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甲状腺 こうじょうせん 機能 きのう 低下 ていか 症 しょう (こうじょうせんきのうていかしょう)は、甲状腺 こうじょうせん ホルモン の分泌 ぶんぴつ 量 りょう (活性 かっせい )が不十分 ふじゅうぶん となる疾患 しっかん である。代謝 たいしゃ 内分泌 ないぶんぴつ 疾患 しっかん の一 ひと つ。先天 せんてん 性 せい のものや幼少 ようしょう 時 じ 発症 はっしょう のものは、発達 はったつ 上 じょう の障害 しょうがい が大 おお きな問題 もんだい となるため特 とく にクレチン症 しょう という。
甲状腺 こうじょうせん ホルモンは全身 ぜんしん のエネルギー 利用 りよう を促 うなが すホルモン である。エネルギー需要 じゅよう に応 おう じて甲状腺 こうじょうせん から分泌 ぶんぴつ されるが、本 ほん 症 しょう ではこれが不足 ふそく するので全身 ぜんしん でエネルギーを利用 りよう できず、神経 しんけい 系 けい 、心臓 しんぞう 、代謝 たいしゃ など各 かく 器官 きかん の働 はたら きが低下 ていか する。
全身 ぜんしん がエネルギーを利用 りよう できなくなるため、症状 しょうじょう は多岐 たき にわたる。主 おも な症状 しょうじょう は、強 つよ い全身 ぜんしん 倦怠 けんたい 感 かん 、無力 むりょく 感 かん 、皮膚 ひふ の乾燥 かんそう 、発汗 はっかん 減少 げんしょう 、便秘 べんぴ 、上下 じょうげ 肢 し 、脇 わき 、眉 まゆ の外側 そとがわ の脱毛 だつもう 、声 こえ がかすれる、聴力 ちょうりょく の低下 ていか 、目 め に光 ひかり がなくなり、顔 かお もぼてっとする、鍵 かぎ の開 あ け閉 し めなどできにくくなる、体重 たいじゅう 増加 ぞうか などである。
全身 ぜんしん の活動 かつどう が低下 ていか し無力 むりょく 感 かん を持 も ったり低 てい 体温 たいおん になる。皮膚 ひふ の活動 かつどう の低下 ていか により発汗 はっかん が減少 げんしょう 、それに加 くわ え低 てい 体温 たいおん であるため皮膚 ひふ が乾燥 かんそう する。代謝 たいしゃ が低下 ていか することにより皮下 ひか に粘液 ねんえき 状 じょう の物質 ぶっしつ が沈着 ちんちゃく し浮腫 ふしゅ となる。この浮腫 むく みは粘液 ねんえき 状 じょう 物質 ぶっしつ でできているので粘液 ねんえき 水腫 すいしゅ と言 い う。この場合 ばあい 見 み られる浮腫 むく みは、指 ゆび で押 お しても全 まった く圧 あつ 痕 こん を残 のこ さない。この浮腫 ふしゅ (ふしゅ)はnon-pitting edemaのひとつである。腸管 ちょうかん も活動 かつどう が低下 ていか して便秘 べんぴ になる。活力 かつりょく の低下 ていか により精神 せいしん 活動 かつどう も緩慢 かんまん となり、偽 にせ 痴呆 ちほう を呈 てい することがある。心臓 しんぞう も活動 かつどう が低下 ていか して徐 じょ 脈 みゃく になる。心臓 しんぞう への粘液 ねんえき 状 じょう 物質 ぶっしつ の沈着 ちんちゃく も見 み られ、不整脈 ふせいみゃく の原因 げんいん となる。
本 ほん 症 しょう で最 もっと も問題 もんだい となる症状 しょうじょう は早老 そうろう による動脈 どうみゃく 硬化 こうか などである。また子供 こども のクレチン症 しょう の場合 ばあい は生育 せいいく に必要 ひつよう な甲状腺 こうじょうせん ホルモンが欠如 けつじょ するので、発育 はついく 障害 しょうがい や知的 ちてき 障害 しょうがい にいたる場合 ばあい がある。
