悪魔あくまとの取引とりひき

メフィストとファウストの契約けいやくの場面ばめんの木版もくはん画が、アドルフ・グナウト作さく(1840年ねん頃ごろ)

悪魔あくまとの取引とりひき（deal with the Devil）（ファウストの取引とりひきもしくはメフィストフェリアの取引とりひきとも呼よばれる）は、ファウストの伝説でんせつとメフィストフェレスの姿すがたによって例示れいじされる文化ぶんか的てきモチーフであり、多おおくのキリスト教きりすときょうの伝統でんとうの要素ようそでもある。

魔術まじゅつに関かんする伝統でんとう的てきなキリスト教きりすときょうの信念しんねんによると、契約けいやくは人ひとと悪魔あくままたは別べつの悪魔あくまとの間あいだで行おこなわれ、物語ものがたりによって異ことなるが、若わかさ、知識ちしき、富とみ、名声めいせい、権力けんりょくを含ふくむ傾向けいこうがある悪魔あくま的てきな行為こういと魂たましいを交換こうかんする。 また、何人なんにんかの人々ひとびとは、この種たねの契約けいやくを、ミニオンを主人しゅじんとして認みとめる印しるしとして、代償だいしょうを求もとめずに行いったと信しんじられていた。 悪魔あくまのサービスの代償だいしょうは賭かける者ものの魂たましいであるため、取引とりひきは常つねに危険きけんなものである。物語ものがたりには道徳どうとく的てきな結末けつまつがあり、愚おろかな冒険ぼうけん者しゃには永遠えいえん の罰ばっが下くだされるかもしれない。逆ぎゃくに、狡猾こうかつな農民のうみんが悪魔あくまの裏うらをかいて、技術ぎじゅつ的てきな点てんで特徴とくちょう的てきなコミカルなひねりを加くわえている可能かのう性せいもある。

契約けいやくを結むすんだ人ひとは時々ときどき悪魔あくまの裏うらをかこうとするが、最終さいしゅう的てきには負まける（例たとえば、人ひとは自分じぶんの取引とりひきの最後さいごを支払しはらうために死しぬことは決けっしてないので、永遠えいえんの命いのちのために自分じぶんの魂たましいを売うる.しかし、終身しゅうしん刑けいを宣告せんこくされる)。 多おおくの有名ゆうめいな作品さくひんは、数すう多おおくのヨーロッパの悪魔あくまの橋はしから、ジュゼッペ・タルティーニとニコロ・パガニーニのバイオリンの妙技みょうぎ、ロバート・ジョンソンに関連かんれんする「交差点こうさてん」の神話しんわまで、悪魔あくまとの契約けいやくが語かたられている。

スティス・トンプソンの『民間みんかん文芸ぶんげいのモチーフ索引さくいん』 では、「悪魔あくまとの取引とりひき」がモチーフ番号ばんごう M210 を構成こうせいし、「男おとこは魂たましいを悪魔あくまに売うる」モチーフ番号ばんごう M211 を構成こうせいしている。

概要がいよう

クリストフ・ハイツマンによる 1669 年ねんの契約けいやく書しょの写うつし。

通常つうじょう、協定きょうていを結むすんだ個人こじんは、出産しゅっさん時じに子供こどもを殺ころすか、悪魔あくまに奉献ほうけんすることを悪魔あくまに約束やくそくすると考かんがえられている（中世ちゅうせいとルネッサンスの時代じだいには多おおくの助産じょさん師しは、出産しゅっさん時じに死亡しぼうした子こどもの数かずが多おおかったため、この件けんの疑うたがいで非難ひなんされた）。魔女まじょの安息日あんそくびに参加さんかし、悪魔あくまと性的せいてき関係かんけいを持もち、時ときにはサキュバス、または女性じょせいの場合ばあいは夢魔むまとの間あいだに子こどもを産うむ。 悪魔あくまとの協定きょうていは、口頭こうとうまたは書面しょめんで行おこなうことができる。.

