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暗号あんごう

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暗号あんごう(あんごうし)の記事きじでは、暗号あんごう暗号あんごうがく暗号あんごう理論りろん暗号あんごう技術ぎじゅつ、などにかんする歴史れきしてき事項じこう記述きじゅつする。

概要がいよう

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暗号あんごう起源きげんふるく、すうせんねん歴史れきしつ。時間じかんてきにはそのだい部分ぶぶん古典こてんてき暗号あんごうかんするものである。古典こてんてき暗号あんごう暗号あんごう大抵たいていは、かみ鉛筆えんぴつ(と多少たしょう道具どうぐ)を使つかっておこなうことができるものであった。暗号あんごう使つかわれる道具どうぐは、そのなが歴史れきしにわたり、機械きかい工作こうさく精度せいどなどの進歩しんぽにあわせ、すこしずつ発展はってんした。

暗号あんごう解読かいどく暗号あんごう裏面りめんにあって、暗号あんごう歴史れきしたいとなる歴史れきしがある。ルーツを言語げんごがく頻度ひんど分析ぶんせき暗号あんごうへの応用おうよう頻度ひんど分析ぶんせき (暗号あんごう)記事きじ参照さんしょう)はその初歩しょほであり、そして途絶とだえることなく進化しんかした。暗号あんごうにまつわるさまざまな事件じけんやく半分はんぶんはこの裏側うらがわにあるともえる。

技術ぎじゅつからると18世紀せいき以降いこう急激きゅうげき発展はってんした電気でんき利用りようの、情報じょうほう通信つうしんへの応用おうようでは、同時どうじ暗号あんごう要請ようせい重要じゅうようであった。エニグマのような、電気でんき回路かいろ接点せってんもう断続だんぞくによって信号しんごうをスクランブルするこの時期じき暗号あんごうは、つぎたコンピュータの時代じだい暗号あんごうの、いくつかの意味いみ先駆せんくとなっている。

ケルクホフスの原理げんり」は、以上いじょうのような古典こてんから近代きんだいまでの暗号あんごうと、現代げんだい暗号あんごうとをへだてている原理げんりである。そして、1940年代ねんだいにシャノンらによって基本きほんてき法則ほうそくなどが確立かくりつされた情報じょうほう通信つうしん理論りろんによる暗号あんごうかんする定量ていりょうてき議論ぎろんは、こんにち、暗号あんごう安全あんぜんせい検討けんとうする基本きほんとなっている。またとく現代げんだい暗号あんごう特徴とくちょうしめいちれいとしては、RSAのような復号ふくごう暗号あんごう非対称ひたいしょうかぎ利用りようする暗号あんごう方式ほうしき革命かくめいてきであった。

パーソナルコンピュータをはじめとする個人こじんけの情報じょうほう機器きき普及ふきゅうによって、安全あんぜん秘匿ひとく通信つうしん個人こじんレベルでも不可欠ふかけつなものとなった。また、携帯けいたい電話でんわでの通話つうわ暗号あんごうなど、ユーザがらないうちにさまざまな身近みぢか場所ばしょ暗号あんごう浸透しんとうしてきていて、プライバシー保護ほごにも重要じゅうよう役割やくわりになっている。

一方いっぽうで、国家こっかによって、個人こじん利用りよう可能かのう暗号あんごう方式ほうしき脆弱ぜいじゃくなものに制限せいげんして国民こくみん個人こじん危険きけんさら可能かのうせいがあるような、あるいはかぎ国家こっか機関きかんあづけなければならないものとするなどといった(「キー・エスクロー」せい)、個人こじんがその自由じゆう情報じょうほうセキュリティ追求ついきゅうすることを強権きょうけんてき制限せいげんし、国家こっかのセキュリティを優先ゆうせんさせるなどといったようなうごきが、権威けんい主義しゅぎてき一部いちぶ国家こっかかぎったはなしではなく、むしろ自由じゆう標榜ひょうぼうするような国家こっかにおいてもつね主張しゅちょうする勢力せいりょくがあり、定期ていきてき話題わだい回帰かいきられるなど、太古たいこからつづくセキュリティと自由じゆう議論ぎろん今日きょうつづいている。

