ギルガメシュ叙事詩じょじし

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楔形文字くさびがたもじでギルガメシュ叙事詩じょじし一部いちぶきざまれた粘土ねんどばん

ギルガメシュ叙事詩じょじし』(ギルガメシュじょじし)は、古代こだいメソポタミア文学ぶんがく作品さくひん実在じつざいしていた可能かのうせいのある古代こだいメソポタミアの伝説でんせつてきおうギルガメシュめぐ物語ものがたり人間にんげんられている歴史れきしなかで、もっとふる作品さくひん[1]

ギルガメシュを主人公しゅじんこうとする物語ものがたりふるくから存在そんざいするが、現在げんざい『ギルガメシュ叙事詩じょじし』としてられているのはまえ1300〜1200ねんごろにまとめられた「標準ひょうじゅんばん」(「標準ひょうじゅんバビロニア」でしるされているため)とばれるもので、しんアッシリア時代じだいアッシュルバニパルの図書館としょかんから出土しゅつどした。12まいしょばんからる。『ギルガメシュ叙事詩じょじし』というタイトルは近代きんだい学者がくしゃによりけられたもので、古来こらい作品さくひんだしの言葉ことばって題名だいめいとするならわしがあったことから、原題げんだいは『深淵しんえんのぞひと[2]もしくは『すべてをたるひと』[1]となる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

『ギルガメシュ叙事詩じょじし』は古代こだいオリエント最大さいだい文学ぶんがく作品さくひんであり、これを英雄えいゆうたんしょうする場合ばあい古代こだいギリシアの『オデュッセイア』や中世ちゅうせいヨーロッパの『ニーベルンゲンのうた』『ローランのうた』『アーサーおう円卓えんたく騎士きし』などにかたならべる世界せかいてき物語ものがたりえる[1]一方いっぽう古代こだいオリエント文学ぶんがくとりわけ古代こだいメソポタミア文学ぶんがくかいおおくが宗教しゅうきょうせい政治せいじせいというてん出張でばっておらず、むしろ世俗せぞくてきヒューマニズムてき芸術げいじゅつてき感覚かんかくられるのが特徴とくちょうとされ、日本にっぽん文学ぶんがくとしての相性あいしょうわるくない[1]口伝くでんふくめてギルガメシュ叙事詩じょじしよりふる物語ものがたりはあるが、人間にんげん主人公しゅじんこうとなり、人間味にんげんみあふれる物語ものがたりとしては記録きろくのこっているもっとふる物語ものがたりひとつといってよい。おおくのひとがれる文学ぶんがく作品さくひんとして、また、すべきさだ人間にんげんが、また2人ふたり1くみ関係かんけいがテーマになっているという意味いみでは、ギルガメシュ叙事詩じょじし最古さいこ物語ものがたりだとえる[3][4]

成立せいりつ[編集へんしゅう]

現在げんざいのこ最古さいこ写本しゃほんは、紀元前きげんぜん2千年紀せんねんき初頭しょとう書記しょき学校がっこう生徒せいとたちによってうつされた、シュメールはんギルガメシュしょ伝承でんしょうである。シュメールばん編纂へんさん紀元前きげんぜん3千年紀せんねんきさかのぼ可能かのうせいきわめてたかいが、オリジナルはのこっていない。おそらく文字もじきおこされる以前いぜんから口承こうしょうなどでつたえられており、叙事詩じょじし構成こうせいする個々ここ題材だいざいは、シュメール時代じだいにはすで流布るふしていたとみられる。

シュメール伝承でんしょうもとに、紀元前きげんぜん1800ねんころ成立せいりつしたアッカドによるバビロニアばんは、書記しょき学校がっこう生徒せいとによる書写しょしゃによりのこっているが、このときすでに後述こうじゅつの「標準ひょうじゅんばん」の筋書すじがきがほぼ出来上できあがっていたことがわかる。A. Georgeによれば[5]、アッカド学校がっこうのカリキュラムではなく、アッカドばん生徒せいとたちがシュメール勉強べんきょう息抜いきぬきにうつしたものであり、そのためフワワ(フンババ)討伐とうばつはなし人気にんきもっとおおのこっている、という。

紀元前きげんぜん1300〜1200ねんごろなかバビロニア時代じだい(カッシート王朝おうちょう時代じだい)には、いわゆる「標準ひょうじゅんばん」が成立せいりつした(「標準ひょうじゅんバビロニア」という文学ぶんがく作品さくひんくのに使つかわれたアッカドかれているため、そうばれる)。アッシュルバニパルの図書館としょかんから出土しゅつどした「標準ひょうじゅんばん」の奥付おくづけには「ギルガメシュシリーズ、シン・レーキ・ウニンニの言葉ことば」と、作者さくしゃ名前なまえしるされている。前述ぜんじゅつとおバビロニアばん共通きょうつうするてんおおいが、シン・レーキ・ウニンニのオリジナルの部分ぶぶんもある。たとえば、バビロニアばんしは(奥付おくづけしるされた題名だいめいによると)「おうたちにまさるもの」であることがられているが、標準ひょうじゅんばんでは「深淵しんえんのぞひと」となっている。したがって、このプロローグの部分ぶぶんはシン・レーキ・ウニンニの創作そうさくであろう。また洪水こうずい伝説でんせつ標準ひょうじゅんばん挿入そうにゅうされた。

また、ぜん千年紀せんねんき後半こうはん、バビロニアばんヒッタイトシリアパレスティナ発見はっけんされているほか、ヒッタイトはんフルリはん発見はっけんされており、ギルガメシュ叙事詩じょじしかく言語げんご翻訳ほんやくされて各地かくちひろまっていたことがわかる。

研究けんきゅう[編集へんしゅう]

楔形文字くさびがたもじ粘土ねんどばんしるされた『ギルガメシュ叙事詩じょじし』の断片だんぺん解読かいどく最初さいしょ発表はっぴょうされたのは1872ねんのことであった[6]1853ねんにホルムズド・ラッサム(en)によってニネヴェアッシュールバニパルの図書館としょかん紀元前きげんぜん668ねん-紀元前きげんぜん627ねん)から発見はっけんされていた遺物いぶつの1つにしるされていた文字もじを、だいえい博物館はくぶつかん修復しゅうふくいんであるジョージ・スミス解読かいどくすすめ、『旧約きゅうやく聖書せいしょ』の洪水こうずい物語ものがたり酷似こくじした「(『ギルガメシュ叙事詩じょじしだい11のしょばんたる』)だい洪水こうずい部分ぶぶんつけたのがはじまりである[6]。この発見はっけんおおきな旋風せんぷうこし、スミスはみずからニネヴェ発掘はっくつかえすと、次々つぎつぎ叙事詩じょじし構成こうせいするしょばん発見はっけん解読かいどくすすむにつれその文学ぶんがくせい注目ちゅうもくあつまり、19世紀せいきまつにはさら研究けんきゅうすすんだ。その、スミスぼつから15ねんとき1891ねんに、1人ひとり研究けんきゅうしゃ登場とうじょう人物じんぶつを「ギルガメシュ」とはじめてまさしくむことに成功せいこうする[7]以降いこう1900ねんどくやく嚆矢こうし各国かっこくへの翻訳ほんやくすすみ、各地かくち神話しんわ民話みんわとの比較ひかくさかんになる。1930ねんにはセムもちいた『ギルガメシュ叙事詩じょじし』をカムベル・トムソン(en)が刊行かんこうし、それがこう翻訳ほんやくかんするすべての基盤きばんとなるとともに、かく著者ちょしゃによって叙事詩じょじし改訂かいてい増補ぞうほされていった[8]

