同和どうわ教育きょういく

同和どうわ教育きょういく（どうわきょういく）とは、日本にっぽんの教育きょういく全般ぜんぱんにおいて、 同和どうわ行政ぎょうせいが行おこなわれている地域ちいきで「部落ぶらく差別さべつを解消かいしょうするため」として行おこなわれる教育きょういくを指さす行政ぎょうせい用語ようごである。 「部落ぶらく問題もんだい解消かいしょう」を目的もくてきとして行おこなわれる日本にっぽん国民こくみん全体ぜんたいへの人権じんけん啓発けいはつ教育きょういくを主おもに指さすようになった。しかし、 森山もりやま栄治えいじ、松岡まつおか徹とおる議員ぎいん（日本にっぽん社会党しゃかいとう、民主党みんしゅとう、民進党みんしんとう）や部落ぶらく解放かいほう同盟どうめいのように「人権じんけん教育きょういく」「同和どうわ教育きょういく」「人権じんけん研修けんしゅう」「人権じんけん啓発けいはつ」「人権じんけん研究けんきゅう」「社会しゃかい同和どうわ教育きょういく指導しどう員いん」「人権じんけん擁護ようご委員いいん」「人権じんけん施策しさく推進すいしん審議しんぎ会かい委員いいん」という形かたちで利権りけん化かや糾弾きゅうだんを繰くり返かえすことで地域ちいき内ないに恐怖きょうふ政治せいじを敷しくなど行政ぎょうせい対象たいしょう暴力ぼうりょく行為こうい( 同和どうわ利権りけん行為こうい)するものが後こうを絶たたない。

なお、「同和どうわ」という語かたりが「同胞どうほう融和ゆうわ（どうほうゆうわ）」（→融和ゆうわ運動うんどう）という標語ひょうごに起源きげんを持もつことから、部落ぶらく解放かいほう同盟どうめいの立場たちばからはこれを現代げんだいの「国民こくみん主権しゅけん」と相反あいはんする「天皇てんのう制せい的てき造語ぞうご」とみなして使用しようせず、「解放かいほう教育きょういく」（かいほうきょういく）の語かたりを使用しようしている。

概要がいよう

当初とうしょの同和どうわ教育きょういくと学力がくりょく保障ほしょう

明治めいじ時代じだい（1868年ねん - 1912年ねん）初期しょきの同和どうわ地区ちくの経済けいざい状況じょうきょう、衛生えいせい状況じょうきょうは非常ひじょうに劣悪れつあくなものであった。その原因げんいんの一ひとつが教育きょういく水準すいじゅんの低ひくさであった。すなわち、保護ほご者しゃである親おやが子供こどもを学校がっこうに行いかせないために、子供こどもの教育きょういく水準すいじゅんが低ひくく、それがまた次つぎの世代せだいに継承けいしょうされるという悪循環あくじゅんかんが同和どうわ地区ちくの貧困ひんこんを固定こてい化かさせていた。明治めいじ後期こうきに学力がくりょく保障ほしょうとして民間みんかんや地方自治体ちほうじちたいで始はじめられた同和どうわ教育きょういくの基本きほん的てきな考かんがえ方かたは、このような負まけの連鎖れんさを断たち切きることで同和どうわ地区ちくの貧困ひんこんを解消かいしょうし、部落ぶらく差別さべつの解消かいしょうにつなげるというものである。

農繁期のうはんき託児たくじ所しょを初はじめて開設かいせつした人物じんぶつとして知しられる筧かけい雄平ゆうへいは鳥取とっとり県けん美穂みほ村むらにおいて1898年ねん（明治めいじ31年ねん）に当時とうじ「細民さいみん部落ぶらく」と呼よばれた同和どうわ地区ちくに分教場ぶんきょうじょうを開設かいせつし、未み就学しゅうがくであった同和どうわ地区ちくの児童じどうを学まなばせた。また、租税そぜいを滞納たいのうしたり、子供こどもを就学しゅうがくさせないといった親おやの非行ひこうも目めに余あまったため、年としに数すう回かい村民そんみんを集あつめて学習がくしゅう会かいが行おこなわれた。この活動かつどうは大おおきな成果せいかをあげ、1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）に分教場ぶんきょうじょうを尋常じんじょう小学校しょうがっこう（現在げんざいの小学校しょうがっこう）に併合へいごうした際さいには、「租税そぜいの滞納たいのうや未み就学しゅうがく児童じどうはほぼ皆無かいむであった」と記録きろくされている。

