぜんたいに施ほどこされていたため、ピラミッドの表面ひょうめんは滑なめらかで白しろく光ひかり輝かがやいていた。

クフ王くふおうのピラミッド

詳細しょうさいは「ギザの大だいピラミッド」を参照さんしょう

クフ王くふおうのものとされるピラミッドは、三さん大だいピラミッドの中なかで最大さいだいで、高たかさ146.6m（現在げんざいの高たかさ138.8m）である。クフのピラミッドの底辺ていへんの長ながさは約やく230ｍ。1954年ねん、付近ふきんから長ながさが43m以上いじょうある木製もくせいの「太陽たいようの船ふね（クフ王くふおうの船ふね）(Khufu ship)」が分解ぶんかいされた状態じょうたいで発掘はっくつされた。クフがこの地ちをピラミッド建設けんせつの地ちとして選えらんだのは、この地ちが岩盤がんばんとなっていて地盤じばんが安定あんていしており、また材料ざいりょうである石灰岩せっかいがんがこの近辺きんぺんで採掘さいくつできたため、建設けんせつに有利ゆうりだったことなどが挙あげられる。ピラミッドの内部ないぶに入はいる入口いりくちは存在そんざいし、観光かんこう客きゃくも中心ちゅうしん部ぶにある王おうの玄室げんしつまで入はいることが可能かのうであるが、現在げんざいは本来ほんらいの入いり口くちは封鎖ふうさされており、観光かんこう客きゃくは9世紀せいきにアッバース朝あさの第だい7代だいカリフであるマアムーンが南側みなみがわに空あけた盗掘とうくつ用ようの穴あなから内部ないぶへと入はいるようになっている。また、この内部ないぶ観覧かんらんは1日にち300人にん限定げんていとなっている。内部ないぶはかなり精巧せいこうに作つくられており、傾斜けいしゃした大だい回廊かいろうを通とおってピラミッド中央ちゅうおう部ぶに位置いちする王おうの玄室げんしつのほか、大だい回廊かいろう入口いりくちから水平すいへい通路つうろを通とおってたどり着つく王妃おうひの間あいだや、ピラミッドの地下ちかに存在そんざいする地下ちかの間あいだなどが存在そんざいする。また玄室げんしつの上うえにはピラミッドの重量じゅうりょうを軽減けいげんするための、いわゆる重力じゅうりょく軽減けいげんの間あいだとよばれる空間くうかんが存在そんざいする。

クフ王くふおうのピラミッドの東側ひがしがわには、3基きの王妃おうひたちの小ちいさなピラミッドが南北なんぼくに並ならんでいる。その東側ひがしがわは多数たすうのマスタバ墓ぼが立たち並ならんでおり、貴族きぞくたちが埋葬まいそうされている。このマスタバ群ぐんはピラミッドの西側にしがわにも存在そんざいする。また、ピラミッドの南側みなみがわには太陽たいようの船ふねを展示てんじしている太陽たいようの船ふね博物館はくぶつかんが存在そんざいしている。

クフ王くふおうのピラミッドはエジプトのピラミッドの中なかでも最大さいだい、さらにもっとも美うつくしいものとして知しられ、古ふるくから非常ひじょうに著名ちょめいであった。紀元前きげんぜん2世紀せいきにビザンチウムのフィロンによって選えらばれた世界せかいの七不思議ななふしぎのうちのひとつであり、またその中なかで唯一ゆいいつ現存げんそんする建造けんぞう物ぶつである。

カフラー王おうのピラミッド

ギザの大だいスフィンクスとカフラー王おうのピラミッド

詳細しょうさいは「カフラー王おうのピラミッド」を参照さんしょう

カフラー王おうのものとされるピラミッドは、三さん大だいピラミッドのうち中央ちゅうおうに位置いちする。高たかさはおよそ136メートル（頂上ちょうじょう部分ぶぶんが一部いちぶ崩くずれているため、創建そうけん当時とうじより低ひくくなっている）。頂上ちょうじょう付近ふきんに創建そうけん当時とうじの化粧けしょう石せきが一部いちぶ残のこっている。見みかけ上じょう、三さん大だいピラミッドの中なかでもっとも高たかいように見みえるが、それはカフラー王おうのピラミッドが立たっている岩盤がんばんが、クフ王くふおうのそれに比くらべてやや高たかくなっているためで、実際じっさいはクフ王くふおうのピラミッドの方ほうが高たかい。内部ないぶには通路つうろと玄室げんしつが存在そんざいするのみで、その玄室げんしつも中空ちゅうくうにあったクフ王くふおうのものとは違ちがい、地面じめんと同おなじ高たかさに建設けんせつされている。カフラー王おうのピラミッドの東側ひがしがわには葬祭そうさい殿どのが存在そんざいし、そこから東ひがしへと参道さんどうが伸のびている。参道さんどうの入いり口くちにはギザの大だいスフィンクスが存在そんざいする。この位置いち関係かんけいから、ギザの大だいスフィンクスはピラミッドを守護しゅごするためにカフラー王おうによって建設けんせつされた、ピラミッド複ふく合体がったいの一部いちぶであるという説せつが最もっとも有力ゆうりょくであるが、カフラー王おうのピラミッドを除のぞいてこうしたスフィンクスが存在そんざいするピラミッドは存在そんざいせず、それ以外いがいはほかのピラミッド複ふく合体がったいとすべて共通きょうつうしているため、スフィンクスはピラミッド建設けんせつ以前いぜんから存在そんざいし、それを取とり込こむようにしてカフラー王おうがピラミッドを建設けんせつしたという説せつも存在そんざいする。