和訳わやく矢島やじま文夫ふみおにより完成かんせいし、1965ねん山本やまもと書店しょてんから、その33ねんには文庫ぶんこともない、『イシュタルの冥界めいかいくだ』をくわえたぞうていばんがちくま学芸がくげい文庫ぶんことして筑摩書房ちくましょぼうから刊行かんこうされた。和訳わやくにあたって矢島やじまばんからは性的せいてき表現ひょうげん削除さくじょされている。また刊行かんこうはん世紀せいき以上いじょうのギルガメシュ叙事詩じょじし研究けんきゅうあきらかになった成果せいか反映はんえいされていない。現在げんざいでは月本つきもと昭男あきおやく(1996ねん[9]一般いっぱんてきである。このほかにも『ギルガメシュ叙事詩じょじし』とする書籍しょせき複数ふくすうわた出版しゅっぱんされているが、おおくは物語ものがたりとして成立せいりつするようにかく言語げんごのテキストを充足じゅうそくしながら編成へんせいされているため、史料しりょうてき翻訳ほんやくしょであるとはかぎらない。

あらすじ[編集へんしゅう]

ウルクおうギルガメシュは、つよ英雄えいゆうであると同時どうじ暴君ぼうくんでもあった。その横暴おうぼうぶりをなげいた市民しみんたちのうったえをいた天神てんじんアヌは、女神めがみアルルにギルガメシュの競争きょうそう相手あいてつくるようめいずる。アルルは粘土ねんどからエンキドゥをつくり、ウルクからはなれた荒野あらのいた。

エンキドゥははじめは自分じぶん使命しめい気付きづくことなく荒野あらのししたちとともらしていた。しかしあるとき巫女ふじょからギルガメシュのことをき、仲間なかましいとおもよろこいさんでウルクにかう。仲間なかまもとめるエンキドゥと、近々ちかぢかやってるエンキドゥというおとこ友人ゆうじん関係かんけいになることをゆめていたギルガメシュ。2人ふたりかおまえからたがいを意識いしきしていたが、ギルガメシュがくに花嫁はなよめうばるといううわさみみはさんだ瞬間しゅんかんエンキドゥは憤激ふんげきし、出会であって早々はやばやだい格闘かくとうひろげる。結局けっきょくのところ決着けっちゃくがつかず、2人ふたりたがいのちからみとふか抱擁ほうようわして親友しんゆうとなった。

かれらはつね行動こうどうともにし、様々さまざま冒険ぼうけんひろげる。昔日せきじつ暴君ぼうくんとはことなるギルガメシュと、野人やじんとしての姿すがたわすったエンキドゥはウルクのみんからたたえられる立派りっぱ英雄えいゆうとなっていた。だが、冒険ぼうけんてにかれらをっていたのはけっしてかんばしいものではなかった──。

登場とうじょう人物じんぶつ[編集へんしゅう]

この項目こうもくではおもに「標準ひょうじゅんばん」にもとづく。

主要しゅよう人物じんぶつ[編集へんしゅう]

ギルガメシュ〔シュメールめい:ビルガメス[10]〕(Bilgamesh
主人公しゅじんこうはは女神めがみ(ニンスン)、ちち人間にんげん(ルガルバンダ)。3ぶんの2がかみ、3ぶんの1が人間にんげんとされるが、不死ふしかみではなく、すべき運命うんめいまぬかれない人間にんげんとしてえがかれる。物語ものがたり前半ぜんはんでは、肉体にくたいこわれず英雄えいゆうとしての名声めいせいもとめるかた希求ききゅう。エンキドゥとともにフンババを討伐とうばつし、またイシュタルの求愛きゅうあいをつっぱねていかりをい、イシュタルがけたてんおすうしころす。しかしエンキドゥのにより、みずからのたいする恐怖きょうふにおののき、肉体にくたい不死ふしもとめることになる。しかし結局けっきょく肉体にくたい不死ふしはいらず、ウルクにかえったのち城壁じょうへき建造けんぞうし、後世こうせいのこした。
ウルクのおうとして『シュメール王朝おうちょうひょう』に、エンメルカル(治世ちせい420ねん)、ルガルバンダ(治世ちせい1200ねん)、ドゥムジ(治世ちせい100ねん)につづいて記載きさいされる(治世ちせい126ねん)が、かみとしてあつかわれ、その存在そんざいきわめて神話しんわてき。もっとも、シュメールの「ビルガメスとアッカ」に登場とうじょうする、アッカ(キシュのおうでビルガメスのライバル)の父親ちちおやのエンメバラゲシに言及げんきゅうする碑文ひぶん断片だんぺんつかっているので、エンメバラゲシは紀元前きげんぜん2650ねんごろ実在じつざいした人物じんぶつかんがえられる[11]。したがって、おなごろに、ウルクにギルガメシュというおうがいた可能かのうせいはあり、ギルガメシュやルガルバンダやそのおうたちきたすぐに、吟遊詩人ぎんゆうしじんたちかれらを主人公しゅじんこう物語ものがたりつくったともかんがえられる。ただしギルガメシュが実在じつざいした証拠しょうこ、また叙事詩じょじしかたられているように、ギルガメシュがウルクの城壁じょうへき建造けんぞうした証拠しょうこはない(2002ねん、イラク戦争せんそうはじまるまえ、ウルクで発掘はっくつされたはかが、一時いちじはギルガメシュのはかではないかとわれたが、結局けっきょくもっとあたらしい時代じだいのものということがかった)。
エンキドゥEnkidu
ギルガメシュの親友しんゆう。ギルガメッシュの傲慢ごうまんを諫めるためにかみ々によってつくられたが、ぎゃくかれともとなってしまう。ギルガメシュととも幾多いくた困難こんなんをともにくぐりけた。ともひろげた冒険ぼうけんてに、自身じしんそそ運命うんめいゆめのおげでることとなる。
ルガルバンダLugalbanda
ギルガメシュのちち牧夫ぼくふ。ウルクだい1王朝おうちょうだい3だい伝説でんせつてきおう。ギルガメシュの守護神しゅごじんであると同時どうじ[12]人間にんげん神官しんかんでもある[13]
リマト・ニンスンNinsun
ギルガメシュのはは。ルガルバンダの配偶はいぐうしん。そのは「雌牛めうしおんな主人しゅじん」の知恵ちえゆめきの女神めがみ[14]すべてに通暁つうぎょうする偉大いだい女王じょおうで、賢母けんぼらしい活躍かつやくせる。シュメールばんではてんおすうし退治たいじさい、エアに生贄いけにえささげてギルガメシュを援助えんじょした。
シャマシュ〔シュメールめい:ウトゥ[10]〕(Ud
信仰しんこうシッパルラルサ / 神殿しんでん:エバッバル[15]
正義せいぎつかさど太陽たいようしんでイシュタルのあに。ギルガメシュ専属せんぞく守護神しゅごじん[ちゅう 1]かれ誕生たんじょういわいに見目みめさをさづけて以降いこう叙事詩じょじしでは大半たいはん説話せつわ登場とうじょうし、終始しゅうしギルガメシュを庇護ひごしている。
エア〔シュメールめい:エンキ[10]〕(Enki
信仰しんこうエリドゥ / 神殿しんでん:エアブズ[15]
知恵ちえつかさど深淵しんえん水神すいじん人間にんげんつくった全知全能ぜんちぜんのう男神おかみ。エンリルの人類じんるい撲滅ぼくめつ計画けいかく幾度いくどとなく阻止そししてきたすくいのかみで、人間にんげんたいして好意こういてき。ニップルばんではギルガメシュの守護神しゅごじんであるとされる[16]
イシュタル〔シュメールめいイナンナ[10]〕(Ishtar
信仰しんこう:ウルク、多数たすう / 神殿しんでん:エアンナ[15]
金星かなぼし象徴しょうちょうするあい戦争せんそう女神めがみ。ギルガメシュに求婚きゅうこんするがことわられ、そのはらいせにてんおすうし(グガランナ)をウルクであばれさせた。
アヌ〔シュメールめい:アン[10]〕(An
信仰しんこう:ウルク / 神殿しんでん白神しらかみ殿どの[15]
イシュタルのちち天空てんくうつかさど最高さいこうしん。エンリルによる天地てんち分離ぶんり権力けんりょくおとろ失脚しっきゃくしたが、かみ々がおこな会議かいぎ主催しゅさいするなどその地位ちい時代じだいがってもわっていない。イシュタルにせがまれてんおすうしつくった。
エンリル〔シュメールめい:ヌナムニル[17]〕(Nunamnir
信仰しんこうニップル / 神殿しんでん:エクル[15]
かみ々のおうそらつかさどふうあらし男神おかみ大気たいきしんかみ々の会議かいぎ採決さいけつされた事項じこう執行しっこうけんつ、シュメールにおける事実じじつじょう最高さいこうしんでエンキドゥの個人こじんしん[18]かみとしてのかたはエアと対照たいしょうてきで、安易あんい人類じんるいほろぼそうする。すぎもりにフンババを番人ばんにんとしておいた。
ウトナピシュティム〔シュメールめい:ジウスドラ[10]〕(Utnapishtim
だい洪水こうずいのこり、つまとともに不死ふしとなる。不死ふしもとめてたずねてきたギルガメシュに、不死ふしは(非常ひじょう例外れいがいてきに)かみあたえられるものであって、人間にんげんはいらないものだとさとすため、洪水こうずい伝説でんせつ物語ものがたる。しかしギルガメシュがあきらめなかったため、6にち7ばんねむらないという試練しれんかれすが、ギルガメシュはすぐにねむってしまい、試練しれんえることができなかった。ギルガメシュをあわれんだつま説得せっとくにより、「いたるにん若返わかがえる」という植物しょくぶつれれば不死ふし生命せいめい見出みいだすことが出来できるとおしえる。首尾しゅびくこの植物しょくぶつつけてれたギルガメシュはよろこんで帰途きとについたが、みずびているときにいちひきへびがこのくさってしまい、結局けっきょく不死ふしれることはできなかった。
だい洪水こうずい伝説でんせつ』の主人公しゅじんこう。エアのおしえではこぶねつくり、すこしの人類じんるい動物どうぶつたちをだい洪水こうずいからのがれた。この功績こうせきみとめられかみ々から不死ふしからだあたえられる。ウトナピシュティム/ジウスドラというは「生命せいめいもの[19]、アトラハシスは「かしこしゃ」の[20]
フンババ〔シュメールめい:フワワ[10]〕(Huwawa
レバノンすぎもり番人ばんにん。2015ねんあたらしくつかった粘土ねんどばん解読かいどくにより、エンキドゥとは旧知きゅうちなかだったことが判明はんめいした[21][22]
そのさけごえ洪水こうずい、そのくち、そのいきななそう光輝こうきメラム英語えいごばん武装ぶそうした恐怖きょうふひょうされる怪人かいじんきょじん前兆ぜんちょううらな文書ぶんしょなどでは、かみしるしディンギル)がくこともあり、自然しぜんしんとしてあつかわれるが、おもにその異形いぎょう言及げんきゅうされる。フワワのあたま内臓ないぞううらないのひつじちょうあらわれる場合ばあいもある。 ギルガメシュ叙事詩じょじしではエンリルにすぎもり番人ばんにんとしてはいされたとされている。
グガランナGugalanna
自分じぶんったギルガメシュを殺害さつがいしウルクごとほろぼすため、イシュタルがアヌをおどしてつくらせた「てんおすうし」とばれる巨大きょだいしし。「7年間ねんかん不作ふさくまねく」「これをころしたら死刑しけい」とわれるせいなるかみつかい。大量たいりょうあぶらはいった青玉せいぎょくせきかくを2ほんっている。シュメールう「てんおすうし」という呼称こしょうおすうし構成こうせいするほし名前なまえたいしてももちいられており、シュメールめいうこともあってその成立せいりつ叙事詩じょじしよりもごくふる時代じだいのものであるとわれているが、おすうし神話しんわとして登場とうじょうするれい叙事詩じょじし基礎きそとなったシュメールばん断片だんぺんにしかなく、「てんおすうし」が神話しんわするにいたったプロセスはしょうとされている[23]