暗号あんごう歴史れきし

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単純たんじゅん換字かんじしき暗号あんごう発生はっせい

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暗号あんごう起源きげん紀元前きげんぜんにまでさかのぼる。紀元前きげんぜん19世紀せいきごろの古代こだいエジプト石碑せきひえがかれているヒエログリフ(象形しょうけい文字もじ)が現存げんそんする最古さいこ暗号あんごうぶんとされている。文章ぶんしょうちゅう標準ひょうじゅん以外いがいのヒエログリフをもちいたものがあり、一般いっぱんのヒエログリフしからないものからいてある内容ないようかくすのに役立やくだったとかんがえられ、これはもっとも初期しょき換字かんじしき暗号あんごうのひとつである。

スキュタレーのイメージ

紀元前きげんぜん5世紀せいきにはスパルタでスキュタレー暗号あんごう使用しようされる。ぼう(スキュタレー)とかわひもとを使つかった暗号あんごう方式ほうしきで、かわひもじょうには一見いっけんランダムえる文字もじれつえがかれているが、このかわひもをスキュタレーにきつけると、あるくだり平文へいぶんあらわれる。スキュタレー暗号あんごうではぼうふとさがかぎになっているともとらえることもできる。ぼうかわひもべつ人間にんげん所持しょじし、割符わりふのようにも使つかったらしい。

紀元前きげんぜん2世紀せいきにはポリュビオスがポリュビオス暗号あんごう発明はつめいする。ポリュビオス暗号あんごうは、5×5=25のマスアルファベット記入きにゅうし、かくアルファベットにそのアルファベットがはいっているマスくだり番号ばんごうれつ番号ばんごうとを対応たいおうさせる換字かんじしき暗号あんごうである。

紀元前きげんぜん1世紀せいき登場とうじょうしたシーザー暗号あんごうは、ユリウス・カエサルもちいたとされ暗号あんごう歴史れきしなかでもとりわけ有名ゆうめいなものである。シーザー暗号あんごうもとのアルファベットから文字もじをあるかずだけのちにずらして作成さくせいする暗号あんごう方式ほうしきであり、このかずかぎとなっている。しかしかぎかずが26しかないため、暗号あんごう安全あんぜんせいはアルゴリズムの秘匿ひとくにも依存いぞんしているとかんがえられる。

それにくらべて、文字もじ文字もじ対応たいおう不規則ふきそくにした一般いっぱんてき単一たんいつ換字かんじしき暗号あんごうは、そのかぎかずが26のかいじょう存在そんざい(アルファベット場合ばあい)し、ほぼ解読かいどく不可能ふかのうおもわれた。

換字かんじしき暗号あんごうからより複雑ふくざつ暗号あんごう

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換字かんじしき暗号あんごうは、9世紀せいきころにはアラビアじんによって、頻度ひんど分析ぶんせきという手法しゅほう発見はっけんされたことによって看破かんぱされた。ヨーロッパではその方面ほうめん研究けんきゅう発達はったつせず、ながらく単一たんいつ換字かんじしき暗号あんごう安全あんぜん暗号あんごうとして使用しようされていた。15世紀せいきになるとルネサンス影響えいきょうけ、急速きゅうそく発達はったつし、このころにようやくヨーロッパでも頻度ひんど分析ぶんせき手法しゅほう確立かくりつした。

頻度ひんど分析ぶんせきによって、単一たんいつ換字かんじしき暗号あんごう安全あんぜんではなくなってしまった。たんいちの(れんつづり対象たいしょうとしない)頻度ひんど分析ぶんせきたいして対抗たいこうするための代表だいひょうてき防衛ぼうえいほうとしては、つぎのようなものがある[1]

  • 平文へいぶん[注釈ちゅうしゃく 1]そのままではなく、文中ぶんちゅう無意味むいみ文字もじ(冗字。虚字きょじ、捨字とも)をぜてから暗号あんごうする。復号ふくごう、冗字に復号ふくごうされたものはてる(ないし空文字くうもじれつ復号ふくごうする)。分析ぶんせき混乱こんらんさせることが目的もくてきである。
  • 度数どすう秘匿ひとく方式ほうしき
    • たとえば、平文へいぶんでは頻度ひんどたか文字もじeにe1・e2・...のように複数ふくすうしゅ記号きごうをランダムにてる、といったようにして、しん頻度ひんど隠匿いんとくする(秘匿ひとく度数どすう方式ほうしき、homophonic substitution)。
    • たとえば、平文へいぶんでは頻度ひんどひく文字もじqとzをおな記号きごうてる、といったようにして、しん頻度ひんど隠匿いんとくする(ぎゃく秘匿ひとく度数どすう方式ほうしき、polyphonic substitution)。こちらは、なん工夫くふう場合ばあい直後ちょくごにuがあったらqだろう、といったように復号ふくごう機械きかいてきにはできない。

