山村さんそん庄しょう之の助すけ

山村さんそん 庄しょう之の助すけ（やまむら しょうのすけ、1889年ねん2月がつ1日にち - 1959年ねん3月18日にち）は、日本にっぽんの政治せいじ家か。大阪おおさか府ふ初はつの民間みんかん出身しゅっしん副ふく知事ちじ、元もと衆議院しゅうぎいん議員ぎいん。赤間あかま文三ぶんぞう知事ちじの下したで戦後せんごの疲弊ひへいした府ふ財政ざいせいの再建さいけんに貢献こうけんした。衆議院しゅうぎいん議員ぎいん在職ざいしょく中ちゅうに死去しきょ。

来歴らいれき

1889年ねん（明治めいじ22年ねん）2月がつ1日にち、奈良なら県けん宇陀うだ郡ぐん室生むろう村むら（現げん・宇陀うだ市し）に生うまれる。家いえは400年ねん以上いじょう続つづく庄屋しょうやであった。1908年ねん（明治めいじ41年ねん）長野ながの県立けんりつ甲種こうしゅ小しょう県けん（ちいさがた）蚕業さんぎょう学校がっこう（現げん・長野ながの県けん上田東高等学校うえだひがしこうとうがっこう）別べつ科かを卒業そつぎょう。奈良なら県けん養蚕ようさん組合くみあい及および農業のうぎょう補習ほしゅう学校がっこうにて養蚕ようさん技術ぎじゅつを指導しどうした。1914年ねん（大正たいしょう3年ねん）台湾たいわん総督そうとく府ふ蚕業さんぎょう技術ぎじゅつ官かんとなって台湾たいわんに渡わたり、1918年ねん（大正たいしょう7年ねん）には独立どくりつして台湾たいわん産業さんぎょう社しゃを興おこし養蚕ようさん業ぎょうと果樹かじゅ園えん業ぎょうを営いとなむが、1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）に事業じぎょうに失敗しっぱいして帰国きこくし、大阪おおさか市し港みなと区くにて食料しょくりょう品ひん、果実かじつの製造せいぞう販売はんばい業ぎょうを起おこす。この頃ころより大阪おおさか府ふ会議かいぎ員いんを目指めざして立候補りっこうほするが2度ど落選らくせん。1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）9月がつ21日にちの室戸むろと台風たいふうによる高潮こうちょう被害ひがいと選挙せんきょの落選らくせんによる借金しゃっきんで先祖せんぞ以来いらいの財産ざいさんをすべて失うしない、妻子さいしは夜逃よにげするはめとなる。

1937年ねん（昭和しょうわ12年ねん）に3度目どめの挑戦ちょうせんでようやく府会ふかい議員ぎいんに当選とうせんし、以降いこうは連続れんぞく当選とうせんを果はたす。1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）に大阪おおさか市しの依頼いらいにより沖縄おきなわ・台湾たいわん方面ほうめんからの食料しょくりょう緊急きんきゅう輸送ゆそうのため沖縄おきなわに行いく途中とちゅう、5月26日にち乗船じょうせんしていた大阪おおさか商船しょうせんの「嘉よしみ義ぎ丸まる」が奄美あまみ大島おおしま北方ほっぽう洋上ようじょうにて米べい海軍かいぐん潜水せんすい艦かんの雷撃らいげきにより撃沈げきちんされ、乗員じょういん乗客じょうきゃく約やく600人にん中ちゅう300人にん以上いじょうが遭難そうなんするが、九死きゅうしに一生いっしょうを得えて救出きゅうしゅつされ、沖縄おきなわ県庁けんちょうに遭難そうなん状じょう況きょうと川船かわぶね長ちょうの最後さいごを報告ほうこくする。また、B-29による再三さいさんの大阪大おおさかだい空襲くうしゅうにより港みなと区くの家いえ、工場こうじょう、倉庫そうこは全焼ぜんしょうし、家族かぞくも負傷ふしょうする。

戦後せんごは公職こうしょく追放ついほう（パージ）を受うけることもなく、1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）4月がつの戦後せんご最初さいしょの府会ふかい議員ぎいん選挙せんきょに当選とうせん、同時どうじに行おこなわれて当選とうせんした赤間あかま文三ぶんぞう府知事ふちじの懇望こんぼうにより、大阪おおさか府議会ふぎかいから与野党よやとう一致いっちの推薦すいせんを受うけ、大阪おおさか府政ふせい史上しじょう初はつの民間みんかん副ふく知事ちじとして就任しゅうにん。戦争せんそうにより疲弊ひへいした府ふ財政ざいせいの建たて直なおしを図はかり、公営こうえいギャンブル（競輪けいりんなど）を開催かいさいする。反対はんたい派はより「チャリンコ副ふく知事ちじ」「ギャンブル副ふく知事ちじ」と批判ひはんされるが府ふ財政ざいせいの黒字くろじ化かに成功せいこうし、府立ふりつ病院びょういんの再建さいけん、府立ふりつ体育館たいいくかん、母子ぼし寮りょうの建設けんせつなどを行おこない、念願ねんがんの高潮こうちょう防波堤ぼうはてい建設けんせつに着手ちゃくしゅするが、完成かんせい前まえの1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）9月がつ3日にちジェーン台風たいふうによる高潮こうちょう発生はっせいで大阪おおさか府ふは甚大じんだいな被害ひがいを受うける。不幸ふこうではあるがこれを機きに防波堤ぼうはてい工事こうじは進すすむことになる。1953年ねん（昭和しょうわ28年ねん）と1957年ねん（昭和しょうわ32年ねん）には府下ふか物産ぶっさんの振興しんこうのためアジア、欧州おうしゅう各国かっこくを歴訪れきほうしてセールス活動かつどうを行おこなう。また、1951年ねん（昭和しょうわ26年ねん）と1955年ねん（昭和しょうわ30年ねん）には知事ちじ選挙せんきょ中ちゅうの知事ちじ代行だいこうを務つとめる。