その人物じんぶつ[編集へんしゅう]

シャムハトShamhat
ギルガメシュによりエンキドゥのもと派遣はけんされた娼婦しょうふ。エンキドゥと6にち7ばんまじわり、かれみちび存在そんざいとしてえがかれる。神殿しんでんにてかみ奉仕ほうしをする女官にょかんるい、そのなかでも比較的ひかくてき下位かい娼婦しょうふであったと推察すいさつされている[24]。→現在げんざいでは「神殿しんでん娼婦しょうふ」の存在そんざい自体じたい疑問ぎもんされている。
シドゥリSiduri
ギルガメシュがたび途中とちゅう出会であった「酌婦しゃくふ」、つまり酒場さかば女性じょせい。アッカドで「乙女おとめ」の。ヒッタイトばんでは「さけおんな」、フルリばんでは「わかおんな」とやくされているが、バビロニアばんではおんな主人しゅじんとだけかれ正式せいしきはない[25]かみしるしいていることから女神めがみなされイシュタルの化身けしんせつがあるほか、「知恵ちえ女神めがみ」「生命せいめい守護しゅごしゃ」というばれかたもある[26]。ギルガメシュのはなしき、最終さいしゅうてきにウトナピシュティムへのみちおしえる。
ウルシャナビUrshanabi
ウトナピシュティムにつかえる船頭せんどう。ギルガメシュをふねせ、うみわたりウトナピシュティムのもと案内あんないしたもの。そのかえりにもふねし、ギルガメシュの帰国きこく最後さいごまでった。
アルル〔シュメールめい:ニンフルサグ[15]〕(Ninhursag
粘土ねんどをこねてエンキドゥをつくった女神めがみ創造そうぞうしんでエンリルのいもうと(または配偶はいぐうしん)。名前なまえは「やまおんな主人しゅじん」の[27]。メソポタミアにおけるおうたちの守護しゅご女神めがみ[28]
アルラトゥ〔シュメールめい:エレシュキガル[15]〕(Ereshkigal
ギルガメシュが死後しごきついた世界せかいおんな主人しゅじん。イシュタルのあねやみつかさど女神めがみ姉妹しまいやみひかり冥界めいかい天界てんかい女王じょおうとしてライバル同士どうしであり、犬猿けんえんなかおっとおよ配偶はいぐうしんネルガルち、2人ふたり冥界めいかい統治とうちしている[29]
ウルクの長老ちょうろうたち
ギルガメシュにめんかってこととなえ、いさめることができる立場たちばもの標準ひょうじゅんばんでは重要じゅうよう案件あんけんかかわる長老ちょうろうかいぞくする助言じょげんしゃとして、「われらはおう(ギルガメシュ)を信頼しんらいした。おうおうとしてわれらを信頼しんらいしてほしい」とかた場面ばめんがある[30]かれらは保守ほしゅてき思考しこうだが、反対はんたいにウルクの若者わかものたちは進歩しんぽてき思考しこう

内容ないよう[編集へんしゅう]

通称つうしょうアッカドばん

以下いか要点ようてん不足ふそく補足ほそく事項じこう参照さんしょう。ただし、すべてのはん共通きょうつうするとはかぎらない。

粘土ねんどばん 1[編集へんしゅう]

  • プロローグ:かたによる「深淵しんえんのぞひと」(もしくは「すべてをたるにん」)として導入どうにゅうされるギルガメシュをたたえる叙述じょじゅつからはじまる。いわく、「かれはあらゆる国々くにぐに調しらくし、すべてをくし、知恵ちえをきわめた。かれめられたことをかくされたものをひらき、洪水こうずいまえ事柄ことがららせたのだった。」「かれがこいのまちウルクの城壁じょうへきてさせた、またきよ宝物殿ほうもつでんせいなるエアンナのそれ(周壁しゅうへき)もまた。」つまり、これから物語ものがたられる物語ものがたりがすべてわり、ギルガメシュがウルクにかえって城壁じょうへき建造けんぞうしたのちからはじまっているわけである。
  • つづいて本文ほんぶんはいる。ウルクの暴君ぼうくんギルガメシュ。そしてかみ々によってつくられたエンキドゥがシャムハトとの出会であいにより人間にんげんらしさを獲得かくとくする場面ばめんえがかれる。

