森もり広こう蔵ぞう

森もり広こう蔵ぞう

森もり 広こう蔵ぞう（もり こうぞう、1873年ねん2月がつ24日にち - 1944年ねん1月がつ12日にち）は、日本にっぽんの実業じつぎょう家か。台湾たいわん銀行ぎんこう頭取とうどり等とうを経へて、安田やすだ保たもつ善ぜん社しゃ理事りじに就任しゅうにん。昭和しょうわ初期しょきに安田やすだ財閥ざいばつの最高さいこう経営けいえい者しゃとして組織そしき・人事じんじの再さい編成へんせいを行おこなった。東京とうきょう銀行ぎんこう集会しゅうかい所しょ会長かいちょう、経団連けいだんれん副ふく会長かいちょう等とうも務つとめた。

経歴けいれき

苦学くがくして東京とうきょう高等こうとう商業しょうぎょう学校がっこうを卒業そつぎょうし横浜よこはま正金しょうきん銀行ぎんこうに就職しゅうしょく

1873年ねん（明治めいじ6年ねん）2月がつ24日にちに鳥取とっとり市し本町ほんまちの商家しょうかに生うまれる。同郷どうきょうの奥田おくだ義人よしひと特許とっきょ局長きょくちょうの玄関番げんかんばんとなり特許とっきょ局きょくで働はたらきながら予備校よびこうで学まなんで、東京とうきょう高等こうとう商業しょうぎょう学校がっこう（現げん一橋大学ひとつばしだいがく）に入学にゅうがくすると旧きゅう藩主はんしゅによる奨学しょうがく金きん・寄宿舎きしゅくしゃに頼たよりながら、銀行ぎんこう家かを目指めざして学まなぶ。1897年ねん（明治めいじ30年ねん）7月がつに卒業そつぎょうすると、高橋たかはし是清これきよ副ふく頭取とうどりの口添くちぞえで横浜よこはま正金しょうきん銀行ぎんこうに就職しゅうしょくした。1898年ねん（明治めいじ31年ねん）3月がつから上海しゃんはい支店してんに勤務きんむし、1905年ねん（明治めいじ38年ねん）春はるに満州まんしゅうの牛うし荘そう支店してん副ふく支配人しはいにんとなった。日にち露ろ戦争せんそう中なかは銀貨ぎんかを収集しゅうしゅうして満州まんしゅうの戦場せんじょうへ軍用ぐんよう金きんを送達そうたつし、終戦しゅうせん後ごは軍票ぐんぴょう回収かいしゅうにあたった。1907年ねん（明治めいじ40年ねん）秋あきに帰国きこくすると、本店ほんてん支配人しはいにん戸次とつぎ兵吉へいきちの欧米おうべい視察しさつに随行ずいこうした。その後ご、神戸こうべ支店してん副ふく支配人しはいにん、ロンドン支店してん副ふく支配人しはいにん、神戸こうべ支店してん支配人しはいにん、本店ほんてん支配人しはいにんを経へて、1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）3月がつに取締役とりしまりやくに就任しゅうにんした。

台湾たいわん銀行ぎんこうの再建さいけんに失敗しっぱい

当時とうじ台湾たいわん銀行ぎんこうは鈴木すずき商店しょうてんの機関きかん銀行ぎんこうとなっていて、戦後せんご恐慌きょうこう・軍縮ぐんしゅく・海運かいうん不ふ況きょう・関東大震災かんとうだいしんさい・大豆だいず取引とりひき失敗しっぱい・対外たいがい為替かわせ相場そうば崩落ほうらくで鈴木すずき商店しょうてんが経営けいえい難なんになると、台湾たいわん銀行ぎんこうがどんどん融資ゆうしして援助えんじょしたが、その融資ゆうしが固定こてい化かして台湾たいわん銀行ぎんこうの資金繰しきんぐりが困難こんなんになっていった。1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）には台湾たいわん銀行ぎんこうの貸出かしだしの三さん割わりが鈴木すずき商店しょうてんになった。日本銀行にっぽんぎんこう総裁そうさい井上いのうえ準之助じゅんのすけと高橋たかはし是清これきよは台湾たいわん銀行ぎんこう経営けいえい改善かいぜんのために、1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）3月がつに森もり広こう蔵ぞうを台湾たいわん銀行ぎんこうの副ふく頭取とうどりに据すえた。森もりは1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）8月がつに頭取とうどりになると、金子かねこ直吉なおきちを鈴木すずき商店しょうてんの経営けいえいから排除はいじょして学卒がくそつ派はの高畑たかはた誠一せいいちに経営けいえい再建さいけんを託たくそうとするが、鈴木すずき商店しょうてんの金子かねこ派はが猛もう反対はんたいしたので実現じつげんしなかった。1926年ねん（昭和しょうわ元年がんねん）には台湾たいわん銀行ぎんこうの貸出かしだしの六ろく割わり以上いじょうが鈴木すずき商店しょうてんになった。1927年ねん（昭和しょうわ2年ねん）3月がつに金融きんゆう恐慌きょうこうが始はじまると、三井みつい銀行ぎんこうからのコールマネー（短期たんき資金しきん）の供給きょうきゅうがなくなり台湾たいわん銀行ぎんこうは資金繰しきんぐりに行いき詰づまり、日本銀行にっぽんぎんこうの緊急きんきゅう融資ゆうしも拒否きょひされて、鈴木すずき商店しょうてんへの貸出かしだしを中止ちゅうししたので、4月がつに鈴木すずき商店しょうてんが倒産とうさんした。その影響えいきょうで台湾たいわん銀行ぎんこうも破綻はたんしたので8月がつに引責いんせき辞任じにんし、それから一いち年ねん半はんは無職むしょくとなり無聊ぶりょうをかこった。

