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こうおこり栽培さいばい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
こうおこり栽培さいばい栽培さいばいされるテンサイ甜菜てんさい
こうおこり栽培さいばい採用さいようした農地のうちで、大豆だいず成長せいちょうする様子ようすこうおこり栽培さいばいのおかげで、有用ゆうよう菌類きんるい豊富ほうふ表面ひょうめんすうじゅうセンチの土壌どじょううしなわれてしまう事態じたいふせげており、あらたな作物さくもつ肥沃ひよく土壌どじょう水分すいぶん提供ていきょうできている。

こうおこり栽培さいばい(ふこうきさいばい、英語えいご: Nontillage cultivation, No-till farming)とは、農地のうちたがやさないで作物さくもつ栽培さいばいする、作物さくもつ栽培さいばい方法ほうほうひとつ。

概要がいよう

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歴史れきし

1943ねん、アメリカじんのエドワード・フォークナーは『農夫のうふ愚行ぐこう』(Plowman's Folly)をあらわした。そのなかで、慣例かんれいてき農業のうぎょうにおいて基本きほんてき行為こういながかんがえられてきたこうおこりは、土壌どじょう破壊はかいするだけでなんえきもない行為こういであると指摘してきし、有機物ゆうきぶつ表土ひょうどむだけで、肥沃ひよく土壌どじょう維持いじできるとべた[1]

ランド研究所けんきゅうじょウェス・ジャクソンは、たがやすことは生態せいたいがくてき災厄さいやくであると指摘してきし、こうおこり基礎きそとした農業のうぎょう持続じぞく可能かのうせい証明しょうめいされていないことを指摘してきした[2]

こうした研究けんきゅうや、除草じょそうざいたいせい遺伝子いでんし作物さくもつ開発かいはつ有機ゆうき農法のうほう手法しゅほう確立かくりつとともに、完全かんぜんこうおこり栽培さいばいや、保全ほぜん耕耘こううんばれる土壌どじょう表面ひょうめんのうちすくなくとも30パーセントを作物さくもつざん渣でおおっておくゆるやかな手法しゅほうが、現在げんざいきたアメリカ農家のうかあいだ急速きゅうそくひろまりつつある。[よう出典しゅってん]

20世紀せいき前半ぜんはんからなかばころに、目先めさき効率こうりつばかりにをとられて土地とちたがやこうおこり栽培さいばいひろがりすぎたせいで、地球ちきゅう規模きぼ土壌どじょう劣化れっか(ランド・デグラデーション) がすすみ、表面ひょうめんすうじゅうcmの有用ゆうよう微生物びせいぶつ豊富ほうふ土壌どじょうふうあめうしなわれてしまい、一度いちどうしなわれてしまった表面ひょうめん土壌どじょう再生さいせいはきわめて困難こんなんなので、農地のうちとして使つかえなくなってしまった猛烈もうれついきおいで世界中せかいじゅうつづけてしまった[3]

1960年代ねんだいには北米ほくべい耕地こうちのほとんどはこうおこされていたが、カナダでは1991ねんには33パーセント、2001ねんには60パーセントの農場のうじょうこうおこり栽培さいばいもしくは保全ほぜん耕耘こううん採用さいようしている。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは2004ねん保全ほぜん耕耘こううんぜん農地のうちの41パーセント、こうおこり栽培さいばいが23パーセントで実施じっしされている[4]

米国べいこくでよりひろ使つかわれるようになってきており、2010ねんには米国べいこくの60パーセントの農地のうちこうおこり栽培さいばいになると予想よそうされている[5]

しかしいまのところ、地球ちきゅう全体ぜんたい農地のうちのうち、こうおこり栽培さいばいおこなわれているのは、5パーセントほどにぎない。つまりまだまだこうおこり栽培さいばい推進すいしんらず、このままこうおこり栽培さいばい放置ほうちされたままではすうじゅうねんには地球ちきゅうじょうおも農地のうち大半たいはん土地とち劣化れっか(land degradation)によってうしなわれる事態じたいとなり、人類じんるい悲惨ひさん状況じょうきょうむかえる。[よう出典しゅってん]

なお日本にっぽん国外こくがいでの畑作はたさくでのこうおこり栽培さいばい日本にっぽん国内こくないの「農薬のうやく稲作いなさく畑作はたさく」におけるこうおこり栽培さいばいは、仕組しくみがまったことなる[よう出典しゅってん]

メリット

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  • 20世紀せいき前半ぜんはんやなかばに、こうおこり栽培さいばいのせいで進行しんこうしてしまったland degradation (=土地とち劣化れっか土地とちたがやすことによって表面ひょうめんくさるいうしなわれ、表土ひょうどふうあめなどで流出りゅうしゅつうしなわれ、になってしまう現象げんしょう)をくいめることができる。
  • 土中どちゅうあな構造こうぞうのこり、けん酸化さんかてきのこる。はたけでは排水はいすいせい保水ほすいせいもよくなり、かんばつにも長雨ながあめにもつよくなる[よう出典しゅってん]
  • こうおこり突破つきやぶり、いねしょうじる植物しょくぶつホルモンてき作用さよう活力かつりょくたかふとつくり、くきふとくする[よう出典しゅってん]
  • 前作ぜんさく作物さくもつざん渣を地表ちひょう放置ほうちできることになり、その結果けっか、それらが表土ひょうど土壌どじょうおおいとなって風雨ふううによる土壌どじょう流出りゅうしゅつ緩和かんわできる。
  • 土壌どじょう生物せいぶつ多様たようせいえ、害虫がいちゅう病原びょうげんたい極端きょくたん増加ぞうかふせげる。[よう出典しゅってん]
  • たがやさないことによる省力しょうりょくというメリットがある。

