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バチルス・チューリンゲンシス

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卒倒そっとう病菌びょうきんから転送てんそう
バチルス・チューリンゲンシス
分類ぶんるい
ドメイン : 真正しんしょう細菌さいきん Bacteria
もん : フィルミクテスもん Firmicutes
つな : バチルスつな Bacilli
: バチルス Bacillales
: バチルス Bacillaceae
ぞく : バチルスぞく Bacillus
たね : B. thuringiensis
学名がくめい
Bacillus thuringiensis
Berliner 1915

バチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringiensisバシラス・スリンジエンシスあるいはバキッルス・ツリンギエンシス)は、バシラスぞく (Bacillus) にぞくする真正しんせい細菌さいきん一種いっしゅである。

発見はっけん

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1901ねん明治めいじ34ねん)に石渡いしわたしげるたね(いしわたしげたね)により、カイコ病原びょうげん細菌さいきんとして日本にっぽん発見はっけんされた[1]石渡いしわたは1901ねん論文ろんぶんだい日本にっぽん蚕糸さんし会報かいほう)で、激烈げきれつ症状しょうじょう卒倒そっとう)をていして死亡しぼうしたカイコ幼虫ようちゅうから Bacillus ぞく病原びょうげん細菌さいきん分離ぶんりし、この細菌さいきん培養ばいようしてカイコ幼虫ようちゅうふたた摂食せっしょくさせたところ、同様どうよう症状しょうじょうていして死亡しぼうしたと報告ほうこくしている。石渡いしわたはこの細菌さいきんびょう卒倒そっとうびょう病原びょうげん細菌さいきん卒倒そっとう病菌びょうきん名付なづけたが、細菌さいきん新種しんしゅとしての記載きさいおこなわなかった[1]

一方いっぽう、1911ねんエルンスト・ベルリナー英語えいごばんドイツ同種どうしゅ細菌さいきんスジコナマダラメイガ病死びょうしちゅうから分離ぶんりし、病死びょうしちゅう発見はっけんされた中部ちゅうぶドイツのテューリンゲンラテン語らてんごめい: Thuringia)にちなんで Bacillus thuringiensis命名めいめいした[2][3]石渡いしわた発見はっけんした卒倒そっとう病菌びょうきん名称めいしょうは、B. thuringiensis H血清けっせいがた4abのserovar sottoとしてのこっている。

応用おうよう

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B. thuringiensis養蚕ようさん農家のうか塵埃じんあい土壌どじょう植物しょくぶつめん淡水たんすい[4]海底かいてい堆積たいせきぶつ[5]廃水はいすい処理しょり施設しせつ活性かっせい汚泥おでい[6]など、さまざまな自然しぜん環境かんきょうから分離ぶんりできることが報告ほうこくされている。鱗翅りんしそう翅目さや翅目などに選択せんたくてき毒性どくせいしめ菌株きんしゅられており、人体じんたい環境かんきょう安全あんぜん生物せいぶつ農薬のうやく微生物びせいぶつ殺虫さっちゅうざいとして、世界せかい各国かっこくBTざい使用しようされている。また、殺虫さっちゅうせいタンパク質たんぱくしつBt毒素どくそ)の生産せいさんかかわる遺伝子いでんし植物しょくぶつむことにより、特定とくてい農産のうさん害虫がいちゅう抵抗ていこうりょくゆうした作物さくもつ遺伝子いでんし作物さくもつ)を作出さくしゅつできる[7]

なお、昆虫こんちゅうだけでなく、せんちゅう土壌どじょう微生物びせいぶつにも影響えいきょうあたえるとの報告ほうこくがある[8]

