李り璘 (唐とう)

李り璘
続柄つづきがら	玄げん宗むね第だい16皇子おうじ
称号しょうごう	永えい王おう
死去しきょ	至徳しとく2載の（757年ねん）
父親ちちおや	玄げん宗むね
母親ははおや	順じゅん儀ぎ嬪郭氏し

李り 璘（り りん）は、唐とうの皇族こうぞく。

生涯しょうがい

第だい9代だい皇帝こうていである玄げん宗むねの第だい16子しで第だい10代皇帝こうてい粛宗の異母弟いぼてい。母ははは順じゅん儀ぎ嬪郭氏し。生母せいぼは幼時ようじに死去しきょしたため、異母いぼ兄けいの粛宗に養育よういくされた。容貌ようぼうが醜みにくく斜視しゃしだったが、聡明そうめいで学問がくもん好すきで、開ひらき元もと13年ねん（741年ねん）、永なが王おうに封ふうじられる。宮中きゅうちゅうで育そだったため、人事じんじに疎うとかった。

安史やすしの乱らんが起おこると、天宝てんぽう15載の（756年ねん）、玄げん宗むねに命めいじられ、山南さんなん東道とうどう・嶺みね南道みなみどう・黔中道どう・江こう南西なんせい道どうなどの4道みち節度せつど使し兼けん江こう陵りょう大だい都と督とくに任命にんめいされ、江こう陵りょうに赴任ふにんする。

江こう陵りょうには、江南こうなんからの租賦が充満じゅうまんしており、数すう万まんの募兵ぼへいを集あつめ、永なが王おうは独占どくせんし、半はん独立どくりつした政権せいけんを築きずく。さらに、薛鏐・李り台たい卿きょう・韋子春はる・劉りゅう巨きょ鱗うろこ・蔡駉の進言しんげんに従したがい、江南こうなんに自立じりつし、唐から王朝おうちょうから次第しだいに離脱りだつを図はかるようになった。霊れい武たけしにいた兄あにの粛宗は、すでに即位そくいしており、この報告ほうこくを聞きき、永なが王おうに勅使ちょくしを派遣はけんして父ちちの玄げん宗むねに謁見えっけんすることを命めいじたが、永なが王おうは勅命ちょくめいを聞きかなかった。永なが王おうの子こである襄じょう城じょう王おう李り偒が勇敢ゆうかんで力ちからがあったため、軍ぐんを握にぎった。襄じょう城じょう王おう李り偒は反乱はんらんを考かんがえ、金きむ陵りょうを奪うばうように勧すすめたと伝つたえられる。永なが王おうは5,000人にんの兵へいを率ひきい、季き広こう琛・渾惟明あきら・高こう仙せん琦を将しょうに任にんじた。

永えい王おうの長ちょう史しであった李り峴は、病気びょうきを理由りゆうとして辞職じしょくし、粛宗のもとに赴おもむいた。粛宗は、高こう適てきを、彼かれとともに永えい王おうの件けんを謀はからせる。高こう適てきは情勢じょうせいを分析ぶんせきし、永なが王おうが必かならず敗北はいぼくすると語かたった。粛宗は、高こう適てきを淮南ワイナン節度せつど使し、来らい瑱を淮南ワイナン西道さいどう節度せつど使しに任命にんめいし、江南こうなん東道とうどう節度せつど使しである韋陟ともに対処たいしょを命めいじる。

