僧正そうじょう

僧正そうじょう（そうじょう）は、中国ちゅうごくの南朝なんちょうと日本にっぽんで仏教ぶっきょうの僧そうと尼あまを統括とうかつするために僧侶そうりょが任命にんめいされた官職かんしょく（僧官そうかん）の一ひとつである。

中国ちゅうごく

中国ちゅうごくでは南北なんぼく朝あさ時代じだいの南朝なんちょうにおいて、北朝ほくちょうの沙門しゃもん統みつるに相当そうとうする、仏教ぶっきょう教団きょうだんを統括とうかつする僧官そうかんとして設置せっちされた。宋そう僧そう賛さん寧やすしの『大だい宋そう僧そう史し略りゃく』巻まき中ちゅう「立たて僧正そうじょう」によれば、「僧正そうじょうの「正ただし」とは「政せい」に通つうじる。そして、その始はじまりは前ぜん秦はたの僧そう碧あお（道みち碧あお）である。宋そうの順じゅん帝みかどの昇のぼり明あきら年間ねんかんには法ほう持じを僧正そうじょうとした。また、大明だいめい年間ねんかんには道みち温ゆたかを都邑とゆう（建たて康やすし）の僧正そうじょうに任にんじた。梁りょうの武たけ帝みかどは法ほう超ちょうを都邑とゆうの僧正そうじょうに任にんじ、普通ふつう6年ねん（525年ねん）には法ほう雲くもを大僧正だいそうじょうとし慧とし令れいを僧正そうじょうとした。そして、北きた宋そう初はつに於おいても「天下てんかの各州かくしゅうに僧正そうじょう1員いんが設置せっちされ、徳行とっこうと才能さいのうによって選抜せんばつされ、適任てきにん者しゃが居いない場合ばあいは欠員けついんとされている。」と記しるしている。

百済くだら

新しん羅らは北朝ほくちょう系けいの制度せいどを置おいたことが知しられるが、百済くだらの僧官そうかんについて伝つたえる史料しりょうはない。日本にっぽんでの僧正そうじょうの導入どうにゅうに百済くだら僧そうが関かかわっていたこと、また南朝なんちょうと百済くだらの密接みっせつな関係かんけいから、百済くだらも南朝なんちょうにならって僧正そうじょうを任命にんめいしたのではないかとする説せつがある。

日本にっぽん

日本にっぽんでは推古天皇すいこてんのう32年ねん（624年ねん）4月がつ13日にちに僧正そうじょう・僧都そうずと法ほう頭あたまを任にんずることとし、17日にちに百済くだら僧そうの観かん勒が僧正そうじょうに任命にんめいされた。ある僧そうが斧おので祖父そふを殴なぐった事件じけんをきっかけに、僧侶そうりょの監督かんとくのために置おかれたものである。

律令制りつりょうせいでは、僧官そうかん（日本にっぽんでは僧そう綱つなという）として僧正そうじょう、僧都そうず、律師りっしの3つがあり、僧正そうじょうと僧都そうずの2つには大だい・少すくなの別べつがある。また後年こうねんにはそれぞれに権けん官かんが設置せっちされ、十じゅうの位くらいが成立せいりつした。僧正そうじょうには大僧正だいそうじょう、権けん大僧正だいそうじょう、僧正そうじょう、権けん僧正そうじょうの4つがあり大僧正だいそうじょうが僧官そうかん制せいの頂点ちょうてんに位置いちづけられた。

参考さんこう文献ぶんけん

• 小島こじま憲之のりゆき・直木なおき孝次郎こうじろう・西宮にしのみや一民かずたみ・蔵ぞう中ちゅう進すすむ・毛利もうり正ただし守もり・校こう注ちゅう・訳やく『日本書紀にほんしょき』2（新編しんぺん日本にっぽん古典こてん文学ぶんがく全集ぜんしゅう3）、小学館しょうがくかん、1996年ねん。
• 井上いのうえ光貞みつさだ「日本にっぽんにおける仏教ぶっきょう統制とうせい機関きかんの確立かくりつ過程かてい」、『日本にっぽん古代こだい国家こっかの研究けんきゅう』、岩波書店いわなみしょてん、1965年ねん。井上いのうえ光貞みつさだ著作ちょさく集しゅう第だい1巻かんとして1985年ねん、ISBN 4-00-091001-9。

関連かんれん項目こうもく

• 沙門しゃもん統みつる
• 三蔵さんぞう

外部がいぶリンク

• 世界せかい大だい百科ひゃっか事典じてん 第だい２版はん『僧正そうじょう』 - コトバンク