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天野あまの鉄夫てつお

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曖昧さ回避 小説しょうせつ家かの「天野あまの哲夫てつお」とは別人べつじんです。

天野あまの 鉄夫てつお（あまの てつお、1912年ねん3月31日にち[1] ‐ 1985年ねん7月がつ24日にち[1]）は、日本にっぽんの農業のうぎょう技術ぎじゅつ者しゃ。

来歴らいれき[編集へんしゅう]

生おい立たち[編集へんしゅう]

国頭くにがみ郡ぐん大宜味おおぎみ村むらに生うまれる[1]。父ちちは金城きんじょう鍜助で[注釈ちゅうしゃく 1]、学校がっこうの教師きょうしであった[2][3]。また大宜味おおぎみ村むらの村長そんちょうになった人物じんぶつである[2][注釈ちゅうしゃく 2]。

1927年ねん（昭和しょうわ2年ねん）、沖縄おきなわ県立けんりつ農林のうりん学校がっこう（現げん：沖縄おきなわ県立けんりつ北部ほくぶ農林のうりん高等こうとう学校がっこう）に入学にゅうがくする[4]。1年生ねんせいの時ときに病気びょうき療養りょうようのため休学きゅうがくし[4]、1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）に同校どうこうの林学りんがく科かを卒業そつぎょうした[1][5]。

中国ちゅうごく大陸たいりく時代じだい[編集へんしゅう]

1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）、農林省のうりんしょう茶ちゃ業ぎょう試験場しけんじょう付属ふぞく茶ちゃ業ぎょう講習こうしゅう所しょを卒業そつぎょうする[1]。その後ご、沖縄おきなわに戻もどり、沖縄おきなわ県けん国頭くにがみ郡ぐん農のう会かい技手ぎしゅを務つとめる[1]。1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）4月がつに、満州まんしゅうに渡わたり、華北かほく交通こうつうに入社にゅうしゃする[1]。北京ぺきん市し通とおり州しゅうにあった農業のうぎょう試験場しけんじょうに勤務きんむし[6]、植物しょくぶつ調査ちょうさを主おもに行いった[6][注釈ちゅうしゃく 3]。

1944年ねん2月がつ（昭和しょうわ19年ねん）、陸軍りくぐんに現地げんち招集しょうしゅうされる。1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）8月がつ15日にちは、北戴河ぺいたいほうにあった陸軍りくぐん病院びょういんで迎むかえた[7]。1946年ねん（昭和しょうわ21年ねん）2月がつ、大陸たいりくから引ひき上あげ、長崎ながさき県けん大村おおむらに着つく[7]。一時いちじ、東京とうきょうに滞在たいざいした後のち、8月がつに沖縄おきなわへ戻もどった[8]。

琉球りゅうきゅう政府せいふ時代じだい[編集へんしゅう]

帰郷ききょう直後ちょくご、池原いけはら貞雄さだおの勧すすめで、沖縄おきなわ県立けんりつ辺土名へんとな高等こうとう学校がっこうで生物せいぶつの教師きょうしとなるが[8]、1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）9月がつに退官たいかんした[8]。その後ご、沖縄おきなわ民みん政府せいふの農務のうむ部ぶに入はいり、技師ぎしとして茶ちゃの栽培さいばいや製造せいぞうの指導しどうに従事じゅうじした[8][注釈ちゅうしゃく 4]。

1952年ねん（昭和しょうわ27年ねん）に琉球りゅうきゅう政府せいふが発足ほっそくすると、経済けいざい局きょく農産のうさん課かの課長かちょう代理だいりに就任しゅうにんする[1][9]。植物しょくぶつ防疫ぼうえきや肥料ひりょう検査けんさ、アメリカ人じん向むけの野菜やさい栽培さいばいの奨励しょうれい、八重山やえやま移住いじゅうした農家のうかの指導しどう、パイナップル栽培さいばいの振興しんこうなどを仕事しごととした[9]。

1957年ねん（昭和しょうわ33年ねん）、経済けいざい局きょく林はやし務つとむ課長かちょうに着任ちゃくにんする[1]。「全ぜん琉球りゅうきゅう緑化りょくか推進すいしん運動うんどう」の計画けいかく立案りつあんと実施じっしに取とり組くむ[10]。この運動うんどうで、日本にっぽん本土ほんどから苗木なえぎ、沖縄おきなわ人じんが多おおく移民いみんしたブラジル、ハワイなどから種子しゅしや金品きんぴんの寄付きふを受うけた[11][注釈ちゅうしゃく 5]。

1964年ねん（昭和しょうわ39年ねん）、経済けいざい局きょく次長じちょうに就任しゅうにん[12]、翌よく1965年ねん（昭和しょうわ40年ねん）には経済けいざい局きょく農林のうりん部長ぶちょうに就任しゅうにんした[12]。