安田やすだ財閥ざいばつの経営けいえいを任まかされる

井上いのうえ準之助じゅんのすけと高橋たかはし是清これきよに推薦すいせんされて、1929年ねん（昭和しょうわ4年ねん）に結城ゆうき豊太郎ほうたろうの後任こうにんとして安田やすだ保たもつ善ぜん社しゃ（安田やすだ財閥ざいばつの持株もちかぶ会社かいしゃ）理事りじと安田やすだ銀行ぎんこう副ふく頭取とうどりに就任しゅうにんして、実質じっしつ的てきに安田やすだ財閥ざいばつの最高さいこう経営けいえい者しゃになった。穏健おんけんな性格せいかくなので安田やすだ家かや叩たたき上あげの番頭ばんがしらたちの意見いけんを尊重そんちょうし、財閥ざいばつ内部ないぶの融和ゆうわに努つとめた。経営けいえいでは安田やすだ善次郎ぜんじろう以来いらいの金融きんゆう一いち業ぎょう主義しゅぎを遵守じゅんしゅした。他たより遅おくれて工業こうぎょう部門ぶもんに進出しんしゅつするのは不利ふりだと考かんがえ、工業こうぎょう部門ぶもんの経営けいえいを担になう人材じんざいが安田やすだ財閥ざいばつには居いないと考かんがえたからである。また、銀行ぎんこう・信託しんたくそれぞれの部門ぶもんに分権ぶんけんして自主じしゅ経営けいえいをさせた。昭和しょうわ初期しょきに安田やすだ銀行ぎんこうは預金よきん減少げんしょうと浅野あさの財閥ざいばつへの貸金かしきんの固定こてい化かと収益しゅうえき減少げんしょうに苦くるしみ、財閥ざいばつ全体ぜんたいの業績ぎょうせきがひどく悪化あっかしていたが、学卒がくそつ者しゃたちが、組織そしき的てきな預金よきん獲得かくとくや経営けいえい合理ごうり化かを行おこない、考査こうさ課かを新設しんせつして固定こてい貸出かしだし先さきの調査ちょうさと長期ちょうき回収かいしゅう計画けいかくの立案りつあんと不良ふりょう貸出かしだし先さきの再建さいけんを行おこなって、安田やすだ銀行ぎんこうの業績ぎょうせきを著いちじるしく改善かいぜんした。その結果けっか1937年ねん（昭和しょうわ12年ねん）には、安田やすだ財閥ざいばつは金融きんゆう業ぎょうでは三井みつい財閥ざいばつ・三菱みつびし財閥ざいばつ・住友すみとも財閥ざいばつを上回うわまわった。 森もり広こう蔵ぞうによる安田やすだ財閥ざいばつの組織そしき・人事じんじの再さい編成へんせいは、戦後せんごの芙蓉ふようグループ発展はってんの基礎きそになった。

役職やくしょく

東京とうきょう手形てがた交換こうかん所しょ理事りじ長ちょうの座ざを、三井みつい財閥ざいばつの菊本きくもとと争そうって手てに入いれた。 前ぜん日銀にちぎん総裁そうさい土方どかたを尻目しりめに、日本銀行にっぽんぎんこう参与さんよに就任しゅうにんした。 東京とうきょう銀行ぎんこう集会しゅうかい所しょ会長かいちょう、経団連けいだんれん副ふく会長かいちょう、日本にっぽん経済けいざい連盟れんめい会かい常務じょうむ理事りじ等とうも務つとめた。1940年ねん安田やすだ保たもつ善ぜん社しゃ総務そうむ理事りじ。