など、様々さまざま工夫くふうらされるが、15世紀せいき後半こうはんから16世紀せいきにかけて、それでも、安全あんぜんではなくなってきてしまった。

どう時期じきに「ヴィジュネル暗号あんごう」などのひょうしき換字かんじ暗号あんごうばれる、より安全あんぜんせいたか暗号あんごうかんがされていた。たとえば、たとえばaがかならずcになるような従来じゅうらい方法ほうほうではなく、aaとかbbとかccというつづりが原文げんぶんにあっても、対応たいおうするくらぶんはcgといったようになるような(つまり、おな文字もじでも暗号あんごうされるとちが文字もじになる)方法ほうほうである。単一たんいつ換字かんじしき暗号あんごうくらべて安全あんぜんせいたかいが、暗号あんごう復号ふくごうわずらわしかったため、あまり使つかわれなかった。

17世紀せいきにあったエピソードに、ニュートンライプニッツけて、微分びぶんほう微分びぶん方程式ほうていしき解法かいほうかんしてべたぶんを「暗号あんごうぶん」にしておくった、というものがある(これは、両者りょうしゃ関係かんけい決裂けつれつてきになる以前いぜんはなしである)。ラテン語らてんごいた原文げんぶんもとに、それに使用しようしたアルファベットをじゅん使用しようした個数こすうならべた、アナグラムの一種いっしゅで(最初さいしょ部分ぶぶんしめすと "aaaaaa cc d æ" といったようなものである)、現代げんだい暗号あんごうがく観点かんてんからうと、解読かいどく可能かのう暗号あんごうえるようなものではない。暗号あんごうのつもりであったのか、自分じぶん発見はっけんであることをしめすための、一種いっしゅうならばハッシュ関数かんすうによる署名しょめいのようなものであったのかはなぞとされている[2]

18世紀せいきごろには、外交がいこう軍事ぐんじじょう必要ひつようから安全あんぜんせい要求ようきゅうたかまると、面倒めんどうだが安全あんぜんなヴィジュネル暗号あんごう使つかうようになっていった。

ヴィジュネル暗号あんごうには、かぎ周期しゅうきせいという弱点じゃくてんがあった。変換へんかんひょうかぎによって逐次ちくじえられるが、かぎ自体じたい固定こていのため、かぎながさごとに暗号あんごうぶん調しらべると、それはおな変換へんかんひょうによって単純たんじゅん換字かんじされた暗号あんごうになっているため、頻度ひんど分析ぶんせきによって解読かいどくできてしまう。この解読かいどくほうは19世紀せいき中頃なかごろ発見はっけんされて、ヴィジュネル暗号あんごう解読かいどくされてしまった。

無線むせん暗号あんごう

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1895ねんにマルコーニが無線むせん通信つうしん当初とうしょ無線むせん電信でんしん)を実現じつげんし、暗号あんごう歴史れきしおおきな転換てんかんてんむかえることとなる。電波でんぱによる無線むせん通信つうしん特定とくてい相手あいてのみに送信そうしんすることはできず、味方みかた同時どうじてき通信つうしん傍受ぼうじゅできるばかりでなく、手紙てがみとうちがてきわたったことを検知けんちする手段しゅだんもない。このため、無線むせん通信つうしんあつかうえ暗号あんごうかせないものになった。

機械きかいしき暗号あんごう装置そうち発明はつめい

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暗号あんごうかんする歴史れきしは、暗号あんごう#歴史れきし参照さんしょう

べいぐん暗号あんごうM209

ドイツ発明はつめいシェルビウスが発明はつめいし、1925ねんにドイツぐん採用さいようした暗号あんごうエニグマながあいだドイツぐん通信つうしん秘密ひみつささえてきた。エニグマの暗号あんごう方式ほうしき換字かんじしき暗号あんごうのひとつだが、3まいのローターとすうほんのプラグの位置いち交換こうかんすることができるためかぎ個数こすう膨大ぼうだいかずになり、一文字ひともじつたびにローターが回転かいてん回路かいろ変更へんこうされるので、単純たんじゅん換字かんじしき暗号あんごうとはちがい、おな文字もじがその位置いちによってべつ文字もじ変換へんかんされるなど複雑ふくざつなものである。操作そうさ簡単かんたん特別とくべつ訓練くんれんんだ専門せんもんでなくてもあつかうことができた。エニグマの暗号あんごうそのものはやがて連合れんごうこくがわ解析かいせきすすめたが、コードブックの奪取だっしゅ以外いがい方法ほうほうではなかなか解読かいどくすることは出来できなかった。

