日米にちべい修交しゅうこう記念きねん館かん

日米にちべい修交しゅうこう記念きねん館かん
日米にちべい修交しゅうこう記念きねん館かん
施設しせつ情報じょうほう
正式せいしき名称めいしょう	日米にちべい修交しゅうこう記念きねん館かん
事業じぎょう主体しゅたい	串本くしもと町まち
管理かんり運営うんえい	串本くしもと町まち
所在地しょざいち	和歌山わかやま県けん東牟婁ひがしむろ郡ぐん串本くしもと町まち樫野かしの1033
プロジェクト:GLAM

日米にちべい修交しゅうこう記念きねん館かん（にちべいしゅうこうきねんかん）は、日本にっぽん初はつのアメリカ船せん来航らいこう地ちである和歌山わかやま県けん東牟婁ひがしむろ郡ぐん串本くしもと町まちの紀伊大島きいおおしま樫野かしの埼に建たつ町立ちょうりつの博物館はくぶつかんである。

アメリカ商船しょうせんレディ・ワシントン号ごうとグレイス号ごうが寄港きこうした雷公らいこうの浜はまの北側きたがわに1975年ねんに建たてられた。館内かんないには寄港きこう当時とうじの光景こうけいがジオラマで再現さいげんされ、レディ・ワシントン号ごうの模型もけいや資料しりょう・写真しゃしんとともに展示てんじされている。

交通こうつう

• JR紀勢本線きせいほんせん（きのくに線せん） 串本くしもと駅えきから熊野くまの交通こうつうバス樫野かしの灯台とうだい口こう行いきで40分ふん、樫野かしのバス停ばすてい下車げしゃ、徒歩とほ10分ふん

レディ・ワシントン号ごうとグレイス号ごうの来航らいこう

1853年ねんのペリー提督ていとくの浦賀うらが来航らいこう（黒船くろふね来航らいこう）があまりに有名ゆうめいであるため、それ以前いぜんにも日米にちべいの交流こうりゅうがあったことは忘わすれられがちである。実際じっさいにはアメリカ人じんとして日本にっぽんに最初さいしょに渡航とこうして貿易ぼうえきを申もうし込こんだのは、それより62年ねんも前まえの1791年ねん、ジョン・ケンドリックの紀伊きい大島おおしまへの来航らいこうである。ボストンの商人しょうにん等とうがスポンサーとなり、アメリカ西海岸にしかいがんで原住民げんじゅうみんから毛皮けがわを入手にゅうしゅし、太平洋たいへいようを横断おうだんして広東かんとんで売うりさばく計画けいかくが立たてられ、1787年ねんにケンドリックおよびロバート・グレイを船長せんちょうとする2隻せきが派遣はけんされた。2隻せきはボストンから大西おおにし洋ひろしを南下なんかし、南米なんべいホーン岬みさき沖おきを通過つうかして太平洋たいへいように入はいり、北上ほくじょうして西海岸にしかいがんに到着とうちゃくしたが、これはアメリカ人じんによる最初さいしょの西海岸にしかいがん探検たんけんでもあった。毛皮けがわの入手にゅうしゅ後ご、グレイは予定よてい通どおり広東かんとんで毛皮けがわを売うり西にし回まわりでボストンに戻もどったが、遅おくれてマカオに到着とうちゃくしたケンドリックの取引とりひきは上手うまくいかなかった。マカオには西海岸にしかいがんで出会であっていたウィリアム・ダグラス（グレイス号ごう）も来航らいこうしており、一いち行ぎょうはマカオから西海岸にしかいがんに戻もどる途中とちゅうで日本にっぽんに寄港きこうし、毛皮けがわの販売はんばいを試こころみたものであった。しかし、当時とうじの日本にっぽんで、毛皮けがわは全まったくの価値かちを持もっていなかったために交易こうえき交渉こうしょうは上手うまくいかず、数日すうじつ後ごに日本にっぽんを離はなれている。

