就業しゅうぎょう制限せいげん

就業しゅうぎょう制限せいげん（しゅうぎょうせいげん）とは、労働ろうどう者しゃに有害ゆうがいな影響えいきょうの及およぶことを防ふせぐため、一定いっていの労働ろうどう者しゃの一定いっていの業務ぎょうむへの就業しゅうぎょうを制限せいげんもしくは禁止きんしすることをいう。禁止きんしの場合ばあいは特とくに就業しゅうぎょう禁止きんしともいう。

日本にっぽんでは労働ろうどう基準きじゅん法ほう、労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほうをはじめとする諸法しょほう令れいにより、労働ろうどう者しゃを労働ろうどう災害さいがいや職業病しょくぎょうびょうその他た著いちじるしい健康けんこう障害しょうがいから守まもるため、事業じぎょう主ぬしに必要ひつような措置そちを講こうずることを義務ぎむづけている。

労働ろうどう基準きじゅん法ほう

労働ろうどう基準きじゅん法ほう上じょうの就業しゅうぎょう制限せいげんは、年少ねんしょう者しゃ及および妊産婦にんさんぷに対たいする規制きせいを定さだめた第だい6章しょう及および第だい6章しょうの2の各かく条じょうに定さだめられている。

制限せいげんの要ようは危険きけん有害ゆうがい業務ぎょうむと坑内こうない業務ぎょうむであり、年少ねんしょう者しゃについては年少ねんしょう者しゃ労働ろうどう基準きじゅん規則きそくで、妊産婦にんさんぷ（一部いちぶ、一般いっぱんの女性じょせいも含ふくむ)については女性じょせい労働ろうどう基準きじゅん規則きそくにて具体ぐたい的てきな細目さいもくを定さだめている。また、これらの者ものの労働ろうどう時間じかんについても一般いっぱんの労働ろうどう者しゃよりも厳きびしい規制きせい（時間じかん外がい労働ろうどう・深夜しんや業ぎょうの原則げんそく禁止きんし等とう）をかけている。

詳細しょうさいは「危険きけん有害ゆうがい業務ぎょうむ」および「坑内こうない労働ろうどう」を参照さんしょう

労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほう

有ゆう資格しかく者しゃに限かぎる

第だい61条じょう（就業しゅうぎょう制限せいげん）

1. 事業じぎょう者しゃは、クレーンの運転うんてんその他たの業務ぎょうむで、政令せいれいで定さだめるものについては、都道府県とどうふけん労働ろうどう局きょく長ちょうの当該とうがい業務ぎょうむに係かかる免許めんきょを受うけた者もの又または都道府県とどうふけん労働ろうどう局長きょくちょうの登録とうろくを受うけた者ものが行おこなう当該とうがい業務ぎょうむに係かかる技能ぎのう講習こうしゅうを修了しゅうりょうした者ものその他た厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいで定さだめる資格しかくを有ゆうする者ものでなければ、当該とうがい業務ぎょうむに就つかせてはならない。
2. 前項ぜんこうの規定きていにより当該とうがい業務ぎょうむにつくことができる者もの以外いがいの者ものは、当該とうがい業務ぎょうむを行くだりなつてはならない。
3. 第だい一いち項こうの規定きていにより当該とうがい業務ぎょうむにつくことができる者ものは、当該とうがい業務ぎょうむに従事じゅうじするときは、これに係かかる免許めんきょ証しょうその他たその資格しかくを証しょうする書面しょめんを携帯けいたいしていなければならない。
4. 職業しょくぎょう能力のうりょく開発かいはつ促進そくしん法ほう（昭和しょうわ44年ねん法律ほうりつ第だい64号ごう）第だい24条じょう第だい1項こう（同どう法ほう第だい27条じょうの2第だい2項こうにおいて準用じゅんようする場合ばあいを含ふくむ。）の認定にんていに係かかる職業しょくぎょう訓練くんれんを受うける労働ろうどう者しゃについて必要ひつようがある場合ばあいにおいては、その必要ひつようの限度げんどで、前ぜん三さん項こうの規定きていについて、厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいで別段べつだんの定さだめをすることができる。

