南京錠なんきんじょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
南京錠なんきんじょうみぎ)と、そのかぎ

南京錠なんきんじょう(ナンキンじょう、英語えいご: Padlock)は、はこ可能かのう錠前じょうまえで、なんらかの資産しさん設備せつび施設しせつを、不法ふほう侵入しんにゅうり、窃盗せっとう不正ふせい使用しようなどからまもるのに使つかわれる。

日本にっぽんにおける南京錠なんきんじょうというは、近世きんせいにおいて、外国がいこく由来ゆらいのものが「南京なんきん」をかんしてばれたことに由来ゆらいする[1]

歴史れきし[編集へんしゅう]

南京錠なんきんじょうは、はこんでどこでも使つかえる便利べんり錠前じょうまえとして誕生たんじょうした。紀元前きげんぜん500ねんから紀元きげん300ねん古代こだいローマ南京錠なんきんじょう使つかわれていた証拠しょうこがある[2]。アジアでも各地かくちたびをする商人しょうにん南京錠なんきんじょう使つかっていた[3]。こちらは古代こだいローマよりもふる可能かのうせいがある。ばねと使つかった南京錠なんきんじょうイングランドヨークにあるヴァイキング住居じゅうきょあと出土しゅつどしており、紀元きげん850ねんごろのものとされている[4]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくはやくから使つかわれた南京錠なんきんじょうは "smokehouse lock" ともばれ、錬鉄れんてついたつくられており、単純たんじゅんなレバーとウォードの機構きこう使つかっていた。このデザインはイングランドからまれたものである。しかし、セキュリティ手段しゅだんとしてはあまりやくにたなかった。おなじころ、ヨーロッパのスラブじん地方ちほうで「スクリューかぎしき南京錠なんきんじょう考案こうあんされている。螺旋らせんじょうかぎんで、強力きょうりょくなばねで固定こていされたボルトをることでひらけじょうする。これもセキュリティのやくにたなくなると、様々さまざま錠前じょうまえかぎ南京錠なんきんじょう使つかわれるようになった。製造せいぞう技術ぎじゅつ向上こうじょうによって南京錠なんきんじょう改良かいりょうされていき、smokehouse lock は1910ねんごろまでに使つかわれなくなった。

19世紀せいきちゅうごろ、クリストフェル・プールヘム発明はつめいしたより安全あんぜんな「スカンジナビア」しき南京錠なんきんじょうがアメリカにもたらされた。鋳鉄ちゅうてつせいで、錠前じょうまえ機構きこう回転かいてんするディスクがふくすうまいかさなっているディスクタンブラーじょうである。それぞれのディスクにはかぎ挿入そうにゅうされるきが中央ちゅうおうにある。施錠せじょうには、ディスクがきんきにはまる。McWilliams しゃが1871ねん特許とっきょ取得しゅとくした。スカンジナビアしき南京錠なんきんじょうだい成功せいこうおさめ、ニュージャージーしゅうニューアークの JHW Climax & Co. が1950年代ねんだいまで生産せいさんつづけた。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく以外いがいではいまでもこのタイプの南京錠なんきんじょう製造せいぞうしているくにがある。

おなじころ、その形状けいじょうから「キャストハート」がたばれる南京錠なんきんじょう登場とうじょうした。smokehouse lock よりも頑丈がんじょうで、スカンジナビアしきよりもたい腐食ふしょくせいがある。真鍮しんちゅうすな鋳型いがた形成けいせいしており、より安全あんぜんレバータンブラーじょう採用さいようしている。重要じゅうよう特徴とくちょうとして、鍵穴かぎあななにかがまるのをふせぐためにばねきのカバーがいていた。また、錠前じょうまえ自体じたいしつくしたりぬすまれたりするのをふせぐため、くさりをつなげられるようになっていた。キャストハートがた南京錠なんきんじょう屋外おくがい風雨ふううにさらされる環境かんきょうつよいため、鉄道てつどうでよく使つかわれた。

1870年代ねんだいになると、錠前じょうまえはキャストハートがた錠前じょうまえ機構きこう鋳物いものでなくもっとうすてつ真鍮しんちゅうつくった本体ほんたいおさめた安価あんか南京錠なんきんじょうつくはじめた。本体ほんたいカバーは金属きんぞくばんかたきしたもので、そこにレバータンブラーじょう機構きこうおさめ、リベットでめている。キャストハートがたほう頑丈がんじょうだが、安価あんかであるためよくれた。1908ねん、Adams & Westlake がそのような南京錠なんきんじょう特許とっきょ取得しゅとく。そのやすさから鉄道てつどうでもキャストハートがたからそちらにはじめた。他社たしゃもこれに便乗びんじょうしてたような南京錠なんきんじょう製造せいぞう販売はんばいした。