ケンドリックの一いち行ぎょうは、当初とうしょの計画けいかくから交易こうえきという明確めいかくな目的もくてきをもって南みなみ日本にっぽんに寄港きこうする予定よていだったが、想定そうてい外がいの悪天候あくてんこうに見舞みまわれ、紀伊大島きいおおしまに漂着ひょうちゃくを装よそおい、寄港きこうすることになった。そして、住民じゅうみんに警戒けいかい心しんを与あたえないために中国人ちゅうごくじん船員せんいんに書かかせた漢語かんごの手紙てがみ（我々われわれは紅毛こうもう人じんの商船しょうせんであり、積つみ荷には鉄てつや銅どうしかなく、軍事ぐんじ的てきな意思いしは持もっていないなどの旨むねが漢語かんごで書かかれた）を手渡てわたしたりしている。また、毛皮けがわの貿易ぼうえきを申もうし込こんだことが書簡しょかんや公文こうぶん書しょ（『マサチューセッツ海事かいじ史し』ほか）などから明あきらかになっているが、大島おおしまとの村民そんみんのやりとりの上うえで、毛皮けがわは当時とうじの日本にっぽんでは全まったく価値かちがないことを知しらされ、交易こうえきする意欲いよくはまるで失うせたという、

一方いっぽう、日本にっぽんではこの来航らいこうは偶然ぐうぜんの「漂着ひょうちゃく」に過すぎないと史実しじつが隠蔽いんぺいされてきた。これは、当時とうじの江戸えど幕府ばくふの統治とうち下か、よりによって江戸えど幕府ばくふの御三家ごさんけであり、絶大ぜつだいな権力けんりょくを持もっていた紀州きしゅう藩はんが外国がいこくと密みつに接触せっしょくするようなことが表沙汰おもてざたになり、幕府ばくふの信用しんようが失墜しっついすることを恐おそれたためであり、紀州きしゅう藩はんも武士ぶしを大島おおしまに派遣はけんし、掃討そうとうする計画けいかくを実行じっこうしていた。

結局けっきょく、ケンドリックらは、幕府ばくふから追手おってが向むかっていることを知しらされたことなどで、紀州きしゅう藩はんや幕府ばくふの役人やくにんなどと交渉こうしょうすること無なく、天気てんきの回復かいふくを待まってそのまま日本にっぽんを離はなれている（一いち度目どめは悪天候あくてんこうのため足止あしどめされたが、幸さいわい、紀州きしゅう藩はんの追手おってらも悪天候あくてんこうのために足止あしどめされた）ため、ペリー来航らいこうなどと比くらべると重要じゅうような出来事できごととは認識にんしきされていない。このため教科書きょうかしょにも掲載けいさいされておらず、日本にっぽんにおいてこの日米にちべいの最初さいしょの出会であいはあまり知しられていない。しかし、この出来事できごと以後いご、幕府ばくふの海外かいがい警備けいびが更さらに厳重げんじゅうとなるなど、歴史れきし的てきに大おおきな影響えいきょうを与あたえている。また、数日すうじつ間あいだだけの大島おおしまと船員せんいんとの交流こうりゅうは詳くわしくは記しるされていないが、敵意てきいがないことが分わかると村民そんみんはかなり友好ゆうこう的てきに接せっしていたようで、船員せんいんに対たいし、米べいや薪たきぎなどを贈おくっていたことが、後ごの航海こうかい日誌にっしで明あきらかになっている。

なお、ワシントン州しゅうアバディーン市しでは1989年ねんにケンドリックの乗のったレディ・ワシントン号ごうの再さい建造けんぞうが行おこなわれたほか、マサチューセッツ州しゅうウエアハムにあるケンドリックの旧宅きゅうたくがケンドリック記念きねん館かんとして保存ほぞん・公開こうかいされている。また、2016年ねんにはグレイス号ごう乗組のりくみ員いんのサミュエル・デラノの航海こうかい日誌にっしが確認かくにんされたことで、より正確せいかくな内外ないがいでの事情じじょうが明あきらかとなった。

わが名なはケンドリック

ノンフィクション小説しょうせつの佐山さやま和夫かずお『わが名なはケンドリック』では、レディ・ワシントン号ごうの来日らいにちの目的もくてきと、日本にっぽん史しにその事実じじつが記載きさいされなかった理由りゆうが示しめされている。

出版しゅっぱん情報じょうほう

• （講談社こうだんしゃ、1991年ねん） ISBN 4-06-205195-8
• （彩いろどり流りゅう社しゃ、2009年ねん新版しんぱん） ISBN 978-4-7791-1489-2

周辺しゅうへん情報じょうほう

• 海うみ金剛こんごう
• 樫野かしの埼灯台だい
• トルコ記念きねん館かん
• 串本くしもと海中かいちゅう公園こうえん
• 潮岬しおのみさき
  • 潮岬しおのみさき灯台とうだい
• 橋杭はしぐい岩がん
• 串本くしもと応挙おうきょ芦あし雪ゆき館かん

外部がいぶリンク

• 日米にちべい修交しゅうこう記念きねん館かん - 南紀なんき串本くしもと観光かんこう協会きょうかい