粘土ねんどばん 2[編集へんしゅう]

シャムハトはエンキドゥに人間にんげん食物しょくもつあたえたりと人間にんげんらしさをつちかうと、2人ふたりでウルクをおとずれる。はげしいたたかいがはじまるが、ギルガメシュとエンキドゥはたがいのちからみと抱擁ほうようわしてともとなる。

粘土ねんどばん 3[編集へんしゅう]

ギルガメシュはすぎるため[ちゅう 2]すぎもり怪物かいぶつフンババをたおすことをエンキドゥに提案ていあん。エンキドゥのにはなみだあふれ、遠征えんせいつよ反対はんたいされるが、ギルガメシュはエンキドゥのなみだおどろきながらもしんいため、からまれたかれにもくるしみをかんじるしんがあることにあせりをいだく。たび成功せいこういの儀式ぎしきえ、2人ふたり出発しゅっぱつをウルクのみんたちは祝福しゅくふくおくす。

  • すぎもりはシャマシュが所轄しょかつしているため、ギルガメシュはシャマシュに遠征えんせい決意けついべて許可きょかを(あるいは神託しんたくうらなって)もらうシーンがある。また、ギルガメシュはははニンスンをたずねると、ニンスンは不安ふあん面立おもだちをしながらその決意けついき、シャマシュに「何故なぜあなたは息子むすこ気持きもちをうごかすのか」などと不平ふへい不満ふまんいつつおんな祭事さいじたちととも丁寧ていねい祈祷きとうおこない、それがわると決心けっしんしたようにエンキドゥを養子ようしむかれて護符ごふあたえた[31][ちゅう 3]
  • 一方いっぽう、ウルクの長老ちょうろうたちはギルガメシュに「としわかいから気持きもちがはやっている」とって遠征えんせい反対はんたいしたが、シャマシュの加護かごがあることをいのって結果けっかてき承諾しょうだくすることとなったようである。

粘土ねんどばん 4[編集へんしゅう]

2人ふたりは45にちぶんおよ距離きょり(1500㎞[32])を3日間にちかんあるいた[ちゅう 4]さらあるすすもり入口いりくち到着とうちゃく、フンババの手下てしたたたかう。

  • シャマシュはギルガメシュに、杉森すぎのもりまでの案内あんないやくとして合成ごうせいじゅうとおぼしきつか[33]、または守護しゅごれいあたえている[34]杉森すぎもりかう途中とちゅう、ギルガメシュは連日れんじつわたゆめており、エンキドゥはそれらのゆめをシャマシュによる加護かごがあることをげる吉兆きっちょうだといてなぐさめた。そしてげん事実じじつとなる。

粘土ねんどばん 5[編集へんしゅう]

もりはいった2人ふたりすぎ立派りっぱさにしんうばわれていると、ほどなくしてフンババがけつけてきた。シャマシュは2人ふたりに「おそれるな」とこえけ、北風きたかぜ南風みなみかぜなど8つのかぜこして援護えんごし、フンババを降参こうさんさせる[ちゅう 5]。するとフンババが命乞いのちごいをするので、ギルガメシュはききいれようとするがエンキドゥはころすことをすすめる。フンババがいきもりしずけさをもどすと、2人ふたりすぎってふねつくり、すぎ大木たいぼくとフンババのくびってウルクへ帰還きかん

  • フンババ征伐せいばつまでのながれは粘土ねんどばんによってバリエーションゆたかだが、シャマシュが介入かいにゅうしていることと、フンババころしを拒否きょひしていたエンキドゥがフンババをころすようギルガメシュに忠告ちゅうこくする様子ようすおおきな差異さいみとめられない。
  • エンキドゥがフンババの命乞いのちごいを却下きゃっかしたのは、フンババの反撃はんげきあるいはエンリルに密告みっこくされることをおそれたためである(ギルガメシュとエンキドゥはフンババをもり番人ばんにんとしてけたのがエンリルだとっていたことが、文中ぶんちゅうかられる)。そのじつエンリルをおこらせないための対策たいさくとして、2人ふたりはあらかじめエンリルのむニップルユーフラテスがわからすぎはこ奉納ほうのうしていたが、エンリルはギルガメシュたちがかえったフンババのくび途端とたん激怒げきどした。そのエンリルはフンババがつ7そう光輝こうき地上ちじょう各地かくちけるという処置しょちおこない、フンババ征伐せいばつ一連いちれん物語ものがたりめくくられる。

粘土ねんどばん 6[編集へんしゅう]

凱旋がいせんうつくしくなりをととのえたギルガメシュに、あい女神めがみイシュタルがこいをする。イシュタルは求婚きゅうこんせまるが、ギルガメシュはイシュタルの愛人あいじんとなったものたち(配偶はいぐうしんドゥムジなど)の悲惨ひさん末路まつろかぞげ、その不貞ふてい残忍ざんにんせい指摘してき求婚きゅうこんことわった[ちゅう 6]

イシュタルは立腹りっぷくし、ギルガメシュを殺害さつがいしウルクごとほろぼすため、ちちアヌにせいうしグガランナをおくることをもとめるがアヌは拒否きょひする。イシュタルは冥界めいかいから多数たすう死者ししゃよみがえらせ、地上ちじょうけるものわせるとってアヌをおどし、グガランナをつくらせた。グガランナがウルクをらし大勢おおぜい人々ひとびとにゆくなか、ギルガメシュとエンキドゥはグガランナをたおしその心臓しんぞうをシャマシュにささげた。イシュタルはおこってしろいただきからギルガメシュにかってのろいをいたが、それにおこったエンキドゥはおすうし死骸しがいもも一部いちぶ)をげつける。顔面がんめんよごされたイシュタルは悲鳴ひめいをあげて退しりぞいた。ウルクのみん歓喜かんきし、二人ふたり英雄えいゆうギルガメシュとエンキドゥをたたえた[ちゅう 7]

そのよる、エンキドゥは不吉ふきつゆめた。その内容ないようをギルガメシュにかたす。「何故なぜおおいなるかみ々は会議かいぎひらいているのか[ちゅう 8]」。

  • シュメールばんでの題目だいもくは『ギルガメシュとせいなるおすうし[35]古代こだい書名しょめいはギルガメシュを主語しゅご戦闘せんとう青年せいねんの』[36]
  • イシュタルはギルガメシュ凱旋がいせんうわさきつけ、そのようようとエアンナからギルガメシュの王宮おうきゅう出向でむいたとするせつもある(一目惚ひとめぼれではなく、もとからいだった)。
  • イシュタルと結婚けっこんすることは「せい婚儀こんぎれい」に連結れんけつし、「かみくこと」を意味いみする。物語ものがたりはギルガメシュをはんかみつたえながらつね人間にんげんがわたせており、かみにつくことをおのれ崩壊ほうかいむすけたのだとしたら、ギルガメシュがイシュタルの求婚きゅうこんれなかったのは「自身じしん神格しんかく拒絶きょぜつした」ということにひとしいはずである[37]
  • ギルガメシュはおすうし始末しまつしたのち、ラピスラズリでできたかくはいっていたやく250リットルのあぶらをルガルバンダにおくり、かくほう自身じしん寝室しんしつかざったという。シュメールばんではことなり、ギルガメシュはおすうしにくまずしいどもたちにあたえ、かくはイシュタルに奉献ほうけんされた。

粘土ねんどばん 7[編集へんしゅう]

エンキドゥがゆめ内容ないようかたるには、【アヌは「もりばんフンババときよしうしグガランナをたおしたために、2人ふたりのうち1にんなねばならぬ」とった。エンリルは「エンキドゥがぬべきだ」とこたえた。シャマシュは「(ギルガメシュたちは)自分じぶん命令めいれいしたがっておすうしどもをころしたのに、何故なぜエンキドゥがぬべきか」と反論はんろんした。するとエンリルは「何故なぜならば、おまえ(シャマシュ)は毎日まいにちあの2人ふたり(ギルガメシュとエンキドゥ)の仲間なかまであるかのように行動こうどうするからだ」とおこった。】