1877ねん、Yale & Towne がレバータンブラーしきひらけじょうきん回転かいてんするかたち南京錠なんきんじょう特許とっきょ取得しゅとくした。設計せっけいじょう重要じゅうようてんは、錠前じょうまえ機構きこうをカートリッジしてべつてられるようにしたてんで、それを真鍮しんちゅう鋳物いもの本体ほんたいすべませるようになっていた。そして、本体ほんたい錠前じょうまえ機構きこうつらぬくようにテーパピンでめる。これによって錠前じょうまえ機構きこう交換こうかんできるようになり、南京錠なんきんじょう保守ほしゅという市場いちばまれた。やく20ねんライナス・エール・ジュニアべつのカートリッジしき南京錠なんきんじょう考案こうあんした。こちらはピンタンブラーじょう機構きこう採用さいようし、きんがスライドしてひらくようになっていた。

19世紀せいきはじめごろから錠前じょうまえ製造せいぞう機械きかい加工かこう使つかえるようになったが、20世紀せいきはじめに電力でんりょくもうととのって電動でんどう工作こうさく機械きかい登場とうじょうするまで機械きかい加工かこうはコストがかかりすぎる技術ぎじゅつだった。1905ねんごろ機械きかい加工かこう南京錠なんきんじょう登場とうじょうしており、現代げんだい南京錠なんきんじょうとほぼわらない。初期しょき機械きかい加工かこう使つかった錠前じょうまえメーカーとしては Corbin や Eagle がある。このころの南京錠なんきんじょうすで分解ぶんかいして錠前じょうまえ機構きこう交換こうかんできるようになっていたものがほとんどである。その南京錠なんきんじょう製造せいぞうには工作こうさく機械きかい使つかうのがたりまえとなっていった。現代げんだい南京錠なんきんじょうには道具どうぐ使つかってきん(ツル)をるのがむずかしくなるようおおいをつけたものもある。

1920年代ねんだいはじめ、Master Lock創業そうぎょうしたハリー・ゾレフはラミネートがた南京錠なんきんじょう製造せいぞう開始かいしした。金属きんぞくばんからかたきしたいたかさねて本体ほんたい形成けいせいする。その中央ちゅうおうあなけて錠前じょうまえ機構きこうおさめる。錠前じょうまえ機構きこうかさねたいたをリベットでめている。安価あんかたい衝撃しょうげきせいすぐれていることから人気にんきとなった。いま世界せかい各地かくちでこのデザインを真似まね南京錠なんきんじょう製造せいぞうされている[5]

1930年代ねんだいはいるとダイカスト主流しゅりゅうとなってきた。もっと安価あんか製造せいぞうほうというわけではないが、様々さまざまなデザインが可能かのうである。Junkunc Brothers、Wise Lock Company、Chicago Lock といったメーカーがある。その、より安価あんか加工かこう技術ぎじゅつ登場とうじょうし、ダイカストの南京錠なんきんじょうすたれていった。

錠前じょうまえとしての評価ひょうか[編集へんしゅう]

搬以がい特徴とくちょうとして、ひらきじょうにはかぎ必要ひつようだが施錠せじょうかぎ不要ふよう、ということがある。 また、現代げんだいでは、おも安価あんか簡易かんい錠前じょうまえとして使用しようされている。一般いっぱんてき普及ふきゅうしている南京錠なんきんじょう大半たいはんは、専門せんもんてきひらきじょう技能ぎのう訓練くんれんけたものにはピッキングバンピング、また製造元せいぞうもと販売はんばいする合鍵あいかぎ入手にゅうしゅなどによってすうふんひらけじょう可能かのうである。また侵入しんにゅう窃盗せっとうおお使つかわれるハンマーボルトカッタドリルなどの工具こうぐ使用しようすれば容易よういやぶじょうでき、厳重げんじゅう封印ふういんようする場所ばしょ施錠せじょうにはいていない。 破壊はかい不正ふせい行為こういたいする南京錠なんきんじょうたいせい定量ていりょうてき評価ひょうかとして、ASTMSold Secure(イギリス)、欧州おうしゅう標準ひょうじゅん委員いいんかい (CEN)、TNO(オランダ)といった組織そしき開発かいはつした試験しけん方法ほうほうがある。この南京錠なんきんじょうたいせい評価ひょうか基準きじゅんは「やぶじょうされるまで○○ふんかかる」というもので、破壊はかい可能かのうせいがないことは、最初さいしょから想定そうていしていない。れいとして、Sold Secure による最上さいじょう区分くぶんの「ゴールド・レート」は、「工具こうぐによる破壊はかいまで5ふんようする」ということを意味いみする。

