中山なかやま水兵すいへい射殺しゃさつ事件じけん

中山なかやま水兵すいへい射殺しゃさつ事件じけん（なかやますいへいしゃさつじけん）は、1935年ねん 11月9日にちに中華民国ちゅうかみんこく上海しゃんはい共同きょうどう租界そかいで、日本にっぽん海軍かいぐんの中山なかやま秀雄ひでお一等いっとう水兵すいへいが中国人ちゅうごくじんおよび朝鮮ちょうせん人じんにより殺害さつがいされた事件じけん。事件じけん名めいは、単たんに中山なかやま事件じけん、あるいは中山なかやま一等いっとう水兵すいへい射殺しゃさつ事件じけん^[1]、中山なかやま水兵すいへいが死後しごに進級しんきゅうしたため中山なかやま兵曹へいそう射殺しゃさつ事件じけん^[2]とも呼よぶ。

背景はいけい

楊文道どうの反はん蔣介石せき・反日はんにち活動かつどう

事件じけんを引ひき起おこすことになる秘密ひみつ結社けっしゃ同義どうぎ協会きょうかい会長かいちょうの楊文道どうは^[2]、1932年ねんの第だい一いち次じ上海しゃんはい事変じへんの際さいに第だい十じゅう九きゅう路ろ軍ぐん（zh）諮はか議ぎとなり配下はいかを率ひきいて便衣隊べんいたいとして活動かつどうしていた^[2]。また、事件じけん実行じっこう犯はんとなる葉は海うみ生せいも日本にっぽん側がわの後方こうほう撹乱かくらんを図はかっていた^[3]。その後ご、楊文道どうは十じゅう九きゅう路ろ軍ぐんの蔡廷鍇と連絡れんらくを取とり合あいながら上海しゃんはいにおける反はん蔣介石せき運動うんどうの指導しどう者しゃとして活躍かつやくし、1933年ねんの福建ふっけん革命かくめい（zh）時じには中国共産党ちゅうごくきょうさんとうとともに上海しゃんはいで反はん蔣介石せき暴動ぼうどうを起おこそうとしたが、中華民国ちゅうかみんこく政府せいふに計画けいかくが発覚はっかくすると廈門へ逃亡とうぼうしていた^[2]。

事件じけん勃発ぼっぱつ時じの楊文道どうは、蔣介石せき派はに対立たいりつする広東かんとん派は系けいの第だい十じゅう九きゅう路ろ軍ぐん^[4]から多額たがくの資金しきん援助えんじょを受うけており、上海しゃんはい・廈門における大だい暴動ぼうどう計画けいかくを樹きてるとともに日本にっぽんの勢力せいりょくを利用りようして蔣介石せき政権せいけんの打倒だとうを図はかろうとしていた^[2]。

多発たはつするテロ事件じけん

1935年ねん 1月がつ21日にち、汕頭邦人ほうじん巡査じゅんさ射殺しゃさつ事件じけん^[5]^[6]、7月がつ10日とおか、上海しゃんはい邦人ほうじん商人しょうにん射殺しゃさつ事件じけん^[5]、9月19日にち、漢かん口こう邦人ほうじん巡査じゅんさ射殺しゃさつ事件じけん^[5]^[6]など中山なかやま一等いっとう水兵すいへい射殺しゃさつ事件じけんが起おきるまでには数々かずかずのテロ事件じけんが繰くり広ひろげられていた^[6]^[7]。11月1日にちには日にち中ちゅう提携ていけいに最もっとも関心かんしんをもっていた汪ひろし兆ちょう銘めい中華民国ちゅうかみんこく行政ぎょうせい院長いんちょうが十じゅう九きゅう路ろ軍ぐんの元もと小隊しょうたい長等ながらに狙撃そげきされる汪ひろし兆ちょう銘めい狙撃そげき事件じけんが起おきた^[8]^[9]^[10]。このような事件じけんが続発ぞくはつするさなかの1935年ねん当時とうじの上海しゃんはいには28,000人にんの日本人にっぽんじんが居留きょりゅうしていた^[11]。

