(Translated by https://www.hiragana.jp/)
因果分析 - Wikipedia コンテンツにスキップ

因果いんが分析ぶんせき

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

因果いんが分析ぶんせき(いんがぶんせき、えい: causal analysis)とは、原因げんいん結果けっか関係かんけいあきらかにするための実験じっけん計画けいかくほう統計とうけいがく分野ぶんやである[1]一般いっぱんてきに、これには4つの要素ようそふくまれており、それらは相関そうかん関係かんけい時間じかんてき順序じゅんじょ(つまり、原因げんいんはその結果けっか候補こうほまえこる必要ひつようがある)、観察かんさつされた結果けっかこりうる原因げんいんからみちびかれるもっともらしい物理ぶつりてきまたは情報じょうほう理論りろんてきメカニズム、および共通きょうつうあるいは代替だいたい特別とくべつな)原因げんいん英語えいごばん可能かのうせい排除はいじょである。このような分析ぶんせきには、通常つうじょう、1つまたは複数ふくすう人工じんこう実験じっけんまたは自然しぜん実験じっけんふくまれている[2]

モチベーション[編集へんしゅう]

データ分析ぶんせきは、おも因果いんが関係かんけいのある問題もんだい関係かんけいしている[3][4][5][6][7]。たとえば、肥料ひりょう作物さくもつ成長せいちょうさせたか?[8]、または、特定とくてい病気びょうき予防よぼうできるか?[9]、あるいは、なぜわたし友人ゆうじんんでいるのか?[10] そのようないにたいし、計画けいかくされた実験じっけんによってデータが収集しゅうしゅうされた場合ばあい潜在せんざいてき結果けっか回帰かいき分析ぶんせき手法しゅほうによって対応たいおうすることができる。しかし、観察かんさつ研究けんきゅう英語えいごばんによってデータが収集しゅうしゅうされた場合ばあいは、因果いんが関係かんけい推論すいろんするためにさまざまな手法しゅほう必要ひつようとなる(たとえば、交絡などの問題もんだいのため)[11]実験じっけんデータにもちいられる因果いんが推論すいろん手法しゅほうは、観測かんそくデータで合理ごうりてき推論すいろんおこなうために追加ついか仮定かていようする[12]。このような状況じょうきょうで、因果いんが推論すいろんむずかしさは、しばしば「相関そうかん関係かんけい因果いんが関係かんけい含意がんいしない」と要約ようやくされている。

哲学てつがくおよび物理ぶつりがくにおいて[編集へんしゅう]

因果いんが関係かんけい本質ほんしつは、哲学てつがく物理ぶつりがくなど、複数ふくすう学問がくもん分野ぶんや体系たいけいてき研究けんきゅうされている。

学会がっかいには因果いんが関係かんけいかんする膨大ぼうだいかず理論りろん存在そんざいしており、「The Oxford Handbook of Causation」(Beebee, Hitchcock & Menzies 2009)は770ページにもおよんでいる。哲学てつがく分野ぶんやでは、アリストテレスよん原因げんいんせつや、アル・ガザーリー機会きかい原因げんいんろん (英語えいごばん影響えいきょうりょくのある学説がくせつである[13]デイヴィッド・ヒュームは、因果いんが関係かんけいについての信念しんねん経験けいけんもとづくものとし、同様どうよう経験けいけん未来みらい過去かこにならう仮定かていもとづき、それは経験けいけんにのみもとづくとし、循環じゅんかん論法ろんぽうにつながると主張しゅちょうした。かれは、因果いんが関係かんけい具体ぐたいてき推論すいろんもとづかない英語えいごばん結論けつろんづけ、実際じっさい観測かんそくできるのは相関そうかん関係かんけいだけだと断言だんげんした[14]Beebee, Hitchcock & Menzies (2009)によれば、イマヌエル・カントは、「すべての事象じしょうには原因げんいんがある、あるいは因果律いんがりつしたがっているという近因きんいん主義しゅぎは、厳密げんみつ普遍ふへんせいあるいは必然ひつぜんせいいているので、純粋じゅんすい経験けいけんてき主張しゅちょうとして帰納的きのうてき確立かくりつされることはない」とべている。

