大川おおかわひとみ

おおかわ ひとみ 大川おおかわ ひとみ
生誕せいたん	(1947-03-30) 1947年ねん3月30日にち（77歳さい） 日本にっぽん 兵庫ひょうご県けん芦屋あしや市し
国籍こくせき	日本にっぽん
出身しゅっしん校こう	成安女子短期大学せいあんじょしたんきだいがく意匠いしょう科か
職業しょくぎょう	ファッションデザイナー
活動かつどう期間きかん	1970年ねん～
団体だんたい	株式会社かぶしきがいしゃMILK
影響えいきょうを与あたえたもの	藤原ふじわらヒロシ、NIGO、高橋たかはし盾たて

大川おおかわ ひとみ（おおかわ ひとみ、1947年ねん3月30日にち - ）は日本にっぽんのファッションデザイナーである。1970年ねん、原宿はらじゅくで「MILK」を開業かいぎょうし、その後ご、一貫いっかんして原宿はらじゅくから若者わかもの向むけのファッションを発信はっしんし続つづけている。1980年代ねんだいにはDCブランドの大御所おおごしょの一人ひとりとして評価ひょうかされ、「MILK」のロマンティックで甘あまい装よそおいはロリータ・ファッションの源流げんりゅうであり、ロリータ・ファッションに大おおきな影響えいきょうを与あたえている。また藤原ふじわらヒロシ、高橋たかはし盾たて、NIGOの才能さいのうを発掘はっくつしたことでも知しられている。

MILK開店かいてんまで

2023年ねんの「MILK」原宿はらじゅく店てん

大川おおかわひとみは1947年ねん3月がつ30日にち、兵庫ひょうご県けん芦屋あしや市しに生うまれた。本人ほんにんによれば子こどもの頃ころから絵えを描えがくことと、おしゃれ好すきの両親りょうしんが購入こうにゅうしていた「Harper's_Bazaar」、「VOGUE」などのファッション雑誌ざっしや写真しゃしん集しゅうを読よむのが好すきであった。また小学校しょうがっこう5年生ねんせいの頃ころから「洋服ようふく屋やさんになりたい」との夢ゆめを抱だいていたというが、その原点げんてんは「人ひとと違ちがう何なにかになりたい」との思おもいであった。成安女子短期大学せいあんじょしたんきだいがく意匠いしょう科かに入学にゅうがく後ご、写真しゃしん部ぶに所属しょぞくして写真しゃしん撮影さつえいや作品さくひんを制作せいさくしていた。そして19歳さいの頃ころより「BAZZAR」や「VOGUE」といった雑誌ざっしや、立木たちき義浩よしひろらが撮とるファッション関連かんれんの写真しゃしんの影響えいきょうを受うけて、ファッション写真しゃしんに興味きょうみを持もつようになった。

成安女子短期大学せいあんじょしたんきだいがく卒業そつぎょう後ご、原宿はらじゅくのセントラルアパート内うちにあったポッポというスナックで働はたらいた後のち、1970年ねん4月がつにやはりセントラルアパート内ないでMILKを開業かいぎょうする。セントラルアパートは1958年ねんに建設けんせつされた外国がいこく人じん用ようの賃貸ちんたいアパートであったが、やがて浅井あさい慎まこと平たいら、糸井いとい重しげる里さとらが事務所じむしょを構かまえるようになった。またセントラルアパートの1階かいにはクリエーターらのたまり場ばとなった喫茶店きっさてんのレオンがオープンした。もともと終戦しゅうせん後ご原宿はらじゅくに隣接りんせつする代々木よよぎに建設けんせつされた、士官しかんクラスの米べい軍ぐん宿舎しゅくしゃであったワシントンハイツの影響えいきょうもあり、原宿はらじゅくはアメリカナイズされた雰囲気ふんいきを持もつ街まちとなっており、街まちの雰囲気ふんいきに憧あこがれた若者わかものたちが集あつまっていた。その結果けっか、原宿はらじゅく、とりわけセントラルアパートのレオンは新あたらしい文化ぶんかの発信はっしん地ちになっていく。