スフィンクスはもともとあった岩山いわやまをそのまま掘ほり下さげて建設けんせつしたものであり、一枚岩いちまいいわとしては世界せかい最大さいだいの石像せきぞうである。そのため、過去かこ何なん回かいか首くびまで砂すなにうずもれ、その後ご掘ほり起おこされるといったことを繰くり返かえしている。スフィンクスの東ひがしにはスフィンクス神殿しんでんが、さらにその東ひがしにはカフラー王おうピラミッドの河岸かわぎし神殿しんでんが存在そんざいする。

メンカウラー王おうのピラミッド

詳細しょうさいは「メンカウラー王おうのピラミッド」を参照さんしょう

メンカウラー王おうのものとされるピラミッドは、三さん大だいピラミッドの中なかではもっとも小ちいさい。高たかさおよそ65メートル。ただしピラミッド複ふく合体がったいの規模きぼとしては、ほかの2つのピラミッドに劣おとらない規模きぼを備そなえている。ピラミッドの南側みなみがわには、3基きの王妃おうひたちの小ちいさなピラミッドが東西とうざいに並ならんでいる。参道さんどうも存在そんざいし、東ひがしへと延のびている。北面ほくめんには大おおきな傷跡きずあとが残のこるが、これはピラミッドを破壊はかいしようとしたものが破壊はかいできずに終おわったものの名残なごりであるという。

地理ちり・交通こうつう

カイロ市し中心ちゅうしん部ぶから西南せいなん西にし13kmの地点ちてんにある。周辺しゅうへんはギザ市しに属ぞくする。ギザ市し南部なんぶのギザ広場ひろばからクフ王くふおうピラミッド北側きたがわまではアフラーム通どおり（ピラミッド通どおり）と呼よばれる広ひろい直線ちょくせん道路どうろが通つうじている。ギザ広場ひろばにはカイロ地下鉄ちかてつが通つうじており、ピラミッドへ向むかう場合ばあいはここからバスに乗のるか、またはカイロ市し中心ちゅうしん部ぶからも市内しないバスが走はしっている。ピラミッド自体じたいは砂漠さばくのなかにあり周囲しゅういにはなにもないが、カイロ市しの都市とし化かに伴ともないスフィンクスのすぐ東ひがし隣となりまで住宅じゅうたく街がいが広ひろがるようになった。スフィンクスの正面しょうめんにはケンタッキー・フライド・チキンとピザハットの支店してんがあり、スフィンクスとピラミッドを眺ながめることができる。

この3基きのピラミッドおよびその複ふく合体がったいは、現代げんだいではピラミッドエリアとして一括いっかつされ、保存ほぞん地区ちくとなっている。ピラミッドエリアはエジプト最大さいだいの観光かんこう地ちであり、世界中せかいじゅうから多おおくの観光かんこう客きゃくが訪おとずれる。エリアの入いり口くちはクフ王くふおうのピラミッド北側きたがわ（アフラーム通どおり終点しゅうてん近ちかく）と、スフィンクス前まえの2か所しょに存在そんざいする。ピラミッドエリアの西端せいたんには展望てんぼう台だいが存在そんざいし、ここから3基きのピラミッドすべてを一いち度どに眺ながめることができる。

2013年ねん8月がつに発生はっせいしたムスリム同胞どうほう団だんと治安ちあん部隊ぶたいとの衝突しょうとつを受うけ、エジプト考古こうこ省しょうは2013年ねん8月がつ14日にちから一時いちじ閉鎖へいさ措置そちをとっていたが、のちに解除かいじょされた。

異説いせつ

この三さん大だいピラミッドはオリオン座ざの三ツ星みつぼしを表あらわしたものであるとする、いわゆるオリオン説せつが存在そんざいする。実際じっさいに、ナイル川がわを天あまの川がわに見立みたてると三さん大だいピラミッドの位置いちがオリオン座ざの三ツ星みつぼしの位置いちとほぼ一致いっちするという。ロバート・ボーヴァル（Robert Bauval）とアドリアン・ギルバート（Adrian Gilbert）が提唱ていしょうしたものだが、古代こだいエジプトにおけるオリオン座ざの重要じゅうよう性せいから結果けっかとしてオリオンの三みっつ星ぼしとして見みられたとは考かんがえられるものの、ピラミッドの大おおきさの並ならび順じゅんと三みっつ星ぼしの光ひかりの強つよさが一致いっちしないことなどから、三みっつ星ぼしに似にせようとしてピラミッドを作つくったことに関かんしては否定ひてい的てき見解けんかいが強つよい。またグラハム・ハンコックもこの説せつを取とりいれたが、こちらも学会がっかいでは無視むしされている。

エピソード

スフィンクスと侍さむらい（横浜よこはま鎖くさり港みなと談判だんぱん使節しせつ団だん、1865年ねん）

ナポレオン・ボナパルトがエジプトに遠征えんせいした折おり、ピラミッドの下したで「兵士へいし諸君しょくん、ピラミッドの頂いただきから、四よん千せん年ねんの歴史れきしが諸君しょくんを見みつめている」と言いって兵士へいしらを鼓舞こぶしたとされる。

また、このピラミッド群ぐんはエジプトのシンボルとなっており、19世紀せいき以降いこう多おおくの観光かんこう客きゃくを集あつめるようになった。1865年ねんには池田いけだ長ちょう発はつ率ひきいる江戸えど幕府ばくふの第だい二に回かい遣や欧おう使節しせつ（横浜よこはま鎖くさり港みなと談判だんぱん使節しせつ団だん）がピラミッドを見学けんがくし、記念きねん撮影さつえいを行おこなっている。

関連かんれん項目こうもく

• カイロ
• ギーザ
• ギザの大だいスフィンクス
• 世界せかい三さん大だい一覧いちらん