成人せいじんT細胞さいぼう白血病はっけつびょう

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成人せいじんT細胞さいぼう白血病はっけつびょう(せいじんTさいぼうはっけつびょう、ATL, Adult T-cell leukemia、成人せいじんT細胞さいぼう白血病はっけつびょう/リンパ腫りんぱしゅ、- leukemia/lymphoma)は、病因びょういんである腫瘍しゅようウイルス、HTLV-1に感染かんせんしたリンパだま腫瘍しゅようして発症はっしょうする末梢まっしょうせいT細胞さいぼう腫瘍しゅようである[1]。1976ねん昭和しょうわ51ねん)に高月たかつききよしらによって発見はっけん命名めいめいされた。発症はっしょう原因げんいんHTLV-I感染かんせんであり、独自どくじ形態けいたいをもつことがたリンパだま(CD4陽性ようせいリンパだま)のたんクローンせい腫瘍しゅようである。

HTLV-1にかんして[編集へんしゅう]

HTLV-1の概要がいよう[編集へんしゅう]

HTLV-1はhuman T-cell leukemia virus type 1(ヒトT細胞さいぼう白血病はっけつびょうウイルス1がた)の略称りゃくしょうである[2]。かつてはヒトTリンパだま向性こうせいウイルス1がたhuman T-lymphotropic virus type 1とばれていた。1980ねんにはじめてヒトのレトロウイルスとして報告ほうこくされ[3]、ATL(成人せいじんT細胞さいぼう白血病はっけつびょうリンパ腫りんぱしゅ、adult T-cell leukemia-lymohoma)の原因げんいんウイルスであることがあきらかになった[4][5][6]。HTLVにはtype1からtype4まで報告ほうこくされているがtype1以外いがい病原びょうげんせいはあきらかではない。type1のgenotypeはsubtype AからGの7つにおおきくかれ地域ちいきせい反映はんえいする。日本にっぽんのHTLV-1はsubtype Aにふくまれる。

HTLV-1おもにHTLV-1感染かんせんしゃのCD4陽性ようせいTリンパだまより検出けんしゅつされる。HTLV-1が感染かんせんするとプロウイルスとして持続じぞく感染かんせんする。すなわち細胞さいぼうのゲノムにウイルス遺伝子いでんしまれ、細胞さいぼうちゅう長期ちょうきにわたり存在そんざい維持いじされる。HTLV-1感染かんせんしゃ末梢まっしょう血液けつえきちゅうにはHTLV-1感染かんせんリンパだま存在そんざいするがBがた肝炎かんえんウイルスなどとことなり、血漿けっしょうちゅうにはほとんどウイルスを検出けんしゅつできない。このためHTLV-1感染かんせんしゃ診断しんだんはウイルスそのものの検出けんしゅつではなく、HTLV-1にたいする抗体こうたい検出けんしゅつによっておこなわれる。すなわち、こうHTLV-1抗体こうたい陽性ようせいであればHTLV-1に感染かんせんしていることを意味いみする。一度いちどHTLV-1に感染かんせんすると自然しぜんにウイルスが消失しょうしつすることはないとかんがえられており、終生しゅうせい感染かんせん持続じぞくする。また、HTLV-1感染かんせんしゃ末梢まっしょうリンパだまからは遺伝子いでんし増幅ぞうふくほう(PCRほう)によりHTLV-1の遺伝子いでんし検出けんしゅつすることができる。この方法ほうほうにより、HTLV-1のプロウイルスりょう測定そくていすることが可能かのうである。HTLV-1はおおくの場合ばあい1個いっこのT細胞さいぼうに1コピーまれるためプロウイルスりょうはHTLV-1感染かんせん細胞さいぼうすう意味いみする[7]

HTLV-1の遺伝子いでんしやく9kbの2ほんのプラスくさりRNAである。ウイルスゲノムはコアタンパク質たんぱくしつ、エンベロープタンパク質たんぱくしつぎゃく転写てんしゃ酵素こうそなどのほかの種々しゅじゅ機能きのうせいタンパク質たんぱくしつをコードする。

HTLV-1の疫学えきがく[編集へんしゅう]

