乾漆かんしつ棺かん

牽牛けんぎゅう子こ塚づか古墳こふん出土しゅつどの夾紵棺かん
（明日香あすか村むら埋蔵まいぞう文化財ぶんかざい展示てんじ室しつ）

乾漆かんしつ棺かん（かんしつかん）とは、夾紵（きょうちょ、麻布まふ）を漆うるしで貼はり重かさねる技法ぎほうによって作つくられた棺かんの一種いっしゅである。夾紵棺かんとも言いう。 乾漆かんしつ棺かんには麻布まふを幾重いくえにも貼はり重かさねて形成けいせいした脱だつ活かつ乾漆かんしつ棺かんと、木き棺かんに布ぬのを漆うるしで塗ぬり固がためた木き心こころ乾漆かんしつ棺かんの2種類しゅるいがある。

ごく一部いちぶの終末しゅうまつ期き古墳こふんにみられ、当時とうじ最さい高級こうきゅうの棺かんとして貴人きじんの葬送そうそうに用もちいられたと考かんがえられる。

乾漆かんしつ棺かんが出土しゅつどした古墳こふん

乾漆かんしつ棺かんの出土しゅつど例れいは極きわめて少すくない。いずれも被葬ひそう者しゃは皇族こうぞくをはじめとする貴人きじんが想定そうていされている。

• 八幡山はちまんやま古墳こふん（埼玉さいたま県けん行田ぎょうだ市し、物部ものべ連れん兄けい麿まろ？）
• マルコ山やま古墳こふん（奈良なら県けん高市たかいち郡ぐん明日香あすか村むら、川島かわしま皇子おうじ？）
• 牽牛けんぎゅう子こ塚づか古墳こふん（奈良なら県けん高市たかいち郡ぐん明日香あすか村むら、斉ひとし明天めいてん皇すめらぎ？）
• 越塚こしづか御門みかど古墳こふん（奈良なら県けん高市たかいち郡ぐん明日香あすか村むら、大田おおた皇女おうじょ？）
• 野口のぐち王おう墓はか（奈良なら県けん高市たかいち郡ぐん明日香あすか村むら、天武天皇てんむてんのう）
• 高こう松塚まつづか古墳こふん（奈良なら県けん高市たかいち郡ぐん明日香あすか村むら、天武天皇てんむてんのう皇子おうじ？）
• 阿武山あぶさん古墳こふん（大阪おおさか府ふ高槻たかつき市し、中臣鎌足なかとみのかまたり？）
• 叡あきら福ぶく寺てら北きた古墳こふん（大阪おおさか府ふ南河内みなみかわち郡ぐん太子たいし町まち、聖徳太子しょうとくたいし・膳部ぜんぶ菩岐々美郎よしろう女おんな？）

大阪おおさか府ふ柏原かしわばら市しの安福やすふく寺てらには、夾紵棺かんの一部いちぶが所蔵しょぞうされているが、同どう寺てら周辺しゅうへんには終末しゅうまつ期き古墳こふんがないため、叡あきら福ぶく寺てら北きた古墳こふんから出土しゅつどした棺かんの一部いちぶである可能かのう性せいが指摘してきされている。柏原かしわばら市し指定してい文化財ぶんかざい。

• 
  安福やすふく寺てら所蔵しょぞう 夾紵棺かん片へん
  柏原かしわばら市立しりつ歴史れきし資料しりょう館かん企画きかく展示てんじ時じに撮影さつえい。

参考さんこう文献ぶんけん

• 大塚おおつか初はつ重じゅう・戸沢とざわ充たかし則のり（編集へんしゅう）『最新さいしん日本にっぽん考古学こうこがく用語ようご辞典じてん』新しん創そう社しゃ、1996年ねん6月がつ、74頁ぺーじ
• 田村たむら晃一こういち・合田あいだ芳正よしまさ（監修かんしゅう）『考古学こうこがく探訪たんぼうの基礎きそ用語ようご』山川やまかわ出版しゅっぱん社しゃ、2000年ねん7月がつ、27頁ぺーじ

関連かんれん項目こうもく

• 乾漆かんしつ造づくり
• 木き棺かん
• 石棺せっかん