趣味しゅみ

俳句はいくは宗匠そうしょう格かくと言いわれ、諏訪すわ神社じんじゃでは「神かみつ代だいの夏なつの姿すがたや諏訪すわの森もり」、車中しゃちゅうでは「信濃しなの路ろやアルプス高たかく梅うめ熟こなせるゝ」、川中島かわなかじま古戦場こせんじょうでは「甲信こうしんの戦せんの後のちや草くさいきれ」という句くを詠よんだ。

参考さんこう文献ぶんけん

• 小しょう汀なぎさ利得りとく『安田やすだコンツェルン讀本とくほん』春秋しゅんじゅう社しゃ〈日本にっぽんコンツェルン全書ぜんしょ〉、1937年ねん。doi:10.11501/1453395。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:52007371。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1453395。 
  • 小しょう汀なぎさ利得りとく『安田やすだコンツェルン読本とくほん』（復刻ふっこく版ばん）日本にっぽん図書としょセンター〈日本にっぽんコンツェルン全書ぜんしょ〉、1999年ねん。ISBN 4820527800。 
• 中外ちゅうがい産業さんぎょう研究けんきゅう会かい『財閥ざいばつ安田やすだの新しん研究けんきゅう』中外ちゅうがい産業さんぎょう研究けんきゅう会かい、1937年ねん。
• 武田たけだ経済けいざい研究所けんきゅうじょ『非常時ひじょうじ財界ざいかいの首脳しゅのう』武田たけだ経済けいざい研究所けんきゅうじょ、1938年ねん。
• 人物じんぶつ評論ひょうろん社しゃ『時代じだいを創つくる者もの、財界ざいかい人物じんぶつ編へん 第だい2輯』人物じんぶつ評論ひょうろん社しゃ、1938年ねん。
• 日本にっぽん教育きょういく資料しりょう刊行かんこう会かい『新しん東亜とうあ建設けんせつを誘導ゆうどうする人々ひとびと』日本にっぽん教育きょういく資料しりょう刊行かんこう会かい、1939年ねん。
• 小早川こばやかわ洋一よういち「安田やすだ善次郎ぜんじろう死し後ごの安田やすだ財閥ざいばつの再さい編成へんせい - 結城ゆうき・森もり改革かいかくの過程かていと意義いぎについて -」『経営けいえい情報じょうほう学部がくぶ論集ろんしゅう』第だい1巻かん第だい1号ごう、中部大学ちゅうぶだいがく経営けいえい情報じょうほう学部がくぶ、1985年ねん、27-42頁ぺーじ、ISSN 0910-8874、NAID 120006519390。 
• 由井ゆい常彦つねひこ『安田やすだ財閥ざいばつ』日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃ〈日本にっぽん財閥ざいばつ経営けいえい史し〉、1986年ねん。doi:10.11501/12010913。 NCID BN00413447。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:86055466。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/120109131。 
• 森川もりかわ英正ひでまさ『日本にっぽん財閥ざいばつ史し』日本にっぽん史し 123、教育きょういく社しゃ〈教育きょういく社しゃ歴史れきし新書しんしょ〉、1987年ねん。 NCID BN03040131。 
• 織田おだ薫かおる「旧きゅう安田やすだ財閥ざいばつにみる金融きんゆう持株もちかぶ会社かいしゃの組織そしきと運営うんえいに関かんする一いち考察こうさつ」『目白大学めじろだいがく経営けいえい学がく研究けんきゅう』第だい18巻かん、目白大学めじろだいがく、2020年ねん、27-441頁ぺーじ、ISSN 1348-5776。 
• 辰巳たつみ会かい 鈴木すずき商店しょうてん記念きねん館かん 2021-4-23閲覧えつらん
• コトバンク 森もり広こう蔵ぞう（読よみ）もりこうぞう ブリタニカ国際こくさい大だい百科ひゃっか事典じてん 小しょう項目こうもく事典じてんの解説かいせつ 2021-4-24閲覧えつらん

先代せんだい 結城ゆうき豊太郎ほうたろう

安田やすだ銀行ぎんこう副ふく頭取とうどり 1929年ねん - 1940年ねん

次代じだい 園部そのべ潜せん

先代せんだい 四条しじょう隆英たかひで

保ほ善ぜん商工しょうこう教育きょういく財団ざいだん理事りじ長ちょう 1936年ねん - 1944年ねん

次代じだい 安田やすだ一はじめ