石棺せっかん

石棺せっかん（せっかん、せきかん、英えい: stone coffinあるいはsarcophagus）は、石材せきざいで造つくられた棺かん。

当とう記事きじでは世界せかい各地かくちの石棺せっかんについて解説かいせつする。

概説がいせつ

世界せかい各地かくちで、さまざまな時代じだいで、石棺せっかんは用もちいられている。

たとえば古代こだいエジプト、古代こだいギリシア、古代こだいローマ（ロろーマ帝国まていこく）、中世ちゅうせいヨーロッパで用もちいられている。

古代こだいエジプトのエジプト新しん王国おうこく時代じだいにはファラオが石棺せっかんに入いれて埋葬まいそうされていたことが知しられている。

「アレキサンダー大王だいおうの石棺せっかん」は、現在げんざいはトルコのイスタンブール考古学こうこがく博物館はくぶつかんに（実物じつぶつが）展示てんじされている。

現代げんだいでもバチカンでは教皇きょうこうが亡なくなればその遺体いたいは木製もくせいの棺かんに入いれた上うえで石棺せっかんに納おさめる。

なお古代こだいエジプト、古代こだいギリシア、古代こだいローマなどの石棺せっかんがサルコファガスと呼よばれている。（つまり「古代こだいエジプトのもの(だけ)をサルコファガスと呼よぶ」という主張しゅちょうは誤あやまりである。）

中東ちゅうとうの地ちにあった古代こだい遺跡いせきからは多おおくの石棺せっかんが発掘はっくつされてきた歴史れきしがある。たとえばバビロニアの王おうたちの墓はかからは石棺せっかんが出土しゅつどしている。

フェニキアの地ちからは、紀元前きげんぜん850年ねんごろのものと推定すいていされているアヒラム王おうの石棺せっかんも見みつかっている。

また東ひがしアジアではカンボジア、中国ちゅうごく、朝鮮半島ちょうせんはんとう、日本にっぽんなどの権力けんりょく者しゃによって石棺せっかんは用もちいられた。古代こだいの中国ちゅうごく・朝鮮半島ちょうせんはんとう・日本にっぽんはいわばひとつの文化ぶんか圏けんであり、それらの石棺せっかんには影響えいきょう関係かんけいが認みとめられる。

アメリカ大陸あめりかたいりくではメソアメリカ文化ぶんかで石棺せっかんが用もちいられた。ペルーのカラヒア遺跡いせきからは、人ひと型がた石棺せっかん（en:Sarcophagi_of_Carajía）が見みつかった。マヤ文明ぶんめいのパレンケの地下ちか遺跡いせきでも石棺せっかんが発見はっけんされている。

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  アヒラム王おうの石棺せっかん
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  イギリス、ノース・ヨークシャーの土中どちゅうから掘ほり出だされた石棺せっかん（1901年ねん）
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  All Saints' churchの教会堂きょうかいどうの外そとに（無造作むぞうさに）放置ほうちされている中世ちゅうせいの石棺せっかん。
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  晋すすむ (王朝おうちょう)時代じだいの石棺せっかん
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  北きた魏たかしの石棺せっかん（河南かなん博物館はくぶつかん展示てんじ品ひん）。

もともとは彫刻ちょうこくなどで装飾そうしょくをほどこされたものを特とくにsarcophagusサルコファガスと呼よんでいたが、彫刻ちょうこくをほどこしていない質素しっそな石棺せっかんも「sarcophagusサルコファガス」と呼よばれることが増ふえている。

日本にっぽんの石棺せっかん

本節ほんぶし内ないでは、古代こだい日本にっぽんにおける石棺せっかんについて説明せつめいする。

前ぜん塚づか古墳こふん出土しゅつど 長持ながもち形がた石棺せっかん

大阪おおさか府立ふりつ近ちかつ飛鳥あすか博物館はくぶつかん展示てんじ。

棺かんには、石棺せっかんの他ほかに壺つぼ棺かん・甕う棺かん・木き棺かん・陶すえ棺かん・乾漆かんしつ棺かんなどがある。
そのうち石棺せっかんは最もっとも堅牢けんろうで密閉みっぺい性せいに優すぐれ、遺骸いがいの保存ほぞんに適てきしている。 縄文じょうもん・弥生やよい・古墳こふんの各かく時代じだいに造つくられ使用しようされた。