bombe

解読かいどく不可能ふかのうかとおもわれたエニグマであったがチューリングらによって解読かいどくがなされることとなる。理論りろんじょう膨大ぼうだい計算けいさん必要ひつようであり、かれらは最初さいしょ手作業てさぎょうによる人海じんかい戦術せんじゅつ計算けいさんすすめていたが、ポーランドのbomba(w:Bomba (cryptography))を発展はってんさせた解読かいどくbombe(w:Bombe)によっておおきく手間てま軽減けいげんされることとなる。bombeは現在げんざいも、さい構築こうちくされ、その誕生たんじょう運用うんようブレッチリー・パークに設立せつりつされたThe National Museum of Computingに保存ほぞん展示てんじされている。

またこのころには戦況せんきょう変化へんかのスピードがたかまり、暗号あんごう通信つうしんにも速度そくどもとめられることとなった。単純たんじゅん複雑ふくざつなだけでは暗号あんごう復号ふくごう時間じかんがかかり、実用じつようせいとぼしくなってしまうが、暗号あんごう登場とうじょう暗号あんごう速度そくど向上こうじょうにも貢献こうけんしている。だが、それらのうらくかのごとく、アメリカぐんはアメリカ先住民せんじゅうみんナバホぞく言葉ことばであるナバホを、だい大戦たいせんなか電話でんわ通信つうしん暗号あんごうとして利用りようした(コードトーカー)。ナバホぞく出身しゅっしん兵士へいし同士どうし会話かいわをするだけなので通信つうしんはとてもはや正確せいかくで、ナバホぞく言葉ことば大変たいへん複雑ふくざつうえ類似るいじする言語げんご存在そんざいせず、日本にっぽんぐん解読かいどくどころか暗号あんごうぶんめることすらできなかったという。これらのエピソードは映画えいがウインドトーカーズ」でもえがかれている。

だが、その日本にっぽん外務省がいむしょうざいドイツ日本にっぽん大使館たいしかんあいだで、重大じゅうだい軍事ぐんじ機密きみつ事項じこう情報じょうほう連絡れんらく早口はやくち薩摩さつまべんおこなうという同種どうしゅのアイデアを実行じっこうしている。これについては通常つうじょう国際こくさい電話でんわ会話かいわしたため、アメリカぐん当然とうぜんごと傍受ぼうじゅしたが、解読かいどく困難こんなんきわめ、最初さいしょはほとんどまともに解読かいどくができなかったという。

コンピュータと暗号あんごう

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1940年代ねんだいだい世界せかい大戦たいせん終了しゅうりょう前後ぜんこう開発かいはつはじまったプログラム可能かのう電子でんし計算けいさん(コンピュータ)の登場とうじょう機械きかいしき暗号あんごう信頼しんらいせいをさらに失速しっそくさせる。コンピュータは自由じゆうにプログラムを設定せっていでき、任意にんい機械きかいしき暗号あんごうをシミュレートできるうえ暗号あんごう復号ふくごうのスピードも桁違けたちがいで、暗号あんごうかぎそうあたりで調しらべる、暗号あんごうぶん統計とうけい処理しょりして暗号あんごうかぎ推測すいそくするひとし暗号あんごう解読かいどく強力きょうりょくなツールとなる。初期しょきのコンピュータにはコロッサスのように暗号あんごう解読かいどく目的もくてきとして開発かいはつされたものもある。

一方いっぽうで1947ねんトランジスタ発明はつめい、1958ねん集積しゅうせき回路かいろ発明はつめいなど半導体はんどうたい技術ぎじゅつ進歩しんぽ暗号あんごうにもおおきな影響えいきょうあたえ、機械きかいしきでは実現じつげん不可能ふかのう複雑ふくざつなアルゴリズムでも実現じつげん可能かのうになった。信頼しんらいせいたか暗号あんごうが、手軽てがる利用りようできるようになったのもコンピュータや半導体はんどうたい技術ぎじゅつ出現しゅつげんしてからである。

