地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういん

地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういん（ちいきいりょうしえんびょういん）は、1997年ねん（平成へいせい9年ねん）4月がつの医療いりょう法ほうの第だい3次じ改正かいせいで制度せいど化かされた日本にっぽんの医療いりょう機関きかんの機能きのう別べつ区分くぶんのうちの一ひとつ。

制度せいどの趣旨しゅし

目的もくてきとしては、地域ちいきの病院びょういん、診療しんりょう所しょなどを後方こうほう支援しえんするという形かたちで医療いりょう機関きかんの機能きのうの役割やくわり分担ぶんたんと連携れんけいを目的もくてきに創設そうせつされた。都道府県とどうふけん知事ちじによって承認しょうにんされる。特定とくてい機能きのう病院びょういんとは性質せいしつが異ことなっている。二に次じ医療いりょう圏けん当あたり一ひとつ以上いじょう存在そんざいすることが望のぞましいとされている。

地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんは都道府県とどうふけんに対たいし、地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんの業務ぎょうむ報告ほうこく書しょを出だし、各かく都道府県とどうふけんはこれを公表こうひょうする。

承認しょうにん要件ようけん

要件ようけんは医療いりょう法ほう第だい4条じょう（具体ぐたい的てきには医療いりょう法ほうと厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれい）に記しるされている。

病院びょういんの規模きぼは原則げんそくとして病床びょうしょう数かずが200床しょう以上いじょうの病院びょういんであること。
他たの医療いりょう機関きかんからの紹介しょうかい患者かんじゃ数すうの比率ひりつが80％以上いじょう（承認しょうにん初年度しょねんどは60％以上いじょう）であること。あるいは紹介しょうかい率りつ40％以上いじょうかつ逆ぎゃく紹介しょうかい率りつ60％以上いじょうであること。
他たの医療いりょう機関きかんに対たいして高額こうがくな医療いりょう機器ききや病床びょうしょうを提供ていきょうし共同きょうどう利用りようすること。
地域ちいきの医療いりょう従事じゅうじ者しゃの向上こうじょうのため生涯しょうがい教育きょういく等ひとしの研修けんしゅうを実施じっししていること。
救急きゅうきゅう医療いりょうを提供ていきょうする能力のうりょくを有ゆうすること。

承認しょうにん条件じょうけん変遷へんせんの背景はいけい

当初とうしょ都道府県とどうふけんや厚生こうせい労働省ろうどうしょうは、地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんは公的こうてき医療いりょう機関きかんが担になう機能きのうと考かんがえていた。しかし、公的こうてき医療いりょう機関きかんであるため外来がいらい抑制よくせいが難むずかしいことや公務員こうむいんであるが故ゆえの医療いりょう機器ききの共同きょうどう利用りよう（CT，MRI）の硬直こうちょく化かなどから、紹介しょうかい率りつ60％すら達成たっせいできない状況じょうきょうとなった。一方いっぽうで民間みんかん病院びょういんの中なかでも、医療いりょう経営けいえいに積極せっきょく的てきな病院びょういんは、紹介しょうかい率りつアップのため地域ちいき医療いりょう機関きかんへのきめ細ささやかなサービスと、外来がいらいの分離ぶんりといった政策せいさくにより、地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんの認定にんていを受うけていった。

国くにや地方ちほう公共こうきょう団体だんたいは、公的こうてき医療いりょう機関きかんを診療しんりょう報酬ほうしゅう上じょうも有利ゆうりな制度せいどに組くみ入いれたいため、紹介しょうかい率りつを40％に下さげるといった政策せいさく変更へんこうを行おこなった。

結果けっか的てきに、その効果こうかは十分じゅうぶん発揮はっきされているとはいえない。

現在げんざいの地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんの状況じょうきょう

1996年ねん（平成へいせい8年ねん）4月がつに始はじまった制度せいどである。当初とうしょ地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんに承認しょうにんされた多おおくは医師いし会かい立たて病院びょういんであった。医師いし会かい立たて病院びょういんはその多おおくが、外来がいらいを持もたず、診療しんりょう所しょからの検査けんさ（主おもにCTやMRIなど）を請うけ負おう地方ちほうに建たてられた病院びょういんである。そういった点てんから地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんとして承認しょうにんされやすい環境かんきょうであった。

近年きんねん診療しんりょう報酬ほうしゅうの削減さくげんが進すすむ中なか、200床しょう以上いじょうの急性きゅうせい期き民間みんかん病院びょういんが、地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんになることによって得える医療いりょう収入しゅうにゅうの増加ぞうかを目指めざして、条件じょうけんをクリアするため以下いかのような政策せいさくをとり、地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんを目指めざした。