甲状腺 こうじょうせん 機能 きのう 低下 ていか 症 しょう のその他 た の症状 しょうじょう のうち、うつ症状 しょうじょう 、鼻 はな 閉 、便秘 べんぴ /腸閉塞 ちょうへいそく 、多 おお 関節 かんせつ 炎 えん が非 ひ 定型 ていけい 的 てき で見逃 みのが されやすく、注意 ちゅうい を要 よう する。[1]
もっとも多 おお いのが橋本 はしもと 病 びょう である。二 に 次 じ 性 せい 、三 さん 次 じ 性 せい のものは脳腫瘍 のうしゅよう が原因 げんいん となることが多 おお い。
自己 じこ 免疫 めんえき 障害 しょうがい によって甲状腺 こうじょうせん が攻撃 こうげき される橋本 はしもと 病 びょう では、甲状腺 こうじょうせん が慢性 まんせい 炎症 えんしょう を起 お こして機能 きのう が低下 ていか する。これは原発 げんぱつ 性 せい に分類 ぶんるい される。発展 はってん 途上 とじょう 国 こく では甲状腺 こうじょうせん ホルモンの材料 ざいりょう であるヨウ素 もと の摂取 せっしゅ 不足 ふそく により甲状腺 こうじょうせん ホルモン自体 じたい を合成 ごうせい できないことが原因 げんいん となることがある。このほか、手術 しゅじゅつ により甲状腺 こうじょうせん を摘出 てきしゅつ したり、放射線 ほうしゃせん 療法 りょうほう により甲状腺 こうじょうせん 機能 きのう を廃絶 はいぜつ させた場合 ばあい に医 い 源 げん 性 せい の甲状腺 こうじょうせん 機能 きのう 低下 ていか 症 しょう となる。
甲状腺 こうじょうせん ホルモンの不足 ふそく する状況 じょうきょう としては、分泌 ぶんぴつ 調節 ちょうせつ の段階 だんかい から次 つぎ のように分類 ぶんるい できる。
原発 げんぱつ 性 せい : 甲状腺 こうじょうせん 自体 じたい の問題 もんだい のため分泌 ぶんぴつ ができない場合 ばあい を原発 げんぱつ 性 せい 甲状腺 こうじょうせん 機能 きのう 低下 ていか 症 しょう と言 い う。
二 に 次 じ 性 せい : 甲状腺 こうじょうせん 刺激 しげき ホルモン (以下 いか TSH)が低下 ていか しているために甲状腺 こうじょうせん ホルモンを分泌 ぶんぴつ できない場合 ばあい を二 に 次 じ 性 せい 甲状腺 こうじょうせん 機能 きのう 低下 ていか 症 しょう と言 い う。
三 さん 次 じ 性 せい : 甲状腺 こうじょうせん 刺激 しげき ホルモン放出 ほうしゅつ ホルモン (以下 いか TRH)が低下 ていか しているためにTSH、甲状腺 こうじょうせん ホルモンとも分泌 ぶんぴつ できない場合 ばあい を三 さん 次 じ 性 せい 甲状腺 こうじょうせん ホルモン低下 ていか 症 しょう と言 い う。
さらに、ホルモン分泌 ぶんぴつ 量 りょう は十分 じゅうぶん でありながら、受容 じゅよう 体 たい の異常 いじょう によって利用 りよう できていない状態 じょうたい (ホルモン不 ふ 応 おう 性 せい )もありうる。
次 つぎ 性 せい を°、甲状腺 こうじょうせん ホルモンをT、上昇 じょうしょう を↑、低下 ていか を↓、因果 いんが 関係 かんけい を(原因 げんいん )→(結果 けっか )、と略記 りゃっき すると、以上 いじょう の分類 ぶんるい は以下 いか のように略記 りゃっき できる。