世界せかいてきには日本にっぽん中南米ちゅうなんべい、アフリカなどにHTLV-1感染かんせんしゃおお地域ちいきがあることがわかっている[8]日本にっぽんの2014ねんから2015ねん調査ちょうさでは80まんにん程度ていどのHTLV-1感染かんせんしゃがいると推定すいていされている。かつては九州きゅうしゅう沖縄おきなわ感染かんせんしゃおおく、全体ぜんたいの40%がこの地域ちいき分布ぶんぷしていた。近年きんねん大都市だいとしけんでHTLV-1感染かんせんしゃ増加ぞうか傾向けいこう地域ちいき分布ぶんぷ変化へんかしているとかんがえられている。

HTLV-1感染かんせん原因げんいんとなって発症はっしょうするHTLV-1関連かんれん疾患しっかんにはATL(成人せいじんT細胞さいぼう白血病はっけつびょうリンパ腫りんぱしゅ、adult T-cell leukemia-lymohoma)、HAM(HTLV-1関連かんれん脊髄せきずいしょう、HTLV-1-associated myelopathy)、HAU(HTLV-1関連かんれんぶどうまくえん、HTLV-1-associated uveitis)などがられている。HTLV-1感染かんせんしゃのうちHTLV-1関連かんれん疾患しっかん発症はっしょうするのはごく一部いちぶであり、ATLの発症はっしょうりつやく5%であり、HAMの発症はっしょうりつは0.3%である。大半たいはん感染かんせんしゃはHTLV-1関連かんれん疾患しっかん発症はっしょうすることなく生涯しょうがいえる。HTLV-1プロウイルスりょうおおいHTLV-1感染かんせんしゃはHTLV-1関連かんれん疾患しっかん発症はっしょうリスクがたかいとかんがえられている[9][10]

HTLV-1の感染かんせん[編集へんしゅう]

HTLV-1感染かんせんしゃ体液たいえきちゅうにウイルス粒子りゅうし検出けんしゅつされず、伝播でんぱにはHTLV-1感染かんせん細胞さいぼう他者たしゃ体内たいないはいることが必要ひつようである。このためHTLV-1の感染かんせんりょくきわめてよわい。感染かんせん経路けいろは、母子ぼし感染かんせん男女だんじょあいだ水平すいへい感染かんせんである。母子ぼし感染かんせんでは母乳ぼにゅうかいした伝播でんぱおもなものである。水平すいへい感染かんせんではせい交渉こうしょうこりやすい。かつては輸血ゆけつによる感染かんせんみとめられたが、1986ねん以降いこう血液けつえき製剤せいざいたいするHTLV-1スクリーニング検査けんさおこなわれており、輸血ゆけつによる感染かんせん危険きけんせいい。まれ伝播でんぱ経路けいろとして臓器ぞうき移植いしょくげられる。

キャリア母親ははおやによる母乳ぼにゅう保育ほいく継続けいぞくされた場合ばあいやく20%がキャリアするとされる[11]一方いっぽう、これを人工じんこう栄養えいようえることによって、母子ぼし感染かんせんふせげる。性交せいこうによる感染かんせん通常つうじょう精液せいえきふくまれるリンパだまつうじての男性だんせいから女性じょせいへの感染かんせんである[12]個体こたいないでのHTLV-1増殖ぞうしょくは、おもリンパぶしであるとかんがえられている。リンパぶし増殖ぞうしょくしたATL細胞さいぼう血液けつえきちゅう流出りゅうしゅつすると、特徴とくちょうてきなATL細胞さいぼう末梢まっしょうられるようになる[13]

HTLV-1の発癌はつがん機構きこう[編集へんしゅう]

母乳ぼにゅうちゅうのHTLV-1感染かんせんリンパだま乳児にゅうじ消化しょうか管内かんない乳児にゅうじのリンパだま接触せっしょくすることでHTLV-1はあらたに感染かんせんすることができる。レトロウイルスであるため、リンパだまDNAにまれ、ウイルスのさい生産せいさんおこなう。HTLV-1のp40 taxは宿主しゅくしゅ細胞さいぼうのIL-2レセプター遺伝子いでんしなどを活性かっせいし、その分裂ぶんれつ増殖ぞうしょくこす。こうして無限むげん増殖ぞうしょくかえ宿主しゅくしゅ細胞さいぼうがその過程かていでなんらかのエラーをおこし、形質けいしつ転換てんかんをおこし、ATLを発症はっしょうするとかんがえられている。