かたえるとエンキドゥはたおれてき、ギルガメシュはエンリルに採決さいけつりやめをいのる(あなたのかみ、すなわちエンキドゥの個人こじんしんエンリルをたずねる[38])が、エンリルによるエンキドゥの決定けってい絶対ぜったいだった。エンキドゥは狩人かりゅうど仕事しごと不景気ふけいきになるようまじない、「ぱらいにおまえほおたせてやる」などとってシャムハトをまでものろおうとするので、これをいたシャマシュは「シャムハトのおかげ人間にんげんらしくなれ、ギルガメシュという親友しんゆうができた」といさめ、エンキドゥのしんかせた。のちにエンキドゥは冥界めいかいにいるゆめて、ちかいことをさとる。熱病ねつびょうたおれてから12にち、ギルガメシュとこれまでのおもかたい、とも冒険ぼうけんった親友しんゆう看取みとられながら、エンキドゥはいきった。

粘土ねんどばん 8[編集へんしゅう]

夜明よあけのひかりとともに、ギルガメシュはエンキドゥを哀悼あいとう。ラピスラズリやかね出来でき立派りっぱぞうつくり、紅玉こうぎょくせきものみつ[ちゅう 9]青玉せいぎょくせきものにはバターをめ、これらをかざったもの太陽たいようにさらした(すなわち、太陽たいようしんシャマシュにそなえた[ちゅう 10][ちゅう 11]

粘土ねんどばん 9[編集へんしゅう]

埋葬まいそうえたギルガメシュは荒野あらの彷徨ほうこうってくうち次第しだい恐怖きょうふおびえるようになり、永遠えいえん生命せいめいもと旅立たびだ決意けついかためた。「だい洪水こうずい」の生存せいぞんしゃかみによってつまとともに不死ふしあたえられたウトナピシュティムに、不死ふしのことをききだすためのたびである。

ギルガメシュはてでマシュさんMount Mashu)の双子山ふたごやま[ちゅう 12]。そこにはもんまも2人ふたりサソリ人間にんげんた。サソリ人間にんげんたちはギルガメシュがはんかみであることを見抜みぬき、何故なぜこんなしょまでやってたのかをやくくが、「このさきやま暗闇くらやみつつまれ、はいってしまえばることは出来できない」とってギルガメシュをきとめる[ちゅう 13]。しかしギルガメシュの意志いしかたく、サソリ人間にんげんひらいたやまもんとおってつづく120kmの暗闇くらやみあるいた。てに、宝石ほうせきブドウちた木々きぎがある楽園らくえん辿たどく。

粘土ねんどばん 10[編集へんしゅう]

ながやみ太陽たいようしたあらわれた)ギルガメシュをてシャマシュは困惑こんわくし、どこまで彷徨うろつあるくのかたずね、「もとめる生命せいめいつかることはないだろう」とはなす。ギルガメシュは自分じぶんなりのこたえをい、さきすすんだ。

そして海辺うみべ酒屋さかや女将おかみシドゥリに出会であい、たび目的もくてきたずねられやくはなすが、彼女かのじょからも「もとめる生命せいめいをあなたがつけることは出来できないでしょう」とわれ、人間にんげんはいずれぬものだからなまたのしみなさいと、人生じんせいのありかたしめされる。それでもエンキドゥのによってくるしむギルガメシュはかんがえをえず、うみわたみちおしえてほしいとたのんだ。シドゥリはギルガメシュの胸中きょうちゅうさとり、船頭せんどうウルシャナビを紹介しょうかいかれはギルガメシュをふねうみした。ウトナピシュティムのしまいたギルガメシュはたび目的もくてきはなすが、ウトナピシュティムは「かみ々につくられししゃであるならば、そこにかならいのちさだめられるのだ」とだけかたる。

粘土ねんどばん 11[編集へんしゅう]

ギルガメシュはさらおしえをうと、ウトナピシュティムはどのようにして不死ふしれたか、その秘事ひめごとかしはじめた。

洪水こうずい物語ものがたり[編集へんしゅう]

【エアしん説明せつめいによりわたしふねをつくり、自分じぶん自分じぶん家族かぞく船大工ふなだいくすべての動物どうぶつせた。6日間にちかんあらしにより人間にんげん粘土ねんどになった。わたしふねニシルさん頂上ちょうじょう着地ちゃくちして7にちばと、ツバメ、カラスをはなってみた。わたしふね乗船じょうせんしゃ解放かいほうしたのちかみ々に生贄いけにえささげると、そのにおいにつられておおくのかみたかってた。

のこったものがいることをったエンリルしんいかり、ニヌルタかみった。「エア以外いがいだれがこんなことをしようか」と。エアしんは「洪水こうずいなどこさずとも、人間にんげんらすだけでよかった。ウトナピシュティムにゆめさせただけで、わたしなにもしていない。かれらがただかしこかったのだ。いまたすかったものたちに、助言じょげんあたえるべきであろう」とはなす。そしてエンリルしんわたしつま永遠えいえんいのちあたたまわり、わたしはるかなる、2つのかわ合流ごうりゅう地点ちてんむこととなった。】

はなえたウトナピシュティムは、洪水こうずいがあったのとおなじ6にち6ばんあいだを「ねむらずにいてみよ」とげるが、ギルガメシュはねむってしまった。ウトナピシュティムにこされたギルガメシュはかえ支度じたくまして乗船じょうせん、ウルシャナビのふねる──そのとき、ウトナピシュティムはつましによって、土産みやげとしてギルガメシュに若返わかがえりの植物しょくぶつ「シーブ・イッサヒル・アメル[39]」がうみそこにあることをおしえてやる。ギルガメシュはあしいしおもりをけて海底かいていあるきその植物しょくぶつれるが、帰還きかん途中とちゅういずみ水浴みずあびをしているあいだへびがその植物しょくぶつってってしまった。ギルガメシュはき、ウルシャナビとともにウルクへ到着とうちゃく物語ものがたりわり)。

  • 物語ものがたりはウルクへ到着とうちゃくしたギルガメシュの言葉ことばだい1のしょばん冒頭ぼうとう部分ぶぶんかえし)でむすばれており、不死ふし希求ききゅうたび帰国きこくしたギルガメシュが、ウルクの建設けんせつたしたことが示唆しさされている[40]
  • ギルガメシュにとってたび成果せいかはいかなるものであったかに注目ちゅうもくおよぶが、不死ふしものうには、永遠えいえんいのちかみ々からのおくものかみ序列じょれつくわわっただけ)であってウトナピシュティム自身じしんがあずかりることではなかった。ギルガメシュは若返わかがえりのくすりすられられず、最終さいしゅうてき永眠えいみんしているため、たびてに永遠えいえんいのちあきらめたとも、最後さいごには恐怖きょうふ克服こくふくしたともれるというが、しょばんによってはたび最後さいごにギルガメシュが「やすらぎをた」とあり[41]たび途中とちゅう出会であったひとから「いまあるせい謳歌おうかするように」とさとされていたことからも、なんらかのこたえを見出みいだしたとするせつ有力ゆうりょくされている。ただし、そういった感想かんそう著者ちょしゃによって表現ひょうげん見解けんかいことなる傾向けいこうにある。

粘土ねんどばん 12[編集へんしゅう]

粘土ねんどばん 1~11 とは独立どくりつした内容ないようで、シュメル神話しんわ『ギルガメシュとエンキドゥと冥界めいかい』の後半こうはん部分ぶぶん(プックとメックーをとしたのち)の逐語ちくごやくちかい。