口頭こうとうでの契約けいやくは、悪魔あくまを引ひき付つけるための呼よび出だし、召喚しょうかん、または儀式ぎしきによって行おこなうことができる。召喚しょうかん師しが悪魔あくまが存在そんざいすると考かんがえると、彼かれらは望のぞんでいた好意こういを求もとめ、引ひき換かえに魂たましいを提供ていきょうするが、協定きょうていの証拠しょうこは残のこらない。しかし、いくつかの魔女まじょ裁判さいばんによると、口頭こうとうでの協定きょうていは魔女まじょの印しるしの形かたちで証拠しょうこを残のこしている。

これは、印しるしをつけられた人ひとが契約けいやくを封印ふういんするために悪魔あくまに触ふれられた消きえない印しるしである。 印しるしは、協定きょうていが締結ていけつされたことを決定けっていするための証拠しょうことして使用しようされる。また、印しるしをつけた場所ばしょでは、印しるしをつけられた人ひとは痛いたみを感かんじないとも信しんじられていた。書面しょめんによる協定きょうていは、悪魔あくまを引ひき付つけるのと同おなじ形式けいしきで構成こうせいされるが、通常つうじょうは魔術まじゅつ師しの血ちで署名しょめいされた書面しょめんによる行為こういを含ふくんでいる(ただし、行為こうい全体ぜんたいが血ちで書かかれなければならなかったと主張しゅちょうされることもあった; 一方いっぽう、一部いちぶの悪魔あくま学者がくしゃはその考かんがえを擁護ようごした。血液けつえきの代かわりに赤あかインクを使用しようしたり、人間にんげんの血液けつえきの代かわりに動物どうぶつの血液けつえきを使用しようすることを提案ていあんした人ひともいる)。. これらの行為こういは、悪魔あくまのような契約けいやくとして現あらわれるが、俳優はいゆうの真しんの正気しょうきが常つねに確実かくじつであるとは限かぎらない。通常つうじょう、行為こういには悪魔あくまの署名しょめいであると言いわれる奇妙きみょうな文字もじが含ふくまれており、それぞれが独自どくじの印章いんしょうを持もっていた。ソロモンの小しょう鍵かぎ(レメゲトン・クラヴィキュラ・サロモニスとしても知しられる) のような本ほんは、悪魔あくまの署名しょめいとして知しられるこれらの兆候ちょうこうの詳細しょうさいなリストを提供ていきょうしている。 マレウス・マレフィカルムは、特とくに女性じょせいに関かんして、悪魔あくまとの協定きょうていのいくつかの主張しゅちょうされた事例じれいについて議論ぎろんしている。すべての魔女まじょと魔術まじゅつ師しは悪魔あくまの 1 人にん、通常つうじょうはサタンと協定きょうていを結むすんだと考かんがえられていた。

悪魔あくま学がくによると、各かく悪魔あくまを呼よび出だす特定とくていの月つき、曜日ようび、時間じかんがあるため、契約けいやくの呼よび出だしは適切てきせつなタイミングで行おこなう必要ひつようがある。また、各かく悪魔あくまには特定とくていの機能きのうがあるため、召喚しょうかん者しゃが何なにを求もとめようとしているかに応おうじて、特定とくていの悪魔あくまが呼よび出だされる。

共とも観かん福音ふくいん書しょの物語ものがたりの中なかで、イエスは悪魔あくまから一連いちれんの取引とりひきを提示ていじされ、神かみではなく悪魔あくまに仕つかえることと引ひき換かえに、世俗せぞく的てきな富とみと栄光えいこうを約束やくそくされた。しかし、イエスは悪魔あくまの申もうし入いれを断ことわり、救世主きゅうせいしゅとして旅立たびだつ。

外部がいぶリンク

• ウィキメディア・コモンズには、悪魔あくまとの取引とりひきに関かんするカテゴリがあります。
• ウィクショナリーには、Faustian bargainの項目こうもくがあります。
• The Devil's Pact: Diabolic Writing and Oral Tradition by Kimberly Ball Archived 2 February 2017 at the Wayback Machine.
• The Uses of Demonic Folk Tradition in Selma Lagerlöf's "Gösta Berlings saga" by Larry W. Danielson