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交響曲第5番 (ブルックナー) - Wikipedia コンテンツにスキップ

交響こうきょうきょくだい5ばん (ブルックナー)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

交響こうきょうきょくだい5ばん へん長調ちょうちょう(こうきょうきょくだい5ばん へんろちょうちょう)WAB.105は、アントン・ブルックナー作曲さっきょくした交響曲こうきょうきょくひとつ。

概要がいよう[編集へんしゅう]

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全曲ぜんきょく試聴しちょうする
1986ねん収録しゅうろく1998ねん収録しゅうろく
いずれもギュンター・ヴァント指揮しききたドイツ放送ほうそう交響こうきょう楽団がくだんによる演奏えんそう。NDRエルプフィルハーモニー管弦楽かんげんがくだん公式こうしきYouTube。
Bruckner: Symphony No.5 in B-flat major, WAB105 (Nowak edition) - 小泉こいずみ和裕かずひろ指揮しき東京とうきょう交響こうきょう楽団がくだんによる演奏えんそう東京とうきょう交響こうきょう楽団がくだん公式こうしきYouTube。

ブルックナーがのこしたぜん交響こうきょうきょくなかで、このだい5ばん生涯しょうがい後期こうきげられただい8ばんならんで規模きぼおおきな部類ぶるいはい[1]

特徴とくちょうとして、対位法たいいほう技法ぎほう活用かつようされており、おとよこながれを多層たそうてきかさね、あたかも壮大そうだいおとだい伽藍がらんをきずきあげるかのごとくの作風さくふうとなっていることがげられる。また、コラール主題しゅだい象徴しょうちょうてきもちいるということもされており、これらによって、とう楽曲がっきょく根本こんぽん宗教しゅうきょうてき意味合いみあいやかみへの畏敬いけいねん存在そんざいすると解釈かいしゃくされている。くわえて循環じゅんかん手法しゅほうにより全曲ぜんきょく論理ろんりてきながれをフィナーレのクライマックスに収斂しゅうれんさせるという設計せっけいかた作品さくひん全体ぜんたいされており、すべての事象じしょう絶対ぜったいてき超越ちょうえつてきかみかた信仰しんこう表現ひょうげんしているともかんがえられている[1][2][3]

とう楽曲がっきょくは、ブルックナーがのこした交響こうきょうきょくなかではめずらしく、完成かんせいなん改訂かいていかさねるにはいたっていない[4]

作曲さっきょく経緯けいい[編集へんしゅう]

交響こうきょうきょくだい5ばん自筆じひつ(総譜そうふ)・1ページ

のちにブルックナーが生涯しょうがいのこした交響こうきょうきょくなかもっとしたしまれる存在そんざいとなる『だい4ばん「ロマンティック」』のだい1稿こう完成かんせいさせた翌年よくねん、1875ねんの2がつとう楽曲がっきょく作曲さっきょくりかかる[5]。この当時とうじウィーンでその都会とかいてき空気くうき馴染なじめぬなかしょくさがしをおこなったり、はんワーグナーかかげる音楽おんがく評論ひょうろんエドゥアルト・ハンスリック冷遇れいぐうされたりするなど、経済けいざいてき困窮こんきゅう精神せいしんてきにもんでいたが、それがかえって創作そうさく意欲いよくたかめていたようで、同年どうねん6がつまでに3つの楽章がくしょうげ、つづけておわり楽章がくしょう作曲さっきょく着手ちゃくしゅしている[1][3][6]

作曲さっきょく開始かいしから1ねんあまった1876ねん5がつ全曲ぜんきょくいちおうかたち仕上しあげるも、そこからまる1ねん経過けいかした1877ねん5がつ再度さいど推敲すいこう開始かいし[5]。このさい推敲すいこうではすうおおくの改訂かいていされたが、そのさいチューバ必要ひつよう楽器がっき編成へんせいひとつとして追加ついかしている[5]。このこころみはかれ交響こうきょうきょくいてははじめてのこころみとなった。そして最終さいしゅうてきに1878ねん1がつ4にち完成かんせいとなった[1][5]

