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小型こがた衛星えいせい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ST5による3のマイクロサット。125 kg。
NASAのPharmaSat。5.5kg。
ノルウェーのnCube-2。10cm3

小型こがた衛星えいせい(こがたえいせい、えい: miniaturized satellite, small satellite)は小規模しょうきぼ人工じんこう衛星えいせい明確めいかく定義ていぎはなく、定義ていぎ重量じゅうりょうが1000kg以下いか[1]とするものや、500kg以下いか[2]とするものもある。

歴史れきし

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宇宙うちゅう開発かいはつ初期しょき衛星えいせいはロケットの能力のうりょくてき制約せいやくがあって必然ひつぜんてき小型こがた衛星えいせいとなった。ロケットが大型おおがた高性能こうせいのうされるにしたがって人工じんこう衛星えいせいのサイズも増加ぞうかしていったが、同時どうじにコストめんでの負担ふたん開発かいはつ期間きかん長期ちょうき問題もんだいされるようになった。また、そうして作製さくせいされた多目的たもくてき機能きのう衛星えいせい喪失そうしつした場合ばあい影響えいきょう必然ひつぜんてきおおきくなってしまった。

冷戦れいせん終結しゅうけつした1990年代ねんだいはいると、政治せいじてき経済けいざいてき状況じょうきょう世界せかいてき変化へんか[1]技術ぎじゅつ革新かくしんにより小型こがた衛星えいせいでも大型おおがた衛星えいせい遜色そんしょくない機能きのう搭載とうさいできるようになり[3]Smaller, Faster, Cheaper (よりちいさく、よりはやく、より安価あんかに) の標語ひょうごもと小型こがた人工じんこう衛星えいせい開発かいはつ利用りよう注目ちゅうもくあつめるようになった[4][5]とくにアメリカは小型こがた開発かいはつ期間きかんみじか人工じんこう衛星えいせい開発かいはつ構想こうそう次々つぎつぎしていった(イリジウム衛星えいせいニュー・ミレニアム計画けいかくSMEX)。

教育きょういく機関きかんでは、イギリスのサリー大学だいがく英語えいごばんベンチャー企業きぎょうサリー・サテライト・テクノロジー設立せつりつし、大学だいがくでの教育きょういく研究けんきゅう目的もくてきとした小型こがた衛星えいせい事業じぎょうはじまる[1]。1999ねんにはCubeSat開発かいはつされ、現在げんざい世界せかい各国かっこく大学だいがく研究所けんきゅうじょ教育きょういくてき衛星えいせい開発かいはつ事業じぎょう参入さんにゅうしている。アメリカでは複数ふくすう大学だいがく研究けんきゅう機関きかん共同きょうどうして、CubeSat90軌道きどうじょう配置はいちする地球ちきゅう観測かんそくミッションを計画けいかくしている[6]

近年きんねん観測かんそく機器きき発達はったつにより要求ようきゅうされる衛星えいせいおおきさが減少げんしょうし、すうじゅうねんまえ大型おおがた衛星えいせい同等どうとう能力のうりょくちょう小型こがた人工じんこう衛星えいせい登場とうじょうはじめている[7][8]。また、ナノサットクラス(5kg以下いか)の衛星えいせいでもスラスター装置そうち搭載とうさいするものがはじめている[6]。このような推進すいしん装置そうちによって、ちょう小型こがた衛星えいせいによる衛星えいせいコンステレーション構成こうせい軌道きどう変更へんこう運用うんよう終了しゅうりょう大気圏たいきけんさい突入とつにゅう処分しょぶんといった利用りよう期待きたいされる。 小型こがた衛星えいせいはほとんどが専用せんようようロケットではなく、ピギーバック方式ほうしきによってげられてきた。近年きんねん大型おおがたしつつあり、それにともない、余剰よじょう能力のうりょくえつつあるため、げの機会きかいえている。2016ねんには、10ねんまえくらべて10ばいものすうがあった[5]

日本にっぽん

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日本にっぽんはつ人工じんこう衛星えいせいおおすみは1970ねんげられ、重量じゅうりょうは23.8kgの小型こがた人工じんこう衛星えいせいだった。