独断どくだんで兵へいを率ひきいて、長江ちょうこうに沿そって東ひがしに赴おもむいた永ひさし王おうを呉くれ郡ぐん太守たいしゅ兼けん江南こうなん東道とうどう採訪さいほう使しである李り希のぞみ言げんが書面しょめんでとがめると、永なが王おうは渾惟明あかりを派遣はけんして、李り希のぞみ言げんのいる呉くれ郡ぐんを攻撃こうげきさせる。また、武将ぶしょうの季き広こう琛に命めいじて、広陵こうりょうを攻撃こうげきした。渾惟明あかりは、李り希のぞみ言げんに命めいじられ丹陽たんようを守まもった元もと景けい曜と閻敬之これを破やぶる。閻敬之のは戦死せんしし、元もと景けい曜は降伏ごうぶくした。季き広こう琛も広陵こうりょう長ちょう史し・淮南ワイナン採訪さいほう使しの李り成しげる式しきに命めいじられて防戦ぼうせんを行おこなった李り承うけたまわ慶けいを降伏ごうぶくさせる。高こう適てき・来らい瑱・韋陟は軍ぐんを安やす陸りくに集あつめ、永なが王おうの討伐とうばつを誓ちかう。

至徳しとく2載の（757年ねん）、粛宗は宦官かんがんの啖廷瑶を派遣はけんして、李り成しげる式しきと謀はからせて河北かほく招討判官ほうがんの李り銑ずくと兵へいを合あわせて、永なが王おうに向むかわせる。永なが王おうは対岸たいがんに軍ぐんを並ならべる。李り成しげる式しきは判官ほうがんの裴茂に旗はたを長大ちょうだいに並ならべさせたため、永なが王おうは恐おそれるに至いたる。そのため、季き広こう琛・渾惟明あきら・馮季康やすし・康かん謙けんは逃亡とうぼうしてしまい、永なが王おうは、制止せいしすることはできなかった。李り成しげる式しきの軍ぐんは篝火かがりびも盛大せいだいに並ならべたため、永なが王おうの軍ぐんは篝火かがりびを焚たく。永なが王おうはこれを見みて、唐とう軍ぐんが河かわを渡わたったと思おもい、家族かぞくや配下はいかとともに逃亡とうぼうする。夜明よあけとともに、唐とう軍ぐんが河かわを渡わたっていないことが判明はんめいしたため、軍ぐんを率ひきい、船ふねに乗のって晋すすむ陵りょうへと逃亡とうぼうする。

唐とう軍ぐんの間諜かんちょうが永えい王おうの逃亡とうぼうを報告ほうこくし、李り成しげる式しきの将しょうの趙ちょう侃ただしが河かわを渡わたったため、永なが王おうは息子むすこの襄じょう城じょう王おう李り偒と武将ぶしょうの高こう仙せん琦に命めいじて攻撃こうげきさせる。趙ちょう侃ただしは迎むかえ撃うち、李り銑ずくが援軍えんぐんに来きて、襄じょう城じょう王おう李り偒は矢やを受うけ、軍ぐんは壊滅かいめつする。永なが王おうは高こう仙せん琦ら残ざん兵へいとともに、南方なんぽうに逃のがれる。大だい庾嶺にて、江西えにし採訪さいほう使しの皇すめらぎ甫はじめ侁が遣つかわした兵へいに敗やぶれ、襄じょう城じょう王おう李り偒は戦死せんしし、永なが王おうは戦たたかいの最中さいちゅうに矢やに当あたったために捕とらえられた。このとき兄あにの粛宗は永なが王おうを避難ひなん先さきの蜀しょくに送おくるように命めいじたが、皇すめらぎ甫はじめ侁自身じしんの判断はんだんで永なが王おうはそのまま斬きられた。薛鏐らも皆みな、殺ころされた。

同時どうじに永ひさし王おうの幕僚ばくりょうだった李白りはくも連坐れんざされたが、後のちに解放かいほうされた。

皇すめらぎ甫はじめ侁は永なが王おうの家族かぞくを蜀しょくに帰かえしたが、独断どくだんで永なが王おうを殺ころしたために、粛宗に罷免ひめんされた。

参考さんこう文献ぶんけん

• 『旧きゅう唐とう書しょ』巻まき百ひゃく七なな 列伝れつでん第だい五ご十じゅう七なな 玄げん宗むね諸子しょし
• 『新しん唐とう書しょ』巻まき八はち十じゅう二に 列伝れつでん第だい七なな 十じゅう一いち宗むね諸子しょし
• 『資し治ち通どおり鑑かん』