必須ひっす元素げんそ

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必須ひっす元素げんそ(ひっすげんそ)は、生物せいぶつ摂取せっしゅすることでる、生命せいめい維持いじにとってかせない元素げんそ通常つうじょうとくにことわらない場合ばあい人間にんげん生命せいめい維持いじ必要ひつよう元素げんそす。ここではおも人間にんげん必須ひっす元素げんそについて説明せつめいする。植物しょくぶつ必須ひっす元素げんそについては栄養素えいようそ (植物しょくぶつ)参照さんしょう

概要がいよう[編集へんしゅう]

栄養えいようがくにおけるミネラルあるいは無機質むきしつは、必須ひっす元素げんそから水素すいそ炭素たんそ窒素ちっそ酸素さんそのぞいたものをいう。

必須ひっす元素げんそは、12種類しゅるい主要しゅよう元素げんそと15種類しゅるい微量びりょう元素げんそけられるが、これ以外いがいにも生体せいたい必要ひつよう微量びりょう元素げんそ存在そんざいする可能かのうせいがある。主要しゅよう元素げんそは、比較的ひかくてきどこでも存在そんざいしていてそれほど摂取せっしゅこまらないような元素げんそで、またそれだけ必要ひつようとするりょうおお元素げんそである。微量びりょう元素げんそは、必要ひつようりょう微量びりょう元素げんそである。

必須ひっす元素げんそは、欠乏けつぼうすれば欠乏症けつぼうしょうとなり、過剰かじょう摂取せっしゅすれば過剰かじょうしょう中毒ちゅうどく症状しょうじょうこすので適量てきりょう摂取せっしゅ必要ひつようだが、通常つうじょう生活せいかつにおいては、自然しぜんぶつ食事しょくじ常識じょうしきてきりょう種類しゅるいだけべていればほぼ適正てきせい範囲はんいないおさまる。猛毒もうどくとしてられるヒ素ひそ微量びりょう必須ひっす元素げんそである。このヒ素ひそは、普通ふつう食事しょくじにはほぼふくまれていないため、ヒ素ひそ中毒ちゅうどくきわめてまれである。

微量びりょう元素げんそおおくが体内たいないでの酵素こうそ活性かっせい中心ちゅうしんなどに利用りようされ、ごく微量びりょう必要ひつようとされているがその微量びりょう欠乏けつぼうすると、ただちに体内たいない代謝たいしゃなどのバランスがくずれ、それぞれの元素げんそ特有とくゆう症状しょうじょうあらわれる(微量びりょう元素げんそ欠乏症けつぼうしょう)。たとえば、亜鉛あえん欠乏けつぼう味覚みかく障害しょうがい肌荒はだあれとなってあらわれる。 地上ちじょう豊富ほうふ存在そんざいするわりには、微量びりょう元素げんそとしてあまり必要ひつようとされていないのがアルミニウムである。通常つうじょうただしい日本にっぽん食生活しょくせいかつをしていれば不足ふそくすることはなく、サプリメントは無益むえき無毒むどく無益むえき有毒ゆうどくともなる。しかし、医学いがくてき静脈じょうみゃく栄養えいよう人工じんこうてき植物しょくぶつ工場こうじょう製品せいひんでは微量びりょう元素げんそ不足ふそくする可能かのうせいがあり対策たいさくすすんでいる。

必須ひっす元素げんそ一覧いちらん
主要しゅよう元素げんそ 微量びりょう元素げんそ

植物しょくぶつ必須ひっす元素げんそ動物どうぶつもしくはヒトの必須ひっす元素げんそことなる

微量びりょう元素げんそ人体じんたいとのかかわり[編集へんしゅう]