作品さくひん自体じたい完成かんせいするも、なかなか初演しょえん機会きかいめぐまれず、完成かんせいから16ねんあまった1894ねん4がつ9にちになってようやく、グラーツいて弟子でしフランツ・シャルク指揮しきにより初演しょえんされたものの、とうのブルックナー自身じしん老年ろうねんはいっていて病弱びょうじゃくだったためうことが出来できなかった[5]。またこのときのシャルク指揮しきによる初演しょえんでは、その2ねんの1896ねんにドブリンガーしゃから出版しゅっぱんされたときしかりであるが、「時流じりゅうわせてわかりやすくする」という理由りゆうで、きょくひびきをオリジナルスコアからまった改変かいへんさせてしまうほどの改訂かいていおこなっている(後述こうじゅつ[1][4][3][5]

とう楽曲がっきょくは、当初とうしょ完成かんせいから10ヶ月かげつとなる1878ねん11月4にちオーストリア=ハンガリー帝国ていこく文部もんぶ大臣だいじんカール・リッター・フォン・シュトレマイヤーに献呈けんていされている。この背景はいけいとして、作曲さっきょくりかかる7ねんまえの1868ねんにウィーン音楽おんがくいん教授きょうじゅ着任ちゃくにんしてから、ブルックナー自身じしん生活せいかつ水準すいじゅんけっしてわるくなかったにもかかわらず、創作そうさく時間じかんいという不安ふあんから執拗しつようなまでに助成じょせいきん援助えんじょ要職ようしょくへの任命にんめい懇願こんがん同国どうこく文部省もんぶしょうっていたことがある。なおこのブルックナー着任ちゃくにん当時とうじ、ウィーンにいては作曲さっきょくとして無名むめい存在そんざいであり、音楽おんがく院内いんないではかならずしも優遇ゆうぐうされていたわけではなかった[7]

初演しょえん[編集へんしゅう]

演奏えんそう時間じかん[編集へんしゅう]

やく78ふん(カットしの原典げんてんばんかく21ふん、18ふん、14ふん、25ぶん割合わりあい)。

楽器がっき編成へんせい[編集へんしゅう]

フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、バス・チューバティンパニ(3)、つる

楽曲がっきょく解説かいせつ[編集へんしゅう]

だい1楽章がくしょう[編集へんしゅう]

Introduktion: Adagio - Allegro序奏じょそう:アダージョ - アレグロ)

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だい1楽章がくしょう
Introduktion: Adagio - Allegro
Bruckner Orchestra Sydney(The Musician Project Orchestra) - Max McBride指揮しきMusician Project公式こうしきYouTube。

へん長調ちょうちょう、2ぶんの2拍子ひょうし序奏じょそうソナタ形式けいしき序奏じょそうはこのきょく全体ぜんたいげん旋律せんりつであるていつるのピッツィカートではじまる。ヴィオラヴァイオリン弱音よわねはいってくると、突如とつじょとして金管きんかんのコラールががる[5]律動りつどうてきになって高揚こうようし、おさまったところで主部しゅぶにはいる。こうつるのトレモロのなかをヴィオラとチェロ特徴とくちょうてきなリズムのだい1主題しゅだいす。この主題しゅだいぜん管弦楽かんげんがくられ、魅惑みわくてき転調てんちょうせる。ヘ短調たんちょうはじまるだい2主題しゅだいつるによるややしずんだ表情ひょうじょうのものでつる5のピッツィカートによりおごそかにはじまり、だい1ヴァイオリンが呼応こおうする。つづだい3主題しゅだい管楽器かんがっきびやか旋律せんりつ中心ちゅうしんすすんでゆき、次第しだい曲想きょくそうがりへん長調ちょうちょう頂点ちょうてんたっするが、急速きゅうそくしずまる。ホルンのとおくかららされるようなひびきをのこしながら、ごくしずかにつるのトレモロとともに提示ていじじる。展開てんかいはホルンとフルートの対話たいわはじまり、まもなく導入どうにゅう回帰かいきする。だい1主題しゅだいはいってきて発展はってんし、だい2主題しゅだい要素ようそよわおとかさなる。金管きんかんのコラールがひびき、再現さいげん導入どうにゅうする。再現さいげん主題しゅだい順番じゅんばんどおり再現さいげんされるが、全体ぜんたいてき圧縮あっしゅくされている。コーダにはいると、導入どうにゅうていつるのモティーフがかえされてだい1主題しゅだい高揚こうようし、かがやかしく楽章がくしょうじる。

だい2楽章がくしょう[編集へんしゅう]

Adagio. Sehr langsam(アダージョ、非常ひじょうにゆっくりと。)

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だい2楽章がくしょう
Adagio. Sehr langsam
Bruckner Orchestra Sydney(The Musician Project Orchestra) - Max McBride指揮しき。Musician Project公式こうしきYouTube。