事件じけん経過けいか

事件じけん発生はっせい

1935年ねん11月9日にち午後ごご9時じ頃ごろ、上海しゃんはい共同きょうどう租界そかい北きた四よん川路かわじ（zh）竇楽安やす路ろで、日本にっぽん海軍かいぐんの上海しゃんはい陸戦りくせん隊員たいいん中山なかやま秀雄ひでおが秘密ひみつ結社けっしゃ同義どうぎ協会きょうかい会長かいちょう楊文道どうの指揮しき命令めいれい下かの葉は海うみ生せいによって射殺しゃさつされた^[2]^[5]^[12]。竇楽安やす路ろは上海しゃんはい共同きょうどう租界そかいと中国人ちゅうごくじん街がいの境界きょうかい道路どうろだった。犯行はんこうは背後はいごから拳銃けんじゅうで射殺しゃさつする態様たいようで、使用しようされた拳銃けんじゅうは第だい一いち次じ上海しゃんはい事変じへん時ときに楊文道どうが十じゅう九きゅう路ろ軍ぐん（zh）から支給しきゅうされたものであった^[2]。

事件じけん影響えいきょう

事件じけんを受うけ、日本にっぽん政府せいふ当局とうきょくは直ただちに中国ちゅうごく側がわに犯人はんにん捜査そうさを要請ようせいしたが、犯人はんにんは逮捕たいほされなかった^[12]。事件じけん後ごには、上海しゃんはい在留ざいりゅう日本人にっぽんじんが経営けいえいする商店しょうてんが中国人ちゅうごくじん暴徒ぼうとによって襲撃しゅうげきされる事件じけんが発生はっせいし^[12]、現地げんちでは日にち中ちゅう開戦かいせん説せつが生うまれ数すう万まん人にんの中国人ちゅうごくじんが避難ひなん民みんとなった^[1]。これらの事件じけんを重視じゅうしした日本にっぽんは、中国ちゅうごく政府せいふに排日はいにち活動かつどうの取締とりしまりを要請ようせいした^[12]。犠牲ぎせい者しゃを出だした海軍かいぐんからは中国ちゅうごくに対たいして陳謝ちんしゃ、犯人はんにん逮捕たいほ、排日はいにち取締とりしまりなどを要求ようきゅうすべきであると意見いけん具申ぐしんがされた^[13]

1936年ねん 4月がつ15日にち、日本にっぽん側がわの捜査そうさに基もとづいて上海しゃんはい工こう部局ぶきょく（zh）警察けいさつが、青島ちんたおで被疑ひぎ者しゃとして楊文道どう・葉は海うみ生せい・周しゅう謝しゃ栄さかえの広東かんとん省しょう出身しゅっしん者しゃ（en）3名めいとモスクワ出身しゅっしんの朝鮮ちょうせん人じん「ジャック」こと韓かん奇き良りょうを逮捕たいほした^[1]^[5]^[12]^[14]。5月1日にち、上海しゃんはい第だい一いち特別とくべつ法ほう院いんで第だい一いち回かい公判こうはんが開ひらかれた^[15]。葉は海うみ生せいは、取とり調しらべで犯行はんこうを自白じはくし、現場げんば検証けんしょうでは犯行はんこう動作どうさを実演じつえんして見みせており^[16]、公判こうはんでも犯行はんこうを認みとめる供述きょうじゅつをしていたが公判こうはんの回かいを重かさねていくうちに、自白じはくは強要きょうようされたものであったとする発言はつげんを行おこない、審理しんりは混迷こんめいした。これに対たいし、日本にっぽん政府せいふは公正こうせいな判決はんけつが下くだされるよう中国ちゅうごく側がわに再三さいさん申もうし入いれた^[5]。証人しょうにんに対たいし、同義どうぎ協会きょうかいなどから脅迫きょうはく状じょうが送おくられることもあり日本にっぽん政府せいふは証人しょうにん保護ほごに努つとめた^[2]。早期そうき判決はんけつを求もとめる日本にっぽん側がわに対たいし、上海しゃんはい工こう部局ぶきょくは、1935年ねん 11月1日にちに起おきた汪ひろし兆ちょう銘めい狙撃そげき事件じけんとの関連かんれん性せいを主張しゅちょうし、審理しんりの延長えんちょうを求もとめた^[3]。

