九天きゅうてん玄女げんにょ

九天きゅうてん玄女げんにょ
葛飾かつしか北斎ほくさいに描えがかれた『絵本えほん水すい滸伝』九天きゅうてん玄女げんにょの挿絵さしえ。メトロポリタン美術館びじゅつかん所蔵しょぞう。
各種かくしゅ表記ひょうき
拼音：	Jiǔtiān Xuánnǚ
日本語にほんご読よみ：	きゅうてんげんにょ
英文えいぶん：	Dark Lady of the Nine Heavens

九天きゅうてん玄女げんにょを祀まつる道みち観かん

九天きゅうてん玄女げんにょ（きゅうてんげんにょ、または単たんに玄女げんにょや元もと女おんな、俗称ぞくしょう：九天きゅうてん玄女げんにょ娘むすめ娘むすめ）は、中国ちゅうごく神話しんわの女神めがみであり、道教どうきょうにおける女おんな仙せんである。

「玄げん」の字じは黒色こくしょくを表あらわすこともあり、玄女げんにょという名なは「黒くろい女おんな」の意味いみである。

概要がいよう

戦術せんじゅつと兵法ひょうほうを司つかさどる上古じょうこの女神めがみで、「天てん書しょ」を持もっている。戦術せんじゅつの神かみと正義せいぎの神かみの性格せいかくを併あわせもって、道教どうきょうの神かみ統みつる譜ふでは西王母せいおうぼに次つぐ地位ちいにある女おんな天神てんじんと言及げんきゅうされ、上うえ元もと夫人ふじんと同一どういつ視しされることもあった。西王母せいおうぼの副官ふっかん役やくとして英雄えいゆうたちの守護神しゅごじんである。道教どうきょうでは旧暦きゅうれき2月がつ15日にちを九天きゅうてん玄女げんにょの誕生たんじょう日びとして祝いわっている。また、六ろく壬みずのえ神かみ課かと関連かんれんづけられている。

『古文こぶん龍虎りゅうこ経けい註疏ちゅうそ』によれば、玄女げんにょは「天てん符ふ者しゃ」（歳とし運うんと天てんの気きを司つかさどる者もの）と称しょうされていた。玄女げんにょは天地てんちの精神せいしん・陰陽いんようの霊気れいきであり、万物ばんぶつを知しっていて、道教どうきょうの主おもである。また、玄女げんにょも上古じょうこの神仙しんせんであり、衆しゅう真しんの長ちょうである。葛かずら洪ひろしの「枕まくら中書ちゅうしょ」によれば、元始げんし天王てんのうと太ふと元もと玉たま女おんなは九きゅう光ひかり玄女げんにょを生うみ、太ふとし真ま西王母せいおうぼと号ごうし、西にし漢かん夫人ふじんのことである。九天きゅうてん玄女げんにょは西王母せいおうぼの一いち側面そくめんと考かんがえられている。『太ふとし上じょう老ろう君くん中ちゅう経けい』によれば、玄女げんにょは常つねに太白たいはくの明星みょうじょうを戴いただき、太ふとし明あかりの珠たまを耳みみにつけ、一身いっしんに光ひかりを照射しょうしゃして、即すなわち延のべ年ねんして死しなず。