短調たんちょう、2ぶんの2拍子ひょうし。A-B-A-B-A-Codaのロンド形式けいしきをとりやはりピチカートではじまる[8]。ただし、各部かくぶ再現さいげんのたびに展開てんかいされる。主部しゅぶつる5さんれんおんのピチカートにってオーボエが物寂ものさびしい主要しゅよう主題しゅだいかなでる[8]。この主題しゅだい全曲ぜんきょく統一とういつするものである。ふく主題しゅだい弦楽げんがく合奏がっそうによるふかおもむきをたたえたコラールふううつくしい旋律せんりつで、「非常ひじょう力強ちからづよく、はっきりと」提示ていじされる[8]。ひとしきり頂点ちょうてんきずくと、ティンパニだけがのこり、主部しゅぶ回帰かいきする。つるの6れんうごきのうえに、管楽器かんがっき主要しゅよう主題しゅだい展開てんかいし、、強弱きょうじゃく急激きゅうげき交換こうかんおこなわれる。ふく主題しゅだい発展はってんてき性格せいかくって再現さいげんされ、だい1ふくとはちがったかたち頂点ちょうてんきずかれる。主部しゅぶふたた回帰かいきし、木管もっかんとホルンにより主要しゅよう主題しゅだいかなでられる。ヴァイオリンの6れんうごきのうえにトランペットやトロンボーンもくわわって高潮こうちょうしてゆく。後半こうはんには3ほんのトロンボーンによるコラールらくあらわれる。この部分ぶぶんだい7交響こうきょうきょくだい2楽章がくしょうだい4交響こうきょうきょくおわり楽章がくしょう最終さいしゅう稿こう彷彿ほうふつさせる。コーダは、主要しゅよう主題しゅだいをホルン、オーボエ、フルートがじゅんそうしてあっさりとわるため、ブルックナーの緩徐かんじょ楽章がくしょうとしては小粒こつぶ印象いんしょうあたえることもある。演奏えんそう時間じかん指揮しきしゃによってやすい楽章がくしょうである。「だい5」作曲さっきょくにあたって最初さいしょかれた楽章がくしょうで、冒頭ぼうとうのオーボエ主題しゅだいは、ぜん楽章がくしょう主要しゅよう主題しゅだい基底きてい素材そざいとなって出現しゅつげんする。

だい3楽章がくしょう [編集へんしゅう]

Scherzo. Molt vivace, Schnell - Trio. Im gleichen Tempo(スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ、急速きゅうそくに、トリオ:(主部しゅぶと)おなじテンポで。)

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だい3楽章がくしょう
Scherzo. Molt vivace, Schnell …
Bruckner Orchestra Sydney(The Musician Project Orchestra) - Max McBride指揮しき。Musician Project公式こうしきYouTube。

短調たんちょう、4ぶんの3拍子ひょうしふくあいさん形式けいしき。スケルツォ主部しゅぶだけでソナタ形式けいしきをとり、アダージョ楽章がくしょう冒頭ぼうとうのピチカートおんがた伴奏ばんそうにせわしなくてるようなだい1主題しゅだいと、ヘ長調ちょうちょうで「Bedeutend langsamer(テンポをかなりとして)」レントラーふうだい2主題しゅだい提示ていじされる。次第しだい高揚こうようしょう結尾けつびとなり、展開てんかいつづく。展開てんかいでは前半ぜんはんだい1主題しゅだい後半こうはんだい2主題しゅだいあつかう。さらに14小節しょうせつのコーダがつづく。中間なかまへん長調ちょうちょう 2/4拍子ひょうし、3形式けいしき。ホルンの嬰ヘおとみちびかれて木管もっかんあいらしい旋律せんりつかなでる。主部しゅぶ再現さいげんかたどおりである。

だい4楽章がくしょう[編集へんしゅう]

Finale. Adagio - Allegro moderato終曲しゅうきょく。アダージョ - アレグロ・モデラート)

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だい4楽章がくしょう
Finale. Adagio - Allegro moderato
Bruckner Orchestra Sydney(The Musician Project Orchestra) - Max McBride指揮しき。Musician Project公式こうしきYouTube。

