死しすべき定さだめ

死しすべき定さだめ（しすべきさだめ）は、古典こてんや神話しんわ、ファンタジー作品さくひんにおいて、老化ろうかを免まぬかれ事故じこ以外いがいでは死しなない不老不死ふろうふしの存在そんざいに対たいして、この世界せかいの人間にんげんをはじめとするすべての生いき物ものを区別くべつする表現ひょうげん。英語えいごの「モータル」 mortal に対応たいおうする概念がいねん。一部いちぶのゲームやファンタジーの翻訳ほんやくでは「定命じょうみょう」という仏教ぶっきょう用語ようごを転用てんようしていることがある。

語彙ごい

「死しすべき定さだめ」「死しすべきもの」を意味いみする英語えいごの「モータル」mortal は、ラテン語らてんごの「モルタリス」mortalis に対応たいおうする。古代こだいギリシア語ごでは「トゥネートイ」θνητοί、ホメロスにおいては「ブロトイ」βροτοίとも言いい、「人間にんげん」を表あらわす一般いっぱん的てきな言葉ことばの一ひとつだった。これに対たいして、ギリシア神話しんわの神かみ々のような不ふ死者ししゃを「アタナトイ」ᾱ̓θしーたᾰ́νにゅーᾰτたうοおみくろんιいおた や「アンブロトイ」ᾰ̓́μβροτοιと言いった。

死しの発生はっせい

神話しんわの類型るいけいのひとつに、不死ふしや非常ひじょうな長寿ちょうじゅであった神かみ的てき存在そんざい・状態じょうたいからの零落れいらくとして、死しや短命たんめいの起源きげん譚たんが語かたられるものがある。バナナ型がた神話しんわや日本にっぽん神話しんわではコノハナサクヤビメとイワナガヒメの花嫁はなよめ選択せんたくのエピソードが知しられる。

不老不死ふろうふしの薬くすりを求もとめる旅たびに出でたが結局けっきょく手しゅに入いれ損そこねた、または失うしなわれたとして何故なぜ人間にんげんに死しが訪おとずれるようになったかを語かたる『ギルガメシュ叙事詩じょじし』などのパターンもある。このタイプの神話しんわには人間にんげんのかわりにヘビが不死ふし性せいを得えるなど、ヘビが重要じゅうような役割やくわりを果はたす共通きょうつう点てんがある。旧約きゅうやく聖書せいしょ「創世そうせい記き」では、アダムとイヴが神かみの禁止きんしに背そむいたため結果けっか的てきに生命せいめいの樹きの実みを得えられなかったというエピソードが該当がいとうするであろう。神かみは2人ふたりが生命せいめいの実みも食しょくして自分じぶんたちのように永遠えいえんの生せいを得えることを危惧きぐしたため、エデンの園えんから追放ついほうしたことになっている。

また、上記じょうきの失しつ楽園らくえんの話はなしやギリシャ神話しんわのプロメテウス神話しんわなど、男おとこが女おんなを受うけ入いれたことが原因げんいんとなって死しや老化ろうかを獲得かくとくしたという類型るいけいも見みられる。

死しすべき定さだめの者ものから不死ふしの存在そんざいへの変化へんか

文学ぶんがくやゲームでは死しすべき定さだめの者ものから不死ふしの存在そんざいへの変化へんか。あるいはその逆ぎゃくがテーマとして語かたられることがある。その変化へんかの原因げんいん・過程かていには次つぎのようなものが挙あげられる。

• 不死ふしの存在そんざいなどとの取引とりひき。
• 事故じこや事件じけん。
• 偉業いぎょうなどにより多おおくの崇拝すうはいを受うけ、文字通もじどおり神かみとみなされ、実際じっさいに神かみあるいはその眷属けんぞくとなる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 松村まつむら一男かずお『この世界せかいのはじまりの物語ものがたり』白水しろみず社しゃ〈地球ちきゅうのカタチ〉、2008年ねん。ISBN 9784560031858。 

関連かんれん項目こうもく

• 創造そうぞう神話しんわ
• 不老不死ふろうふし