新しん住民じゅうみん

新しん住民じゅうみん（しんじゅうみん）とは、主おもに大都市だいとし近郊きんこうにおいて、他た地域ちいきから移住いじゅうしてきた住民じゅうみんを指さす。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご、団地だんちや新興しんこう住宅じゅうたく地ちなどの造成ぞうせいで、移住いじゅうによる大だい規模きぼな人口じんこう増加ぞうかにより、旧来きゅうらいの文化ぶんか的てき習慣しゅうかん、社会しゃかい的てき結むすびつき、共同きょうどう体たい的てき習俗しゅうぞくなどに新あらたな要素ようそを持もち込こむ存在そんざいとして、こう呼よばれる。大おおきく分わけて、新規しんきに住居じゅうきょを所有しょゆうし定住ていじゅうすることを前提ぜんていとする定住ていじゅう型がたと各種かくしゅの事情じじょうから賃貸ちんたい住宅じゅうたくに居住きょじゅうし、定住ていじゅうを前提ぜんていとしない移住いじゅう型がたが存在そんざいしている。移住いじゅう型がたのことを一部いちぶでは賃貸ちんたい派はとも呼よぶ場合ばあいもある。

概要がいよう

1960年ねん以後いごの高度こうど経済けいざい成長せいちょう以降いこう、日本にっぽん全国ぜんこく各地かくちの都市とし近郊きんこう、いわゆる都市としへの通勤つうきん圏けんに、団地だんちや新興しんこう住宅じゅうたく地ちが多数たすう造成ぞうせいされ、新あたらしく流入りゅうにゅうする新しん住民じゅうみんが生うまれた。新しん住民じゅうみんの多おおくは、都市としに通勤つうきん・通学つうがくし夜間やかんに帰宅きたくする場合ばあいが多おおい。転勤てんきんによりさらに移住いじゅうしたり不都合ふつごうがあれば他た地域ちいきに移住いじゅうを厭いとわないなど、地域ちいきに対たいする愛着あいちゃくの希薄きはくさから旧きゅう住民じゅうみんとの壁かべが生しょうじる例れいは少すくなくない。反面はんめん、ある程度ていどの新しん住民じゅうみんの定着ていちゃくと、市民しみん運動うんどうや住民じゅうみん運動うんどうを通つうじて、新あらたな文化ぶんか的てき習慣しゅうかん、社会しゃかい的てき結むすびつき、共同きょうどう体たい的てき習俗しゅうぞくなどが形成けいせいされ、地域ちいき社会しゃかいの仕組しくみが変化へんかして、地域ちいき全体ぜんたいが新興しんこう都市としへと変貌へんぼうする例れいも少すくなくない。

旧来きゅうらいの地域ちいき住民じゅうみんである旧きゅう住民じゅうみんとの対立たいりつが顕在けんざい化かする例れいがみられる。地域ちいきの風習ふうしゅう、慣習かんしゅうに従したがわないことなどから軋轢あつれきが見受みうけられ、たとえば、ごみ収集しゅうしゅうなどで定さだめられた曜日ようびに出ださない、地域ちいきの催もよおし物ものに参加さんかしない、地域ちいきの負担ふたん金きん（自治じち会費かいひなど）を支払しはらわないなどの例れいもみられ、地域ちいきの祭まつり事ことにおいて、祭事さいじへの参加さんかはするが、その準備じゅんびや、寄付きふなどの負担ふたんは拒こばむ例れいも多おおくみられ、「旧きゅう住民じゅうみんが負担ふたんし、新しん住民じゅうみんが楽たのしむ」という自己じこ中心ちゅうしん的てきな新しん住民じゅうみんが多おおい地域ちいきもあるなど諸しょ問題もんだいを抱かかえている。
また祭まつりのみならず、自分じぶんの権利けんりばかり主張しゅちょうして、旧来きゅうらいの住民じゅうみんからの反感はんかんを買かうケースもある。

