乳酸にゅうさんせい閾値

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乳酸にゅうさんせい閾値(にゅうさんせいいきち、えい: lactate threshold, LT)もしくはさん素性すじょう作業さぎょう閾値AT[1]もしくは lactate inflection point(LIP)とは、乳酸にゅうさん血液けつえきなか急激きゅうげきまりはじめる運動うんどう強度きょうどのこと。

概要がいよう[編集へんしゅう]

運動うんどう強度きょうどげると血液けつえき酸性さんせいするには2つ理由りゆうがある。たかATP加水かすい分解ぶんかいレートが筋肉きんにくなか水素すいそイオン放出ほうしゅつし、モノカルボンさん輸送ゆそうたいとも筋肉きんにくから血液けつえき放出ほうしゅつされ、また、炭酸たんさん水素すいそしお血液けつえきちゅう蓄積ちくせきされるからである。コリ回路かいろ参照さんしょう。この現象げんしょう乳酸にゅうさん代謝たいしゃされるよりもはや速度そくど生成せいせいされるときにしょうじる。運動うんどう強度きょうどがLT以下いか場合ばあい筋肉きんにくつくられた乳酸にゅうさん蓄積ちくせきされることなく除去じょきょされる。

運動うんどう強度きょうどげると、血液けつえきちゅう乳酸にゅうさん濃度のうどさん素性すじょう作業さぎょう閾値(AT)もしくはちゅう乳酸にゅうさん蓄積ちくせき開始かいしてんOBLA)に到達とうたつする。また、ちゅう乳酸にゅうさん蓄積ちくせき開始かいしてんちゅう乳酸にゅうさん濃度のうどが4mmol/Lにたっしたてんのことである。

乳酸にゅうさんせい閾値は持久じきゅうりょく競技きょうぎ長距離ちょうきょりはし自転車じてんしゃ水泳すいえい、クロスカントリースキーなど)の運動うんどう強度きょうどめるのに便利べんり指標しひょうである。しかし、個人こじん個人こじんがあるうえ、トレーニングにより変化へんかする。インターバルトレーニングにより、一時いちじてき乳酸にゅうさんせい閾値をえ、回復かいふく乳酸にゅうさんせい閾値以下いかげることができる。

乳酸にゅうさんせい閾値の運動うんどう強度きょうどは、最大さいだい酸素さんそ摂取せっしゅりょう計測けいそくクーパーテストの12分間ふんかんはしなど)でおこなわれる最大さいだい心拍しんぱくすうちかくの運動うんどう強度きょうどよりもかるい。ジャック・ダニエルズによると50〜60分間ふんかんはしにあたる[2]

乳酸にゅうさんせい閾値の計測けいそく[編集へんしゅう]

正確せいかく乳酸にゅうさん計測けいそくするには徐々じょじょ運動うんどう強度きょうどげながら血液けつえき採取さいしゅする必要ひつようがある。吸気きゅうきガスを計測けいそくすることによりおかせかさねてき計測けいそくすることもできる。これは換気かんきせい作業さぎょう閾値(VT)とばれる。

乳酸にゅうさんせい閾値は乳酸にゅうさん蓄積ちくせき開始かいしされるてんとして定義ていぎされているものの、乳酸にゅうさんが 4mmol/ℓ に到達とうたつするてん乳酸にゅうさんせい閾値のとして利用りようする計測けいそくしゃもいる。安静あんせいやく1mmol/ℓである。

ゆうさん素性すじょう作業さぎょう閾値[編集へんしゅう]

ゆうさん素性すじょう作業さぎょう閾値AeT)とは、さん素性すじょうエネルギー経路けいろうごはじめ、乳酸にゅうさんが 2mmol/ℓ に到達とうたつする運動うんどう強度きょうどのこと。さん素性すじょう作業さぎょう閾値よりも心拍しんぱくすうは20〜40ひくく、最大さいだい心拍しんぱくすうの65%程度ていど名前なまえから推測すいそくされるように、さん素性すじょうエネルギーけいは ATP をつくるのに酸素さんそ利用りようせずに、グリコーゲングルコース使用しようする。乳酸にゅうさん筋肉きんにくうごかすのに必要ひつような ATP をつくさい嫌気いやけせい代謝たいしゃ副産物ふくさんぶつである。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

参照さんしょう[編集へんしゅう]

  1. ^ Naimark A., Wasserman K., McIlroy Mb. Continuous measurement of ventilatory exchange ratio exercise. J Appl Physiol 1964; 19: 644-652.
  2. ^ Daniels' Running Formula ISBN 978-1450431835