第だい61条じょうにより免許めんきょを必要ひつようとする業務ぎょうむは、労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい規則きそく別表べっぴょう第だい二にに示しめされている23業務ぎょうむである。免許めんきょ試験しけんは、厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいで定さだめる区分くぶんごとに、指定してい試験しけん機関きかんが行おこなう（第だい75条じょうの2）。一方いっぽう、技能ぎのう講習こうしゅうを必要ひつようとする業務ぎょうむは、労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほう別表べっぴょう第だい十じゅう八はちに示しめされていて、講習こうしゅうは都道府県とどうふけん労働ろうどう局長きょくちょうの登録とうろくを受うけた教習きょうしゅう機関きかん（都道府県とどうふけん労働ろうどう局長きょくちょう登録とうろく教習きょうしゅう機関きかん）が行おこなう（第だい77条じょう）。

2項こうは、「労働ろうどう者しゃ」に限定げんていされず何人なんにんたるを問とわず適用てきようされる規定きていである。従したがって、例たとえば建設けんせつ現場げんばにおいて、個人こじん事業じぎょう主ぬしや一人ひとり親方おやかたが無む資格しかくで移動いどう式しきクレーンの運転うんてんなどを行おこなったとすれば、当然とうぜん本条ほんじょう違反いはんとなる。

4項こうの「別段べつだんの定さだめ」について、事業じぎょう者しゃは、訓練くんれん生せいに技能ぎのうを修得しゅうとくさせるため所定しょていの業務ぎょうむに就つかせる必要ひつようがある場合ばあいにおいて、次つぎの措置そちを講こうじたときは、第だい61条じょう1項こうの規定きていにかかわらず、職業しょくぎょう訓練くんれん開始かいし後ご6月がつ（訓練くんれん期間きかんが6月がつの訓練くんれん科かに係かかる訓練くんれん生せいで、所定しょていの業務ぎょうむに就つかせるものにあっては5月、当該とうがい訓練くんれん科かに係かかる訓練くんれん生せいで、所定しょていの業務ぎょうむに就つかせるものにあっては3月がつ）を経過けいかした後のちは、訓練くんれん生せいを当該とうがい業務ぎょうむに就つかせることができる（規則きそく第だい42条じょう1項こう）。事業じぎょう者しゃは、訓練くんれん生せいに技能ぎのうを修得しゅうとくさせるため「可燃かねん性せいガス及および酸素さんそを用もちいて行おこなう金属きんぞくの溶接ようせつ、溶断ようだん又または加熱かねつの業務ぎょうむ」につかせる必要ひつようがある場合ばあいにおいて、次つぎの措置そちを講こうじたときは、第だい61条じょう1項こうの規定きていにかかわらず、職業しょくぎょう訓練くんれん開始かいし後ご直ただちに訓練くんれん生せいを当該とうがい業務ぎょうむにつかせることができる（規則きそく第だい42条じょう2項こう）。この場合ばあいの当該とうがい訓練くんれん生せいについては第だい61条じょう2項こうの規定きていは、適用てきようしない（規則きそく第だい42条じょう3項こう）。

1. 訓練くんれん生せいが当該とうがい業務ぎょうむに従事じゅうじする間あいだ、訓練くんれん生せいに対たいし、当該とうがい業務ぎょうむに関かんする危険きけん又または健康けんこう障害しょうがいを防止ぼうしするため必要ひつような事項じこうを職業しょくぎょう訓練くんれん指導しどう員いんに指示しじさせること。
2. 訓練くんれん生せいに対たいし、当該とうがい業務ぎょうむに関かんし必要ひつような安全あんぜん又または衛生えいせいに関かんする事項じこうについて、あらかじめ、教育きょういくを行おこなうこと。

この規定きていは、1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）施行しこうの労働ろうどう基準きじゅん法ほう第だい49条じょうに「危険きけん業務ぎょうむの就業しゅうぎょう制限せいげん」として規定きていされ、1972年ねん（昭和しょうわ47年ねん）の労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほう施行しこう時じに危険きけんの区分くぶんをより細こまかくして同どう法ほうに移うつされた。

