山吹やまぶきの一枝かずえ

『山吹やまぶきの一枝かずえ』（やまぶきのひとえだ）は、は正岡子規まさおかしきと新海非風にいのみひふう（にいのみ ひふう、1870年ねん - 1901年ねん）による連作れんさく小説しょうせつで、日本にっぽん最初さいしょの野球やきゅう小説しょうせつとみられている。

子規しきが最もっともベースボールに熱中ねっちゅうしていた1889年ねん（明治めいじ22年ねん）から執筆しっぴつが始はじまり、1890年ねん（明治めいじ23年ねん）初期しょきまでに17回かいが書かかれたが、未完みかんに終おわった。和紙わしに毛筆もうひつで書かかれ、合計ごうけい81枚まい。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後こう発見はっけんされたという風説ふうせつがあるが、実際じっさいには改造かいぞう社しゃ版はん『子規しき全集ぜんしゅう』第だい十じゅう二に巻かん（1930年ねん）に収録しゅうろくされている。

主人公しゅじんこうは医学いがく生せいの紀尾井きおい三郎さぶろうで、ベースボールの試合しあいで出会であった女学生じょがくせいと、芸者げいしゃとの間あいだの恋こいの軋轢あつれきを描えがいている。第だい七なな回かい「投球とうきゅう会かい」に、ベースボールをプレーするシーンがあり、実況じっきょう中継ちゅうけいのように描写びょうしゃされている。

共著きょうちょ者しゃである非ひ風かぜは子規しきと同おなじ松山まつやま市し出身しゅっしんの俳人はいじんで、高浜たかはま虚子きょしの小説しょうせつ『俳諧はいかい師し』のモデルとされる。1890年ねん12月に近衛このえ砲ほう兵隊へいたいに入営にゅうえいして軍人ぐんじんを目指めざすが、肺病はいびょうのために陸軍りくぐん士官しかん学校がっこうを中退ちゅうたいし、自暴自棄じぼうじきな生活せいかつを送おくって夭折ようせつした。1895年ねん（明治めいじ28年ねん）に子規しきが五百木いおき瓢ひさご亭ていに宛あてた手紙てがみで、非ひ風ふうとは疎遠そえんになっていることが認みとめられている。