戦後せんごは同和どうわ対策たいさく事業じぎょうの一ひとつとして行おこなわれ、昭和しょうわ40年代ねんだい（1965年ねん - 1974年ねん）には地区ちく進出しんしゅつ学習がくしゅう会かいと呼よばれる、同和どうわ地区ちくの児童じどう生徒せいとを対象たいしょうとする教育きょういくが行おこなわれた。同和どうわ地区ちくの児童じどう生徒せいとの把握はあく、地区ちく進出しんしゅつ学習がくしゅう会かいの運営うんえいといった目的もくてきで、同和どうわ地区ちくの児童じどうが通学つうがくする小学校しょうがっこうには同和どうわ加配かはい教員きょういんが配置はいちされた。また、当時とうじは小中学校しょうちゅうがっこうの義務ぎむ教育きょういく修了しゅうりょう後ごの高等こうとう学校がっこうや大学だいがくへの進学しんがく率りつが著いちじるしく低ひくかった同和どうわ地区ちくの児童じどう生徒せいとの進学しんがくを奨励しょうれいするため、同和どうわ地区ちくの児童じどう生徒せいとのみが受給じゅきゅう可能かのうな奨学しょうがく金きんや、給付きゅうふ金きん制度せいどが自治体じちたいにおいて整備せいびされた。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうの同和どうわ教育きょういくと批判ひはん的てき主張しゅちょう

1942年ねん（昭和しょうわ17年ねん）8月がつに、文部省もんぶしょう（当時とうじ：→文部もんぶ科学かがく省しょう）社会しゃかい教育きょういく局きょくは『国民こくみん同和どうわへの道みち』を刊行かんこうし、初はじめて政府せいふの教育きょういく方針ほうしんとして同和どうわ教育きょういく政策せいさくの理念りねん・具体ぐたい的てき方針ほうしんを示しめした。 同書どうしょは、同和どうわ教育きょういくを通つうじて「被ひ差別さべつ部落ぶらくの児童じどう・青年せいねん」を「天皇てんのう陛下へいかの臣民しんみんである皇すめらぎ国民こくみんとしての純真じゅんしんな自覚じかくに立たたしめ、苦悩くのうに堪こたえ、艱難かんなんを忍しのび、臣しん道どう実践じっせんに邁進まいしんする強健きょうけんなる心身しんしん」に「陶冶とうや・鍛錬たんれん」するというものであった。これは旧きゅう水平すいへい社しゃの「下したから」の運動うんどうのエネルギーをも利用りようし、部落ぶらくの児童じどう・青年せいねんを他たの児童じどう・青年せいねん以上いじょうの「皇すめらぎ国民こくみん」として「陶冶とうや・鍛錬たんれん」することを提示ていじしており、この同和どうわ教育きょういくの指針ししんを「天皇てんのう制せいファシズム」教育きょういくの極限きょくげん形態けいたいの一ひとつであると主張しゅちょうする学説がくせつがある 。

戦後せんごの変質へんしつと「人権じんけん啓発けいはつ」という名なの圧政あっせい

人権じんけん啓発けいはつとしての同和どうわ教育きょういくは学力がくりょく保証ほしょうとしての同和どうわ教育きょういくより歴史れきしが浅あさく、主おもに1969年ねん（昭和しょうわ44年ねん）同和どうわ対策たいさく事業じぎょう特別とくべつ措置そち法ほうが制定せいていされた昭和しょうわ40年代ねんだい（1965年ねん - 1974年ねん）から始はじまったものである。戦後せんご、学力がくりょく保証ほしょうとしての同和どうわ教育きょういくは成果せいかを出だしていた。その後ごは、同和どうわ地区ちくの児童じどう生徒せいとと、一般いっぱん地区ちく（非ひ同和どうわ地区ちく）の児童じどう生徒せいととの間あいだにある感情かんじょう的てきな軋轢あつれきを解消かいしょうし、協力きょうりょく関係かんけいや友情ゆうじょうを深ふかめることを目的もくてきとされた。そのために児童じどう生徒せいとに、日本国にっぽんこく憲法けんぽうにある人権じんけんの概念がいねんの下したに部落ぶらく差別さべつが不当ふとうなものであることを認識にんしきさせること、いわれのない迷信めいしんにとらわれないために科学かがく的てきな考かんがえ方かたを醸成じょうせいすること、職業しょくぎょうに対たいする差別さべつをなくすために正ただしい職業しょくぎょう観かんを持もたせること、望のぞましい人間にんげん関係かんけいを醸成じょうせいすることが目的もくてきとされた。また、開始かいし時じは（旧きゅう）教育きょういく基本きほん法ほう第だい8条じょうを遵守じゅんしゅするため、同和どうわ教育きょういくを政治せいじ運動うんどうの場ばとしないように徹底てっていされるはずであった。