大川おおかわひとみ本人ほんにんによれば、「日本にっぽんだったら、原宿はらじゅくが一番いちばんおしゃれかな」と思おもい、「素敵すてきだったしかっこよかった」し「パワーも感かんじ」、「この場所ばしょで何なにかをすれば、絶対ぜったいにかっこよくなるだろうな」との思おもいから原宿はらじゅくを選えらび、中なかでもセントラルアパート内ないにはおしゃれなデザインオフィスが並ならび、クリエーターたちが大勢おおぜい集あつまるようになっていたため、「ここしかない！」と考かんがえてセントラルアパート内ないでの開業かいぎょうを決断けつだんした。しかし大川おおかわひとみには十分じゅうぶんな開業かいぎょう資金しきんは無なかった。「MILK」の開業かいぎょうを支援しえんした不動産ふどうさん業者ぎょうしゃは、お金かねが無なかったためやむを得えず、セントラルアパート内ないの軒下のきしたを借かりるような形かたちで狭せまい場所ばしょにレイアウトを工夫くふうして、テントを張はって店みせの開業かいぎょうに漕こぎつけたと述懐じゅっかいしている。開業かいぎょうした「MILK」は間口まぐちが狭せまく店内てんないでのすれ違ちがいも困難こんなんで、奥行おくゆきは6～7メートルほどの小ちいさく細長ほそながい店みせとなった。

MILKとMILK BOYのヒット

1960年代ねんだい半なかば以降いこう、ファッション産業さんぎょうの小売こうり部門ぶもんは急きゅう成長せいちょうを見みせていた。そのような中なかで原宿はらじゅくや青山あおやま周辺しゅうへんではマンションの一室いっしつを拠点きょてんとしてデザイン、衣服いふくの製作せいさく販売はんばいを行おこなうマンションメーカーと呼よばれる形態けいたいの起業きぎょうが相次あいついた。1960年代ねんだい半なかば以降いこう、原宿はらじゅくや青山あおやま界隈かいわいのマンションメーカーとして起業きぎょうしたブランドには、大川おおかわひとみの「MILK」の他ほか、荒牧あらまき太郎たろうの「マドモワゼル・ノンノン」、松田まつだ光弘みつひろの「ニコル」、川久保かわくぼ玲れいの「コム・デ・ギャルソン」などがある。「MILK」の開店かいてん時じに原宿はらじゅくには「マドモワゼル・ノンノン」くらいしか無なくて、「MILK」は原宿はらじゅくのマンションメーカーの草分くさわけ的てき存在そんざいであった。大川おおかわひとみらマンションメーカーの創始そうし者しゃたちは、大手おおての既存きそんのアパレルメーカーによる大量たいりょう生産せいさんの既製きせい服ふくに対抗たいこうし、デザイナーの個性こせいを生いかした「常つねに新あたらしい個性こせい的てきな服ふく作づくり」を目指めざしていた。

「MILK」はコンセプトととして「少女しょうじょの夢ゆめ」を掲かかげ、かわいくロマンティックでありながら、どこか毒どくを含ふくんだテイストの衣服いふくを作つくっていく。「MILK」は若者わかものたちから強つよい人気にんきを獲得かくとくし、狭せまい店内てんないは客きゃくでいつもごった返がえすようになった。スキンシップが取とれるような店みせの狭せまさもまた若者わかものたちの支持しじを集あつめた。

また当時とうじのアイドルがレコードジャケットに載のる衣装いしょうとして「MILK」を採用さいようしたことがきっかけで、芸能人げいのうじんの衣装いしょうとして使用しようされるようになった。1974年ねんの時点じてんで「MILK」を愛用あいようしていた芸能人げいのうじんには桜田さくらだ淳子じゅんこ、南みなみ沙織さおりの名ながあり。松本まつもとちえこ、松田まつだ聖子せいこ、 松本まつもと伊代いよ、伊藤いとうつかさ、岡田おかだ有希子ゆきこらも「MILK」の服ふくを愛用あいようしていた。