労働ろうどう基準きじゅん法ほう第だい49条じょう（危険きけん業務ぎょうむの就業しゅうぎょう制限せいげん）※昭和しょうわ22年ねん当時とうじの条文じょうぶん

1. 使用しよう者しゃは、経験けいけんのない労働ろうどう者しゃに、運転うんてん中ちゅうの機械きかい又または動力どうりょく伝動でんどう装置そうちの危険きけんな部分ぶぶんの掃除そうじ、注油ちゅうゆ、検査けんさ又または修繕しゅうぜんをさせ、運転うんてん中ちゅうの機械きかい又または動力どうりょく伝動でんどう装置そうちに調帯しらべおび又または調しらべ索さくの取付とりつけ又または取と外そとをさせ、動力どうりょくによる起重機きじゅうきの運転うんてんをさせ、その他た危険きけんな業務ぎょうむに就つかせてはならない。
2. 使用しよう者しゃは、必要ひつような技能ぎのうを有ゆうしない者ものを特とくに危険きけんな業務ぎょうむに就つかせてはならない。
3. 前ぜん二に項こうの業務ぎょうむの範囲はんい、経験けいけん及および技能ぎのうは、命令めいれいで定さだめる。

疾病しっぺいによる

第だい68条じょう（病者びょうしゃの就業しゅうぎょう禁止きんし）

事業じぎょう者しゃは、伝染でんせん性せいの疾病しっぺいその他たの疾病しっぺいで、厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいで定さだめるものにかかつた労働ろうどう者しゃについては、厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいで定さだめるところにより、その就業しゅうぎょうを禁止きんししなければならない。

1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）施行しこうの労働ろうどう基準きじゅん法ほう第だい51条じょうに規定きていされ、1972年ねん（昭和しょうわ47年ねん）の労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほう施行しこう時じに同どう法ほうに移うつされた。病者びょうしゃを就業しゅうぎょうさせることにより、本人ほんにんならびに他たの労働ろうどう者しゃに及およぼす悪影響あくえいきょうを考慮こうりょして規定きていされたものであるが、その運用うんように際さいしては、まず、その労働ろうどう者しゃの疾病しっぺいの種類しゅるい、程度ていど、これについての産業さんぎょう医い等とうの意見いけん等とうを勘案かんあんして、できるだけ配置はいち転換てんかん、作業さぎょう時間じかんの短縮たんしゅくその他た必要ひつような措置そちを講こうずることにより就業しゅうぎょうの機会きかいを失しつなわせないよう指導しどうすることとし、やむを得えない場合ばあいに限かぎり禁止きんしをする趣旨しゅしであり、種々しゅじゅの条件じょうけんを十分じゅうぶんに考慮こうりょして慎重しんちょうに判断はんだんすべきものであること（昭和しょうわ47年ねん9月がつ18日にち基もと発はつ601号ごうの1）。なお、平成へいせい12年ねんの改正かいせい法ほう施行しこうにより、就業しゅうぎょう禁止きんしの対象たいしょうから「自じ傷きず他た害がいのおそれのある者もの」が削除さくじょされた。「厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいで定さだめるもの」とは以下いかのとおりである（規則きそく第だい61条じょう1項こう）。