日本にっぽんアマチュア無線むせん連盟れんめいは1986ねんふじ1ごう開発かいはつした。大学だいがく機関きかんでは、2002ねん千葉工業大学ちばこうぎょうだいがくくじら生態せいたい観測かんそく衛星えいせい開発かいはつしたのをはじめとし、いくつかの大学だいがく人工じんこう衛星えいせいピギーバック衛星えいせいとしてげられている。民間みんかん企業きぎょうではかがやきまいど1ごうが2009ねんげられている。

JAXAなどの国家こっか宇宙うちゅう機関きかんでも技術ぎじゅつ実証じっしょう実験じっけんねて若手わかて研究けんきゅうしゃ経験けいけんをつませるために小型こがた人工じんこう衛星えいせいれいめいμみゅー-LabSatなど)の開発かいはつおこなってきた。

2008ねんにはちょう小型こがた衛星えいせいのベンチャー企業きぎょうアクセルスペース設立せつりつされた[9]。2009ねんには小型こがた衛星えいせい補正ほせい予算よさんが2200まんえんけられた。ただしその見直みなお事業じぎょうにおいて600まん執行しっこう停止ていしとなっている[10]

2022ねんには国立こくりつ天文台てんもんだい東京大学とうきょうだいがく京都大学きょうとだいがくによるちょう小型こがた位置いち天文てんもん観測かんそく衛星えいせいナノ・ジャスミンげられる予定よていであり、ちょう小型こがた衛星えいせい本格ほんかくてき科学かがく利用りようはじめられている[8]公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん無人むじん宇宙うちゅう実験じっけんシステム研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう開発かいはつしている地球ちきゅう観測かんそくよう小型こがた衛星えいせいASNAROは、海外かいがいへの輸出ゆしゅつねらって開発かいはつされており、2014ねん光学こうがく衛星えいせいが、2018ねんにレーダー衛星えいせいげられている。

2012ねん大阪工業大学おおさかこうぎょうだいがく開発かいはつした世界せかいはつ電気でんき推進すいしんロケットエンジンによるちょう小型こがた人工じんこう衛星えいせいプロイテレス」を搭載とうさいしたPSLV-C21ロケットがインド宇宙うちゅう研究けんきゅう機関きかん(ISRO)サティシュ・ダワン宇宙うちゅうセンターから発射はっしゃされた。

分類ぶんるい

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ナノサット – ESTCube-1

小型こがた人工じんこう衛星えいせいはさらに重量じゅうりょうによって以下いかのように分類ぶんるいされる。しかし、この資料しりょうによってバラつきがある。

上記じょうき分類ぶんるいとはまたべつに、日本にっぽん固有こゆう分類ぶんるい存在そんざいする。以下いか記載きさいするものは2009ねん制定せいていされた日本にっぽん宇宙うちゅう基本きほん計画けいかくにおける定義ていぎである[11]

  • 小型こがた衛星えいせい - 100kgから1000kg程度ていど
  • ちょう小型こがた衛星えいせい - 100kg以下いか

ちょう小型こがた衛星えいせい課題かだい

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ちょう小型こがた衛星えいせいはほとんどがピギーバック方式ほうしきによってげられてきた。それによってコストを大幅おおはばおさえることが出来できたが、この方式ほうしきではしゅ衛星えいせいつねさい優先ゆうせんされるため、小型こがた衛星えいせいがわ時期じき軌道きどうといった様々さまざま制約せいやくせられてしまう。そのため、今後こんごちょう小型こがた衛星えいせい市場いちば発達はったつのためには、ちょう小型こがた衛星えいせい専用せんよう手段しゅだん確立かくりつもとめられている[7]。また他国たこく衛星えいせい地上ちじょうとの電波でんぱ障害しょうがい防止ぼうしするための国際こくさいてき調整ちょうせい時間じかんがかかるという問題もんだいてんもある[7]