素材そざい[編集へんしゅう]

おも真鍮しんちゅうのものがおおいが、鋼鉄こうてつせいやアルミせいのものもある。真鍮しんちゅう加工かこう容易よういだが強度きょうどひくいため、ツル部分ぶぶんをステンレスにして強化きょうかしたものもある。

構造こうぞう[編集へんしゅう]

南京錠なんきんじょうは、本体ほんたいきん(ツル、シャックル)、錠前じょうまえ機構きこうから構成こうせいされる。きん一般いっぱんにU字形じけい金属きんぞくで、それをまも対象たいしょうぶつける。ひらきじょうした状態じょうたいでは、きん一方いっぽう本体ほんたいはなれてスライドしたり回転かいてんしたりする。なかには、直線ちょくせんてききん円形えんけいきんくさりやケーブルなどのかたちさだまっていないきんもある。ひらきじょうするときん本体ほんたい完全かんぜん分離ぶんりするものもある。

南京錠なんきんじょう錠前じょうまえ機構きこうは、本体ほんたいまれたものとモジュールされていて分離ぶんり交換こうかん可能かのうなものがある。がた機構きこうとしてはディスクタンブラーじょう(スカンジナビアしき南京錠なんきんじょうられる。かぎによって回転かいてんさせられたディスクがきん先端せんたんにあるきとかみって施錠せじょうする)やレバータンブラーじょうおなじく、ただしいかぎまわすとボルトがきんきとかみって施錠せじょうする)がある。がた南京錠なんきんじょう分解ぶんかいできない設計せっけいになっており、ふる南京錠なんきんじょうおおい。また、施錠せじょうにもかぎ必要ひつようとすることがおおい。

現代げんだいのモジュールされた南京錠なんきんじょうでは、タンブラーが直接ちょくせつきん固定こていするわけではない。そのわりにきんきとかみ機構きこう解放かいほうするときだけかぎまわ必要ひつようがあるような構造こうぞうになっている。つまり、施錠せじょうさいきん本体ほんたい押込おしこむだけでよい。また分解ぶんかい可能かのう設計せっけいになっていて、錠前じょうまえ機構きこう部分ぶぶん交換こうかんすることができる。この場合ばあい錠前じょうまえ機構きこうとしてはピンタンブラーじょうウェハータンブラーじょう、ディスクタンブラーじょうがよく使つかわれる。

ダイヤルじょう[編集へんしゅう]

南京錠なんきんじょうにはダイヤルじょうかたのものがあり、かぎわりに数字すうじ文字もじならんだホイール(ダイヤル)が複数ふくすうならび、それをただしくわせることでひらけじょうする。

簡易かんいなものでは数字すうじが3けたで1000とおりのわせしかない。ダイヤルしき南京錠なんきんじょう不正ふせいひらけじょう方法ほうほうはすでに一応いちおう確立かくりつされ、ネットじょう拡散かくさんしているが、やや高価こうかなものには状況じょうきょう対応たいおうし、ひらきじょう番号ばんごう可変かへんしきになっているものもある。また最近さいきんそうあた方式ほうしきではひらけじょう困難こんなんな、10まんとおりのわせの5けたのものが登場とうじょうしている。

南京錠なんきんじょうがたアイコン[編集へんしゅう]

じた南京錠なんきんじょうのアイコンは、その対象たいしょうセキュアであること、あるいは対象たいしょうにアクセスできないことをしめすために使用しようされることがある。いずれの場合ばあいも、ひらいた南京錠なんきんじょうのアイコンはそのぎゃく意味いみである。

前者ぜんしゃれいとして、ウェブHTTPSによるセキュアなトランザクションを実行じっこうしているとき、情報じょうほう公開こうかいかぎ暗号あんごう暗号あんごうされて送信そうしんされるが、ウェブブラウザによっては、このときに南京錠なんきんじょうがたアイコンを表示ひょうじしてセキュアなプロトコルを使用しようしていることをしめす。

後者こうしゃれいとして、ニンテンドー3DS設定せってい画面がめんで、ペアレンタルロック有効ゆうこうになっている項目こうもくにはきんはままっている南京錠なんきんじょうがたアイコンが表示ひょうじされるが、無効むこうになっている項目こうもくにはきんそとている南京錠なんきんじょうがたアイコンが表示ひょうじされる。また、TwitterひとしSNSにおいて、投稿とうこう一部いちぶひとたいしてのみ公開こうかいとしているアカウントには南京錠なんきんじょうがたアイコンが表示ひょうじされ、そのようなアカウントはぞくに「かぎアカウント」(かぎアカ)とばれる[6]

ギャラリー[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう出典しゅってん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]