大腸だいちょうポリープ

大腸だいちょうポリープ
手術しゅじゅつ後ご、取とり除のぞかれた大腸だいちょうポリープ
概要がいよう
診療しんりょう科か	消化しょうか器き学がく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10	K63.5 & various
MedlinePlus	000266
eMedicine	med/414

大腸だいちょうポリープ（英えい: Colorectal polyp）とは、大腸だいちょう（直腸ちょくちょう・結腸けっちょう）の腸ちょう壁かべから生しょうじて内うち腔に飛とび出だしている組織そしき塊かたまりの総称そうしょう。多数たすうのポリープを認みとめる場合ばあいは消化しょうか管かんポリポーシスとも呼よぶ。

腺腫せんしゅ性せい（腫瘍しゅよう性せい）と非ひ腺腫せんしゅ性せい（非ひ腫瘍しゅよう性せい）に分類ぶんるいされる。

名称めいしょう

生しょうじる部位ぶいごとに以下いかのように称しょうされる。

• 直腸ちょくちょうポリープ
• S状じょう結腸けっちょうポリープ
• 下した行ぎょう結腸けっちょうポリープ
• 横行おうこう結腸けっちょうポリープ
• 上うえ行こう結腸けっちょうポリープ

症候しょうこうと症状しょうじょう

多おおくのポリープは無む症状しょうじょうであるが、時ときに出血しゅっけつを伴ともない便びん潜せん血ちや下しも血ちとして観察かんさつされる事ことが有あり、大量たいりょう出血しゅっけつは希まれである。症状しょうじょうは、痙攣けいれん、腹痛はらいた、閉塞へいそく（イレウス）。

診断しんだん

下部かぶ内視鏡ないしきょう検査けんさにより確定かくてい診断しんだんを行おこなう。ポリープを認みとめた場合ばあい、内視鏡ないしきょう生せい検けん（組織そしき採集さいしゅう）を行おこない病理びょうり検査けんさにより良性りょうせいか悪性あくせいを調しらべる。

分類ぶんるい

臨床りんしょう的まとには大おおきく以下いかの2つの分類ぶんるいによって評価ひょうか・診断しんだんし、治療ちりょう方法ほうほうを決定けっていしていく。

形態けいたい

形態けいたい観察かんさつ分類ぶんるいには以下いかのものがある。基本きほん的てきに表おもて在ざい型がたまでを「ポリープ」と称しょうし、隆起りゅうき型がた以降いこうは「癌がん」と称しょうされる場合ばあいが多おおい。

• 表おもて在ざい型がた（0型がた）
  • I（隆起りゅうき型がた protruded type）

  I p（有ゆう茎くき型がた pedunculated type）

  I sp（亜あ有ゆう茎くき型がた semipedunculated type）

  I s（無む茎くき型がた sessile type）

  • II（表面ひょうめん型がた superficial type）

II a（表面ひょうめん隆起りゅうき型がた superficial elevated type）

II a + dep

LST-G（側がわ方かた発育はついく型がた腫瘍しゅよう-顆粒かりゅう型がた lateral spreading tumor granular type）

顆粒かりゅう均一きんいつ型がた（homogenous type）・結節けっせつ混在こんざい型がた（nodular mixed type）

LST-NG（側がわ方かた発育はついく型がた腫瘍しゅよう-非ひ顆粒かりゅう型がた lateral spreading tumor non-granular type）

平坦へいたん隆起りゅうき型がた（flat elevated type）・偽にせ陥おちい凹型（pseudo-depressed type）

II b（表面ひょうめん平坦へいたん型がた superficial flat type）

II c（表面ひょうめん陥おちい凹型 superficial depressed type）

II c + II a

II a + II c

I s + II c

• 隆起りゅうき型がた（1型がた）
• 潰瘍かいよう限局げんきょく型がた（2型がた）
• 潰瘍かいよう浸潤しんじゅん型がた（3型がた）
• びまん浸潤しんじゅん型がた（4型がた）
• 分類ぶんるい不能ふのう（5型がた）

表面ひょうめん構造こうぞう

拡大かくだい内視鏡ないしきょうの開発かいはつにより、5～100倍ばいもの倍率ばいりつ観察かんさつが可能かのうとなり、ポリープの微細びさい表面ひょうめん構造こうぞうを観察かんさつし悪性あくせい度どの評価ひょうかが行おこなわれるようになった。以前いぜんは生なま検けんによる病理びょうり検査けんさにて良よ悪性あくしょうの診断しんだんが施行しこうされていたが、現在げんざいでは臨床りんしょう診断しんだんの指標しひょうとして広ひろく施行しこうされている。

• 色素しきそ観察かんさつ：Pit pattern

インジゴカルミンやクリスタルバイオレット（ピオクタニン）による色素しきそ散布さんぷ・色素しきそ染色せんしょくを施行しこうし、表面ひょうめん微細びさい構造こうぞう観察かんさつを行おこない病変びょうへんの評価ひょうかを行おこなう。