大川おおかわひとみは「MILK」のキュートなイメージが広ひろまっていく中なかでメンズの服ふくも作つくってみたいと考かんがえ、1974年ねんにメンズブランドの「MILK BOY」を始はじめた。「MILK BOY」もやはり郷ごうひろみ、西城さいじょう秀樹ひでき、森もり進一しんいち、田原たはら俊彦としひこら、芸能人げいのうじんが愛用あいようするようになった。またデヴィッド・ボウイやジョン・レノンも「MILK BOY」に足あしを運はこんだ。なお1982年ねんに「MILK BOY」は一時いちじ休業きゅうぎょうして、性別せいべつ、年齢ねんれい、季き節ぶしなどに縛しばられない自由じゆうな発想はっそうをコンセプトとしたプライベートブランド「OBSCURE DESIRE OF BOURGEOISIE」を始はじめるが、1986年ねんになって「MILK BOY」を再開さいかいしている。

DCブランドとロリータ・ファッションへの流ながれの中なかで

1980年代ねんだいに入はいり、「MILK」などのマンションメーカーの中なかから、デザイナーズ＆キャラクターブランド、いわゆるDCブランドへと発展はってんしていくメーカーが現あらわれる。「MILK」はデザイナーを前面ぜんめんに押おし出だしたデザイナーズの代表だいひょう的てきなメーカーの一ひとつとされた。折おりからの好景気こうけいきを背景はいけいに、DCブランドは様々さまざまなスタイルに細分さいぶん化かされていく。そのような中なかで「MILK」はメルヘンティックかつキュートな装よそおいを提案ていあんした。デザイン的てきにはフリルやレースを多用たようし、花はな柄がらがポイントとなるファッションである。そして「an・an」、「non-no」、「Olive」といったファッション雑誌ざっしがバラエディに富とむDCブランドによる装よそおいを提案ていあんすると、若者わかものたちを中心ちゅうしんとしてDCブランドブームが巻まき起おこった。大川おおかわひとみは三宅みやけ一生かずお、山本やまもと耀司、川久保かわくぼ玲れいらと並ならんでDCブランドの大御所おおごしょの一人ひとりとされるようになった。

また大川おおかわひとみの「MILK」は、ロリータ・ファッションの源流げんりゅうであると評価ひょうかされており、ロリータ・ファッションに多大ただいな影響えいきょうを与あたえている。まず「MILK」から始はじまったロマンティックな装よそおいのブランドの世界せかい観かんが深化しんかしていく中なかで、1980年代ねんだい後半こうはん以降いこう、ロリータ・ファッションへと発展はってんしていったと見みなされている。また「MILK」からは「シャーリーテンプル」、「ジェーンマーブル」といったロリータ・ファッションのブランドが独立どくりつしている。

そしてロリータ・ファッションとともに、「MILK」は単たんにかわいいばかりではなく、アナーキーさやミステリアスな感覚かんかくを兼かね備そなえた、いわゆる「原宿はらじゅく系けい」と呼よばれるファッションを代表だいひょうするブランドとしての評価ひょうかもある。

裏うら原ばら系けいとの繋つながり

DCブランドブームはバブル景気けいき崩壊ほうかい後ごの1990年代ねんだいにはその熱気ねっきもすっかり冷さめ、1990年代ねんだい半なかば頃ごろからは、もともとは住宅じゅうたく街がいであった明治めいじ通どおりと表参道おもてさんどうに挟はさまれた裏うら原宿はらじゅくと呼よばれる地域ちいきから、ストリート系けいのファッションがブームを迎むかえることになる。裏うら原ばら系けいとも呼よばれるこのファッションは、1993年ねんに高橋たかはし盾たてとNIGOが裏うら原宿はらじゅくに共同きょうどうで「NOWHERE」を開店かいてんした頃ころから始はじまったとされている。その後ご、裏うら原宿はらじゅくにはストリート系けいのファッションを扱あつかう店舗てんぽが相次あいついで開店かいてんしていく。

裏うら原ばら系けいの中核ちゅうかくに位置いちしていたのが藤原ふじわらヒロシであった。藤原ふじわらは高校こうこう時代じだいに大川おおかわひとみと知しり合あい、毎日まいにちのように「MILK」のアトリエに顔かおを出だしていた。やがて藤原ふじわらは「MILK」のファッションショーでDJを担当たんとうするようになる。大川おおかわひとみは藤原ふじわらヒロシを通つうじて高橋たかはし盾たて、NIGOと知しり合あい、二人ふたりの才能さいのうを認みとめ、服ふくの製作せいさく場所ばしょを提供ていきょうするなどして前述ぜんじゅつの「NOWHERE」の開店かいてんに際さいして援助えんじょを行おこなった。その後ご、高橋たかはし盾たて、NIGOはともにファッションデザイナーとして大おおきな成功せいこうを収おさめることになる。

