上うえ元もと夫人ふじん

上うえ元もと夫人ふじん
各種かくしゅ表記ひょうき
拼音：	Shàngyuán Fūrén
日本語にほんご読よみ：	じょうげんふじん
英文えいぶん：	Lady Shangyuan

上うえ元もと夫人ふじん（じょうげんふじん）は、中国ちゅうごくの道教どうきょうにおける女おんな仙せんである。彼女かのじょは天界てんかいで最もっとも高貴こうきの女おんな仙せんであり、長生ちょうせいを執と掌てのひらしている。道教どうきょうで言いう三さん天てん官かん（上うえ元はじめ・中元ちゅうげん・下した元もと）のうちの上うえ元もとの官かんに当あたる女おんな仙せんである。小字こあざは阿おもね環たまき（あかん）。

概要がいよう

道教どうきょうの文献ぶんけん『墉城集しゅう仙せん録ろく』によれば、上うえ元もと夫人ふじんは道みち君くんの弟子でしで、古ふるくから得道とくどう登仙とうせんして、真ま籍せき（真人しんじんまたは仙人せんにんたちの名籍めいせき）を管理かんりし、亀かめ台だい金きん母はは（西王母せいおうぼ）に次つぐ地位ちいを持もつ。しばしば九天きゅうてん玄女げんにょと混同こんどうされる。

『漢かん武内たけうち伝つたえ』によれば、前漢ぜんかんの武たけ帝みかどは長生ちょうせいを望のぞみ、七なな月がつ七なな日にちに宮殿きゅうでんで西王母せいおうぼを迎むかえ、西王母せいおうぼは侍女じじょの郭かく密ひそか香がに命めいじて、もう一人ひとりの女おんな仙せん・上うえ元もと夫人ふじんをこの場ばに招まねいた。郭かく密ひそか香がは、殿どのに下おりてきて、姿すがたを消けした。やがて郭かく密ひそか香がは、上うえ元もと夫人ふじんの侍女じじょをつれてきた。上うえ元もと夫人ふじんの侍女じじょは「いま上じょう元もと夫人ふじんは太ふとし帝みかど君くんの指示しじを受うけて、玄げん洲しゅうで天元てんげんの校正こうせいをしているから、少々しょうしょうお待まちください。」と言いったという。上うえ元もと夫人ふじんと西王母せいおうぼは絳河（天あまの川がわ）を隔へだてて、四よん千せん年ねん余あまり顔がおを合あわせていない。しかし武たけ帝みかどは、上うえ元もと夫人ふじんが誰だれであるか知しらない。西王母せいおうぼは「彼女かのじょは三さん天真てんしん皇すめらぎの母はは、三さん天上てんじょう元もとの官かんにして、十方じっぽうの玉たま女おんなの名めい録ろくを統すべ領りょうする者ものなり」と言いったという。やがて雲くもの中なかから簫しょうと鼓この声こえを聞きく。上うえ元もと夫人ふじんは十じゅう八はち九きゅう歳さいくらいの千せん人にん余あまりの女官にょかんを連つれて到着とうちゃくした。上うえ元もと夫人ふじんは殿しんがりに上のぼりて西王母せいおうぼに向むかって礼拝れいはいしたが、西王母せいおうぼに止とめられ、そして呼よんで同どう坐ざして北向きたむきす（西王母せいおうぼは東向こちむきす、武たけ帝みかどは南みなみ向こうす）。上うえ元もと夫人ふじんも厨くりやを設しつらえく、厨くりやは精しらげ珍ちんにして西王母せいおうぼの設もうけたものと似にている。西王母せいおうぼは武たけ帝みかどに、「上うえ元もと夫人ふじんは真しん元もとの母はは、尊みこと貴たかの神かみ女おんなであり、当とうに起たちて拝はいすべきだ」と言いった。武たけ帝みかどは上うえ元もと夫人ふじんに礼れいをした後のち、還かえりて坐まします。上うえ元もと夫人ふじんは武たけ帝みかどをひどく軽蔑けいべつして、気性きしょうが荒あらく、名利みょうりを追おい、好色こうしょくを貪むさぼり、長生ちょうせいにはなりにくいと叱しかった。武たけ帝みかどが長生ちょうせいを欲ほっするなら、秘術ひじゅつの経典きょうてん『五帝六甲霊飛十二事』を手てに入いれねばならない。しかし、『五帝六甲霊飛十二事』は神仙しんせん以外いがいの者ものに勝手かってに伝授でんじゅすることはできない。西王母せいおうぼの再三さいさんにわたる説得せっとくに、ついに折おれて、武たけ帝みかどに『五帝六甲霊飛十二事』を授与じゅよしている。

『歴世れきせい真しん仙せん体からだ道どう通どおり鑑かん後ご集しゅう』巻まき三さんにも、上記じょうきと類似るいじの物語ものがたりが記載きさいされている。

容姿ようし

上うえ元もと夫人ふじんは天てん姿すがた清きよし耀、霊れい眸ひとみ艶つや絶ぜっ、雲くも彩色さいしきを乱みだした錦にしきと繡ではない赤あか霜しもの袍ほうを服ふくす。頭あたまは三角さんかく髻たぶさを作つくり、余分よぶんな髪かみを腰こしまで垂しだれ、九きゅう霊れい夜光やこうの冠かんむりを戴いただき、六ろく山やま火玉ひだまの珮を垂しだれ、鳳おおとり文ぶん琳華の綬を佩用はいようし、腰こしには流ながれ黄き揮精の剣けんを帯おびた二十歳はたち余あまりの艶あでやかな女おんな仙せんである。

また『真ま誥』によれば、上うえ元もと夫人ふじんは赤あか霜しも袍ほうを着きて、青毛あおげ錦にしきの裘をかぶっている。元もと晨夜月がつの冠かんむりを戴いただき、六ろく山やま火玉ひだまの珮を帯おび、腰こしには鳳おおとり文ぶん琳華大だい綬を佩用はいようし、手てには流ながれ黄き揮精の剱を執とる。

唐詩とうし

上うえ元もと夫人ふじん
原文げんぶん	書かき下くだし文ぶん	通つう釈しゃく
上うえ元もと誰だれ夫人ふじん？偏へん得とく王おう母はは嬌。
嵯峨さが三角さんかく髻たぶさ，余あまり髮かみ散ち垂たれ腰こし。
裘披青毛あおげ錦にしき，身み著ちょ赤あか霜しも袍ほう。
手提てさげ嬴女兒じ，閑與鳳おおとり吹簫。
眉まゆ語ご兩りょう自じ笑わらい，忽ゆるがせ然しか隨ずい風ふう飄。