1. 病毒びょうどく伝播でんぱのおそれのある伝染でんせん性せいの疾病しっぺいにかかった者もの（伝染でんせん予防よぼうの措置そちをした場合ばあいを除のぞく）
   • 「病毒びょうどく伝播でんぱのおそれのある伝染でんせん性せいの疾病しっぺい」とは、伝染でんせんさせるおそれが著いちじるしいと認みとめられる結核けっかくにかかっている者ものがあることとされ、「伝染でんせん予防よぼうの措置そち」とは、ツベルクリン皮かわ内ない反応はんのう陽性ようせい者しゃのみに接せっする業務ぎょうむに就つかせることをいう（平成へいせい12年ねん3月がつ30日にち基もと発はつ第だい207号ごう）。
2. 心臓しんぞう、腎臓じんぞう、肺はい等ひとしの疾病しっぺいで労働ろうどうのため病勢びょうせいが著いちじるしく増悪ぞうあくするおそれのあるものにかかった者もの
3. 前ぜん各号かくごうに準じゅんずる疾病しっぺいで厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんが定さだめるものにかかった者もの
   • 感染かんせん症しょうの予防よぼう及および感染かんせん症しょうの患者かんじゃに対たいする医療いりょうに関かんする法律ほうりつ第だい18条じょう、同どう施行しこう規則きそく第だい11条じょうにより、1類るい感染かんせん症しょうの患者かんじゃ及および2類るい感染かんせん症しょう、3類るい感染かんせん症しょう又または新型しんがたインフルエンザ等とう感染かんせん症しょうの患者かんじゃについて、感染かんせん症しょうの種類しゅるいに応おうじて、多数たすうの者ものに接触せっしょくする業務ぎょうむや飲食いんしょく物ぶつに直接ちょくせつ接触せっしょくする業務ぎょうむへの就業しゅうぎょうが制限せいげんされる。

事業じぎょう者しゃは、この規定きていにより、就業しゅうぎょうを禁止きんししようとするときは、あらかじめ、産業さんぎょう医いその他た専せん門もんの医師いしの意見いけんをきかなければならない（規則きそく第だい61条じょう2項こう）。就業しゅうぎょう上じょうの措置そちに関かんする医学いがく的てきな判断はんだんは、医師いしのみが行おこなえる業務ぎょうむであり、職場しょくばの状況じょうきょうを把握はあくした産業さんぎょう医いが行おこなうことが期待きたいされていることから、事業じぎょう場じょうにおいては、「事業じぎょう場じょうにおける治療ちりょうと職業しょくぎょう生活せいかつの両立りょうりつ支援しえんのためのガイドライン」（平成へいせい28年ねん2月がつ23日にち基もと発はつ0223第だい5号ごう）等とうを踏ふまえて、少すくなくとも、疾病しっぺいのある労働ろうどう者しゃを就労しゅうろうさせることにより当該とうがい疾病しっぺいを増悪ぞうあくさせないよう、主治医しゅじいが作成さくせいした病状びょうじょうや就業しゅうぎょう継続けいぞくの可否かひ等とうに関かんする書面しょめん等とうが提出ていしゅつされた場合ばあいには、産業さんぎょう医いが主治医しゅじい等とうと連携れんけいして就業しゅうぎょう上じょうの措置そち等とうに関かんする意見いけんを述のべ、当該とうがい意見いけん等とうを勘案かんあんして、事業じぎょう者しゃは、必要ひつように応おうじて、適切てきせつな就業しゅうぎょう上じょうの措置そち等とうを行おこなうことが必要ひつようである。

病者びょうしゃの就業しゅうぎょう禁止きんしは、一般いっぱん的てきな病者びょうしゃの就業しゅうぎょう禁止きんしと、特定とくていの業務ぎょうむへの就業しゅうぎょう禁止きんしとに大別たいべつされ、第だい68条じょうは主おもに前者ぜんしゃについて定さだめる。後者こうしゃについて定さだめた規定きてい（鉛なまり中毒ちゅうどく予防よぼう規則きそく第だい57条じょう、四よんアルキル鉛なまり中毒ちゅうどく予防よぼう規則きそく第だい26条じょう、高気圧こうきあつ作業さぎょう安全あんぜん衛生えいせい規則きそく第だい41条じょう）の本質ほんしつは「就業しゅうぎょう禁止きんし」というよりは当該とうがい特定とくていの業務ぎょうむからの「作業さぎょう転換てんかん」である。

参考さんこう文献ぶんけん

• 畠中はたけなか信夫しのぶ著ちょ「労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほうのはなし［改訂かいてい版ばん］」中ちゅう災わざわい防ぼう新書しんしょ、2006年ねん5月がつ15日にち発行はっこう

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外部がいぶリンク

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• 「事業じぎょう場じょうにおける治療ちりょうと職業しょくぎょう生活せいかつの両立りょうりつ支援しえんのためのガイドライン」を公表こうひょうします。 厚生こうせい労働省ろうどうしょう