  • シュメールばん現在げんざいよくられる題名だいめいは『ギルガメシュとエンキドゥと冥界めいかい[35]古代こだい書名しょめいを『いにしえ日々ひびに』としてバビロニア時代じだい紀元前きげんぜん2000ねんころ)では学校がっこう教材きょうざいにもなっていた[42]全文ぜんぶんおよそ300ぎょうえる興味深きょうみぶか長編ちょうへんだが、神話しんわふうのものとなっていて解釈かいしゃくむずかしく、まえばんとのつづ具合ぐあい不自然ふしぜんであるために叙事詩じょじしからは完全かんぜんはなされて収録しゅうろくされた。ある意味いみでは、本編ほんぺんとはべつ過程かてい辿たどったギルガメシュとエンキドゥのわかれの物語ものがたりである。
  • 『ギルガメシュとエンキドゥと冥界めいかい』の内容ないよう以下いかとおりである。

    天地てんち創造そうぞうされてしばらくったあるとき、ユーフラテスがわのほとりにハラブ(フルップ)[ちゅう 14]えていた。南風みなみかぜによりたおれると、かわ氾濫はんらんきてハラブのながされていく。これをつけたイナンナ(イシュタル)は、椅子いす寝台しんだいにする目的もくてきのためせいなるえんえた。ところがそのへびアンズーリリトみついてしまう。イナンナはあにウトゥ(シャマシュ)にたすけをもとめるがってもらえず、ギルガメシュをたよったところかれはすぐさまおのってへびたちをいやった。たおされ、イナンナはれいとして根元ねもとからプック()とメックー(ぼう)をつくり、ギルガメシュはこれを[ちゅう 15]。ところが、詳細しょうさい不明ふめいだがそれらが大地だいちから地下ちか(=冥界めいかい)にちてしまった。エンキドゥが立候補りっこうほしてびろいにかうこととなり、ギルガメシュは冥界めいかいにおけるあらゆる注意ちゅうい事項じこうをいいきかせるが上手うまつたわっておらず、エンキドゥはタブーをやぶって冥界めいかいからかえれなくなる。ギルガメシュはエンリルにうったえたがらちかず、エンキ(エア)にたすけをもとめるとかれはウトゥをび、最後さいご冥界めいかいにいるエンキドゥが、エンキとウトゥのたすけによって地上ちじょうもどることができた。そのはエンキドゥにより冥界めいかい様子ようすかたられるが、プックとメックーについての記述きじゅつはない。

  • 文学ぶんがくせいは「死後しご世界せかい」と「生死せいしかんへのこたえ」であり、だい8はんるエンキドゥの埋葬まいそう儀礼ぎれいにその背景はいけいしめされている。当時とうじシュメールじんは、ひとんだら冥界めいかいくものとかんがえていた[42]死者ししゃ冥界めいかい歓迎かんげいされることとそこでのらしが難儀なんぎにならないよう、葬儀そうぎ手厚てあつおこない、埋葬まいそう死者ししゃ供物くもつささげる習慣しゅうかんがあった。そういった故人こじんねんごろにあつかうことの必要ひつようせいいているとされる[42]

叙事詩じょじし採用さいようされなかった物語ものがたり[編集へんしゅう]

ギルガメシュとアッガ』『ギルガメシュの』という2つの説話せつわは、叙事詩じょじしではまったつたえられていない。前者ぜんしゃ歴史れきしてき物語ものがたり後者こうしゃとおりギルガメシュの最期さいごにまつわるエピソードである。

ギルガメシュとアッガ[編集へんしゅう]

キシュおうアッガはウルクのおうギルガメシュに使者ししゃおくった。使者ししゃたちは「井戸いどそらにすること」という難題なんだいめいじる。これはウルクの人々ひとびとがキシュのために水汲みずくまみの労働ろうどうをすること、間接かんせつてきに「ウルクはキシュに屈伏くっぷくすべき」という意味いみふくんでいる[43]

ギルガメシュが「我々われわれ屈伏くっぷくするまい[ちゅう 16]」とうと、長老ちょうろうたちは「屈伏くっぷくしよう」青年せいねんたちは「屈伏くっぷくするな」とこたえた。そのあいだにウルクがキシュに包囲ほういされると、1人ひとり勇敢ゆうかんおとこがギルガメシュの伝言でんごんつたえるためしろがいて、キシュへいまえ連行れんこうされる。官位かんい様子ようすやりに城壁じょうへきからかおすと、アッガは「あれがおうか」と勇敢ゆうかんおとこう。かれが「おうではありません」とこたえると、キシュの群衆ぐんしゅうはひるむこともげることもしそうになかった。勇敢ゆうかんおとこ捕虜ほりょとなりそうになる手前てまえ、ギルガメシュが城壁じょうへきのぼった途端とたんおそろしいかがやきがウルクちゅうおおい、ウルクの戦士せんしたちはふるって武器ぶきにし、エンキドゥは城門じょうもん蹴飛けとばしった(しかし連行れんこうされる)。そしてギルガメシュは姿すがたをさらし、アッガがかれ視界しかいとらえると「あれがおうか」とエンキドゥにたずね、エンキドゥは「まさしくおうです」と回答かいとう瞬間しゅんかん、キシュの群衆ぐんしゅうちのめされ、り、すべての国民こくみんふるがる。ギルガメシュは「アッガよ、貴方あなたげてきたわたしたましいをくれた。貴方あなたわたし生命せいめいをくれた。わたし昔日せきじつ恩寵おんちょうを、シャマシュのまえ貴方あなたかえしました[ちゅう 17]」とってアッガをらえることはせず、キシュへかえることをゆるした。

  • 物語ものがたりはギルガメシュをたたえたところで終結しゅうけつする。『シュルギおう讃歌さんか』やシュメールおうめいひょうによれば、エンリルがこしただい洪水こうずい王権おうけんはキシュにりたが、そのギルガメシュがアッガに戦勝せんしょうしたことでウルクに王権おうけんうつったとつたえられている。この背景はいけいまえて物語ものがたりかえってみると、『ギルガメシュとアッガ』が史料しりょうてき歴史れきしてき事実じじつ反映はんえいつたえているのはあきらかである。叙事詩じょじしから除外じょがいされたのも、しょばん比較ひかくして英雄えいゆうてきであるというよりいくふん歴史れきしてきであるということが影響えいきょうした。
  • 物語ものがたりにはイナンナ(イシュタル)が関与かんよしており、『ギルガメシュとアッガ』は「論争ろんそう」というシュメール文学ぶんがくいち分野ぶんや筋立すじだてされた、論争ろんそうてきモチーフでえがかれている。イナンナがギルガメシュとアッガ、どちらが自分じぶん相応ふさわしいかを軍神ぐんしんとしての視点してんから観察かんさつしており、さらにはギルガメシュの手指しゅし綺麗きれいであるという観点かんてんから、イナンナが女性じょせい目線めせんこの男性だんせいはギルガメシュのほうではないだろうか、という彼女かのじょ主観しゅかんしめされている[44]
  • 論争ろんそうてきモチーフをかいして都市とし都市とし対立たいりつかた作品さくひんであるとみとめられながらも、『ギルガメシュとアッガ』に安易あんい史実しじつ見出みいだしてはならないとの指摘してきもある。ギルガメシュの人間にんげんばなれした英雄えいゆうせいつたえるというてんでは、叙事詩じょじしわくえればかずあるシュメール文学ぶんがくなか比肩ひけんしても明確めいかくには孤立こりつしておらず、孤立こりつしていたとしてもそれが史実しじつ反映はんえい直結ちょっけつするとはえない。ゆえ戦争せんそう征服せいふくかんする客観きゃっかんてき記録きろくではなく、ギルガメシュの英雄えいゆうてき功業こうぎょうたたえることやイナンナの好意こういきそうことに主題しゅだい見出みいだすことも可能かのうである[45]

ギルガメシュの[編集へんしゅう]

ギルガメシュは不老不死ふろうふし秘薬ひやくもとめるたびから帰国きこくしたのちおうとしてくにおさめ、城壁じょうへき完成かんせいさせるなどすべきことをたしたとされている[46]。ギルガメシュはちかくなるとエアのすすめではか造営ぞうえいみ、冥界めいかい女神めがみエレシュキガルのまう宮殿きゅうでんかみ々に供物くもつささげてねむりについた。おう最期さいごをウルクのみんなげかなしみ、そのいたんだ。