ホウ素ほうそ
確認かくにんされていない。
フッ素ふっそ
必須ひっす元素げんそとされているが、明確めいかく根拠こんきょしめされておらず、必要ひつよう摂取せっしゅりょう明白めいはくでない。疫学えきがく調査ちょうさにおいて影響えいきょうなかった濃度のうど1ppmを根拠こんきょとして0.05 mg/kg たい じゅう /摂取せっしゅ限度げんどとしている。[1]
ほね可逆かぎゃくてきまれる。軟組織そしきには蓄積ちくせきしない。
アルミニウム
有用ゆうよう作用さよう確認かくにんされていない。人体じんたいないにはやく50mgのアルミニウムがふくまれている。
バナジウム
体内たいないコレステロール合成ごうせい制御せいぎょするメカニズムにかかわっているとかんがえられている。ヒトでの欠乏症けつぼうしょう報告ほうこくされていない。
クロム
3のクロムはインスリン分泌ぶんぴつたすけて炭水化物たんすいかぶつ代謝たいしゃかかわる。脂質ししつ代謝たいしゃにも関与かんよする。コレステロール一定いっていたもつ。6クロムは毒物どくぶつである。30さい-49さい女性じょせいで25μみゅーg、おなじく男性だんせいで35μみゅーgが1にち推定すいてい平均へいきん必要ひつようりょうとされている。
マンガン
ミトコンドリアなかでエネルギーさんせいたすけている。マンガンは、炭水化物たんすいかぶつとうしつ)と脂質ししつ分解ぶんかいする酵素こうそ活性かっせいさせ、尿にょうさん代謝たいしゃたすけるはたらきがある。また、下垂かすいたい機能きのう向上こうじょう各種かくしゅホルモン分泌ぶんぴつ活性かっせい関与かんよする。ほね成長せいちょうかせない。30さい-49さい女性じょせいで3.5mg、おなじく男性だんせいで4.0mgが1にち目安めやすりょうとされている。
コバルト
ポルフィリンに環状かんじょう化合かごうぶつであるコリンたまき中心ちゅうしん結合けつごうしてビタミンB12つくる。
ニッケル
確認かくにんされていない。
どう
人体じんたいないにはやく80mgのどうふくまれている。2-3mg/にち摂取せっしゅがよい。ふるくからどう酸化さんかぶつである緑青ろくしょう人体じんたい有毒ゆうどくであるとしんじられてきたがこれはあやまりで、現在げんざいでは金属きんぞく比較ひかくして毒性どくせい大差たいさないことが複数ふくすう動物どうぶつ実験じっけんによりあきらかにされている。厚生省こうせいしょう毒物どくぶつげきぶつではなく「普通ふつうぶつ」としている。日本にっぽんでは1983ねんより硫酸りゅうさんどう亜鉛あえんこなミルク添加てんかされている(100mlあたり45μみゅーg)。
亜鉛あえん
人体じんたいないにはやく1.4g-2.3gの亜鉛あえんふくまれている。細胞さいぼう分裂ぶんれつ酵素こうそ必要ひつようなため、皮膚ひふ頭髪とうはつつめほね前立腺ぜんりつせんおおふくまれている。成人せいじんでは10-15mg/にち必要ひつようであり、不足ふそくすると味覚みかく異常いじょうあらわれる。生理せいりてき役割やくわりとしては、免疫めんえき機構きこう補助ほじょ創傷そうしょう治癒ちゆ精子せいし形成けいせい、胎発生はっせい小児しょうに成長せいちょうなど多岐たきにわたる。炭酸たんさん脱水だっすい酵素こうそもっと重要じゅうようである。
ヒ素ひそ
猛毒もうどくである。有機ゆうきヒ素ひそ化合かごうぶつのいくつかは、比較的ひかくてき毒性どくせいひくいが、さんのような無機むきヒ素ひそ毒性どくせい非常ひじょうたかい。ヒ素ひそ欠乏けつぼう問題もんだいとなるケースは普通ふつう生活せいかつでは発生はっせいしないので、意図いとてき摂取せっしゅ必要ひつようない。
セレン
必要ひつようりょう過剰かじょう摂取せっしゅりょうとのせまいため適量てきりょう摂取せっしゅむずかしい。セレンが酸化さんか脂質ししつ分解ぶんかいする酵素こうそのひとつであるグルタチオンペルオキシターゼを活性かっせいする。30さい-49さい女性じょせいで30μみゅーg、おなじく男性だんせいで20μみゅーgが1にち推定すいてい平均へいきん必要ひつようりょうとされている。