工藤くどう進すすむ英えい（秋田あきた赤十字せきじゅうじ病院びょういん）・鶴田つるた修おさむ（久留米大学くるめだいがく）が提唱ていしょうした「工藤くどう・鶴田つるた分類ぶんるい」が一般いっぱん的てきに知しられている。

• I 型がた（正常せいじょう・類るい円形えんけい）
• II 型がた（星ほし芒すすき状じょう）
• III 型がた

• III s 型がた（小型こがた類るい円形えんけい）
• III L 型がた（管状かんじょう型がた）

• IV 型がた

• IV b型がた（branch 樹じゅ枝えだ状じょう型がた）
• IV v型がた（villous 絨毛じゅうもう型がた）

• V 型がた

• V I 型がた軽度けいど不整ふせい・V I 型がた高度こうど不整ふせい（irregular 不規則ふきそく）
• V N 型がた（non structure 無む構造こうぞう）

• 強調きょうちょう画像がぞう観察かんさつ

NBI（Narrow Band Imaging：オリンパス社しゃ）やBLI（Blue LASER Imaging：富士ふじフイルム社しゃ）等とうを用もちいた内視鏡ないしきょう観察かんさつ診断しんだんが行おこなわれている。

大腸だいちょうでは「NBI（狭せま帯域たいいき画像がぞう）観察かんさつ」が主おもに用もちいられており、以前いぜんより様々さまざまな分類ぶんるいが提唱ていしょうされていたが、現在げんざい以下いかの2つが用もちいられている。

• NICE（NBI International Colorectal Endoscopic Classification）分類ぶんるい

世界せかい的てきなコンセンサスとして提唱ていしょうされている分類ぶんるい

• JNET（The Japan NBI Expert Team）分類ぶんるい

日本にっぽんの消化しょうか器き専門医せんもんいが中心ちゅうしんとなって作成さくせいし、日本にっぽんの消化しょうか器き専門医せんもんいで一般いっぱんに用もちいられる分類ぶんるい

病理びょうり

大腸だいちょう癌がん・大腸だいちょうポリープを含ふくめて、「大腸だいちょう腫瘍しゅよう」は病理びょうり学的がくてきには以下いかに分類ぶんるいされる。

管状かんじょう腺腫せんしゅ

鋸歯きょし状じょう腺腫せんしゅ

1. 良性りょうせい上皮じょうひ性せい腫瘍しゅよう
   1. 腺腫せんしゅ（adenoma）
      1. 管状かんじょう腺腫せんしゅ（tubular adenoma）
      2. 管状かんじょう絨毛じゅうもう腺腫せんしゅ（tubulovillous adenoma）
      3. 絨毛じゅうもう腺腫せんしゅ（villous adenoma）
      4. 鋸歯きょし状じょう腺腫せんしゅ（serrated adenoma）
   2. 家族かぞく性せい大腸だいちょう腺腫せんしゅ症しょう（FAP:Familial adenomatous polyposis）
2. 悪性あくせい上皮じょうひ性せい腫瘍しゅよう
   1. 腺せん癌がん（adenocarcinoma）
   2. 内分泌ないぶんぴつ細胞さいぼう癌がん（ecc）
   3. 腺せん扁平へんぺい上皮じょうひ癌がん（asc）
   4. 扁平へんぺい上皮じょうひ癌がん（scc）
3. カルチノイド腫瘍しゅよう（carcinoid tumor）
4. 非ひ上皮じょうひ性せい腫瘍しゅよう
   1. 平滑へいかつ筋すじ腫瘍しゅよう
   2. 神経しんけい性せい腫瘍しゅよう
   3. GIST（Gastrointestinal stomal tumor）
   4. 脂肪しぼう腫しゅ（lipoma）
5. リンパ腫りんぱしゅ（Lymphoma）
   1. B細胞さいぼう性せいリンパ腫りんぱしゅ
   2. T細胞さいぼう性せいリンパ腫りんぱしゅ
   3. Hodgkinリンパ腫りんぱしゅ
6. 分類ぶんるい不能ふのうの腫瘍しゅよう
7. 転移てんい性せい腫瘍しゅよう（metastatic tumor）
8. 非ひ腫瘍しゅよう性せい病変びょうへん
   1. 過か形成けいせい性せいポリープ（hyperplastic polyp）
   2. 過か形成けいせい結節けっせつ（hyperplastic nodule）
   3. 若年じゃくねん性せいポリープ・ポリポーシス（Juvenile polyp）

治療ちりょう

本稿ほんこうでは主おもに「大腸だいちょうポリープ・早期そうき大腸だいちょう癌がん」に対たいする治療ちりょうについて記述きじゅつする。「（進行しんこう）大腸だいちょう癌がん」に対たいする治療ちりょうは大腸だいちょう癌がんの記述きじゅつを参照さんしょう。