部落ぶらく解放かいほう同盟どうめいの影響えいきょうと「同和どうわ教育きょういく」の変質へんしつ

しかし、次第しだいに部落ぶらく解放かいほう同盟どうめいのような攻撃こうげき的てきな運動うんどう団体だんたいが自治体じちたいや学校がっこうによる同和どうわ教育きょういくの運営うんえいに干渉かんしょうや糾弾きゅうだん、物理ぶつり的てき暴力ぼうりょく、行政ぎょうせい対象たいしょう暴力ぼうりょくするようになり、同和どうわ教育きょういくは政治せいじ運動うんどうと無縁むえんではなくなった。1974年ねん（昭和しょうわ49年ねん）の八鹿ようか高校こうこう事件じけんは、日本にっぽん共産党きょうさんとうと部落ぶらく解放かいほう同盟どうめいの対立たいりつが教育きょういくの場ばに持もち込こまれ、ついには流血りゅうけつ事件じけんにまで発展はってんした事例じれいである。また、1980年ねん（昭和しょうわ55年ねん）の狭山さやま同盟どうめい休校きゅうこうは、同和どうわ教育きょういくを取とり巻まく状況じょうきょうを一変いっぺんさせた、決定的けっていてきな出来事できごとである。狭山さやま事件じけん裁判さいばんへの抗議こうぎの一環いっかんとして、部落ぶらく解放かいほう同盟どうめいにより1980年ねん1月がつ28日にちに同和どうわ地区ちくの児童じどう生徒せいとは登校とうこうしないように呼よびかけられた。これに対たいし、各地かくちの自治体じちたいの教育きょういく委員いいん会かいは困惑こんわくするか、あるいは激はげしく反発はんぱつした。なぜなら、同盟どうめい休校きゅうこうは教育きょういくを政治せいじ運動うんどうの場ばとするだけでなく、同和どうわ地区ちくの児童じどう生徒せいとのみが一斉いっせいに学校がっこうを欠席けっせきすることにより、誰だれが同和どうわ地区ちくの児童じどう生徒せいとに該当がいとうするのかが明あきらかになってしまうためである。

ちなみに、同様どうようの問題もんだいが指摘してきされているものとしては、部落ぶらく解放かいほう同盟どうめいがさせている「同和どうわ地区ちく出身しゅっしん者しゃの生徒せいと・児童じどうに自己じこの出自しゅつじのカミングアウト（公表こうひょう）」をさせる「部落ぶらく民みん宣言せんげん」がある。そもそも全まったく意識いしきしてなかった仲良なかよい学生がくせい間あいだに亀裂きれつを生うみ出だしたため、同和どうわ教育きょういくを嫌いやがって泣なく、同和どうわ地区ちく生徒せいとが発生はっせいしていた。