1964年ねん（昭和しょうわ39年ねん）、琉球りゅうきゅう政府せいふが計画けいかく実行じっこうしたボリビア移民いみんの入植にゅうしょくしたオキナワ移住いじゅう地ちで開催かいさいされた、入植にゅうしょく十じゅう周年しゅうねん記念きねん式典しきてんに参加さんかするため、小波蔵こはぐら政光まさみつ行政ぎょうせい副ふく主席しゅせきに随行ずいこうし、ボリビアなど南みなみアメリカ諸国しょこくを訪問ほうもん[12]。この時とき、ボリビアからトックリキワタやジャカランダ（紫雲しうん木き）の種子しゅしを持もち帰かえっている[12]。　

1967年ねん（昭和しょうわ42年ねん）、琉球りゅうきゅう政府せいふを辞じし、大衆たいしゅう金融きんゆう公庫こうこの理事りじに就任しゅうにんする[13]。1972年ねん（昭和しょうわ47年ねん）、沖縄おきなわの本土ほんど復帰ふっきによる大衆たいしゅう金融きんゆう公庫こうこの発展はってん解消かいしょうに合あわせて、理事りじを辞職じしょくした[13]。

業績ぎょうせき[編集へんしゅう]

沖縄おきなわの植物しょくぶつ研究けんきゅう[編集へんしゅう]

1955年ねん、琉球大学りゅうきゅうだいがくの招しょうへい教授きょうじゅとして赴任ふにんした初島はつしま住じゅう彦と共ともに、天野あまのがそれまで採取さいしゅした植物しょくぶつ標本ひょうほんを整理せいりした[14] 。この成果せいかは初島はつしまとの共著きょうちょとして『沖縄おきなわ植物しょくぶつ目録もくろく』として出版しゅっぱんされた[14]。

また、琉球りゅうきゅう王朝おうちょうから沖縄おきなわ戦せんまでの期間きかんの植物しょくぶつ研究けんきゅう史しを調査ちょうさし『沖縄おきなわ県けん史し』に収録しゅうろく[14]、また琉球りゅうきゅうの動物どうぶつ研究けんきゅう史しの調査ちょうさを行おこなっていた高良こうら鉄夫てつおと合冊がっさつして『沖縄おきなわ動植物どうしょくぶつ研究けんきゅう史し』を出版しゅっぱんした[14]。

沖縄おきなわの貝類かいるい標本ひょうほんの収集しゅうしゅう[編集へんしゅう]

1954年ねんより、貝類かいるいの収集しゅうしゅうを始はじめる[15]。天野あまのの貝類かいるい標本ひょうほんを京都大きょうとだい学がくの黒田くろだ徳いさお米まいに鑑定かんていを依頼いらい[15]。この成果せいかは、琉球大学りゅうきゅうだいがく教務きょうむ部ぶ普及ふきゅう課かより1960年ねんに『沖縄おきなわ群島ぐんとう産さん貝類かいるい目録もくろく』として出版しゅっぱんされることになった[15]。

樹木じゅもくの沖縄おきなわ導入どうにゅう[編集へんしゅう]

1964年ねん、オキナワ移住いじゅう地ちで開催かいさいされた、入植にゅうしょく十じゅう周年しゅうねん記念きねん式典しきてんに参加さんかした際さいに、ボリビアから種子しゅしを持もち帰かえったトックリキワタを自宅じたくで栽培さいばい[12]。1970年ねんに初はじめて開花かいかさせた[16]。トックリキワタは、その後ご、沖縄おきなわ県けんの各地かくちで公園こうえん樹じゅや街路がいろ樹じゅとして植樹しょくじゅされた。沖縄おきなわへの導入どうにゅうの経緯けいいから「トックリキワタ」は「南米なんべいざくら」などと呼よばれ、花はなの観賞かんしょう樹木じゅもくとして親したしまれている[注釈ちゅうしゃく 6]。また天野あまのが自宅じたくで栽培さいばいしたというトックリキワタの導入どうにゅう樹木じゅもくは、「天野あまの株かぶ」と命名めいめいされ沖縄おきなわ都市としモノレール線せんのおもろまち駅えきの駅前えきまえ広場ひろばに植うえられている[17]。

またジャカランダの種子しゅしもこの時ときに持もち帰かえり、沖縄おきなわで開花かいかに成功せいこうさせた[12]。ジャカランダの花はなが満開まんかいになったときの情景じょうけいが紫雲しうんが空そらにたなびいているように見みえることから[18]、「紫雲しうん木き」と命名めいめいした[12]。

主おもな著書ちょしょ[編集へんしゅう]

単たん著ちょ[編集へんしゅう]

  • 『沖縄おきなわ動植物どうしょくぶつ研究けんきゅう史し』(1977年ねん、新星しんせい図書としょ出版しゅっぱん)
  • 『琉球りゅうきゅう列島れっとう植物しょくぶつ方言ほうげん集しゅう』(1979年ねん、新星しんせい図書としょ出版しゅっぱん)
  • 『粟国島あぐにじま植物しょくぶつ目録もくろく』(1981年ねん、粟国あぐに村むら教育きょういく委員いいん会かい)
  • 『図鑑ずかん琉球りゅうきゅう列島れっとう有用ゆうよう樹木じゅもく誌し』(1989年ねん、沖縄おきなわ出版しゅっぱん)