紹介しょうかい状じょうを持もたない初診しょしん患者かんじゃに対たいする選定せんてい療養りょうよう費ひの徴収ちょうしゅうによる外来がいらい抑制よくせい
外来がいらい部門ぶもんを付属ふぞくクリニックとして分離ぶんりし外来がいらいを抑制よくせい
高度こうど検査けんさ機器ききの導入どうにゅうによる検査けんさ紹介しょうかい患者かんじゃの拡大かくだい
救急きゅうきゅう車しゃによる搬送はんそう患者かんじゃ受うけ入いれ態勢たいせいの整備せいび

上記じょうき政策せいさくの実施じっしにより、力ちからの在ある民間みんかん病院びょういんが地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんの承認しょうにんを受うけることとなった。

地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんに承認しょうにんされることによるメリットとしては、当時とうじ急性きゅうせい期き入院にゅういん加算かさんや急性きゅうせい期き特定とくてい入院にゅういん加算かさん（現在げんざいは廃止はいし）などの診療しんりょう報酬ほうしゅうの加算かさんが得えられることに加くわえ、地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういん入院にゅういん加算かさん（1,000点てん 1万まん円えん）が1人ひとりにつき入院にゅういん初日しょにちに1回かい加算かさんできることであった。現在げんざいは地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんの多おおくがDPC導入どうにゅう病院びょういんであるため、DPC導入どうにゅう病院びょういんの場合ばあいは、機能きのう評価ひょうか係数けいすう加算かさんを地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういん加算かさんの代かわりに請求せいきゅうしている。

患者かんじゃ一いち人にんあたり一いち回かいの入院にゅういんについて10,000円えん収入しゅうにゅうが得えられるということは、例たとえば300床しょうの病院びょういんで、平均へいきん在院ざいいん日数にっすうを12日にちとすると、今いままでと同おなじ診療しんりょう行為こういを行おこなっても、約やく750万まん円えんの増収ぞうしゅうとなる（年間ねんかん9,000万まん円えん）。

2007年ねん（平成へいせい19年ねん）3月がつ現在げんざい153病院びょういんである^[1]。本来ほんらい二に次じ医療いりょう圏けんに一ひとつの地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんを承認しょうにんするという考かんがえであったが、現在げんざい全国ぜんこく358の二に次じ医療いりょう圏けんに対たいし、地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんが置おかれているのは110医療いりょう圏けんである。

地域ちいき医療いりょうの役割やくわりの変化へんか

地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんの考かんがえ方かたも、医療いりょう提供ていきょう体制たいせいの見直みなおしにより変化へんかしている。

これまで長年ながねんにわたって機能きのうしてきた階層かいそう型がた構造こうぞうの医療いりょう体制たいせいでは、患者かんじゃ中心ちゅうしんの医療いりょうを提供ていきょうできないという反省はんせいから出でてきた。階層かいそう型がた医療いりょう体制たいせいとは、1次じ医療いりょうは普段ふだんからの健康けんこう相談そうだんが受うけられる、かかりつけ医いを中心ちゅうしんとした地域ちいき医療いりょう体制たいせいであり、2次じ医療いりょうは、入院にゅういん治療ちりょうを主体しゅたいとした医療いりょう活動かつどうがおおむね完結かんけつする医療いりょう。そして3次じ医療いりょうでは、先進せんしん的てきな技術ぎじゅつや特殊とくしゅな医療いりょう、発生はっせい頻度ひんどが低ひくい疾病しっぺいに関かんするものなどの医療いりょう需要じゅように対応たいおうした医療いりょう構造こうぞうである。

現在げんざいの医療いりょう計画けいかく制度せいどの問題もんだい点てんとしては、次つぎの点てんがあげられる。

患者かんじゃの実際じっさいの受療行動こうどうに着目ちゃくもくするのではなく、医療いりょう提供ていきょうサイドの視点してんで構想こうそう。
地域ちいきの疾病しっぺい動向どうこうを勘案かんあんしない量的りょうてきな視点してんを中心ちゅうしんに構想こうそう。
地域ちいきの医療いりょう機関きかんが担になえる機能きのうに関係かんけいなく、結果けっかとして大だい病院びょういんを重視じゅうしすることとなる階層かいそう型がた構造こうぞうを念頭ねんとうに構想こうそう。

社会しゃかい保障ほしょう審議しんぎ会かいが提唱ていしょうする新あらたな医療いりょう計画けいかく制度せいどでの医療いりょう連携れんけい体制たいせいとは、

患者かんじゃを中心ちゅうしんにした医療いりょう連携れんけい体制たいせいを構想こうそう。
主要しゅような事業じぎょうごとに柔軟じゅうなんな医療いりょう連携れんけい体制たいせいを構想こうそう。
病院びょういんの規模きぼでなく医療いりょう機能きのうを重視じゅうしした医療いりょう連携れんけい体制たいせい

上記じょうき医療いりょう体制たいせいの確立かくりつを目指めざしている。