因果いんが関係かんけい理論りろんは、哲学てつがく分野ぶんや以外いがいでも、古典こてん力学りきがく統計とうけい力学りきがく量子力学りょうしりきがく時空じくう理論りろん生物せいぶつがく社会しゃかい科学かがく、および法学ほうがくあきらかにされている[13]物理ぶつりがくにおいて、ある相関そうかん関係かんけい因果いんが関係かんけいとして立証りっしょうするためには通常つうじょう既知きち自然しぜん法則ほうそくしたがって、原因げんいん結果けっか局所きょくしょてきメカニズム英語えいごばんれい衝撃しょうげき)または局在きょくざいてきメカニズム(れい)をかいしてむすびつく必要ひつようがあるとかんがえられている。

ねつ力学りきがく観点かんてんでは、ねつ力学りきがくだい法則ほうそくによって、原因げんいん結果けっかとの普遍ふへんてき性質せいしつあきらかにされ、ねつ力学りきがくてき自由じゆうエネルギーという特定とくていのケースにおける「原因げんいん結果けっかより高貴こうきである」という古来こらい中世ちゅうせいデカルト主義しゅぎたしかめられた[15]一方いっぽう非線形ひせんけいシステムバタフライ効果こうかといった概念がいねんたいする一般いっぱんてき解釈かいしゃく[疑問ぎもんてん]ちいさな事象じしょうが、予測よそく不可能ふかのうおもいがけない大量たいりょう潜在せんざいてきエネルギーがねとなって、おおきな効果こうかこすというものである。

はん事実じじつてき状態じょうたいから解釈かいしゃくされる因果いんが関係かんけい[編集へんしゅう]

直感ちょっかんてきには、因果いんが関係かんけいには相関そうかん関係かんけいだけでなく、はん事実じじつてき英語えいごばん依存いぞん関係かんけい必要ひつようだとかんがえられる。たとえば、ある学生がくせいがテストの成績せいせきわるく、その原因げんいんかれ勉強べんきょうしなかったことだと推測すいそくしたとする。これを証明しょうめいするために、おな学生がくせいおな状況じょうきょうおなじテストをけているが、まえばん勉強べんきょうしていた、というはん事実じじつかんがえる。もし、歴史れきしもどして、たった1つのちいさなこと(学生がくせい試験しけん勉強べんきょうさせる)をえることができれば、(バージョン1とバージョン2を比較ひかくすることによって)因果いんが関係かんけい観察かんさつすることができる。しかし、歴史れきしもどしたり、制御せいぎょちいさな変更へんこうくわえたのち出来事できごと再現さいげんすることはできないため、因果いんが関係かんけい推測すいそくするしかできず、正確せいかくることはできない。これは「因果いんが推測すいそく基本きほんてき問題もんだい」とばれ、因果いんが関係かんけい直接ちょくせつ観察かんさつすることは不可能ふかのうである[16]

科学かがく実験じっけん統計とうけいてき手法しゅほう主要しゅよう目的もくてきは、世界せかいはん事実じじつてき状態じょうたいをできるかぎ近似きんじすることである[17]。たとえば、テストでつねおな成績せいせきをとることがかっている一卵性双生児いちらんせいそうせいじ実験じっけんする英語えいごばんことができる。双子ふたご一方いっぽうは6あいだ勉強べんきょうさせ、もう一方いっぽうゆう園地えんちかせる。その結果けっか双子ふたごのテストの点数てんすう突然とつぜんおおきくはなれたとしたら、これは勉強べんきょう(またはゆう園地えんちくこと)がテストの点数てんすう因果いんがてき作用さようしたという強力きょうりょく証拠しょうこになる。この場合ばあい勉強べんきょうとテストの点数てんすう相関そうかん関係かんけいは、ほぼ確実かくじつ因果いんが関係かんけい意味いみする。