ブロック暗号あんごう誕生たんじょう

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1970年代ねんだいホルスト・ファイステルにより換字かんじしき暗号あんごう転置てんちしき暗号あんごうわせた換字かんじ-てん暗号あんごう提案ていあんされ、DES原型げんけいとなるブロック暗号あんごう Lucifer誕生たんじょうした。

エニグマなどの機械きかいしき暗号あんごうは、ブロックちょうすうビットで、換字かんじひょう切替きりかえ周期しゅうきながさとその統計とうけいてきランダムせい向上こうじょうさせた換字かんじしき暗号あんごうであるが、ブロック暗号あんごうはブロックちょうを64~128ビットとおおきくし、換字かんじ転置てんちかえすことで暗号あんごうぶん作成さくせいする方式ほうしきである。単純たんじゅん換字かんじしき暗号あんごう換字かんじひょう種類しゅるいは26!サイズであるが、ブロックちょうが64ビットのとき、(2^64)!という巨大きょだいなサイズとなる。

ただ、Luciferの換字かんじひょうSボックスばれる)の設計せっけいには問題もんだいがあり、解読かいどく容易よういであった。そのため、DES規格きかく制定せいていさい当時とうじのコンピューターを駆使くししてSボックスの検証けんしょうおこなわれた。しかし助言じょげんしたNSAがSボックスの設計せっけい方針ほうしん差分さぶん解読かいどくほうへのたいせい)をあきらかにしなかったため、裏口うらぐち(バックドア)を仕掛しかけたとの疑惑ぎわくのこった。

ブロック暗号あんごう歴史れきしは、ブロック暗号あんごう#歴史れきし参照さんしょう

かぎ配送はいそう問題もんだい公開こうかいかぎ暗号あんごう

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コンピュータの性能せいのう向上こうじょうするにつれ、暗号あんごう安全あんぜんせいは、コンピュータをもってしても解読かいどくふせげる程度ていどにまでたっしたが、暗号あんごう技術ぎじゅつべつかべにぶつかる。

共通きょうつうかぎ暗号あんごう通信つうしんをするにはあらかじかぎ相手あいておくっておかなければならないが、そのかぎ暗号あんごうせずにそのまま送信そうしんすれば第三者だいさんしゃぬすまれてしまう。安全あんぜんかぎ配送はいそうするのは多額たがくのコストがかかり、これがかぎ配送はいそう問題もんだいばれる問題もんだいである。 かぎ配送はいそう問題もんだいれいとして、敵国てきこく侵入しんにゅうしたスパイに暗号あんごうかぎ送信そうしんしていると推測すいそくされる放送ほうそうもある(ナンバーステーション乱数らんすう放送ほうそう)。

かぎ配送はいそう問題もんだい解決かいけつすべく、1976ねんホイットフィールド・ディフィDiffieとマーチン・ヘルマンHellmanが公開こうかいかぎ暗号あんごうけい概念がいねん提案ていあんする(Diffie-Hellmanかぎ共有きょうゆう)。これは共通きょうつうかぎ暗号あんごうけいちがい、暗号あんごう復号ふくごうべつかぎ使つかう、というアイデアである。暗号あんごうかぎだれでも入手にゅうしゅできるように公開こうかいしてもよく、送信そうしんしゃはその公開こうかいかぎ暗号あんごうして送信そうしんし、受信じゅしんしゃ復号ふくごうかぎ平文へいぶんもどす。公開こうかいされた暗号あんごうかぎでは復号ふくごうできず、復号ふくごうかぎ受信じゅしんしゃしからないので、通信つうしん秘密ひみつたもたれる。

具体ぐたいてき公開こうかいかぎ暗号あんごう方式ほうしきとして有名ゆうめいRSA暗号あんごうはその翌年よくねん発表はっぴょうされた。その、ラルフ・マークルMerkleとヘルマンの二人ふたり公開こうかいかぎ暗号あんごう方式ほうしきであるMerkle-Hellmanナップサック暗号あんごう提案ていあんしたが、この暗号あんごう方式ほうしきのち解読かいどくされてしまった。暗号あんごうソフトウェアはフリーウェアとして公開こうかいされているPGPなどもあり、だれでも安心あんしんして通信つうしんできるようになった。