HTLV-1感染かんせん診断しんだん[編集へんしゅう]

いち検査けんさ
いち検査けんさでは血清けっせいこうHTLV-1抗体こうたい有無うむ確認かくにんする。PAほう、CLEIAほう、CLIAほう、ECLIAほう推奨すいしょうされている。いち検査けんさ陰性いんせい場合ばあい、HTLV-1感染かんせんはないとかんがえる。陽性ようせいであってもにせ陽性ようせいがふくまれるため確認かくにん検査けんさ必要ひつようとなる。
確認かくにん検査けんさ
確認かくにん検査けんさはWBほうもしくはLIAで血清けっせいこうHTLV-1抗体こうたい有無うむ確認かくにんする。確認かくにん検査けんさ陽性ようせいならばHTLV-1感染かんせんであり、陰性いんせいならばHTLV-1感染かんせんではないと評価ひょうかする。確認かくにん検査けんさ問題もんだいてんとして判定はんてい保留ほりゅうとなる場合ばあいがあることである。流行りゅうこうWBほう判定はんてい保留ほりゅうが20%にもおよぶ。LIAほうはWBほうより判定はんてい保留ほりゅうりつひくくなる可能かのうせいがある。判定はんてい保留ほりゅう場合ばあいはPCRほうでHTLV-1プロウイルス検出けんしゅつおこなうことでより正確せいかく信頼しんらいせいたか診断しんだん期待きたいできる。

疫学えきがく[編集へんしゅう]

原因げんいんウイルスであるHTLV-Iの感染かんせんしゃ日本にっぽんとく沖縄おきなわけんみなみ九州きゅうしゅう長崎ながさきけんおおく、にはカリブ海かりぶかい沿岸えんがん諸国しょこく中央ちゅうおうアフリカ南米なんべいなどに感染かんせんしゃがみられる。そのため、成人せいじんT細胞さいぼう白血病はっけつびょう(ATL)患者かんじゃもこれらの地域ちいきおおくみられる[14]

日本にっぽんにおけるATLによる年間ねんかん死亡しぼうしゃすうやく1,000にんであり、1998ねん平成へいせい10ねん以降いこうの10年間ねんかん減少げんしょう傾向けいこうはみられていない[15]

症状しょうじょう[編集へんしゅう]

症状しょうじょうやまいがたによってことなる。急性きゅうせいがたリンパ腫りんぱしゅがたでは全身ぜんしん倦怠けんたいかん食欲しょくよく不振ふしん全身ぜんしんリンパぶし腫脹しゅちょう皮膚ひふ病変びょうへんかん脾腫などの所見しょけん症状しょうじょうみとめられる。またいわゆる腫瘍しゅようねつとして発熱はつねつみとめる症例しょうれいおおい。ATLの皮膚ひふ病変びょうへんには様々さまざまなものがみられ、べにむらがた多発たはつおか疹型、結節けっせつしゅこぶがたべにかわしょうがたなど様々さまざま形態けいたいりうることがられている。重要じゅうよう臓器ぞうきにATL細胞さいぼう浸潤しんじゅんした場合ばあいや、こうカルシウムしょうともなさいはその症状しょうじょうしめす。くすぶりがた症状しょうじょうであることがおおく、あってもほとんどは皮膚ひふ病変びょうへんのみである。慢性まんせいがた同様どうようであるがリンパぶし腫脹しゅちょうともな場合ばあいもある。

ATLではつよ免疫めんえき不全ふぜんのため、血液けつえき疾患しっかんでも合併がっぺいがみられる細菌さいきんせい肺炎はいえんきんせい肺炎はいえん以外いがい造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょく以外いがい通常つうじょう血液けつえき疾患しっかん化学かがく療法りょうほうではほとんど問題もんだいにならないサイトメガロウイルス、ニューモシスチス・ジロベッチ、結核けっかくなどの合併がっぺいみとめられる。

検査けんさ所見しょけん[編集へんしゅう]