共著きょうちょ[編集へんしゅう]

  • 『沖縄おきなわ植物しょくぶつ目録もくろく』共著きょうちょ:初島はつしま住じゅう彦（1959年ねん、沖縄おきなわ生物せいぶつ教育きょういく研究けんきゅう会かい）
  • 『沖縄おきなわ動植物どうしょくぶつ研究けんきゅう史し』共著きょうちょ:高良こうら鉄夫てつお（1977年ねん、沖縄おきなわ動植物どうしょくぶつ研究けんきゅう史し刊行かんこう会かい）
  • 『琉球りゅうきゅう植物しょくぶつ目録もくろく』共著きょうちょ:初島はつしま住じゅう彦 (1977年ねん、でいご出版しゅっぱん)

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 生うまれた時ときの姓名せいめいは「金城きんじょう鉄郎てつお」で[1]、太平洋戦争たいへいようせんそうが終おわった後のち、「天野あまの鉄夫てつお」に改姓かいせい改名かいめいしている[1]。
  2. ^ 1920年ねんから1932年ねんまで3期きにわたり村長そんちょうを務つとめた[3]。大宜味おおぎみ村むらで初はつの民選みんせん村長そんちょうでもある[3]
  3. ^ この頃ころに採取さいしゅした植物しょくぶつ標本ひょうほんを京都大学きょうとだいがくの田川たがわ基はじめ二に、北村きたむら四郎しろう、大井おおい次じ三郎さぶろうなどに送おくり鑑定かんていしてもらったと回想かいそうしている[6]。
  4. ^ 同どう時期じきに換金かんきん性せいの高たかい農作物のうさくもつを導入どうにゅうするために、パイナップル、チョマ、バナナ、キャッサバなどの導入どうにゅうを図はかったが、パイナップル以外いがいは成功せいこうしなかったと回顧かいこしている[9]
  5. ^ この緑化りょくか運動うんどうで約やく339万まん本ほんの植樹しょくじゅを行おこなった[11]
  6. ^ 沖縄おきなわ県けんからボリビアのオキナワ移住いじゅう地ちへの海外かいがい移民いみんを題材だいざいにした、大だい城立じょうりゅう裕ひろしの短編たんぺん小説しょうせつ『南米なんべいざくら』がある。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g h i j k 天野あまの鉄夫てつお文庫ぶんこ展てん展示てんじ目録もくろく (1987, pp. 59)
  2. ^ a b 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 2)
  3. ^ a b c 大宜味おおぎみ村むら史し編集へんしゅう委員いいん会かい 編へん『大宜味おおぎみ村むら史し』大宜味おおぎみ村むら、1978年ねん、538頁ぺーじ。 NCID BN03822533。 
  4. ^ a b 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 3)
  5. ^ 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 4)
  6. ^ a b c 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 10)
  7. ^ a b 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 12)
  8. ^ a b c d 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 13)
  9. ^ a b c 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 14)
  10. ^ 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 16)
  11. ^ a b 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 18)
  12. ^ a b c d e f g 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 19)
  13. ^ a b 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 20)
  14. ^ a b c d 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 23)
  15. ^ a b c 天野あまの、私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう (1988, pp. 25)
  16. ^ 図鑑ずかん　琉球りゅうきゅう列島れっとう有用ゆうよう樹木じゅもく誌し (1989, pp. 200)
  17. ^ “トックリキワタ天野あまの株かぶ”. 沖縄おきなわ県けん環境かんきょう部ぶ環境かんきょう再生さいせい課か. 2016年ねん7月がつ25日にち閲覧えつらん。
  18. ^ 図鑑ずかん　琉球りゅうきゅう列島れっとう有用ゆうよう樹木じゅもく誌し (1989, pp. 317)

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 沖縄おきなわ県立けんりつ図書館としょかん 編へん『天野あまの鉄夫てつお文庫ぶんこ展てん展示てんじ目録もくろく』沖縄おきなわ県立けんりつ図書館としょかん、1987年ねん。 NCID BN10668466。 
  • 天野あまの鉄夫てつお「私わたしの半生はんせいと研究けんきゅう」『史料しりょう編集へんしゅう室しつ紀要きよう』第だい13巻かん、沖縄おきなわ県立けんりつ図書館としょかん史料しりょう編集へんしゅう室しつ、1988年ねん3月がつ、2-26頁ぺーじ、NAID 40004698350。 
  • 天野あまの鉄夫てつお『図鑑ずかん　琉球りゅうきゅう列島れっとう有用ゆうよう樹木じゅもく誌し』沖縄おきなわ出版しゅっぱん、1989年ねん。 NCID BN04073114。 
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