°: T↓
°: TSH↓→T↓
°: TRH↓→TSH↓→T↓
身体 しんたい 所見 しょけん では、甲状 こうじょう 腺腫 せんしゅ 大 だい 、下肢 かし の非 ひ 圧 あつ 痕 こん 性 せい 浮腫 ふしゅ 、アキレス腱 あきれすけん 反射 はんしゃ の弛緩 しかん 相 しょう 遅延 ちえん などみられる。
甲状腺 こうじょうせん ミオパチー では、筋力 きんりょく 低下 ていか 、易 えき 疲労 ひろう 性 せい 、筋 すじ 強直 きょうちょく 、筋 すじ 痛 つう をしばしば認 みと める。筋肉 きんにく 組織 そしき 内 ない への粘液 ねんえき 物質 ぶっしつ の蓄積 ちくせき が原因 げんいん と考 かんが えられている。甲状腺 こうじょうせん ミオパチーにおいて筋 すじ 肥大 ひだい がめだつものを Hoffmann症候群 しょうこうぐん と呼 よ ぶ。また筋 すじ 叩打による局所 きょくしょ 的 てき 筋 すじ 膨隆を mounding現象 げんしょう と呼 よ ぶ。[2]
血液 けつえき 検査 けんさ
free T3, T3 ... 低下 ていか が多 おお い。
free T4, T4 ... 低下 ていか が多 おお い。
甲状腺 こうじょうせん 刺激 しげき ホルモン (TSH、サイロトロピン) ... 原発 げんぱつ 性 せい 、二 に 次 じ 性 せい などの鑑別 かんべつ に必要 ひつよう 。
抗 こう TPO抗体 こうたい ... 橋本 はしもと 病 びょう による甲状腺 こうじょうせん 機能 きのう 低下 ていか 症 しょう を鑑別 かんべつ する
TSH、TRHの反 はん 応 おう から二 に 次 じ 性 せい 、三 さん 次 じ 性 せい が鑑別 かんべつ できる。
治療 ちりょう は甲状腺 こうじょうせん ホルモンの投与 とうよ を行 おこな うが、軽度 けいど であれば経過 けいか 観察 かんさつ のみとすることもある。レボチロキシン (Levothyroxine ) の投与 とうよ は、現在 げんざい 多 おお くの場合 ばあい は朝 あさ 一 いち 回 かい 投与 とうよ で処方 しょほう されるが、就寝 しゅうしん 前 ぜん 投与 とうよ がより有効 ゆうこう であるとの報告 ほうこく がある[3] 。
潜在 せんざい 性 せい 甲状腺 こうじょうせん 機能 きのう 低下 ていか 症 しょう であっても, TSH > 10 mU/Lであれば症状 しょうじょう を伴 ともな わなくとも治療 ちりょう すべきという意見 いけん もある。また潜在 せんざい 性 せい 甲状腺 こうじょうせん 機能 きのう 低下 ていか 症 しょう のうち33-55%の患者 かんじゃ は、その後 ご 臨床 りんしょう 的 てき な甲状腺 こうじょうせん 機能 きのう 低下 ていか 症 しょう に進行 しんこう するといわれている。[4]
^ 岡田 おかだ 定 じょう 編 へん , 「最速 さいそく !聖 きよし 路 ろ 加 か 診断 しんだん 術 じゅつ 」 pp 189-192
^ 松田 まつだ 正之 まさゆき 日本 にっぽん 医事 いじ 新報 しんぽう 4692: 53-55, 2014
^ Arch Intern Med. 2010 Dec 13;170(22):1996-2003.Effects of Evening vs Morning Levothyroxine Intake: A Randomized Double-blind Crossover Trial.
Bolk N. and others
^ 日本 にっぽん 医事 いじ 新報 しんぽう 2011; 4548: 35-38