適切てきせつ設計せっけいされた実験じっけんてき研究けんきゅうでは、前述ぜんじゅつれいのように、個人こじん平等びょうどうせいぐん平等びょうどうせいえる。その目的もくてきは、りょうぐんける処置しょちのぞいて類似るいじしている2つのぐん構築こうちくすることである。これは、1つの母集団ぼしゅうだんから被験者ひけんしゃ選択せんたくし、それらを2つ以上いじょうぐん作為さくいてることで実現じつげんされる。かくぐんたがいに(平均へいきんして)類似るいじした行動こうどうをとる可能かのうせいは、かくぐん被験者ひけんしゃかずおおいほどたかくなる。もし、かくぐんける処置しょちのぞいて本質ほんしつてき同等どうとうであり、かくぐん結果けっか差異さいがあることが観察かんさつされれば、これは処置しょち結果けっか原因げんいんであるという証拠しょうこで、いいかえれば、処置しょち観察かんさつされた効果こうかこしているという証拠しょうことなる。ただし観察かんさつされた効果こうかは、たとえば母集団ぼしゅうだんにおけるランダム摂動せつどう結果けっかとして「偶然ぐうぜんに」こされる可能かのうせいもある。統計とうけいてき検定けんていは、観察かんさつされた差異さい実際じっさいには存在そんざいしないのに、あやまって存在そんざいすると結論けつろんづける可能かのうせい定量ていりょうするために存在そんざいする(たとえば、P参照さんしょう)。

因果いんが関係かんけい運用うんようじょう定義ていぎ[編集へんしゅう]

クライブ・グレンジャーは、1969ねんに、因果いんが関係かんけい運用うんようじょう定義ていぎ最初さいしょ作成さくせいした[18]。グレンジャーは、ノーバート・ウィーナー提唱ていしょうしたかくりつてき因果いんが関係かんけい英語えいごばん定義ていぎ分散ぶんさん比較ひかくとして運用うんよう可能かのうにした[19]

真実しんじつ」による検証けんしょう[編集へんしゅう]

Peter SpirtesClark Glymour、およびRichard Scheinesは、因果いんが関係かんけい定義ていぎ明示めいじてきしめさないというかんがえを導入どうにゅうした[よう説明せつめい][3]。SpirtesとGlymourは、1990ねんに、因果いんが発見はっけん(causal discovery)のためのコンピュータアルゴリズムを発表はっぴょうした[20]最近さいきん因果いんが発見はっけんアルゴリズムのおおくは、Spirtes-Glymourの検証けんしょうアプローチにしたがっている[21]

探索たんさくてき因果いんが分析ぶんせき[編集へんしゅう]