以前いぜんより手軽てがる軌道きどう投入とうにゅうできるようになった反面はんめん、これらの衛星えいせいには宇宙うちゅうよう規格きかく部品ぶひんではなく、おも半導体はんどうたい関係かんけい中心ちゅうしん入手にゅうしゅ容易ようい部品ぶひん使用しようしている場合ばあいおおいことや事前じぜん試験しけんによる信頼しんらいせい確保かくほ品質ひんしつ管理かんりとうふくめて技術ぎじゅつてき不十分ふじゅうぶん衛星えいせいえ、短期間たんきかん機能きのう停止ていしすることによりスペースデブリするれいすくなからずある。また、地上ちじょうきょく運営うんえい十分じゅうぶん設備せつび経験けいけん管制かんせい体制たいせいととのっていないため、予定よていしていた期間きかんより短期間たんきかん運用うんよう終了しゅうりょうするれいもある。これらの機能きのう停止ていしした衛星えいせい軌道きどうによってはすうじゅう年間ねんかんにわたり軌道きどうじょうまるものもあり、適切てきせつ軌道きどう離脱りだつ措置そちらないかぎり、衛星えいせい宇宙うちゅうステーションとう活動かつどう悪影響あくえいきょうあたえる可能かのうせいがある。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c 折井おりいたけし小型こがた衛星えいせい動向どうこう応用おうよう」『会報かいほう宇宙うちゅう- 21世紀せいき日本にっぽん宇宙うちゅう戦略せんりゃくだい54ごう日本にっぽん経済けいざい団体だんたい連合れんごうかい 宇宙うちゅう開発かいはつ利用りよう促進そくしん会議かいぎ、2006ねん3がつ、pp. 173-184。 
  2. ^ a b c d e Satellite Classification”. SSHP. 2010ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  3. ^ 小型こがたちょう小型こがた衛星えいせい近年きんねん傾向けいこう展望てんぼう
  4. ^ INTRODUCTION to Small Satellites”. SSHP. 2008ねん6がつ17にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2010ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  5. ^ a b ちょう小型こがた衛星えいせい急増きゅうぞう 民間みんかん企業きぎょう注目ちゅうもく”. NHK (2016ねん1がつ13にち). 2016ねん8がつ20日はつか時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2019ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  6. ^ a b 小型こがた宇宙うちゅう衛星えいせい技術ぎじゅつ競争きょうそう ―NANO・PICOは国際こくさい標準ひょうじゅん技術ぎじゅつ―(大型おおがたふくつぎ利用りようから最適さいてき小型こがた利用りようへ)”. エアワールド2009ねん9がつごう抜粋ばっすい. 2010ねん5がつ1にち閲覧えつらん
  7. ^ a b c 1しゃに1だい人工じんこう衛星えいせい”. 日経にっけいエレクトロニクス2009ねん5がつ18にちごう. 2010ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  8. ^ a b 日本にっぽんはつ位置いち天文てんもん観測かんそく衛星えいせい「ナノ・ジャスミン」、2011ねん8がつ打上うちあ”. sorae.jp (2010ねん4がつ12にち). 2010ねん4がつ15にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2010ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  9. ^ アクセルスペースしゃ会社かいしゃ概要がいよう”. 2010ねん5がつ1にち閲覧えつらん
  10. ^ 2009年度ねんど補正ほせい予算よさん見直みなおしについて 「最先端さいせんたんちょう小型こがた衛星えいせいぐん開発かいはつつうじた宇宙うちゅう利用りよう裾野すその拡大かくだい”. 2010ねん5がつ1にち閲覧えつらん
  11. ^ 宇宙うちゅう基本きほん計画けいかく”. 2010ねん5がつ1にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 川島かわしま, レイ『キューブサット物語ものがたり~ちょう小型こがた手作てづく衛星えいせい宇宙うちゅうへ』エクスナレッジ、2005ねんISBN 978-4767803999 
  • 宮崎みやざき, 康行やすゆき人工じんこう衛星えいせいをつくる−設計せっけいからげまで−』ム社むしゃ、2011ねんISBN 978-4274503719 
  • 東北大学とうほくだいがくちょう小型こがた衛星えいせい開発かいはつチーム『マイクロサット開発かいはつ入門にゅうもん東北大学とうほくだいがく出版しゅっぱんかい、2011ねんISBN 978-4861631597 

関連かんれん項目こうもく

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