検査けんさ所見しょけんやまいがたによってことなる。くすぶりがた末梢まっしょう血液けつえきぞう異常いじょうリンパだま腫瘍しゅよう細胞さいぼう)が5%以上いじょうみとめられるのが唯一ゆいいつ異常いじょう所見しょけんであることがおおい。機械きかいしき血液けつえきぞう検査けんさでは検出けんしゅつできない場合ばあいがあるため目視もくしかがみけん)による血液けつえきぞう検査けんさのぞましい。慢性まんせいがた白血球はっけっきゅう、リンパだまぞうみとめられる。くすぶりがた慢性まんせいがたでもLDHやsIL-2Rが上昇じょうしょうすることがある。ATLの腫瘍しゅよう細胞さいぼう形態けいたいてきにはかく複雑ふくざつみのみられるフラワー細胞さいぼう有名ゆうめいであるが、くすぶりがた慢性まんせいがたではフラワー細胞さいぼうがみられることはすくなく、ほとんどの腫瘍しゅよう細胞さいぼう軽度けいどのくびれがみとめられることがたせいかるいものであり、形態けいたい診断しんだんには注意ちゅういようする。急性きゅうせいがたリンパ腫りんぱしゅがたではLDHやsIL-2Rがちょぞうする。リンパ腫りんぱしゅがた末梢まっしょう腫瘍しゅよう細胞さいぼうをほとんどみとめない。急性きゅうせいがた定義ていぎじょうの3びょうがた定義ていぎたさないものとされているが通常つうじょう白血球はっけっきゅうぞうがあり末梢まっしょうちゅうにATL細胞さいぼうみとめられる。

画像がぞう所見しょけん[編集へんしゅう]

CTではリンパぶし腫脹しゅちょうかん脾腫などの症状しょうじょうおうじた所見しょけんみとめられる。

診断しんだん[編集へんしゅう]

ATLの診断しんだん成熟せいじゅくT細胞さいぼうせい腫瘍しゅよう患者かんじゃこうHTLV-1抗体こうたい陽性ようせいであることをしめすことからはじまる。つぎにリンパぶし皮膚ひふなどなまけん標本ひょうほん免疫めんえき染色せんしょくふく病理びょうり診断しんだん末梢まっしょう異常いじょう細胞さいぼう出現しゅつげんしている場合ばあいにはフローサイトメトリーほうによって腫瘍しゅよう細胞さいぼうがCD4、CD25が陽性ようせいであることを確認かくにんする(まれにCD4陰性いんせいCD8陽性ようせいATLが存在そんざいする)。これらの検査けんさおおむ確定かくていができる。しかしHTLV-1キャリアにATL以外いがいのT細胞さいぼう発生はっせいすることも可能かのうせいとしてありえるため、厳密げんみつにはHTLV-1が腫瘍しゅよう細胞さいぼうたんクローンせいまれていることをサザンブロットほう確認かくにんできる。典型てんけいれいではサザンブロットほう診断しんだん必要ひつようである。ATLでは末梢まっしょうリンパだまのサザンブロットほうたんクローンせいみパターンがみとめられるがHAMではポリクローナルまたはオリゴクローナルなみパターンとなる。

やまいがた分類ぶんるい[編集へんしゅう]

1991ねん日本にっぽん臨床りんしょう腫瘍しゅよう研究けんきゅうグループ リンパ腫りんぱしゅグループ(JCOG-LSG、Japan clinical oncology group-lymphoma study group)は1980年代ねんだい全国ぜんこく実態じったい調査ちょうさ収集しゅうしゅうされたATL患者かんじゃ情報じょうほうから、急性きゅうせいがたリンパ腫りんぱしゅがた慢性まんせいがた、くすぶりがたの4臨床りんしょうびょうがた提唱ていしょうした[16]

