人格じんかくけん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

人格じんかくけんじんかくけんとは、個人こじん人格じんかくてき利益りえき保護ほごするための権利けんりのこと。

概要がいよう[編集へんしゅう]

基本きほんてき人権じんけんひとつとも理解りかいされているが、人格じんかくけん本来ほんらい私法しほうじょう権利けんりでありわたし人間にんげん適用てきようされる。

民法みんぽう刑法けいほう名誉めいよ毀損きそん行為こうい法的ほうてき責任せきにん対象たいしょうとなる実質じっしつてき根拠こんきょ人格じんかくけんもとめられる。

民法みんぽう占有せんゆう訴権そけん解釈かいしゃくろんにおいて物権ぶっけんてき請求せいきゅうけんみとめられ、その効果こうかとして差止さしどめ請求せいきゅうけん解釈かいしゃくじょうみとめられているが、これに類似るいじしたものとして「人格じんかくけんもとづく差止さしとめ請求せいきゅうけん」としょうするものがみとめられてある。人格じんかくけんもとづく差止さしとめ請求せいきゅうは、不法ふほう行為こういもとづく差止さしどめ請求せいきゅうけんよりも、人格じんかくけん侵害しんがいという見地けんちにおいて不法ふほうせいおおきく、それを放置ほうちすることが社会しゃかい正義せいぎらして許容きょようされないレベルの場合ばあいにしかみとめられない。侵害しんがいしゃ故意こいまた過失かしつについて立証りっしょうできないことを理由りゆうとして放置ほうちすることが、社会しゃかい正義せいぎらして許容きょようできないレベルのものにたいしてみとめられるものであるため、通常つうじょう不法ふほう行為こういもとづく差止さしとめ請求せいきゅうけんことなり、侵害しんがいしゃ故意こいまた過失かしつについて立証りっしょう責任せきにんようしない。人格じんかくけんもとづく差止さしとめ請求せいきゅうは、基本きほんてき根拠こんきょ規定きてい不法ふほう行為こういもとづく差止さしとめ請求せいきゅうであるが、人格じんかくけん侵害しんがいという見地けんちにおいて特別とくべつ重大じゅうだい不法ふほう行為こういにおいては、権利けんり濫用らんよう信義しんぎそく法理ほうりによって、通常つうじょう不法ふほう行為こういもとづく差止さしとめ請求せいきゅうとはことなるあつかいとなるのである。

根拠こんきょ規定きてい[編集へんしゅう]

日本にっぽん実定法じっていほうにおいて、人格じんかくけん明文めいぶん規定きてい存在そんざいせず、日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい13じょう幸福こうふく追求ついきゅうけん)を根拠こんきょ規定きていとして判例はんれいにより確立かくりつされてきた(不文法ふぶんほう[1][2]

最高裁さいこうさいにおいては1986ねん北方ほっぽうジャーナル事件じけんにおいて人格じんかくけん概念がいねん登場とうじょうしている[3]

人格じんかくけん由来ゆらいする権利けんり[編集へんしゅう]

日本にっぽん実定法じっていほうにおいて、様々さまざまな「人格じんかくけんいち内容ないよう」「人格じんかくてき利益りえき」「人格じんかくけん由来ゆらいする権利けんり」が判例はんれいによって見出みいだされてきた。

以下いか日本にっぽんにおいて判例はんれい確立かくりつされてきた、人格じんかくけんかかわる権利けんり利益りえきいちれいである。※がいものは判例はんれいに「〇〇けん」として明文化めいぶんかされたもの、※きは判例はんれい権利けんり法益ほうえきとして明文化めいぶんかされつつ「◯◯けん」とは呼称こしょうされていないものである。

個人こじん人格じんかく象徴しょうちょう[編集へんしゅう]

個人こじん人格じんかく象徴しょうちょう(こじんのじんかくのしょうちょう)は個人こじん人格じんかくつよむすいたモノである。以下いか人格じんかくてき象徴しょうちょうぶ。

日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい13じょう個人こじん尊厳そんげんさだめ、それを尊重そんちょうするために人格じんかくけんみちびかれる。人格じんかくてき象徴しょうちょう尊重そんちょうされるべき個人こじんしめぎあきらであることから、人格じんかくけん由来ゆらいし、個人こじんはその人格じんかくてき象徴しょうちょうをみだりに利用りようされない権利けんりゆうしている[11]

以下いかは、日本にっぽんにおいて判例はんれい確立かくりつされてきた人格じんかくてき象徴しょうちょういちれいである:

  • 氏名しめい[12]
  • 肖像しょうぞうとう[13]
    • ようぼう・姿態したいようぼうとう
      • ようぼうとう撮影さつえいぶつ[14]
      • ようぼうとうのイラスト[15]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ "従来じゅうらいくににおいて、肖像しょうぞうけんとう人格じんかくけん憲法けんぽう 13 じょう保障ほしょうする幸福こうふく追求ついきゅうけん根拠こんきょ規定きていとされてきた。"あらおか. (2023). こえ人格じんかくけんかんする検討けんとう. Information Network Law Review Vol. 22.
  2. ^ "人格じんかくけん根拠こんきょ憲法けんぽう、とりわけ 13 じょう幸福こうふく追求ついきゅうけんもとめようとする見解けんかい支配しはいてきであり、裁判さいばんれいにおいてもその傾向けいこうあらわれている。" 石井いしい. (2015). 民法みんぽうにおける人格じんかくけん総則そうそくてき地位ちい(3・かん. 茨城大学いばらきだいがく人文学部じんぶんがくぶ紀要きよう 社会しゃかい科学かがく論集ろんしゅう. より引用いんよう
  3. ^ "「北方ほっぽうジャーナル事件じけん」(さいはん昭和しょうわ 61 ねん 6 がつ 11 にち みんしゅう 40 かん 4 ごう 872 ぺーじ)... で人格じんかくけん最高裁さいこうさい判例はんれいじょう最初さいしょ登場とうじょうした。" 石井いしい. (2015). 民法みんぽうにおける人格じんかくけん総則そうそくてき地位ちい(3・かん. 茨城大学いばらきだいがく人文学部じんぶんがくぶ紀要きよう 社会しゃかい科学かがく論集ろんしゅう. より引用いんよう
  4. ^ "名誉めいよ違法いほう侵害しんがいされたものは ... 人格じんかくけんとしての名誉めいよけんもとづき" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (1986). 北方ほっぽうジャーナル事件じけん判決はんけつ. より引用いんよう
  5. ^ "氏名しめいは ... その個人こじんからみれば、ひと個人こじんとして尊重そんちょうされる基礎きそであり、その個人こじん人格じんかく象徴しょうちょうであつて、人格じんかくけんいち内容ないよう構成こうせいするものというべきである" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (1988). 謝罪しゃざい広告こうこくとう請求せいきゅう事件じけん (NHK日本語にほんご訴訟そしょう事件じけん) 判決はんけつ. より引用いんよう
  6. ^ "じんは、他人たにんからその氏名しめい正確せいかく呼称こしょうされることについて、不法ふほう行為こういほうじょう保護ほごけうる人格じんかくてき利益りえきゆうする ... 氏名しめい正確せいかく呼称こしょうされる利益りえき" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (1988). 謝罪しゃざい広告こうこくとう請求せいきゅう事件じけん (NHK日本語にほんご訴訟そしょう事件じけん) 判決はんけつ. より引用いんよう
  7. ^ "氏名しめい他人たにんおかせようされない権利けんり利益りえき" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (1988). 謝罪しゃざい広告こうこくとう請求せいきゅう事件じけん (NHK日本語にほんご訴訟そしょう事件じけん) 判決はんけつ. より引用いんよう
  8. ^ "肖像しょうぞうとう ... は,個人こじん人格じんかく象徴しょうちょうであるから,当該とうがい個人こじんは,人格じんかくけん由来ゆらいするものとして,これをみだりに利用りようされない権利けんりゆうするとほぐされる" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (2012). ピンク・レディー事件じけん判決はんけつ. より引用いんよう
  9. ^ "「肖像しょうぞうけん」は ... プライバシーけん一種いっしゅとされています。" 文化庁ぶんかちょう. (2023). れい5年度ねんど著作ちょさくけんテキスト. より引用いんよう.
  10. ^ "顧客こきゃく吸引きゅういんりょく排他はいたてき利用りようする権利けんり以下いか「パブリシティけん」という。)は,肖像しょうぞうとうそれ自体じたい商業しょうぎょうてき価値かちもとづくものであるから,上記じょうき人格じんかくけん由来ゆらいする権利けんりいち内容ないよう構成こうせいするものということができる。" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (2012). ピンク・レディー事件じけん判決はんけつ. より引用いんよう
  11. ^ " じん氏名しめい肖像しょうぞうとう ... は,個人こじん人格じんかく象徴しょうちょうであるから,当該とうがい個人こじんは,人格じんかくけん由来ゆらいするものとして,これをみだりに利用りようされない権利けんりゆうするとほぐされる" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (2012). ピンク・レディー事件じけん判決はんけつ. より引用いんよう
  12. ^ "氏名しめいは ... その個人こじんからみれば、ひと個人こじんとして尊重そんちょうされる基礎きそであり、その個人こじん人格じんかく象徴しょうちょうであつて、人格じんかくけんいち内容ないよう構成こうせいするものというべき" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (1988). 謝罪しゃざい広告こうこくとう請求せいきゅう事件じけん (NHK日本語にほんご訴訟そしょう事件じけん) 判決はんけつ. より引用いんよう
  13. ^ "じん氏名しめい肖像しょうぞうとう以下いかあわせて「肖像しょうぞうとう」という。)は,個人こじん人格じんかく象徴しょうちょうである" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (2012). ピンク・レディー事件じけん判決はんけつ. より引用いんよう
  14. ^ "憲法けんぽういちさんじょうは ... 国民こくみん私生活しせいかつじょう自由じゆうが ... 保護ほごされるべきことを規定きていしている ... そして、個人こじん私生活しせいかつじょう自由じゆうひとつとして、何人なんにんも、その承諾しょうだくなしに、みだりにそのようぼう・姿態したい以下いかようぼうとう」という。)を撮影さつえいされない自由じゆうゆうするものというべきである。" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (1969). 京都きょうとがくれん事件じけん判決はんけつ. より引用いんよう
  15. ^ "じんは,自己じこようぼうとう描写びょうしゃしたイラストについても,これをみだりに公表こうひょうされない人格じんかくてき利益りえきゆうするとするのが相当そうとうである。" 最高さいこう裁判所さいばんしょ. (2005). カレー毒物どくぶつ混入こんにゅう事件じけん法廷ほうてい写真しゃしん・イラスト訴訟そしょう判決はんけつ. より引用いんよう

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]