デメリット

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  • 病気びょうきによってはたがやさないことで蔓延まんえんしやすいものがある。(ただし、ぎゃくれいもあるので一概いちがいにはえない。)
  • 前作ぜんさくざん渣を地中ちちゅうにすきこまないことにより、土壌どじょう養分ようぶん表層ひょうそう集中しゅうちゅうしやすく、そのために表層ひょうそう集中しゅうちゅうしやすい。ただし、作物さくもつけいによって影響えいきょう度合どあいはことなりしゅがたけい[注釈ちゅうしゃく 1]をもつものは、ひげがたけい[注釈ちゅうしゃく 2]をもつものよりも影響えいきょうけやすいという[6]。これにより旱魃かんばつよわめんもあるとされる。

実現じつげん手法しゅほう

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自然しぜんのうによるこうおこり栽培さいばい

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川口かわぐち由一ゆいち提唱ていしょうする自然しぜんのうこうおこり施肥せひ農薬のうやく基本きほんとする。こうおこり雑草ざっそうかすことにより土中どちゅう栄養えいようたもたれ施肥せひ実現じつげん[独自どくじ研究けんきゅう?]過剰かじょう施肥せひをしないことによりむしがい軽減けいげんされ益虫えきちゅうとのバランスもたもたれ農薬のうやく実現じつげんする[独自どくじ研究けんきゅう?]

遺伝子いでんし作物さくもつによるこうおこり栽培さいばい

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選択せんたくせい除草じょそうざいとそれにたいせい作物さくもつ利用りようされている。そのれいをあげると、現在げんざい北米ほくべい南米なんべい諸国しょこくでは、ラウンドアップなどの選択せんたくせい除草じょそうざいとその除草じょそうざいたいせい遺伝子いでんし作物さくもつ利用りようしたこうおこり栽培さいばいだい規模きぼ導入どうにゅうされている。その結果けっか、それらの諸国しょこくにおいて深刻しんこく環境かんきょう破壊はかいになっている土壌どじょう流出りゅうしゅつ緩和かんわされているため、選択せんたくせい除草じょそうざいとその除草じょそうざいたいせい作物さくもつ利用りよう環境かんきょう保全ほぜん役立やくだつとともに永続えいぞくてき農業のうぎょう生産せいさん貢献こうけんしている、という意見いけんがある[7]

農薬のうやく栽培さいばいによるこうおこり栽培さいばい

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千葉ちばけん岩澤いわさわ信夫しのぶ提唱ていしょうするこうおこり移植いしょく栽培さいばいである。水田すいでんおこなわれているこの農法のうほうは、たがやさないことがきっかけとなって、んぼの生態せいたい環境かんきょうよみがえり[独自どくじ研究けんきゅう?]それらの生物せいぶつによる作用さよう土壌どじょう肥沃ひよくがもたらされる[独自どくじ研究けんきゅう?]ものである。環境かんきょう保全ほぜん発想はっそうてられたものであり、化学かがく肥料ひりょう除草じょそうざい殺虫さっちゅうざいひとし農薬のうやくまった使つかわない生物せいぶつとの共生きょうせい環境かんきょう利用りようした循環じゅんかんがた農法のうほうである。現在げんざい段階だんかいでは水田すいでんのみ有効ゆうこう手法しゅほうである[よう出典しゅってん]

課題かだい

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耕耘こううん(こううん)には、雑草ざっそう種子しゅし土壌どじょう深部しんぶ移動いどうさせたり、雑草ざっそうけい破壊はかいすることにより除草じょそう効果こうかがある。こうおこりによりこれらの効果こうかうしなわれるため、それをおぎな必要ひつようがある。ただしぎゃくかんがかたとして、耕耘こううんするからこそ雑草ざっそう種子しゅし土壌どじょう表面ひょうめん移動いどうさせるということもある。

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ふとしゅとそこから分岐ぶんきするがわがはっきりと区別くべつできるもの。一般いっぱんそう子葉しよう植物しょくぶつ該当がいとうする
  2. ^ おなじようなふとさの多数たすうており、しゅがわ区別くべつ出来できない。イネヤシユリなどのたん子葉しよう植物しょくぶつ該当がいとうする

出典しゅってん

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  1. ^ モントゴメリー 2010, pp. 278–281.
  2. ^ モントゴメリー 2010, pp. 282–284.
  3. ^ NHK BS1スペシャル『2030 未来みらいへの分岐ぶんきてん』「特別とくべつへん 持続じぞく可能かのう未来みらいのために」
  4. ^ モントゴメリー 2010, pp. 290–293.
  5. ^ Brady and Weil, 2002
  6. ^ 森田もりた茂紀しげきへん)(2003)のデザイン―つく食糧しょくりょう環境かんきょう―. やしなえ賢堂かしこどう, 東京とうきょう.
  7. ^ 有井ありいあや, 山根やまね精一郎せいいちろう、「除草じょそうざいたいせい遺伝子いでんしぐみ作物さくもつ普及ふきゅう問題もんだいてん」 『雑草ざっそう研究けんきゅう』 2006ねん 51かん 4ごう p.263-268, NAID 110005717008, doi:10.3719/weed.51.263, 日本にっぽん雑草ざっそう学会がっかい

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Brady, N.C., and Ra.R. Weil. The Nature and Properties of Soils. 13th ed. Upper Saddle River, NJ: Prentice Hall, 2002.
  • デイビッド・モントゴメリー ちょ片岡かたおか夏実なつみ やく文明ぶんめい築地つきじしょかん、2010ねんISBN 9784806713999 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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