慢性まんせいがたには不良ふりょう因子いんしがあり血清けっせいLDH正常せいじょう値上ねあげげんえる、血清けっせいBUN施設しせつ正常せいじょう上限じょうげんえる、血清けっせいアルブミン施設しせつ正常せいじょう下限かげん下回したまわるのいずれか1つでもゆうするかどうかによって分類ぶんるいした。この臨床りんしょうびょうがた分類ぶんるい下山げざん分類ぶんるいとして世界せかいてきひろ使用しようされている。やまいがた分類ぶんるい必要ひつよう情報じょうほう末梢まっしょう白血球はっけっきゅうすう白血球はっけっきゅうぶん自動じどう血球けっきゅう分析ぶんせきではATL細胞さいぼう認識にんしきできない場合ばあいがあるため、原則げんそく目視もくし判断はんだんする)、生化学せいかがくてき検査けんさ(LDH、Ca、BUN、アルブミン)、リンパぶししゅだい有無うむりの場合ばあいには組織そしきがくてき診断しんだん)、皮膚ひふ臓器ぞうき中枢ちゅうすう神経しんけい病変びょうへん有無うむである。急性きゅうせいがたリンパ腫りんぱしゅがた不良ふりょう因子いんしゆうする慢性まんせいがたATLをaggressive ATLとよぶ。不良ふりょう因子いんしゆうさない慢性まんせいがたATLとくすぶりがたATLをindolent ATLとする。Aggressive ATLはindolent ATLから移行いこう急性きゅうせい転化てんか)してあるいはindolent ATLの時期じきず、もしくはindolent ATLの時期じき発見はっけんされずに発症はっしょうする。

因子いんし[編集へんしゅう]

ATL-prognostic index(ATL-PI)プロジェクトは研究けんきゅう参加さんかした全国ぜんこく81の血液けつえき内科ないか医療いりょう機関きかんとATL診療しんりょう積極せっきょくてきっている3つの皮膚ひふ医療いりょう機関きかんにおいて2000年代ねんだい診断しんだんされたATL患者かんじゃうし調査ちょうさである[17]。このデータベースから同種どうしゅ造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょくけなかった急性きゅうせいがたリンパ腫りんぱしゅがたATL患者かんじゃたいする因子いんしとしてやまい(Ann Arbor分類ぶんるいやLugano分類ぶんるい)、パフォーマンスステータス年齢ねんれい血清けっせいアルブミン血清けっせいsIL-2Rの5つを決定けっていした。算術さんじゅつしきからていちゅうこうリスクの3ぐん分類ぶんるいするATL-PIを決定けっていし、それをスコアすることによって臨床りんしょうてきもちいやすくしたsimplified ATL-PI(sATL-PI)を作成さくせいした[18]。くすぶりがた慢性まんせいがたたいしても同様どうよう作業さぎょうおこない。因子いんしとしてsIL-2Rのみが抽出ちゅうしゅつされ、indolent ATL-PI(iATL-PI)とsimplified iATL-PI(siATL-PI)を作成さくせいした[19]

治療ちりょう[編集へんしゅう]

Indolelent ATLでは通常つうじょう症状しょうじょう緩慢かんまん経過けいかをたどり、早期そうき治療ちりょう介入かいにゅうすることによる改善かいぜんみとめられないため、急性きゅうせいがた移行いこうするまで治療ちりょう経過けいか観察かんさつされる。皮膚ひふ病変びょうへんたいして皮膚ひふ指向しこうせい治療ちりょうおこなわれるが生存せいぞん期間きかん改善かいぜん貢献こうけんするエビデンスはない。海外かいがいでは皮膚ひふ病変びょうへん日和見ひよりみ感染かんせんなど有症ゆうしょうじょうのindolent ATLにインターフェロンαあるふぁジドブジン併用へいよう療法りょうほうがひとつの選択肢せんたくしになっている[20]

Aggressive ATLでは70さい以下いかならばmLSG15療法りょうほう(VCAP-AMP-VECP療法りょうほう)と同種どうしゅ造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょく検討けんとうされる。70さいえる場合ばあいCHOP療法りょうほうベースの化学かがく療法りょうほう救援きゅうえん療法りょうほうとしてはヒトこうCCR4モノクローナル抗体こうたいであるモガムリズマブレナリドミド検討けんとうされる。

再発さいはつ難治なんじれいたいして保険ほけん適応てきおうざい併用へいよう化学かがく療法りょうほうともわせてもちいられる。
再発さいはつ難治なんじれい保険ほけん適応てきおうあり

歴史れきし[編集へんしゅう]