  • 死者ししゃとむらうことや副葬品ふくそうひん用意よういすることの意味いみ間接かんせつてきつたえられるが、物語ものがたり主人公しゅじんこうんでしまってはまとまりがわるいとして、叙事詩じょじしれられることはなかった。わりにだい8はんえがかれたエンキドゥの埋葬まいそう対応たいおうしている[47]

文学ぶんがくせい[編集へんしゅう]

世界せかい最古さいこ教養きょうよう小説しょうせつとして名高なだかく、友情ゆうじょう大切たいせつさや、ギルガメシュとエンキドゥの成長せいちょう自然しぜん人間にんげん対立たいりつなど、寓話ぐうわとしての色合いろあいもつよい。

構成こうせい[編集へんしゅう]

叙事詩じょじしは12のしょばんつが、ギルガメシュに焦点しょうてんてるとおおきな5つのまとまりにけることができる[48]

  1. 前半ぜんはん)エンキドゥとの出会であ
  2. 前半ぜんはんすぎもりへの遠征えんせい西方せいほう):ひとすべきものと認識にんしきしたうえでのおこない:共同きょうどうたび成功せいこう
  3. つなぎ)イシュタルの誘惑ゆうわくせいうし退治たいじ
  4. 後半こうはん)エンキドゥとの死別しべつ
  5. 後半こうはん不老不死ふろうふし追求ついきゅう東方とうほう):ひとすべきかた否定ひていするためのおこない:孤独こどくたび失敗しっぱい

前半ぜんはんはエンキドゥとの出会であいとフンババ征伐せいばつつなぎにイシュタルの誘惑ゆうわく後半こうはんにエンキドゥとのわかれと不死ふし探求たんきゅうという5つである。ギルガメシュの前半ぜんはんにおける英雄えいゆうてき信条しんじょうがエンキドゥのによってもろくも放棄ほうきされたように、ギルガメシュのこす行動こうどうのきっかけ・内容ないよう結果けっかがエンキドゥとの友情ゆうじょうじくにして見事みごと対応たいおうするとともに対称たいしょうてきである。にもかかわらず物語ものがたり全体ぜんたい違和感いわかんなく首尾しゅび一貫いっかんしているのは、イシュタルの誘惑ゆうわくきよしうし退治たいじという前半ぜんはん後半こうはん橋渡はしわたしする重要じゅうようかつ自然しぜん事象じしょうが、つなぎとして配置はいちされたからであろう。

また、場面ばめん展開てんかいまえにはギルガメシュかエンキドゥのどちらかがゆめており、そのゆめによる予告よこく機能きのうは、物語ものがたり緊張きんちょうかんうながすことに貢献こうけんしている。くだり単位たんいみとめられる対句ついくほう語呂合ごろあわせ、周壁しゅうへきつウルク・てんなるシャマシュのような枕詞まくらことばなど、説話せつわ文学ぶんがくてき表現ひょうげん技法ぎほうみとめられる[49]冒頭ぼうとうれたように、物語ものがたりの1つ1つは元来がんらいシュメール成立せいりつしたが、バビロニアばん翻訳ほんやくされるまで2人ふたり友情ゆうじょう関係かんけいえがかれていなかった。こうした改変かいへん一種いっしゅもまた、叙事詩じょじし構成こうせいするじょう貴重きちょう役割やくわりたしたとえる。

主題しゅだい[編集へんしゅう]

フンババ征伐せいばつる「勇気ゆうきあるもの冒険ぼうけんたん[50]」であったり、『ギルガメシュとアッガ』から「英雄えいゆうてき行動こうどう描出びょうしゅつ[51]」のように1つの説話せつわからメインテーマを見出みいだすこともできるが、全体ぜんたい見通みとお様々さまざま観点かんてんから叙事詩じょじし俯瞰ふかんすると、以下いかのようなものを主題しゅだいとして見出みいだすことが出来でき[52]

不死ふし追究ついきゅう
人生じんせいかんしめしているという見方みかた。「ひとからまぬかれることは出来できない」と認識にんしきすること、すなわち人類じんるい精神せいしんにおける神話しんわ時代じだいからの脱却だっきゃく理性りせい目覚めざめを意味いみしている、というもの[53]
友情ゆうじょう
エンキドゥがギルガメシュのもとからることで友情ゆうじょう限界げんかいえがきたかったわけではなく、友情ゆうじょう意義いぎそのものをいているという見方みかた2人ふたり友情ゆうじょう永遠えいえんではなくとも、ことなる2つのたましい出会であいという最古さいこ友情ゆうじょう物語ものがたりであった、というもの[54]
シャマシュ信仰しんこう
シャマシュ信仰しんこう個人こじんしん崇拝すうはい概念がいねんが、叙事詩じょじしれられたとする見方みかた。ただし後代こうだいになるほど、シャマシュの個人こじんしんてき性格せいかく叙事詩じょじしない希薄きはくになっていった[55]
主人公しゅじんこう精神せいしん遍歴へんれき
フンババ征伐せいばつ勇敢ゆうかん英雄えいゆうてき信条しんじょう神格しんかく拒絶きょぜつへの恐怖きょうふ不死ふし追及ついきゅうと、ギルガメシュの精神せいしん物語ものがたり進行しんこうとともに変化へんかするが、最終さいしゅうてきなにかんじ、おもい、まなび、その最期さいごむかえたのか、叙事詩じょじしこたえない[56]読者どくしゃのこ教訓きょうくんは、上述じょうじゅつのように「ひとすべき存在そんざいである」という生死せいしかんかたなのかもしれないが、ギルガメシュの不死ふし希求ききゅう結果けっかてき失敗しっぱいわったからといって、そのたび無意味むいみなものであったとはえず、ぎゃくあたらしい人生じんせいかんたことによる日常にちじょうへの回帰かいきでもなかった。「あらゆる苦難くなんみちあゆんだ」主人公しゅじんこう自身じしん軌跡きせきこそ『ギルガメシュ叙事詩じょじし』がつたえる事実じじつであり、ギルガメシュという1人ひとり英雄えいゆうをきずきあげた、というもの[56]

なお、主題しゅだいってもそれらははじめから客観きゃっかんてきそなわっているものではなく、あくまで叙事詩じょじし可能かのうせいさぐるためのものである。

影響えいきょう[編集へんしゅう]

冒頭ぼうとうれているとおり『旧約きゅうやく聖書せいしょ』のとくノアの方舟はこぶねのくだりに『ギルガメシュ叙事詩じょじし』が影響えいきょうしているとされ、このほかにも最初さいしょ粘土ねんどばん発見はっけんねんである1872ねん以降いこう文学ぶんがく作品さくひんに、叙事詩じょじし物語ものがたり原型げんけいかんがえられているものがある。たとえばギルガメシュとイシュタルのこい沙汰ざたギリシア神話しんわの「オデュッセイア一説いっせつへ、ギルガメシュとエンキドゥの関係かんけい旧約きゅうやく聖書せいしょにおけるダビデヨナタンなどの友情ゆうじょう物語ものがたりへとがれ[57]、ギルガメシュ自身じしんはギリシャのだい英雄えいゆうアキレウス先駆さきがけとなった[58]

ギルガメシュを題材だいざいにした作品さくひん[編集へんしゅう]

和書わしょ和訳わやくしょ[編集へんしゅう]

マンガ[編集へんしゅう]

絵本えほん[編集へんしゅう]

  • ルドミラ・ゼーマンちょ 松野まつの正子まさこやく 『ギルガメシュおうものがたり』 岩波書店いわなみしょてん、1993
  • ルドミラ・ゼーマンちょ 松野まつの正子まさこやく 『ギルガメシュおうのたたかい』 岩波書店いわなみしょてん、1994
  • ルドミラ・ゼーマンちょ 松野まつの正子まさこやく 『ギルガメシュおうさいごのたび岩波書店いわなみしょてん、1995

音楽おんがく作品さくひん[編集へんしゅう]

合唱がっしょうきょく
吹奏楽すいそうがくきょく

テレビゲーム[編集へんしゅう]