制作せいさくスタイルと原宿はらじゅく

大川おおかわひとみは2005年ねんに同一どういつの素材そざいで作つくられた犬いぬと人間にんげんの衣類いるいを扱あつかう、犬いぬも人間にんげんも楽たのしめることをコンセプトとした「DOG UNLEASHID BY MILK BOY」を始はじめる。そして2017年ねんには「LAND by MILKBOY」を立たち上あげ、その後ごもファッションデザイナーの仕事しごとを継続けいぞくしている。

大川おおかわひとみ本人ほんにんは、自分じぶんはデザイナーというよりもプロデューサーであると考かんがえていて、「MILK」のイメージ、ポリシーを守まもりつつ、スタッフの個性こせいや情熱じょうねつをプロデュースしながら制作せいさくを行おこなってきた。藤原ふじわらヒロシ、高橋たかはし盾たて、NIGOを見みい出だした際さいも、単たんに仲良なかよくなりたかっただけで後のちの世代せだいに何なにかを残のこそうという意識いしきは無なかったといい、一緒いっしょにいて楽たのしい、才能さいのうやセンスがある仲間なかまたちとのチームが大切たいせつであると考かんがえている。

「MILK」は、若わかい子こが楽たのしめるファッションであることが原点げんてんであり、原宿はらじゅくから一貫いっかんして若わかい子こ向むけのファッションを発信はっしんし続つづけている。純粋じゅんすいかつストレートにかっこよさを感かんじ取とる子こどもの感覚かんかくや、子こどもから大人おとなになろうとしている時期じきのキラキラとしたかわいらしさを大切たいせつにし、流行りゅうこうを先取さきどりしすぎないことを心掛こころがけている。実際じっさいには20代だい以上いじょうの「MILK」の愛用あいよう者しゃも多おおく、若者わかものに限かぎらない客層きゃくそうの厚あつさがある。一方いっぽう、大川おおかわひとみ本人ほんにんはボーイッシュなスタイルを好このみ、「MILK BOY」の服ふくを愛用あいようしており、顔かおが知しれ渡わたると行いきたいところにも行いきにくくなって自由じゆうが制約せいやくされることに加くわえて、お嬢様じょうさまのブランドである「MILK」のイメージを大切たいせつにするために、顔写真かおじゃしんが写うつり込こむ取材しゅざいは基本きほん的てきに避さけていた。メディアへの露出ろしゅつ自体じたい、ブランドイメージへの影響えいきょうを考慮こうりょして消極しょうきょく的てきである。また「MILK BOY」を愛用あいようする大川おおかわひとみは、「かわいい女おんなの子このために、洋服ようふくを作つくろう」といういわば裏方うらかたとして制作せいさくをしており、自分じぶんが着ちゃくたい服ふくばかり作つくってもビジネスとして上手うまくいかないと語かたっている。

そして原宿はらじゅくという場所ばしょが大川おおかわひとみの制作せいさくにとって重要じゅうような位置いちを占しめている。原宿はらじゅくで若者わかものたちの発散はっさんするエネルギーを大川おおかわひとみを始はじめとするスタッフが受うけ止とめていく中なかで、新あらたなデザインが生うまれてくるという。大川おおかわひとみは、「原宿はらじゅくは世界中せかいじゅうで一番いちばんすてきで、強烈きょうれつな個性こせいがあって、心しんを自由じゆうにしてくれる」街まちであると評価ひょうかしている。そして「心しんが自由じゆうであるというベースは物もの作づくりをする人間にんげんにとって、絶対ぜったい必要ひつような条件じょうけん」であり、「ここ（原宿はらじゅく）でずっと仕事しごとできて、すごく幸しあわせ」であると語かたっている。

参考さんこう文献ぶんけん

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