1970年代ねんだい日本にっぽん白血病はっけつびょうリンパ腫りんぱしゅ論文ろんぶんではいくつかの興味深きょうみぶか症例しょうれい報告ほうこくをみることができる。西南せいなん日本にっぽん不良ふりょう悪性あくせいリンパ腫りんぱしゅおおいこと、家族かぞくない発症はっしょう悪性あくせいリンパ腫りんぱしゅにみられること、ホジキンびょうみなみ九州きゅうしゅうおおいこと、セザリー症候群しょうこうぐん皮膚ひふT細胞さいぼうリンパ腫りんぱしゅ九州きゅうしゅうおおいこと、リンパ腫りんぱしゅからしろし、急激きゅうげきにいたる症例しょうれいみとめられること、末梢まっしょうかくぶんした奇妙きみょう白血病はっけつびょう細胞さいぼうみとめられることなどがあげられる。

これらのおおくは2008ねん平成へいせい20ねん現在げんざい診断しんだん能力のうりょくではATLと診断しんだんされておかしくないものばかりであるが、腫瘍しゅようウイルスが原因げんいんとわかったのは1980年代ねんだいである。

2015ねん10がつ21にち京都大学きょうとだいがくらのグループがスパコンの「きょう」をもちいて、成人せいじんT細胞さいぼう白血病はっけつびょう遺伝子いでんし異常いじょう全貌ぜんぼう解明かいめいすることに成功せいこうしたと発表はっぴょう[21][22]ほん研究けんきゅう国際こくさい科学かがく「Nature Genetics」電子でんしばん掲載けいさいされた[21]

ほん研究けんきゅう結果けっかは、ATLの病気びょうき仕組しくみの解明かいめいおおきな進展しんてんをもたらすのみならず、今後こんごほん疾患しっかん克服こくふくするための診断しんだん治療ちりょうへの応用おうよう期待きたいされる[21]

分布ぶんぷ縄文じょうもんじん[編集へんしゅう]

ATLのウイルスキャリアが日本人にっぽんじん多数たすう存在そんざいすることはられていたが、ひがしアジア周辺しゅうへん諸国しょこくではまったく見出みいだされていない。いっぽうアメリカ先住民せんじゅうみんアフリカ、ニューギニア先住民せんじゅうみんなどでキャリアがおおい。日本にっぽん国内こくない分布ぶんぷてんじると、みなみ九州きゅうしゅう沖縄おきなわアイヌとくこう頻度ひんどられ、四国しこく南部なんぶ紀伊きい半島はんとう南部なんぶ東北とうほく地方ちほう太平洋たいへいようがわ隠岐おきしま壱岐いきとう壱岐いきとう五島列島ごとうれっとうなどの僻地へきち離島りとうおおいことが判明はんめいしている。九州きゅうしゅう四国しこく東北とうほくかく地方ちほうにおけるATLのこうはつ地域ちいき詳細しょうさい検討けんとうすると、周囲しゅういから隔絶かくぜつされ交通こうつう不便ふべんだったしょう集落しゅうらくでキャリアは高率こうりつ温存おんぞんされている。東京とうきょう大阪おおさか名古屋なごや福岡ふくおかなどで観察かんさつされる患者かんじゃの90%以上いじょう沖縄おきなわけんみなみ九州きゅうしゅう長崎ながさきけんなどのATLこう発地ほっちたいからの移動いどうしゃめられていた。 以上いじょうより、日沼ひぬまよりゆきおっとはこのウイルスのキャリアこのみはつ地域ちいきは、縄文じょうもんけい人々ひとびと高密度こうみつど残存ざんそんしていることをしめしていると結論けつろんけた[23]。HTLVはかつて日本にっぽん列島れっとうのみならずひがしアジア大陸たいりくにもひろ分布ぶんぷしていたが、はげしい淘汰とうたかえされて大陸たいりくでは消滅しょうめつし、弥生やよい時代じだいになってウイルスキャリアの大陸たいりく集団しゅうだん日本にっぽん列島れっとう中央ちゅうおう多数たすう移住いじゅうしてくると、列島れっとう中央ちゅうおうでウイルスがうすまっていったが、列島れっとう両端りょうたん僻地へきちには縄文じょうもんけいのキャリア集団しゅうだん色濃いろこのこったものとかんがえられる。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん人物じんぶつ[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]