バビロニアン・キャッスル・サーガシリーズ
ナムコ(バンダイナムコゲームス)から発売はつばいされた1986ねんのアーケードゲーム『ドルアーガのとう』をだい1さくとするテレビゲームのシリーズ。世界せかいかんやキャラクターの名称めいしょう造詣ぞうけいとうにバビロニア神話しんわやギルガメシュ叙事詩じょじし影響えいきょう色濃いろこい。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ ルガルバンダのような祖先そせんしんとしての意味合いみあいがつよ守護神しゅごじんとはべつに、個人こじん守護しゅごする「個人こじんしん」。古代こだいメソポタミアでは、男児だんじには誕生たんじょう同時どうじ個人こじんしんがあてがわれた。 月本つきもと(1996)pp.194,197,ちゅうp.18)
  2. ^ おうつとめである神殿しんでん建設けんせつなどによい資材しざいかせなかったが、古代こだい南部なんぶメソポタミアではもり枯渇こかつしていた。
  3. ^ 当時とうじのシュメール・アッカド地方ちほう言葉ことばで「護符ごふ」にたる単語たんごはなく、「アミュレット」とばれていた。アミュレットは幸運こううんをもたらしたりやくはらうとされる、守護しゅごりょくったいわゆる"魔除まよけけ"のことである。自然しぜん素材そざい加工かこうひんなどをもちい、置物おきものにしたりけたりするが、アミュレットとはべつ権力けんりょくしゃであることをしめ色石しょくせき貴金属ききんぞくなども護身ごしんつながるとしんじられ、かざることはまもることと同義どうぎであった。 月本つきもと(2011)pp.16,104
  4. ^ 目的もくてき西方せいほうとなっているが、一説いっせつには東方とうほう位置いちするザグロス山脈さんみゃくにあたる地域ちいきでもあるとされている。 岡田おかだ小林こばやし(2008)p.239
  5. ^ または13のふう。 月本つきもと(1996) p.59
  6. ^ イシュタルの悪癖あくへきあきらかにされる貴重きちょうなシーンだが、このときギルガメシュがはっした雑言ぞうごん数々かずかずは、ほとんどが推定すいていてきわけとなっている。 矢島やじま(1998)p.244
  7. ^ たたえられるのはギルガメシュのみであり、それを本人ほんにんのぞんだ、という解釈かいしゃくもあり、そういったことから「とも平等びょうどうあつかわれなかった」としてエンキドゥがなげれいもあるが(月本つきもと p.p80,86 / pp.332-336)、2人ふたりともたたえられエンキドゥがギルガメシュに嫉妬しっとするような描写びょうしゃとく見当みあたらないしょばんおおい。
  8. ^ 普通ふつう、シュメールにおける地上ちじょうの7大神おおがみ天神てんじんアヌ風神ふうじんエンリル水神すいじんエア筆頭ひっとうに、つきしんシン太陽たいようしんシャマシュ金星きんせいしんイシュタル大地だいちははしんニンフルサグすが、本件ほんけんあつまったと確認かくにんできるのはアヌ・エンリル・エア・シャマシュの4めいのみ。
  9. ^ みつ蜂蜜はちみつ)はその特性とくせいから、古代こだい文明ぶんめい重要じゅうよう儀礼ぎれい頻繁ひんぱん使用しようされたことがられている。
  10. ^ これは、大層たいそう埋葬まいそう儀礼ぎれいほどこすことで死者ししゃまよわず冥界めいかいおもむけるように、の。 月本つきもと(1996)p.101
  11. ^ アッカドの「医術いじゅつ文書ぶんしょ」に皮膚ひふ変色へんしょくわずらったもの快復かいふくしたさい儀礼ぎれいとして、これとたような叙述じょじゅつがある。いわく「患者かんじゃ包帯ほうたい焼却しょうきゃくし、太陽たいようしんシャマシュにみつとバターのはいった菓子かしらをそなえ、シャマシュのまえち、そして感謝かんしゃする」。 月本つきもと(2011)p.35
  12. ^ マシュ(またはマーシュ)はアッカド双生児そうせいじ。ここではシャマシュが出入でいりするやまのこと。 矢島やじま(1998)p.192,月本つきもと(1996)p.328。
  13. ^ 2つのやまあいだ太陽たいよう冥界めいかいめぐともあらわれるシャマシュ)がのぼってくる場所ばしょ、つまり、マシュさんふもと冥界めいかいたっしていることをしめしている。 月本つきもと(1996)p.107
  14. ^ かし一種いっしゅ月本つきもと 1996 p.295)
  15. ^ この、楽器がっき太鼓たいこばちあるいは遊具ゆうぐ(フープ・ローリング)とされる(アッシリア学者がくしゃベンノ・ランズベルガーによる仮説かせつ)、エルラグ(プック)とエキドマ(メックー)は、ギルガメシュがつくったともわれる。 岡田おかだ小林こばやし(2008)p.244(器具きぐめい月本つきもと1996 p.295による)
  16. ^ ギルガメシュは「(ウルクの守護神しゅごじんであり軍神ぐんしんでもある)イシュタルを信頼しんらいし、キシュにかう」ことを決心けっしんした。 すぎ(1978)p.40
  17. ^ ギルガメシュはかつて庇護ひごもとめてアッガのもと亡命ぼうめいし、アッガはそれをれたという。 すぎ(1978)p.42
  18. ^ うた部分ぶぶん矢島やじま文夫ふみお訳詩やくし筑摩ちくま世界せかい文学ぶんがく大系たいけいⅠ 古代こだいオリエントしゅう)に、かたりの部分ぶぶん山室やまむろしず著書ちょしょ児童じどう世界せかい文学ぶんがく全集ぜんしゅう 世界せかい神話しんわ物語ものがたりしゅう)にもとづいた作品さくひん
  19. ^ 1982ねんに「出発しゅっぱつまき」が、1983ねんに「帰郷ききょうまき」が、それぞれ関西学院かんせいがくいんグリークラブにより初演しょえんされたが、当時とうじはそれぞれ「前編ぜんぺん」「後編こうへん」とだいされていた。
  20. ^ 1992ねんに、合唱がっしょう/関西学院かんせいがくいんグリークラブ 指揮しき/北村きたむらきょういち ナレーション/青島あおしま広志ひろしにて、東芝とうしばEMIよりCDが発売はつばいされている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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  • 金子かねこ史朗しろう『レバノンすぎ辿たどったみちはら書房しょぼう、1990ねんISBN 4-562-02164-0 
  • 月本つきもと昭男あきお わけ『ギルガメシュ叙事詩じょじし岩波書店いわなみしょてん、1996ねんISBN 4-00-002752-2 
  • 矢島やじま文夫ふみお わけ『ギルガメシュ叙事詩じょじし筑摩書房ちくましょぼう〈ちくま学芸がくげい文庫ぶんこ〉、1998ねんISBN 4-480-08409-6 
  • 三笠みかさみやたかしじん親王しんのう(かん)小林こばやし登志子としこ岡田おかだ明子あきこ古代こだいメソポタミアのかみ々』集英社しゅうえいしゃ、2000ねんISBN 4-08-781180-8 
  • 前田まえだとおる『メソポタミアのおうかみ世界せかいかん山川やまかわ出版しゅっぱんしゃ、2003ねんISBN 4-634-64900-4 
  • 小林こばやし登志子としこ岡田おかだ明子あきこ『シュメル神話しんわ世界せかい 粘土ねんどばんきざまれた最古さいこのロマン』中公新書ちゅうこうしんしょ、2008ねんISBN 978-4-12-101977-6 
  • 月本つきもと昭男あきお(監修かんしゅう)『メソポタミア文明ぶんめい光芒こうぼう山川やまかわ出版しゅっぱんしゃ、2011ねん10がつISBN 978-4-634-64827-2 
  • 松村まつむら一男かずおもり雅子まさこ沖田おきた瑞穂みずほ世界せかい女神めがみだい辞典じてんはら書房しょぼう、2015ねんISBN 978-4-562-05195-3 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]