続発ぞくはつする事件じけんと事変じへんの勃発ぼっぱつ

上海しゃんはい市内しないを侵攻しんこうする中国ちゅうごく国民こくみん革命かくめい軍ぐん第だい88師団しだん（en）

事件じけん解決かいけつが図はかられる前まえの12月25日にちには日にち中ちゅう関係かんけい改善かいぜんに務つとめていた唐から有ゆう壬みずのえ前まえ外交がいこう部ぶ次長じちょう（事件じけん当時とうじ交通こうつう部ぶ次長じちょう）がフランス租界そかいで暗殺あんさつされ^[11]^[17]、1936年ねん 7月がつ10日とおかには上海しゃんはい市内しないを子供こどもを連つれて散歩さんぽしていた三菱商事みつびししょうじ社員しゃいん萱生かよう鑛こう作さくが日にち中ちゅう間あいだの戦争せんそうを引ひき起おこそうとする勢力せいりょくに射殺しゃさつされる事件じけんが起おき（萱生かよう事件じけん）^[6]^[18]^[19]、8月がつ24日にちには毎日新聞まいにちしんぶん記者きしゃが殺害さつがいされる（成都せいと事件じけん）が起おきた^[6]^[20]^[21]。中山なかやま事件じけんの裁判さいばんが遷延せんえんしていること、萱生かよう事件じけんの犯人はんにんが逮捕たいほされないこと、殺傷さっしょうされた記者きしゃ等とうが上海しゃんはい居住きょじゅうの日本人にっぽんじんであったことなどから、上海しゃんはい在留ざいりゅう邦人ほうじんは激昂げっこうし居留民きょりゅうみん大会たいかいを開ひらこうとしたが派生はせい事件じけんの発生はっせいを危惧きぐした若杉わかすぎ総領事そうりょうじによって押おさえられた^[22]。ところが、9月23日にちには8月がつから十じゅう九きゅう路ろ軍ぐん占領せんりょう下かに置おかれていた広東かんとん省しょう北海ほっかいで商店しょうてんを営いとなむ中野なかの順三じゅんぞうが殺害さつがいされる（北海ほっかい事件じけん）が起おき^[23]、翌日よくじつには十じゅう九きゅう路ろ軍ぐん軍人ぐんじんなどによって中野なかのの門前もんぜんに打倒だとう蔣介石せき漢奸かんかん・絶滅ぜつめつ日び人じん狗いぬ子こなどの宣伝せんでん文ぶんが貼はられた^[23]。その後ご、外務省がいむしょうによって現地げんち調査ちょうさが行おこなわれ十じゅう九きゅう路ろ軍ぐんの指導しどうの下したで行おこなわれた政治せいじ目的もくてきの事件じけんであったことが確認かくにんされた^[23]。9月23日にちには再ふたたび上海しゃんはい共同きょうどう租界そかい内ないで日本人にっぽんじん水兵すいへい射殺しゃさつ事件じけんが引ひき起おこされた^[24]。10月2日にちに、中山なかやま一等いっとう水兵すいへい殺害さつがい事件じけんの被告人ひこくにんのうち主犯しゅはん格かくとされた楊文道どう・葉は海うみ生せいの2名めいに死刑しけい判決はんけつが下くだされ^[5]^[25]、周しゅう我わが栄さかえは無罪むざいとされた^[25]。このようなさなかの12月13日にちに西安しーあん事件じけんで拉致らちされた蔣介石せきは事件じけん以降いこう、剿共戦せんを止とめ対たい日にち戦せんに踏ふみ切きる決意けついをした^[26]。