一方いっぽう、このような新旧しんきゅう両りょう住民じゅうみんに温度おんど差さがありながらも、共通きょうつう課題かだいの登場とうじょうによって新旧しんきゅう住民じゅうみんが和合わごうする契機けいきとなった例れいもある。日本にっぽんの新潟にいがた県けん巻まき町まちでは多数たすうではなかった新しん住民じゅうみんが原発げんぱつ反対はんたい運動うんどうを担になう役割やくわりを果はたしたが、巻まき原子力げんしりょく発電はつでん所しょの建設けんせつの是非ぜひを問とう全国ぜんこく初はつの条例じょうれいによる住民じゅうみん投票とうひょうにおいて、旧きゅう住民じゅうみんの協力きょうりょくを得えることによって、大差たいさで「建設けんせつ拒否きょひ」を意思いし表示ひょうじ、その後ごの日本にっぽんの反はん原発げんぱつ運動うんどうや住民じゅうみん運動うんどうに大おおきな影響えいきょうを与あたえた。住民じゅうみんの自己じこ決定けってい運動うんどうを誕生たんじょうさせたのである。

業種ぎょうしゅの違ちがいによるトラブルも少すくなくない。旧きゅう住民じゅうみんの多おおくは自営業じえいぎょう者ものであったり、農業のうぎょう従事じゅうじ者しゃ（広義こうぎの自営業じえいぎょう者しゃ）であったりすることが多おおく、居住きょじゅうする地域ちいき内ないで勤務きんむおよび事業じぎょう活動かつどうを行おこなっているのに対たいし、新しん住民じゅうみんは第だい二に次じ産業さんぎょうもしくは第だい三さん次じ産業さんぎょう従事じゅうじ者しゃが多おおく、居住きょじゅう地域ちいき外がいで勤務きんむおよび従事じゅうじするなど性格せいかくが異ことなる。また、これらの都市とし従事じゅうじ者しゃは週休しゅうきゅう二に日にち制せいのフルタイムでの労働ろうどう形態けいたいを取とっていることが多おおく、時間じかんの拘束こうそくがあるのに対たいして、自営業じえいぎょう者しゃは時間じかんの制約せいやくは比較的ひかくてき緩ゆるやかである。その結果けっか、地域ちいきの共同きょうどう作業さぎょうや地域ちいきの催もよおし物ものなどへの参加さんかは、自営業じえいぎょう者しゃにとって容易よういであり新しん住民じゅうみんは参加さんかしにくいことが一ひとつの原因げんいんとして挙あげられている。また新しん住民じゅうみんの多おおくは生産せいさんに携たずさわるより、消費しょうひ者しゃである場合ばあいが多おおい。

一般いっぱん的てきに市民しみん運動うんどうや環境かんきょう保全ほぜん運動うんどうを担になうのは、新しん住民じゅうみんであることが割合わりあいとして高たかい。特とくに都市としでの生活せいかつを忌避きひした結果けっか、地方ちほうに移住いじゅうして新しん住民じゅうみんとなった場合ばあいはその傾向けいこうが見みられる。

新しん住民じゅうみんをかかえる自治体じちたいのなかには、新旧しんきゅう両りょう住民じゅうみんの早期そうき融和ゆうわを目指めざし、新あたらしいコミュニティの育成いくせいや既存きそんのコミュニティの交流こうりゅうイベントの実施じっしなどさまざまな施策しさくを打うち出だしているケースが多おおい。巻まき町まちは希有けうな例れいであるが、いずれにせよ歴史れきし的てきに見みるならば、新旧しんきゅう両りょう住民じゅうみん間あいだの対立たいりつは時間じかんの経過けいかとともに解消かいしょうに向むかうであろうが、そこに至いたるまでの曲折きょくせつは多様たようであることが予想よそうされる。

近年きんねんは旧きゅう住民じゅうみんの高齢こうれい化かによる担にない手て減少げんしょうに新しん住民じゅうみんの定年ていねん退職たいしょくの時期じきが重かさなり、退職たいしょくした新しん住民じゅうみん（一部いちぶはフリーランスや自営業じえいぎょうを営いとなむ若年じゃくねん層そうも）が地域ちいきの共同きょうどう作業さぎょうや地域ちいきの行事ぎょうじ（神社じんじゃの祭まつりなど）に参画さんかくするようになり、多おおくの都市としで新旧しんきゅう住民じゅうみんの融和ゆうわが進すすんでいる。

関連かんれん書籍しょせき

• 新潟にいがた日報にっぽう報道ほうどう部ぶ『原発げんぱつを拒こばんだ町まち　巻まき町まちの民意みんいを追おう』岩波書店いわなみしょてん、1997年ねん10月がつ17日にち、ISBN 4000006509

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