大判おおばん

慶長けいちょう大判おおばん

万延まんえん大判おおばん

大判おおばん（おおばん）とは、広義こうぎには16世紀せいき以降いこうの日本にっぽんにおいて生産せいさんされた延金のべがね（のしきん/のべきん：槌づちやローラで薄うすく広ひろげた金塊きんかい）の内うち、楕円だえん形がたで大型おおがたのものをいう。小判こばんが単たんに「金かね」と呼よばれるのに対たいし大判おおばんは特とくに「黄金おうごん」と呼よばれ、大判おおばん金きん（おおばんきん）ともいう。

概要がいよう

金貨きんかとして規格きかく化かされたものは、天正てんしょう16年ねん（1588年ねん）、豊臣とよとみ秀吉ひでよしの命いのちで後藤ごとう四郎しろう兵衛ひょうえ家か（京きょう金工きんこう）が製造せいぞうしたのが始はじまりとされる。以後いご時じの権力けんりょく者しゃの命いのちにより文久ぶんきゅう2年ねん（1862年ねん）まで後藤ごとう家か（京都きょうと、後のちに江戸えど）が製造せいぞうし続つづけた。量目りょうめ（質量しつりょう）は、万延まんえん年間ねんかん（1860年ねん）以降いこうに製造せいぞうされたものを除のぞき、京目きょうめ10両りょう（44匁もんめ、約やく165グラム）と一貫いっかんしていた計数けいすう貨幣かへいであったが、その後ごは品位ひんい（純金じゅんきん含有がんゆう量りょう）が時代じだいにより変化へんかしたため秤量ひょうりょう貨幣かへいの性質せいしつを帯おびた。幣ぬさ価かは「金かね一いち枚まい」であり、小判こばんの通貨つうか単位たんい「両りょう」とは異ことなり、小判こばんとの交換こうかん比率ひりつは純金じゅんきん量りょうを参考さんこうに大判おおばん相場そうばが決きめられた（江戸えど時代じだいの一時期いちじきのみは公定こうてい価格かかくが存在そんざいした）。大判おおばんは手作てづくりのため、同種どうしゅの大判おおばんであっても多少たしょう大小だいしょうがある。

略りゃく史し

古来こらい砂金さきんは大口おおぐち取引とりひきに用もちいられてきたが、戦国せんごく時代じだいに入はいり金山かなやまの開発かいはつが活発かっぱつになると金屋かなや（かねや）といった両替りょうがえ商しょう兼けん金きむ細工ざいく師しが登場とうじょうするようになり、練ねり金きん（ねりきん）あるいは竹たけ流りゅう金きん（たけながしきん）といった金塊きんかいを槌づちで叩はたき伸のばし、内部ないぶまで金かねでできていることを証明しょうめいする、判はん金きん（ばんきん）が登場とうじょうした。この「判はん」とは品位ひんいおよび量目りょうめを保障ほしょうする墨書ぼくしょ（ぼくしょ/すみがき）および極印ごくいん（ごくいん）を意味いみする。

この判はん金きんの量目りょうめは金かね一いち枚まい（四よん十じゅう四よん匁もんめ）を標準ひょうじゅんとするもので、高額こうがくの代金だいきんの支払しはらい、借金しゃっきんの返済へんさいの場合ばあいは金屋かなやにおいて判はん金きんを購入こうにゅうし支払しはらいに当あてるのが当時とうじのしきたりであった。戦国せんごく時代じだい頃ごろの金かね一いち枚まいは凡およそ米べい四よん十じゅう～五ご十じゅう石いしに相当そうとうしたという。また戦せんにおいて功績こうせきを挙あげた者ものに対たいする褒美ほうびとしても用もちいられ、江戸えど時代じだいにもこの伝統でんとうが受うけ継つがれ、恩賞おんしょう、贈答ぞうとう用ようには金かね一いち枚まいを単位たんいとする大判おおばんが用もちいられることになった。

中なかでも京都きょうとの金かね細工ざいく師しである後藤ごとう四郎しろう兵衛ひょうえ家かに対たいする信頼しんらいは厚あつく、安土あづち桃山ももやま時代じだいには主おもに豊臣とよとみ家かの、江戸えど時代じだいには必用ひつようある毎ごとに大判おおばん座ざを開設かいせつし徳川とくがわ家かの大判おおばんの鋳造ちゅうぞうを請うけ負おった。

1874年ねん（明治めいじ7年ねん）、小判こばんや分ぶん・朱しゅ単位たんいの金かね銀貨ぎんかとともに、大判おおばんについても天正てんしょう大判おおばん金きんを除のぞき、それぞれの含有がんゆう金銀きんぎん量りょうに基もとづいて新しん貨幣かへい（円えん・銭ぜに・厘りん）との交換こうかんレートが定さだめられた。