へん長調ちょうちょう、2ぶんの2拍子ひょうし序奏じょそうきのソナタ形式けいしきフーガまれている。序奏じょそうは、だい1楽章がくしょう序奏じょそう再現さいげんはじまる[8]。クラリネットがフィナーレ主題しゅだい動機どうきそうし、だい1楽章がくしょうだい1主題しゅだいだい2楽章がくしょうだい1主題しゅだい回想かいそうされる[8]。こうした手法しゅほうは、ベートーヴェンだい9交響曲こうきょうきょくのフィナーレにつうじるものがある[9]。そのチェロとコントラバスだい1主題しゅだい決然けつぜんして主部しゅぶはじまり、フーガてき進行しんこうする[9]ぜん休止きゅうしのちだい2ヴァイオリンがスケルツォ楽章がくしょうのレントラー素材そざいもとづくだい2主題しゅだい軽快けいかいす。休止きゅうしのちだい3主題しゅだい力強ちからづよそうされる。だい3主題しゅだいだい1主題しゅだい冒頭ぼうとうおとがたもとづくもので、だい4楽章がくしょう最初さいしょ頂点ちょうてんともうべきクライマックスをきずく。ふたた全休ぜんきゅうどめのち金管きんかん荘重そうちょうなコラールをそうする。展開てんかいでは、コラール主題しゅだいもとづくフーガ、これにだい1主題しゅだいくわわってじゅうフーガとなる。ブルックナーは「カットしてもよい」と練習れんしゅう番号ばんごうダル・セーニョ記号きごうした。ながいプロセスを再現さいげんはじまる。だい1主題しゅだい再現さいげんにもコラール主題しゅだいわさっており、提示ていじくらべてみじかいものとなっている。だい2主題しゅだい比較的ひかくてきかたどおりで、だい3主題しゅだい再現さいげんだい規模きぼなものとなっている。ここではだい1楽章がくしょうだい1主題しゅだいわさり、あたかもコーダであるかのようなクライマックスをきずきあげてく。コーダではフィナーレのだい1主題しゅだい動機どうきにはじまり、だい1楽章がくしょうだい1主題しゅだいかえそうされて発展はってんするうちに、頂点ちょうてんたっしてだい1主題しゅだい力強ちからづよそうされるとコラール主題しゅだいぜん管弦楽かんげんがくつよそうされ、圧倒的あっとうてきなクライマックスを形作かたちづくる。最後さいごだい1楽章がくしょうだい1主題しゅだい全曲ぜんきょくじる。だい規模きぼ長大ちょうだい楽章がくしょうである。

はんについて[編集へんしゅう]

ハースばん・ノヴァークばん[編集へんしゅう]

ブルックナーのふでによるオリジナルに沿った、いわゆる原典げんてんばん楽譜がくふは、ブルックナーの死後しごやく40ねんちか経過けいかした1935ねんロベルト・ハースによる校訂こうていばん出版しゅっぱんされ、いで1951ねんにはレオポルド・ノヴァークによる校訂こうていばん出版しゅっぱんされた。これらりょう校訂こうていばん差異さいについてはほとん問題もんだいにならない程度ていどで、根本こんぽんてき差異さいられない。今日きょう一般いっぱんてきにはノヴァーク校訂こうていばんもちいられている[1][4][7]

シャルク改訂かいていばん[編集へんしゅう]

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シャルクばん演奏えんそうれい
だい1だい2だい3だい4楽章がくしょう
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮しきウィーン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがくだんによる演奏えんそうUniversal Music Group提供ていきょうのYouTubeアートトラック。
だい1だい2だい3だい4楽章がくしょう
レオン・ボットスタイン指揮しきロンドン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがくだんによる演奏えんそう、Universal Music Group提供ていきょうのYouTubeアートトラック。

初演しょえんしゃのフランツ・シャルクは、初演しょえんにブルックナーのスコアに大幅おおはば改訂かいていほどこしている。だい3楽章がくしょうだい4楽章がくしょうおおきくカットし、だい4楽章がくしょうには別働隊べつどうたい金管きんかんシンバルトライアングル補強ほきょうしている。さらに目立めだつのはオーケストレーションの変更へんこうである。シャルクの改訂かいていは、長大ちょうだいかつ難解なんかいなこの交響曲こうきょうきょく普及ふきゅうさせるためという「好意こういてき」な目的もくてきであったと評価ひょうかされることがおおい。しかしながら改訂かいてい内容ないよう自体じたいは、原典げんてんばん管弦楽かんげんがくほうとはいささかことなり構造こうぞうじょう相違そういてんげられる。ブルックナーの生前せいぜん出版しゅっぱんされたしょ楽曲がっきょく(ほとんど弟子でしによる校訂こうてい改訂かいていくわわっているとされる)にくらべると、改訂かいてい度合どあいが極端きょくたんであり、「無残むざん改作かいさく」と悪評あくひょうされることもある。