元々もともとの玄女げんにょは、人ひと首くび鳥とり身みの婦人ふじんをした姿すがたの女神めがみで、西王母せいおうぼに遣や使つかいされて黄き帝みかどに戦法せんぽうを教おしえたと伝つたえられている。また、黄き帝みかどに蚩尤を抑おさえるための三宮さんのみや五ご意い陰陽いんようの略りゃく、太一たいち遁甲六ろく壬みずのえ歩ふ斗との術じゅつ、『陰かげ符ふ』の機き、『霊宝れいほう五ご符ふ』、『五ご勝しょう』の文ぶん（あるいは六ろく甲かぶと六ろく壬みずのえ兵へい信しんの符ふ、霊宝れいほう五ご帝みかど策さく使し鬼神きじんの書しょ、制せい妖通霊れい五明ごみょうの印しるし、五ご陰かげ五ご陽ひ遁元の式しき、太ふと一十精四神勝負握機の図ず、五兵河図策精の訣）を授さづけた。玄女げんにょの人ひと首くび鳥とり身みの原型げんけいは玄げん鳥とりと言いわれており、殷いんの始祖しそ「契ちぎり」の母はは「簡狄」は玄げん鳥とりの卵たまごを飲のんで「契ちぎり」を生うんだ。顓頊の孫娘まごむすめ「女おんな脩おさむ」が機織はたおりしている時とき、玄げん鳥とりの卵たまごを飲のんで身みごもり、「大業おおわざ」を生うんだ。また『雲くも笈きゅう七なな籤くじ』にその名なが記しるされ、九天きゅうてん玄女げんにょは黄き帝みかどの師し・聖母せいぼ元もと君くんの弟子でしであり、丹たん鳳おおとり（赤あかい鳳凰ほうおう）に乗のって、九きゅう色彩しきさい翠みどりの衣ころもを着きて、玄げん狐きつねの裘（黒くろ狐きつねの毛皮けがわ）をかぶっている。

中国ちゅうごくにおいて古ふるくは「玄げん素もとの道みち（陰陽いんようの術じゅつ）」で、玄女げんにょと素す女おんなの方術ほうじゅつを指さす。黄き帝みかどは、玄女げんにょと素もと女おんなから房ぼう中ちゅう術じゅつ（性せい技わざ）をさずかったとされている。メソポタミア神話しんわの性愛せいあいと戦争せんそうを司つかさどる女神めがみイナンナ、イシュタルなどと共通きょうつう点てんが指摘してきされる説せつもある。しかしこれらは晋すすむ、あるいは隋ずいの方かた士しによっての後のち付つけであり、漢かん以前いぜんの記載きさいでは、玄女げんにょも素もと女おんなもこれらとの関かかわりは見当みあたらない。

『通俗つうぞく大明だいめい女おんな仙せん伝でん』（原題げんだい：『女おんな仙せん外史がいし』）の女おんな主人公しゅじんこうである唐から賽さい児じは、九天きゅうてん玄女げんにょから授った七なな巻かんの天てん書しょを学まなび、様々さまざまの幻術げんじゅつを用もちいて燕つばめ軍ぐんを翻弄ほんろうする。玄女げんにょは剣けん仙せんたちを統すべる天仙てんせんの長ちょうで、素す女おんなは玄女げんにょの妹いもうとと言いわれる。一人称いちにんしょうは「朕ちん」。

唐とうの名将めいしょう・李り靖やすしは、九天きゅうてん玄女げんにょの戦法せんぽうを駆使くししたとある。

また、1047年ねんの中国ちゅうごくの小説しょうせつ『三さん遂とげ平ひら妖伝』の改作かいさくにおいて、聖せい姑しゅうと姑しゅうとから九天きゅうてん玄女げんにょへ変更へんこうされたという説せつがある。

古典こてん小説しょうせつ

• 『水みず滸伝』 - 第だい41回かいにおいて宋そう江こうの夢ゆめの中なかに登場とうじょう。詳くわしくは宋そう江こう#九天きゅうてん玄女げんにょの加護かごを参照さんしょう。
• 『蕩とろけ寇志』
• 『東遊あずまあそび記き』
• 『平ひら妖伝』
• 『通俗つうぞく大明だいめい女おんな仙せん伝でん』

関連かんれん項目こうもく

観光かんこう地ち

• 九天きゅうてん玄女げんにょ廟びょう - 台湾たいわん獅潭郷きょうにある九天きゅうてん玄女げんにょを祀まつる廟びょう。
• 九天きゅうてん洞ほら - 湖南こなん省しょう張ちょう家か界さかい市しにある洞ほら。内部ないぶに「九星きゅうせい山玉やまだま柱ばしら」「九天きゅうてん玄女げんにょ宮みや」「寿ことぶき星宮ほしみや」がある[1]。