長野ながの県けんの松本まつもと市しなど一部いちぶの地域ちいきでは教育きょういく委員いいん会かいの激はげしい反発はんぱつにより、同盟どうめい休校きゅうこうは実施じっしされなかったが、部落ぶらく解放かいほう同盟どうめいが組織そしきされた大半たいはんの同和どうわ地区ちくでは、児童じどう生徒せいとは登校とうこうせず集会しゅうかい所しょ等とうで行おこなわれた学習がくしゅう会かいに参加さんかする等ひとした。同盟どうめい休校きゅうこうが行おこなわれた地域ちいきでは、「政治せいじ的てき中立ちゅうりつを保持ほじし、同和どうわ地区ちくの児童じどう生徒せいとを特定とくていすることをしない」という当初とうしょの同和どうわ教育きょういくが成立せいりつしなくなった。部落ぶらく解放かいほう同盟どうめい等とうの運動うんどう団体だんたいの要求ようきゅうに従したがった政治せいじ色しょくの濃厚のうこうな教育きょういくに取とって代かわられるようになった。運動うんどう団体だんたい間あいだの対立たいりつ抗こう争そうは同和どうわ教育きょういくの方法ほうほう論ろん、進すすめ方かたにも影響えいきょうを与あたえた。現在げんざいでは大おおまかに言いって、「官製かんせい同和どうわ教育きょういく」、部落ぶらく解放かいほう同盟どうめいにつながる「解放かいほう教育きょういく」、日本にっぽん共産党きょうさんとうや全国ぜんこく人権じんけん連れんにつながる「自主じしゅ的てき民主みんしゅ的てき同和どうわ教育きょういく」に、分極ぶんきょく化かしている。

同和どうわ教育きょういくを意味いみする、別べつの言葉ことばを使用しようする地域ちいきもある。岡山おかやま県けんでは「民主みんしゅ教育きょういく」、和歌山わかやま県けんでは「責せめ善ぜん教育きょういく」という名称めいしょうを、戦後せんご間まもなくの時期じきから長ながく使用しようしていた。部落ぶらく解放かいほう同盟どうめい式しき同和どうわ教育きょういくがが盛さかんである大阪おおさか府ふでは、「にんげん」という副読本ふくどくほんが古ふるくから作成さくせいされ、部落ぶらく差別さべつを中心ちゅうしんに在日ざいにち韓国かんこく・朝鮮ちょうせん人じん差別さべつ、障害しょうがい者しゃ差別さべつ、女性じょせい差別さべつなどの社会しゃかい的てき差別さべつの不当ふとう性せいを教おしえる教育きょういくが行おこなわれていた。ただし、公おおやけ教育きょういくにおける「にんげん」の使用しようについては、「思想しそう信条しんじょうの自由じゆう、多様たような価値かち観かんの存在そんざいを否定ひていし、特定とくてい団体だんたいの思想しそうを児童じどう生徒せいとに植うえ付つけようとするものである」という批判ひはんがある。

人権じんけん教育きょういくへのい換いかえ前後ぜんこう以降いこう

1995年ねん - 2004年ねん（平成へいせい7-16年ねん）の「人権じんけん教育きょういくのための国連こくれん10年ねん」や、2002年ねん（平成へいせい14年ねん）3月がつ限かぎりで、特別とくべつ施策しさくとしての同和どうわ対策たいさくが政府せいふレベルでは終了しゅうりょうした。平成へいせい期きには昭和しょうわ時代じだいにはタブーとされてきた部落ぶらく解放かいほう同盟どうめいの悪事あくじが多数たすう告発こくはつされ出だした。その後ごに、同和どうわ教育きょういくから人権じんけん教育きょういくへと呼称こしょうが変化へんかさせた。

人権じんけん教育きょういく講師こうしとして、他者たしゃを差別さべつ主義しゅぎ者しゃと糾弾きゅうだんすることで福井ふくい県内けんないの行政ぎょうせいに圧政あっせいを敷しいた森山もりやま栄治えいじの悪事あくじが死後しごの2019年ねん中盤ちゅうばん頃ごろからに明あきらかになった。

関連かんれん項目こうもく

• 部落ぶらく解放かいほう同盟どうめい/同和どうわ利権りけん/同和どうわ行政ぎょうせい/逆ぎゃく差別さべつ
• 同和どうわ教育きょういく研究けんきゅう指定してい校こう
• 同和どうわ加配かはい
• 松岡まつおか徹とおる-部落ぶらく解放かいほう同盟どうめい中央ちゅうおう書記しょき長ちょう。日本にっぽん社会党しゃかいとう、民主党みんしゅとう、民進党みんしんとうに所属しょぞくした活動かつどう家か・議員ぎいん
• 森山もりやま栄治えいじ-「人権じんけん」を武器ぶきに福井ふくい県内けんないで圧政あっせいを敷しいた
• 同和どうわ問題もんだいの解決かいけつに向むけた実態じったい等とう調査ちょうさ報告ほうこく
• 広島ひろしま県けんでの同和どうわ解放かいほう同盟どうめいによる教育きょういく介入かいにゅう