さきとおり、ブルックナーはこの初演しょえん病気びょうきのために欠席けっせきしている。この欠席けっせきたいしては、シャルクの改訂かいていたいする抗議こうぎ気持きもちがめられていたとの臆説おくせつもある。ブルックナーは生涯しょうがいでこのきょくを(原典げんてんばんにせよ改訂かいていばんにせよ)実際じっさいみみにすることはなかった。

シャルクによる改訂かいていばん1896ねん(ブルックナーのとし)に出版しゅっぱんされ、ハース校訂こうていによるだいいち全集ぜんしゅうハースばん)が出版しゅっぱんされるまではほとんど唯一ゆいいつのスコアとして演奏えんそうされていた。録音ろくおんではハンス・クナッパーツブッシュ指揮しきしたものが有名ゆうめいである。ハースばん出版しゅっぱんも1950年代ねんだいまでは、アメリカ中心ちゅうしんに、このシャルクばん演奏えんそうされていたが、1970年代ねんだい以降いこうはほとんど使つかわれなくなった。

近年きんねんになって、弟子でしたちがブルックナーのスコアにほどこした改訂かいていさい評価ひょうかするうごきがでてきている。この交響こうきょうきょくだい5ばんのシャルク改訂かいていばんについても同様どうようで、シャルク改訂かいていばん採用さいようした新規しんき録音ろくおんとしては以下いかのものがある。

ブルックナー研究けんきゅうしゃベンジャミン・コーストヴェットフランス語ふらんすごばんは、上記じょうきボットスタインのCDのリーフレットに、つぎのような考察こうさつせている。

  • ハースによる原典げんてんばん出版しゅっぱんされたさい初版しょはんぐんを「ブルックナーの意図いとはんするかいざん」とひょうする宣伝せんでんひろおこなわれた。これには、当時とうじ政治せいじてき背景はいけいがあったので、いまとなっては見直みなおしが必要ひつようである。実際じっさいだい4交響こうきょうきょくだい3稿こうは、資料しりょうさい吟味ぎんみにより、ブルックナーが正当せいとうせいあたえていたと判断はんだんされる。
  • このだい5交響こうきょうきょくについては、ブルックナーが正当せいとうせいあたえたとの判断はんだんむずかしい。とはいえ、資料しりょうさい吟味ぎんみで、以下いか事実じじつあきらかになった。シャルクがこのきょく編曲へんきょく着手ちゃくしゅしたさい、ブルックナーはシャルクにスコアを提供ていきょうした。作曲さっきょくしゃ編曲へんきょく完成かんせいっていたが、完成かんせいおそかった。シャルクのおとうとに、編曲へんきょく作業さぎょうおそさを心配しんぱいする手紙てがみせたこともあった。編曲へんきょく完成かんせいしたとき作曲さっきょくしゃ病気びょうきおもく、初演しょえんえなかった。だい2楽章がくしょう終結しゅうけつ木管もっかん旋律せんりつ変更へんこうはブルックナーのアイデアである。おわり楽章がくしょう金管楽器きんかんがっき増強ぞうきょうについては、ブルックナーが承諾しょうだくしたアイデアである。
  • シャルクは後年こうねん、この編曲へんきょくについて「ブルックナーが正当せいとうせいあたえたもの」とかたった。もっとも、このシャルク発言はつげんたいしては、研究けんきゅうしゃあいだでも評価ひょうかかれる。

オリジナルコンセプツ[編集へんしゅう]

近年きんねん、1876年版ねんばん再現さいげんこころみる研究けんきゅうしゃもいる。その一人ひとり川崎かわさきだかしんは、「オリジナルコンセプツ」としょうし、1876年版ねんばんのスコアを製作せいさくした。これは2008ねん内藤ないとうあきら指揮しき東京とうきょうニューシティ管弦楽かんげんがくだんにより演奏えんそうされた。