臭素しゅうそ
機能きのう確認かくにんされていないが、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくヴァンダービルト大学だいがくビリー・ハドソン博士はかせらは、ミバエへの給餌きゅうじ実験じっけん臭素しゅうそのぞいたえさつづけたグループは死滅しめつしたが、通常つうじょうどお臭素しゅうそふくえさべた対照たいしょうグループはのこったことから、臭素しゅうそ動物どうぶつにとって28番目ばんめ必須ひっす元素げんそであることを確認かくにんし、2014ねん発表はっぴょうした[2][3]
モリブデン
とうしつ脂質ししつ尿にょうさん代謝たいしゃ補助ほじょし、てつ利用りようたかめる造血ぞうけつ作用さようどう排泄はいせつ増大ぞうだいさせるモリブデンをふく酵素こうそ窒素ちっそ代謝たいしゃ硫黄いおう代謝たいしゃ関与かんよするオキソトランスフェラーゼ(酸素さんそ原子げんし移動いどう反応はんのう触媒しょくばいする酵素こうそ総称そうしょう)がある。30さい-49さい女性じょせいで15μみゅーg、おなじく男性だんせいで20μみゅーgが1にち推定すいてい平均へいきん必要ひつようりょうとされている。
ヨウもと
ヨウもと甲状腺こうじょうせんにあって、甲状腺こうじょうせんホルモン成分せいぶんとなる。この甲状腺こうじょうせんホルモンは、神経しんけい細胞さいぼうのナトリウム濃度のうどのバランス調節ちょうせつ代謝たいしゃかかわる。ヨウ欠乏症けつぼうしょうとして、地方ちほうせい甲状腺こうじょうせんしゅ甲状腺こうじょうせん機能きのう低下ていかしょうがある。日本人にっぽんじん海藻かいそう中心ちゅうしんとした海産物かいさんぶつにより1-4mg/にちのヨウもと摂取せっしゅしているので欠乏けつぼうすることはない。30さい-49さい女性じょせいで95μみゅーg、おなじく男性だんせいで95μみゅーgが1にち推定すいてい平均へいきん必要ひつようりょうとされている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 清涼飲料水せいりょういんりょうすい評価ひょうかしょ フッ素ふっそ 2012ねん11がつ 食品しょくひん安全あんぜん委員いいんかい 化学かがく物質ぶっしつ汚染おせん物質ぶっしつ専門せんもん調査ちょうさかい”. 2022ねん6がつ15にち閲覧えつらん
  2. ^ VU investigators confirm bromine's critical role in tissue development” (英語えいご). Vanderbilt University (2014ねん6がつ). 2014ねん6がつ25にち閲覧えつらん
  3. ^ せいとめとう」『化学かがく工業こうぎょう日報にっぽう』2014ねん6がつ25にちp1、東京とうきょう化学かがく工業こうぎょう日報にっぽうしゃ[1]

参考さんこう文献ぶんけん出典しゅってん[編集へんしゅう]

  • [ミネラルのはたらきと人間にんげん健康けんこう P.20(2011ねん著者ちょしゃ:渡辺わたなべ和彦かずひこ] のうやま漁村ぎょそん文化ぶんか協会きょうかい ISBN 4540101684
  • あたらしい物性ぶっせい物理ぶつり 伊達だて宗行むねゆき 講談社こうだんしゃ BLUEBACKS ISBN 4062574837
  • 金属きんぞくなんでもしょう事典じてん 増本ますもとけん 講談社こうだんしゃ BLUEBACKS ISBN 4062571889
  • 日本人にっぽんじん食事しょくじ摂取せっしゅ基準きじゅん(2005年版ねんばん厚生こうせい労働省ろうどうしょう ISBN 9784804110974

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]