現在げんざいではもっぱらソーシャルエンジニアリングによるかぎ情報じょうほう流出りゅうしゅつ危険きけんせいのほうが問題もんだいとなっている。コンピュータのパスワードを複雑ふくざつなものにする、パスワードのメモをつくえゴミ箱ごみばこ放置ほうちしないなどの対策たいさく必要ひつようとなる。

量子りょうし暗号あんごう展望てんぼう

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典型てんけいてき暗号あんごう方式ほうしきであるRSA暗号あんごう信頼しんらいせいは、おおきなかず素因数そいんすう分解ぶんかい困難こんなんなことに依存いぞんしている。もし量子りょうしコンピュータ実現じつげんしたとしたら、素因数そいんすう分解ぶんかいみじか時間じかん可能かのうになるのでRSA暗号あんごうやぶられることになる、というようにわれているがこれは「ショアのアルゴリズム」の存在そんざいによる。現状げんじょうでは、それに必要ひつよう規模きぼ安定あんてい稼働かどうする量子りょうしコンピュータの実現じつげんむずかしく[3]ただちに危殆きたいするおそれはい。

量子りょうし現在げんざいのところ光量子こうりょうし)を利用りようした量子りょうし暗号あんごうや、量子りょうし計算けいさん使つかった攻撃こうげきえるたい量子りょうし暗号あんごうたい量子りょうし計算けいさん暗号あんごう[4]研究けんきゅうされている。

日本にっぽん暗号あんごう歴史れきし

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日本にっぽんでは1930年代ねんだいから機械きかいしき暗号あんごう開発かいはつ使用しよう開始かいしした。しかしおおくは他国たこく解読かいどくされ、だい世界せかい大戦たいせん末期まっきには外務省がいむしょう陸軍りくぐん海軍かいぐん情報じょうほう筒抜つつぬけとなっていた(日本にっぽん機械きかいしき暗号あんごうこう参照さんしょうのこと)。

だい世界せかい大戦たいせん日本にっぽん暗号あんごう使用しようじょうきょう秘匿ひとくされているが、1977ねんオーストラリアもと外交がいこうかん執筆しっぴつした著書ちょしょなかで「日本にっぽん外交がいこう通信つうしん暗号あんごうすべ解読かいどくされている」、「最近さいきん解読かいどく不能ふのう暗号あんごう作成さくせいすることはさほど困難こんなんではないのに、日本にっぽん政府せいふ解読かいどくされたふる暗号あんごう依然いぜんとして使つかっている」と言及げんきゅう外務省がいむしょう調査ちょうさした結果けっかもと外交がいこうかん指摘してきする暗号あんごうとは「電報でんぽう略号りゃくごう」を使用しようした機密きみつせいひく通信つうしんであることと結論けつろんづけている。このさい正式せいしき暗号あんごう乱数らんすうひょう作成さくせいはクセがないようコンピューターを利用りようしていること、乱数らんすう連絡れんらく電報でんぽうのほか磁気じきテープ第三者だいさんしゃれた場合ばあいには消磁しょうじされる機能きのうき)などを利用りようしていることがかされており[5]、1970年代ねんだい暗号あんごう状況じょうきょう垣間見かいまみれるものとなっている。なお、1970年代ねんだいにはUKUSA協定きょうてい諸国しょこくによる盗聴とうちょうシステムが稼働かどうしており、どこまで秘匿ひとくされていたかはあきらかではない。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 暗号あんごうがく用語ようごでは、普通ふつうぶんそのままのものを「平文へいぶん」、暗号あんごうけるもの(平文へいぶんなんらかのくわえている場合ばあいがある)を「原文げんぶん」とう。

出典しゅってん

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  1. ^ 以下いか用語ようごは、長田ながた順行じゅんこう暗号あんごう』による
  2. ^ 長田ながた順行じゅんこう暗号あんごう』によれば
  3. ^ RSA暗号あんごうが「ショアのアルゴリズム」にたいして安全あんぜんであることを証明しょうめい量子りょうしコンピュータ - MONOist 2023ねん8がつ26にち閲覧えつらん
  4. ^ JPNIC ニュースレター No.82 たい量子りょうし計算けいさん暗号あんごうとは - JPNIC 2023ねん8がつ26にち閲覧えつらん
  5. ^ ごうもと外交がいこうかん指摘してき事実じじつ 略号りゃくごう電報でんぽう解読かいどく朝日新聞あさひしんぶん』1977ねん昭和しょうわ53ねん)4がつ10日とおか朝刊ちょうかん、13はん、22めん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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