1958年ねん（昭和しょうわ33年ねん）に副ふく知事ちじを辞じし、5月の第だい28回かい衆議院しゅうぎいん議員ぎいん総そう選挙せんきょに大阪おおさか府ふ第だい1区くより立候補りっこうほしてトップ当選とうせん。自由民主党じゆうみんしゅとう所属しょぞくの大蔵おおくら委員いいんとなる。1959年ねん（昭和しょうわ34年ねん）、当時とうじの佐藤さとう栄作えいさく大蔵おおくら大臣だいじんの提出ていしゅつした税制ぜいせい法案ほうあんに対たいして与党よとうの大蔵おおくら委員いいんでありながら反対はんたい活動かつどうをおこなう。そのさなかの3月がつ10日にち衆院しゅういん本ほん会議かいぎ中ちゅうに心臓しんぞう発作ほっさを起おこして退席たいせき、翌よく11日にちに無理むりをおして大蔵おおくら委員いいん会かいに出席しゅっせきするが再度さいど発作ほっさを起おこし退席たいせき。大阪おおさかに戻もどるが18日にちに3度目どめの発作ほっさを起おこして府立ふりつ病院びょういんにて死去しきょ。同どう法案ほうあんは佐藤さとう大蔵たいぞう大臣だいじんの判断はんだんにより廃案はいあんとなる。従したがえ四よん位い勲くん三さん等とう。

人物じんぶつ

性格せいかくは衆議院しゅうぎいん本ほん会議かいぎの大矢おおや省三しょうぞうによる追悼ついとう演説えんぜつにて『その資性しせいは明朗めいろう、らいらく、その人格じんかくは温厚おんこう篤実とくじつ、まことに苦労人くろうにんと呼よぶにふさわしい人柄ひとがらで、人ひとを信しんずること厚あつく、よく他人たにんのためをはかられた』と称しょうされた。東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく法学部ほうがくぶ卒そつ、中央ちゅうおう官僚かんりょう出身しゅっしんの赤あか間あいだ知事ちじが「天皇てんのう」と言いわれてその高姿勢こうしせいを批判ひはんされたのに対たいして自身じしんが破産はさん、夜逃よにげ、天災てんさい、戦災せんさいの被害ひがいを受うけたため、あらゆる人ひとに分わけ隔へだてなく接せっした。「役人やくにんや知事ちじに頼たのんでもダメだが副ふく知事ちじなら話はなしを聞きいてくれる」と日雇ひやとい労働ろうどう者しゃが副ふく知事ちじ邸ていに大挙たいきょ押おしかけたこともある。

酒さけは一いち滴てきも飲のめないが宴会えんかい上手じょうず。1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）12月8日にちの太平洋戦争たいへいようせんそう（大だい東亜とうあ戦争せんそう）開戦かいせん日びには、丸坊主まるぼうずにして以来いらいのハゲ頭あたまに丸まるメガネという容貌ようぼうであり、インドのマハトマ・ガンジーに会あったことのある人物じんぶつから「山村やまむらさんはガンジーさんにそっくりですな」と言いわれて「こちらのガンジーは栄養えいようが有あり過すぎですな」ととても喜よろこんで返答へんとうしたという。

その他た

「嘉よしみ義ぎ丸まる」遭難そうなん状じょう況きょうを大阪おおさかに戻もどってから山村さんそんは大阪おおさか商船しょうせんに詳細しょうさいを報告ほうこくしたが、なぜか船員せんいんなどの遺族いぞくには全まったく連絡れんらくされていなかった。2007年ねんに山村さんそんの遺子いしと川船かわぶね長ちょうの遺族いぞくの間あいだで連絡れんらくが取とれ、川船かわぶね長ちょうの最後さいごの状況じょうきょうが口伝くでんではあるが伝つたえることができた。山村さんそんの証言しょうげんは現在げんざい存命ぞんめいの随一ずいいちの乗客じょうきゃく生存せいぞん者しゃの証言しょうげんと細部さいぶまで一致いっちしており、川船かわぶね長ちょうが最後さいごまで乗客じょうきゃくの安全あんぜんを祈いのりながら船ふねと運命うんめいを共ともにされた状況じょうきょうが確認かくにんされた。