探索たんさくてき因果いんが分析ぶんせき(exploratory causal analysis、ECA)は、「データ因果いんが関係かんけい(data causality)」または「因果いんが発見はっけん(causal discovery)」[3]ともばれ、統計とうけいてきアルゴリズム使用しようして、厳密げんみつ仮定かていした潜在せんざいてき因果いんが関係かんけいのある観測かんそくデータセットの関連かんれんせい推論すいろんすることである。ECAは、因果いんが推論すいろん一種いっしゅで、因果いんがモデリング英語えいごばん、あるいはランダム比較ひかく試験しけんにおける処置しょち効果こうかとはことなるものである[4]。これは、データ解析かいせきにおいて探索たんさくてきデータ解析かいせき統計とうけいてき仮説かせつ検定けんてい先行せんこうすることがおおいのと同様どうように、通常つうじょう、より正式せいしき因果いんが研究けんきゅう英語えいごばん先行せんこうする探索たんさくてき研究けんきゅうである[22][23]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Rohlfing, Ingo; Schneider, Carsten Q. (2018). “A Unifying Framework for Causal Analysis in Set-Theoretic Multimethod Research”. Sociological Methods & Research 47 (1): 37–63. doi:10.1177/0049124115626170. https://publications.ceu.edu/sites/default/files/publications/0049124115626170.pdf 2020ねん2がつ29にち閲覧えつらん. 
  2. ^ Brady, Henry E. (7 July 2011). “Causation and Explanation in Social Science” (英語えいご). The Oxford Handbook of Political Science. doi:10.1093/oxfordhb/9780199604456.013.0049. https://www.oxfordhandbooks.com/view/10.1093/oxfordhb/9780199604456.001.0001/oxfordhb-9780199604456-e-049 2020ねん2がつ29にち閲覧えつらん. 
  3. ^ a b c Spirtes, P.; Glymour, C.; Scheines, R. (2012). Causation, Prediction, and Search. Springer Science & Business Media. ISBN 978-1461227489 
  4. ^ a b Rosenbaum, Paul (2017). Observation and Experiment: An Introduction to Causal Inference. Harvard University Press. ISBN 9780674975576 
  5. ^ Pearl, Judea (2018). The Book of Why: The New Science of Cause and Effect. Basic Books. ISBN 978-0465097616 
  6. ^ Kleinberg, Samantha (2015). Why: A Guide to Finding and Using Causes. O'Reilly Media, Inc.. ISBN 978-1491952191 
  7. ^ Illari, P.; Russo, F. (2014). Causality: Philosophical Theory meets Scientific Practice. OUP Oxford. ISBN 978-0191639685 
  8. ^ Fisher, R. (1937). The design of experiments. Oliver And Boyd 
  9. ^ Hill, B. (1955). Principles of Medical Statistics. Lancet Limited 
  10. ^ Halpern, J. (2016). Actual Causality. MIT Press. ISBN 978-0262035026 
  11. ^ Pearl, J.; Glymour, M.; Jewell, N. P. (2016). Causal inference in statistics: a primer. John Wiley & Sons. ISBN 978-1119186847 
  12. ^ Stone, R. (1993). “The Assumptions on Which Causal Inferences Rest”. Journal of the Royal Statistical Society. Series B (Methodological) 55 (2): 455–466. doi:10.1111/j.2517-6161.1993.tb01915.x. 
  13. ^ a b Beebee, Hitchcock & Menzies 2009
  14. ^ Morris, William Edward (2001). “David Hume”. The Stanford Encyclopedia of Philosophy. http://plato.stanford.edu/archives/spr2001/entries/hume/#CausationN. 
  15. ^ Lloyd, A.C. (1976). “The principle that the cause is greater than its effect”. Phronesis 21 (2): 146–156. doi:10.1163/156852876x00101. JSTOR 4181986. 
  16. ^ Holland, Paul W. (1986). “Statistics and Causal Inference”. Journal of the American Statistical Association 81 (396): 945–960. doi:10.1080/01621459.1986.10478354. 
  17. ^ Pearl, Judea (2000). Causality: Models, Reasoning, and Inference. Cambridge University Press. ISBN 9780521773621. https://archive.org/details/causalitymodelsr0000pear 
  18. ^ Granger, C. W. J. (1969). “Investigating Causal Relations by Econometric Models and Cross-spectral Methods”. Econometrica 37 (3): 424–438. doi:10.2307/1912791. JSTOR 1912791. 
  19. ^ Granger, Clive. “Prize Lecture. NobelPrize.org. Nobel Media AB 2018.”. 2022ねん1がつ23にち閲覧えつらん
  20. ^ Spirtes, P.; Glymour, C. (1991). “An algorithm for fast recovery of sparse causal graphs”. Social Science Computer Review 9 (1): 62–72. doi:10.1177/089443939100900106. 
  21. ^ Guo, Ruocheng; Cheng, Lu; Li, Jundong; Hahn, P. Richard; Liu, Huan (2020). “A Survey of Learning Causality with Data”. ACM Computing Surveys 53 (4): 1–37. arXiv:1809.09337. doi:10.1145/3397269. 
  22. ^ McCracken, James (2016). Exploratory Causal Analysis with Time Series Data (Synthesis Lectures on Data Mining and Knowledge Discovery). Morgan & Claypool Publishers. ISBN 978-1627059343 
  23. ^ Tukey, John W. (1977). Exploratory Data Analysis. Pearson. ISBN 978-0201076165 

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]