病原びょうげんせい毒素どくそ

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Bt毒素どくそ結晶けっしょう

自然しぜん環境かんきょうから分離ぶんりされる B. thuringiensis には昆虫こんちゅう毒性どくせいしめさない菌株きんしゅおおふくまれており、分離ぶんりげんによっては、ほとんどの分離ぶんりかぶ殺虫さっちゅうせい場合ばあいもある。このような、殺虫さっちゅうせいB. thuringiensisさんせいする結晶けっしょうせいタンパク質たんぱくしつがどのような生理せいり活性かっせいゆうするのかはながきにわたってなぞであったが、2000ねんには殺虫さっちゅうせい結晶けっしょうせいタンパク質たんぱくしつから、ヒトガン細胞さいぼうたいして選択せんたくてき破壊はかい活性かっせいしめパラスポリン (parasporin) が発見はっけんされた[9]

きんえんセレウスきんB. cereus )は、感染かんせんせい胃腸いちょうえんきんしょう原因げんいんきんとして見過みすごせないきんであるが、B. cereus とのちがいは殺虫さっちゅうせい結晶けっしょうタンパク質たんぱくしつ生産せいさんのう有無うむ区別くべつされている[10]

食品しょくひんへの影響えいきょう

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ひろ自然しぜんかい存在そんざいしているものの生物せいぶつ農薬のうやくとして利用りようされていることから、おおくの農産物のうさんぶつ付着ふちゃくしているため、農産のうさん加工かこうひん食品しょくひんとく豆腐とうふ)への影響えいきょう懸念けねんされている。外国がいこくさん大豆だいず 137検体けんたい国産こくさん大豆だいず 43検体けんたい市販しはん豆腐とうふ 30検体けんたい調査ちょうさしたところ、外国がいこくさん汚染おせんりつたかかったが国産こくさん汚染おせんされていた。また、市販しはん豆腐とうふからは食品しょくひん衛生えいせいじょう問題もんだいにならない程度ていど下痢げりどく検出けんしゅつされた[10]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 防除ぼうじょ文明ぶんめい 微生物びせいぶつ殺虫さっちゅうざい BT今昔こんじゃく物語ものがた”. 農薬のうやく工業こうぎょうかい. 2021ねん9がつ23にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2024ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  2. ^ Tanada Y, Kaya H K (1993). Insect Pathology (Academic Press). pp. 88. 
  3. ^ Federici B A (2005). “Insecticidal bacteria: An overwhelming success for invertebrate pathology”. J Invertebr Pathol. 89: 30-38. 
  4. ^ 淡水たんすいからのBacillus thuringiensisの分離ぶんり”. 2018ねん10がつ11にち閲覧えつらん
  5. ^ 海底かいてい堆積たいせきぶつからのBacillus thuringiensisの分離ぶんり”. 2018ねん10がつ11にち閲覧えつらん
  6. ^ 活性かっせい汚泥おでいからのBacillus thuringiensisの分離ぶんり”. 2018ねん10がつ11にち閲覧えつらん
  7. ^ EPA's Regulation of Bacillus thuringiensis (Bt) Crops US Environmental Protection Agency
  8. ^ B. S. Griffiths, S. Caul, J. Thompson, A. N. E. Birch, C. Scrimgeour, M.N. Anderson, J. Corter, A. Messean, C. Sausse, B. Lacroix, P.H. Krogh, (2005) A comparison of soil microbial community structure, protozoa and nematodes in field plots of conventional and genetically modified maize expreessing the Bacillus thuringiensis Cry1Ab toxin. Plant and soil 275: 135-146.
  9. ^ Mizuki E, Park YS, Saitoh H, Yamashita S, Akao T, Higuchi K, Ohba M (2000). “Parasporin, a human leukemic cell-recognizing parasporal protein of Bacillus thuringiensis”. Clin Diagn Lab Immunol. 7 (4): 625-34. 
  10. ^ a b 大豆だいずおよび豆腐とうふにおけるBacillus thurigiensisについて 日本にっぽん食品しょくひん微生物びせいぶつ学会がっかい雑誌ざっし Vol. 12 (1995-1996) No. 4 P 249-255

外部がいぶリンク

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