種類しゅるい

• 譲葉ゆずりは金きん（無銘むめい大だい板金ばんきん）　16世紀せいき後半こうはん：規格きかく化かされる以前いぜんの大判おおばん。
• 天正てんしょう大判おおばん金きん　天正てんしょう16年ねん（1588年ねん）～慶長けいちょう17年ねん（1612年ねん）
  • 天正てんしょう菱ひし大判おおばん金きん：表ひょうに菱形ひしがたの桐きり刻印こくいんがあり、多おおくのものは埋うめ金きんにより量目りょうめ調整ちょうせいされている。
  • 天正てんしょう長ちょう大判おおばん金きん：普通ふつうタイプの天正てんしょう大判おおばん金きんより縦たてに長ながい。これはウィーン金貨きんかハーモニー1000オンスが2004年ねんに発行はっこうされるまで世界一せかいいち大おおきい金貨きんかであった。
  • 大仏だいぶつ大判おおばん：豊臣とよとみ秀頼ひでよりが京都きょうと方広寺ほうこうじ大仏だいぶつ（京きょうの大仏だいぶつ）および大仏殿だいぶつでん再建さいけんのために造つくらせたといわれる。慶長けいちょう大判おおばん金きんの特徴とくちょうも有ゆうしている。
• 慶長けいちょう大判おおばん金きん　慶長けいちょう期き（1601年ねん頃ごろ） - 延のべ宝たから期き（1673年ねん頃ごろ）
  • 慶長けいちょう笹ささ書しょ大判おおばん金きん：墨書すみがきの花押かおうが笹ささの葉はのような形かたちに見みえ、五代ごだい後藤ごとう徳いさお乗じょうの弟おとうと、長ちょう乗じょうの書しょである。慶長けいちょう大判おおばん金きんのうち最初さいしょ期きのタイプとも考かんがえられている。
  • 明あかり暦れき大判おおばん：明あかり暦れきの大火たいか以降いこう、焼損しょうそん金銀きんぎんにて江戸城えどじょう内ないで製造せいぞうされたとされる。品位ひんいが他たの慶長けいちょう大判おおばん金きんより低ひくい。
• 元禄げんろく大判おおばん金きん　元禄げんろく8年ねん（1695年ねん） - 享とおる保ほ元年がんねん（1716年ねん）：裏面りめんに「元もと」の字じの極印ごくいん（年紀としのり銘めい刻印こくいん）がある。
• 享とおる保ほ大判おおばん金きん　享とおる保ほ10年ねん（1725年ねん） - 天保てんぽう8年ねん（1837年ねん）：1枚まいを7両りょう2分ぶんとする公定こうてい価格かかくが設定せっていされた。
• 天保てんぽう大判おおばん金きん　天保てんぽう9年ねん（1838年ねん） - 万延まんえん元年がんねん（1860年ねん）：享とおる保ほ大判おおばん金きんとよく似にているが品位ひんいが僅わずかに低ひくい。
• 万延まんえん大判おおばん金きん　万延まんえん元年がんねん（1860年ねん） - 文久ぶんきゅう2年ねん（1862年ねん）：量目りょうめ約やく112グラム。表面ひょうめんが「たがね打うち」のものと「のし目打めうち」のものがある。1枚まいを25両りょうとする公定こうてい価格かかくが設定せっていされた。

基本きほん様式ようしき

慶長けいちょう以降いこうの大判おおばんの様式ようしきは、表面ひょうめんの上下じょうげ左右さゆうに丸まる枠わくに五ご三さん桐きり（ごさんのきり）と呼よばれる極印ごくいんが4つあり、「拾ひろえ両りょう後藤ごとう」の文字もじと後藤ごとう家か当主とうしゅの花押かおうが墨書すみがきされている。裏うらには上うえから年紀としのり銘めい極印ごくいん（元禄げんろく大判おおばん金きんのみ）、五ご三さん裸はだか桐きり紋もん極印ごくいん、丸まる亀甲きっこう枠わくに五ご三さん桐きり紋もん極印ごくいん、丸まる枠わくに後藤ごとう花押かおう極印ごくいん、左端ひだりはしに3つの座ざ人じん極印ごくいんがある。表書おもてがきの10両りょうは、幣ぬさ価かではなく、量目りょうめの単位たんいとしての記述きじゅつであるが、「拾ひろえ両りょう」は金かね一いち枚まいを表あらわす大判おおばんの代名詞だいめいしとしての意味いみを持もち、10両りょうに満みたない万延まんえん大判おおばん金きんにも「拾ひろえ両りょう」と書かかれている。

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの貨幣かへい史し