主権しゅけん国家こっか体制たいせい

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主権しゅけん国家こっか体制たいせいしゅけんこっかたいせい: civitas sui iuris)は、近代きんだい世界せかい秩序ちつじょ基本きほんてき枠組わくぐみのひとつ。国家こっかありかた世界せかい秩序ちつじょ中世ちゅうせいにおける普遍ふへんてき世界せかい崩壊ほうかいともなって16世紀せいき - 18世紀せいきヨーロッパ形成けいせいされた。

概要がいよう[編集へんしゅう]

かくくに個別こべつせいおよび領域りょういき支配しはい前提ぜんていとし、ローマ教皇きょうこう神聖しんせいローマ皇帝こうていではなく、君主くんしゅないし共和きょうわこく主権しゅけん最高さいこう絶対ぜったい存在そんざいとされる。

えいふつあいだたたかわれたひゃくねん戦争せんそうおよびドイツ舞台ぶたいひろげられたさんじゅうねん戦争せんそうつうじて形成けいせいされ、りょう戦争せんそうによって近代きんだい国家こっかのかたちがととのえられていった。これが1、2箇所かしょ出現しゅつげんするのではなく、しょ国家こっかのシステムとしてヨーロッパ全域ぜんいき成立せいりつしたてん重要じゅうようである。

このシステムは、18世紀せいき - 19世紀せいきつうじて世界せかいてき拡大かくだいし、現代げんだい基本きほんてき踏襲とうしゅうされている世界せかい政治せいじシステムである。

主権しゅけん国家こっか体制たいせい特徴とくちょう[編集へんしゅう]

近代きんだい世界せかい秩序ちつじょ基本きほんてき枠組わくぐみである主権しゅけん国家こっか体制たいせいは、

  1. 国家こっか政府せいふ優越ゆうえつするような権威けんい国内こくないにも国外こくがいにも存在そんざいせず、
  2. 国家こっかあいだ関係かんけい基本きほんてきアナーキーであると想定そうていされ、
  3. 治安ちあん維持いじにな警察けいさつ安全あんぜん保障ほしょう防衛ぼうえいになぐんなど暴力ぼうりょく装置そうち」を独占どくせんしたしょ国家こっかがたがいに対峙たいじし、
  4. 各国かっこく国民こくみん経済けいざい経済けいざいてき自立じりつせい確立かくりつ)をめざし、
  5. 各国かっこく固有こゆう文化ぶんか価値かちイデオロギー確立かくりつしてきそいあう

というしょ特徴とくちょうをもっている。このシステムの基礎きそは、後述こうじゅつするように16世紀せいきから17世紀せいきにかけてのヨーロッパ確立かくりつされたが、世界せかい一体化いったいかて、世界せかい問題もんだいばれる問題もんだいぐん登場とうじょうによって、今日きょう変容へんようげつつある。

主権しゅけん国家こっか体制たいせい成立せいりつ[編集へんしゅう]

中世ちゅうせいヨーロッパ世界せかいは、社会しゃかいてき地理ちりまとには分散ぶんさんしていながらも、ローマ教会きょうかいかみきよしマ帝国まていこく、そしてラテン語らてんごという普遍ふへんせいによってむすびついていた。それはカール大帝たいてい時代じだいまでさかのぼるが、中世ちゅうせいまつからは国王こくおうけん確立かくりつ国境こっきょう関税かんぜいというかんがかたあらわれる領域りょういき支配しはいによる個別こべつ国家こっか出現しゅつげん相次あいついだ。また、16世紀せいき以降いこうマルティン・ルターフルドリッヒ・ツヴィングリジャン・カルヴァンなどによる宗教しゅうきょう改革かいかく、そしてイングランド国教こっきょうかいなどの成立せいりつなどによってローマ教会きょうかい相容あいいれない教会きょうかいおよび国家こっかがそれぞれの個別こべつせい主張しゅちょうし、おりからのルネサンス人間にんげん中心ちゅうしん主義しゅぎ影響えいきょうもあって、日常にちじょうとしての国語こくご確立かくりつしてきた。また、オスマン帝国ていこくつよもりは、ハプスブルクはじめヨーロッパしょ勢力せいりょくによる不断ふだん外交がいこう交渉こうしょう余儀よぎなくし、さらにドイツを荒廃こうはいきょくおとしいれたさんじゅうねん戦争せんそうはヨーロッパ各国かっこく参戦さんせん介入かいにゅうすることとなって、たがいに外交がいこう使節しせつ交換こうかんして条件じょうけん明示めいじしながらやく同盟どうめいむす外交がいこう慣例かんれいをしだいに形成けいせいしていった。さんじゅうねん戦争せんそうヴェストファーレン条約じょうやくでは、オランダ(ネーデルラント連邦れんぽう共和きょうわこく)とスイス連邦れんぽう独立どくりつみとめられ、各国かっこく国家こっか主権しゅけん独立どくりつ主権しゅけん対等たいとうなど現代げんだい国際こくさいほうしょ原則げんそくまれた。ここで確立かくりつした主権しゅけん国家こっか体制たいせいは、かく主権しゅけん国家こっか一定いってい領域りょういきにたいして排他はいたてき公権力こうけんりょく行使こうしし、そのことをたがいに承認しょうにんすることによって成立せいりつした世界せかい秩序ちつじょであった。

主権しゅけん国家こっか体制たいせい変容へんよう[編集へんしゅう]

主権しゅけん国家こっか体制たいせいは、以上いじょうのようにヨーロッパを中心ちゅうしん形成けいせいされてきたが、ヨーロッパを舞台ぶたいにしただいいち世界せかい大戦たいせん契機けいき変質へんしつをはじめることとなった。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 高沢たかさわ紀恵きえ主権しゅけん国家こっか体制たいせい成立せいりつ山川やまかわ出版しゅっぱんしゃ世界せかいリブレット 1997/12/1
  • 小川おがわ浩之ひろゆき板橋いたばしたくおのれ青野あおの利彦としひこ国際こくさい政治せいじ -- 主権しゅけん国家こっか体系たいけいのあゆみ」有斐閣ゆうひかく2018ねん4がつ,ISBN 978-4-641-15052-2
  • 山影やまかげすすむ編著へんちょ主権しゅけん国家こっか体系たいけい生成せいせいミネルみねるァ書房ぁしょぼう2012ねん3月30にち

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]