治療ちりょう対象たいしょう

大腸だいちょう癌がんの発生はっせい機き序じょとして多おおくの場合ばあい、"adenoma carcinoma sequence"と呼よばれる理論りろんが考かんがえられており、そこでは腺腫せんしゅから癌がんが発生はっせいしてくることが想定そうていされているすなわち、大腸だいちょうポリープの治療ちりょうの目的もくてきは、「大腸だいちょう癌がん」ないし「大腸だいちょう癌がんの発生はっせいとなりうる病変びょうへん」を切除せつじょすることにある。。どのポリープがそれに該当がいとうするかは主おもに内視鏡ないしきょう的てきに臨床りんしょう診断しんだんされる。

1993年ねんに米国べいこくより報告ほうこくされた「National polyp Study」(N Engl J Med 1993; 329)において、大腸だいちょうの腺腫せんしゅ性せいpolypを全すべて切除せつじょすること（clean colon）で大腸だいちょう癌がんの発生はっせいを70%以上いじょう抑制よくせい出来できたという報告ほうこくがなされ、そのことで日本にっぽんでも大腸だいちょうpolypの切除せつじょが大腸だいちょう内視鏡ないしきょう検査けんさにおいて盛さかんに行おこなわれている。ただ日本にっぽんでは、国立こくりつがん研究けんきゅうセンターが中心ちゅうしんとなって「Japan polyp Study」が報告ほうこくされ、また「大腸だいちょうpolyp診療しんりょうガイドライン2014」が公表こうひょうされており、「de novo発生はっせい癌がん」等とうも考慮こうりょされ、適正てきせいな切除せつじょ治療ちりょうと大腸だいちょう内視鏡ないしきょう検査けんさが推奨すいしょうされている。

治療ちりょう選択せんたく

上記じょうきの通とおり、大腸だいちょうにおける「隆起りゅうき性せい病変びょうへん」ないし「大腸だいちょう腫瘍しゅよう」は、「大腸だいちょう癌がん」や「ポリープ」を含ふくめて一括いっかつの概念がいねんで総括そうかつされている。治療ちりょうにおいては主おもに以下いかの2つに大別たいべつして進すすめられる。内視鏡ないしきょう的てき観察かんさつ診断しんだんから上記じょうきのどちらが適応てきおうであるかを診断しんだんし治療ちりょうを選択せんたくしていく。

• 大腸だいちょうポリープ・早期そうき大腸だいちょう癌がん：経過けいか観察かんさつ・内視鏡ないしきょう的てき治療ちりょう（主おもに本稿ほんこうで記述きじゅつ）・外科げか的てき手術しゅじゅつ

大腸だいちょうポリープに関かんしては上記じょうきの通とおりに治療ちりょうが必要ひつようと思おもわれるポリープを治療ちりょうしていく。稀まれに巨大きょだいポリープ等とうの場合ばあいで内視鏡ないしきょう的てき切除せつじょが技術ぎじゅつ的てきに困難こんなんな場合ばあいに外科げか的てき手術しゅじゅつ治療ちりょうが選択せんたくされる場合ばあいもある。

早期そうき大腸だいちょう癌がんは「大腸だいちょう癌がんが粘膜ねんまく上皮じょうひ内ない（m）または、粘膜ねんまく下層かそう（sm）までに留とまるもの」を指さし、このうち「粘膜ねんまく下層かそうに至いたったものでも進達しんたつ度どが浅あさくリンパ節ぶし転移てんいの可能かのう性せいが無ないと思おもわれる病変びょうへん」までに対たいして内視鏡ないしきょう的てき治療ちりょうが行おこなわれる。たとえポリープの大おおきさが小ちいさくても、それ以上いじょうの進行しんこうがあると臨床りんしょう診断しんだんされれば外科げか的てき切除せつじょ・リンパ節ぶし郭かく清きよしの適応てきおうとなる。

• 大腸だいちょう癌がん：外科げか的てき手術しゅじゅつ・リンパ節ぶし郭かく清きよし・化学かがく療法りょうほう（大腸だいちょう癌がんの記述きじゅつを参照さんしょう）

治療ちりょう方法ほうほう

大腸だいちょうポリープ・早期そうき大腸だいちょう癌がんの治療ちりょう法ほうには大おおきく以下いかの3つの治療ちりょう法ほうが存在そんざいする。病変びょうへんの形態けいたい・大おおきさによってそれぞれ治療ちりょう方法ほうほうが選択せんたくされる。

• ポリープ切除せつじょ術じゅつ（polypectomy）
• EMR（内視鏡ないしきょう的てき粘膜ねんまく切除せつじょ術じゅつ）
• ESD（内視鏡ないしきょう的てき粘膜ねんまく下層かそう剥離はくり術じゅつ）

関連かんれん項目こうもく

• 大腸だいちょう癌がん
• 消化しょうか器き学がく
• 内視鏡ないしきょう