石棺せっかんには、天然てんねんの扁平へんぺいな石いしを組くみ合あわせただけのやや小型こがたの箱はこ式しき石棺せっかんと、石材せきざいを加工かこうした大型おおがたの石棺せっかんとに分類ぶんるいすることができる。
箱はこ式しき石棺せっかんは大陸たいりくでも見みられ、縄文じょうもん時代じだい後期こうきに東日本ひがしにっぽんで広ひろがったものと弥生やよい時代じだい初期しょきに稲作いなさくとともに北九州きたきゅうしゅうに渡来とらいしたものがある。

大型おおがたの石棺せっかんは弥生やよい時代じだいにも散見さんけんされるものの、主おもには古墳こふん時代じだいの特色とくしょくとされている。
大型おおがたの石棺せっかんには、石材せきざいを刳くり抜ぬいたものと組くみ合あわせたものがある。刳く抜式の割わり竹ちく形がた石棺せっかん・舟形ふながた石棺せっかんが4世紀せいき後半こうはんに現あらわれた。

5世紀せいきには組合くみあい式しきの長持ながもち形がた石棺せっかんが近畿きんき中央ちゅうおう部ぶを中心ちゅうしんに広ひろがり、中部ちゅうぶ九州きゅうしゅうや山陰さんいん・北陸ほくりく・関東かんとうなどでは舟形ふながた石棺せっかんが発達はったつした。
6世紀せいきには、近畿きんき・九州きゅうしゅう・山陽さんよう・山陰さんいん・東海とうかい・関東かんとうの一部いちぶに、地方ちほうの特色とくしょくを備そなえた独自どくじの刳く抜式や組合くみあい式しきの家いえ形がた石棺せっかんが盛さかんに用もちいられ、7世紀せいきに入はいっても一部いちぶで継続けいぞくして使用しようされた。

縄文じょうもん時代じだいの石棺せっかん 秋田あきた県けん北秋田きたあきた郡ぐん田代たしろ町まち本郷ほんごう矢や石せき館かん遺跡いせきで5基き発見はっけんされている。石棺せっかんを包含ほうがんする土ど層そうと周辺しゅうへんから出土しゅつどした土器どきから、これらは晩期ばんきのもと推定すいていされている。青森あおもり県けん久原くはら山野さんや峠とうげ遺跡いせきでは6基き発見はっけんされている。

弥生やよい時代じだいの石棺せっかん

• 箱はこ式しき石棺せっかんが発達はったつした。

古墳こふん時代じだいの石棺せっかん

• 割わり竹ちく形がた石棺せっかん（わりだけがたせっかん）割わり竹ちく形木かたぎ棺かんを真似まねて造つくられた石棺せっかん。
• 舟形ふながた石棺せっかん（ふながたせっかん）蓋ぶた・身みともに刳くり抜ぬき式しきで、割わり竹ちく形がた石棺せっかんの変容へんよう形がたとも解ほぐされている。
• 長持ながもち形がた石棺せっかん（ながもちがたせっかん）長ながさ2 - 3メートルで、身みは箱はこ形がたの組合くみあい式しき。
• 家いえ形がた石棺せっかん（いえがたせっかん）身みは箱はこ形がたで、蓋ぶたは屋根やね形がたをしている。

日本にっぽんの節ふしの参考さんこう文献ぶんけん

• 江坂えさか輝てる彌わたる・芹沢せりざわ長介ちょうすけ・坂さか詰つめ秀一ひでかず編へん『新しん日本にっぽん考古学こうこがく小しょう辞典じてん』ニュー・サイエンス社しゃ 2005年ねん ISBN 4-8216-0511-2
• 斎藤さいとう忠ただし『日本にっぽん考古学こうこがく用語ようご辞典じてん 改訂かいてい新版しんぱん』学生がくせい社しゃ 2004年ねん ISBN 978-4-311-75033-5
• 田中たなか琢みがく・佐原さはら真しん編へん『日本にっぽん考古学こうこがく事典じてん』三省堂さんせいどう 2003年ねん ISBN 978-4-385-15835-8
• 永原ながはら慶けい二に監修かんしゅう 石上いしがみ英一ひでかず他た編集へんしゅう『岩波いわなみ 日本にっぽん史し辞典じてん』岩波書店いわなみしょてん 1999年ねん ISBN 978-4-00-080093-8

日本にっぽんの節ふしの関連かんれん項目こうもく

• 古墳こふん
• 石棺せっかん墓ぼ
• 木き棺かん墓はか
• 石棺せっかん式しき石室いしむろ