翌年よくねんには義和よしかず団だん事件じけんによる北京ぺきん議定ぎてい書しょに基もとづいて華北かほくに駐屯ちゅうとんしていた日本にっぽん軍ぐんへの攻撃こうげきが繰くり返かえされ、7月がつ29日にちには日本人にっぽんじん260名めいが惨殺ざんさつされる通とおり州しゅう事件じけんが起おきた^[27]。8月がつ9日にちに、上海しゃんはいで中国ちゅうごく軍ぐんによって日本にっぽん海軍かいぐん将兵しょうへいが殺害さつがいされ、8月がつ13日にちに中国ちゅうごく軍ぐんによる上海しゃんはい共同きょうどう租界そかいへの攻撃こうげきが開始かいしされ、8月がつ14日にちには中国ちゅうごく軍ぐんによって上海しゃんはい共同きょうどう租界そかいとフランス租界そかいへの爆ばく撃げきが行おこなわれ三さん千せん人にんを超こえる市民しみんが死傷ししょうした^[28]。8月がつ15日にちに蔣介石せきが陸海空りくかいくうの総そう司令しれい官かんに就任しゅうにんし中国ちゅうごく全国ぜんこくに総動員そうどういん令れいが発はっせられ^[29]、日本にっぽんでは上海しゃんはい派遣はけん軍ぐんが編成へんせいされ、ついに日本にっぽん陸海りくかい軍ぐん将兵しょうへいに死者ししゃ9,115名めい、負傷ふしょう者しゃ31,257名めいを出だすことになる第だい二に次じ上海しゃんはい事変じへんが勃発ぼっぱつした^[29]。

参考さんこう文献ぶんけん

^ ^a ^b ^c “中山なかやま一等いっとう兵へい射殺しゃさつ事件じけんの主犯しゅはんら四よん名めい逮捕たいほ背後はいごに意外いがいな人物じんぶつ? わが上海しゃんはい出先でさき官憲かんけんの努力どりょく”. 大阪毎日新聞おおさかまいにちしんぶん. 神戸大学こうべだいがく (1936年ねん4月がつ17日にち). 2011年ねん10月がつ8日にち閲覧えつらん。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h “中山なかやま兵曹へいそう射殺しゃさつ事件じけんの真相しんそう "蔣政権せいけん打倒だとう" 目めざす同義どうぎ協会きょうかいの抗日こうにち沙汰ざた首魁しゅかいは楊文道どう、犯人はんにんは楊海生せい背後はいご関係かんけいとその動機どうき”. 同盟どうめい通信つうしん,神戸こうべ新聞しんぶん. 神戸大学こうべだいがく (1936年ねん7月がつ13日にち). 2011年ねん10月がつ8日にち閲覧えつらん。
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^ “一切いっさいの対たい支援しえん助すけこの際さい停止ていしの外そとなし暴露ばくろした支ささえ那なの正体しょうたい　外務がいむ当局とうきょく大おおいに憤慨ふんがい英えい支ささえ借款しゃっかん成立せいりつとわ”. 大阪毎日新聞おおさかまいにちしんぶん. 神戸大学こうべだいがく (1935年ねん11月5日にち). 2011年ねん10月がつ14日にち閲覧えつらん。
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^ ^a ^b “居留民きょりゅうみん団長だんちょうらと朗ほがらかな交歓こうかん法人ほうじんの活躍かつやく振ぶりを聴きく上海しゃんはい本社ほんしゃ日び支ささえ国際こくさい電話でんわの第一声だいいっせい”. 大阪おおさか朝日新聞あさひしんぶん. 神戸大学こうべだいがく (1936年ねん2月がつ16日にち). 2011年ねん10月がつ12日にち閲覧えつらん。
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^ 井本いもと熊くま男おとこ『支ささえ那な事変じへん作戦さくせん日誌にっし』芙蓉ふよう書房しょぼう出版しゅっぱん、1998年ねん、54頁ぺーじ。ISBN 4829502215。
^ 渡部わたなべ昇一しょういち『日本にっぽんとシナ:1500年ねんの真実しんじつ』PHP研究所けんきゅうじょ、2006年ねん、222頁ぺーじ。ISBN 4569648576。
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^ ^a ^b 渡部わたなべ昇一しょういち『日本にっぽんとシナ:1500年ねんの真実しんじつ』PHP研究所けんきゅうじょ、2006年ねん、229頁ぺーじ。ISBN 4569648576。

背景はいけい

事件じけん経過けいか

参考さんこう文献ぶんけん

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