この「オリジナルコンセプツ」にたいする川崎かわさき見解けんかいは、自身じしんのホームページにしるされている[13]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f 寺西てらにし基之もとゆき (2023ねん6がつ26にち). “だい978かい定期ていき演奏えんそうかいBシリーズ”. 東京とうきょう交響こうきょう楽団がくだん. 2023ねん7がつ2にち閲覧えつらん。 “だい978かい定期ていき演奏えんそうかいBシリーズ当該とうがい公演こうえん案内あんないページない曲目きょくもく解説かいせつ閲覧えつらんのためのリンクゆう
  2. ^ 山野やまの雄大たけひろ (2022ねん5がつ20日はつか). “次回じかい定期ていき演奏えんそうかいをちょっと予習よしゅう”. セントラル愛知あいち交響こうきょう楽団がくだん. 2023ねん7がつ2にち閲覧えつらん。 “過去かこ定期ていき演奏えんそうかい(一覧いちらん)ページないだい189かい定期ていき演奏えんそうかいこうより《解説かいせつしょリンクゆう》”
  3. ^ a b c 柴田しばた克彦かつひこ (2021ねん6がつ16にち). “プログラム・ノート”. だい342かい定期ていき演奏えんそうかい. 東京とうきょうシティ・フィルハーモニック管弦楽かんげんがくだん. 2023ねん7がつ2にち閲覧えつらん。 “だい342かい定期ていき演奏えんそうかい公演こうえん案内あんないページ当該とうがいページない曲目きょくもく解説かいせつふく公演こうえんプログラムへのリンクゆう
  4. ^ a b c 東条とうじょうせきおっと音楽おんがく評論ひょうろん) (2019ねん6がつ21にち). “PROGRAM NOTE (曲目きょくもく解説かいせつ)”. だい116かい定期ていき演奏えんそうかい. 兵庫ひょうご芸術げいじゅつ文化ぶんかセンター管弦楽かんげんがくだん. p. 3. 2023ねん7がつ2にち閲覧えつらん。 “だい116かい定期ていき演奏えんそうかい公演こうえん案内あんないページ当該とうがいページない曲目きょくもく解説かいせつふく公演こうえんプログラムへのリンクゆう
  5. ^ a b c d e f g 根岸ねぎし 2006, p. 201.
  6. ^ 稲田いなだ隆之たかゆき (2014ねん11月12にち). “楽曲がっきょく解説かいせつ”. 東京とうきょうフィルハーモニー交響こうきょう楽団がくだん. pp. 2-3. 2023ねん7がつ2にち閲覧えつらん。 “だい854かいサントリー定期ていきシリーズ』公演こうえん案内あんない当該とうがいページない楽曲がっきょく解説かいせつしょへのリンクゆう
  7. ^ a b 土田つちたきょう四郎しろう(テューバ). “ブルックナー:交響こうきょうきょくだい5ばんしんのブルックナー:厳格げんかく技法ぎほうとファンタジーの融合ゆうごう”. しん交響こうきょう楽団がくだん(アマチュア). 2023ねん7がつ2にち閲覧えつらん
  8. ^ a b c d e 根岸ねぎし 2006, p. 202.
  9. ^ a b 根岸ねぎし 2006, p. 203.
  10. ^ Richard Osborne. “Review: Bruckner Symphony No 5 (Schalk Edition: 1894)”. Gramophone. 2021ねん4がつ14にち閲覧えつらん
  11. ^ 韓国かんこくのブルックナー、マーラーの権威けんいイム・ホンジョンのブルックナー:交響曲こうきょうきょく全集ぜんしゅう”. タワーレコード (2024ねん1がつ10日とおか). 2021ねん4がつ14にち閲覧えつらん
  12. ^ ブルックナー:交響こうきょうきょくだい5ばん へん長調ちょうちょう WAB105(シャルクばん”. キングインターナショナル. 2021ねん4がつ14にち閲覧えつらん
  13. ^ 雑談ざつだんコーナー - 音楽おんがくつぼ
  14. ^ John F. Berky. “Jack White: The White Stripes: Seven Nation Army”. abruckner.com. 2021ねん6がつ3にち閲覧えつらん
  15. ^ Helen Brown (2017ねん9がつ12にち). “The story behind 'Seven Nation Army', an anthem of the World Cup football terraces”. Financial Times. 2021ねん6がつ3にち閲覧えつらん
  16. ^ Tom Taylor (2021ねん5がつ12にち). “From The Beatles to Led Zeppelin: 10 iconic tracks inspired by classical composers”. Far Out Magazine. 2021ねん6がつ3にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 根岸ねぎし一美かずみ『ブルックナー 作曲さっきょくにん作品さくひん音楽之友社おんがくのともしゃ、2006ねん 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]