アッカド語ご

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アッカド語ご
𒀝𒅗𒁺𒌑
akkadū
マニシュトゥシュのオベリスクに刻きざまれたアッカド語ごの碑文ひぶん
話はなされる国くに アッシリア（北部ほくぶ）[1]
バビロニア（南部なんぶ）[2]
地域ちいき 近東きんとう（国際こくさい語ごとして）[3]
メソポタミア[3][4][5]
消滅しょうめつ時期じき 1世紀せいき
言語げんご系統けいとう
表記ひょうき体系たいけい 楔形文字くさびがたもじ
言語げんごコード
ISO 639-2 akk
ISO 639-3 akk
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アッカド語ご（アッカド語ご: 𒀝𒅗𒁺𒌑‎, ラテン文字もじ転写てんしゃ: akkadū[注ちゅう 1]）は、「アッシリア・バビロニア語ご（Assyro-Babylonian）」とも呼よばれ、古代こだいメソポタミアで話はなされていたセム語ご派はの言語げんご。当時とうじは国際こくさい共通きょうつう語ごでもあった。現在げんざい知しられる最もっとも古ふるいセム語ごである。

シュメール語ごから借かりた楔形文字くさびがたもじで表記ひょうきされたアッカド語ごの碑文ひぶんや粘土ねんど板ばんの資料しりょう数すうはすでに100万まん点てんに近ちかく、現在げんざいもトルコ・シリア・イラクで発見はっけんされ続つづけている。書かかれた年代ねんだいは紀元前きげんぜん2350年ねん頃ごろから西暦せいれき1世紀せいきまでの約やく2500年ねんに渡わたり、その種類しゅるいも宮廷きゅうていの書簡しょかん、王おうの記念きねん碑ひ、条約じょうやく、年代ねんだい記き、法律ほうりつ、『ハムラビ法典ほうてん』のような法律ほうりつ集成しゅうせい、行政ぎょうせい文書ぶんしょ、契約けいやく書しょ、歴史れきし、数学すうがく、医学いがくなどの学術がくじゅつ書しょ、文法ぶんぽう書しょ、辞典じてん、宗教しゅうきょう的てき文献ぶんけん、神話しんわ、叙事詩じょじしなど幅広はばひろい[6]。

時代じだい区分くぶん・方言ほうげん[編集へんしゅう]

アッカド語ごは歴史れきし・地理ちり的てきに次つぎのように区分くぶんされる[7]。

すでに紀元前きげんぜん2600年ねん頃ごろのシュメール語ご文書ぶんしょにアッカド人じんの名前なまえが見みえている[6]。アッカド語ごの最古さいこの資料しりょうは紀元前きげんぜん2350年ねん頃ごろのものだが、紀元前きげんぜん2200年ねん頃ごろになるとシュメール人じんの復活ふっかつによってアッカド語ごの資料しりょうはあまり見みられなくなる[8]。古こアッカド語ごの資料しりょうはあまり多おおくなく、その言語げんごについては不明ふめいな点てんも多おおい。紀元前きげんぜん2千年紀せんねんきにはいると再ふたたびアッカド語ごの資料しりょうが増ふえ、西暦せいれき紀元きげん後ごに至いたるまでとぎれずに資料しりょうが存在そんざいする。その言語げんごは北きたのアッシリア語ごと南みなみのバビロニア語ごに二に大別たいべつされるが、両者りょうしゃの違ちがいは主おもに音韻おんいん面めんにあり、文法ぶんぽうや語彙ごいの違ちがいは限定げんてい的てきである。アッシリア学者がくしゃは両者りょうしゃをそれぞれ約やく500年ねんごとに機械きかい的てきに時代じだい区分くぶんしている[6]。

紀元前きげんぜん1千年紀せんねんきの中頃なかごろにアッカド語ごはアラム語ごに圧倒あっとうされて、話はなし言葉ことばとして使つかわれなくなったと考かんがえられる。しかしその後ごも西暦せいれき1世紀せいきにいたるまでアッカド語ごの文章ぶんしょうは書かかれ続つづけた[6]。

古こバビロニア語ごは古典こてん語ごとして統一とういつ的てきな文法ぶんぽうが使用しようされ、紀元前きげんぜん1千年紀せんねんきにはいっても標準ひょうじゅん的てきな文語ぶんごとして使用しようされ続つづけた（標準ひょうじゅんバビロニア語ごと呼よぶ）。『ギルガメシュ叙事詩じょじし』『エヌマ・エリシュ』はこの文語ぶんごで記しるされている。中期ちゅうきバビロニア語ごはそれに比くらべると残のこっている資料しりょうが少すくないが、この時代じだいにアッカド語ごは中東ちゅうとうのリンガ・フランカとして使つかわれ、アマルナ文書ぶんしょにはこの言語げんごで書かかれたバビロニア、アッシリア、ミタンニ、ヒッタイト、キプロス、エジプトの350件けんの書簡しょかんが含ふくまれるが、これらの資料しりょうの言語げんごはアッカド語ご話者わしゃでない書かき手ての母語ぼごに強つよく影響えいきょうされている。新しんバビロニア語ごは新しんバビロニアとアケメネス朝あさ時代じだいに使用しようされ、多おおくの資料しりょうが残のこっている。後期こうきバビロニア語ごはアケメネス朝あさ末期まっきからセレウコス朝あさにかけて使用しようされたが、アラム語ごの影響えいきょうが非常ひじょうに強つよい[6]。

バビロニア語ごが広ひろく国際こくさい的てきに使つかわれたのに対たいして、アッシリア語ごの資料しりょうはより限定げんてい的てきである。しかし新しんアッシリア王国おうこく時代じだいに使つかわれた新しんアッシリア語ごの資料しりょうは豊富ほうふに残のこっており、紀元前きげんぜん7世紀せいき末まつに王国おうこくが滅亡めつぼうするまで使用しようされた[6]。

アッカド語ご楔形文字くさびがたもじ[編集へんしゅう]

アッカド語ごの表記ひょうきは、シュメール語ごのシュメール語ご楔形文字くさびがたもじ表記ひょうき法ほうを借用しゃくようしたものであるが、アッシリアとバビロニアで独立どくりつして発達はったつしたために両者りょうしゃの間あいだには相当そうとうな違ちがいがある。現代げんだいの文字もじ表ひょうでは600字じほどに分わけられているが、方言ほうげんによる差異さいが大おおきい[9]。表ひょう語ご文字もじ、表音ひょうおん文字もじ（音節おんせつ文字もじ）、限定げんてい符ふに分類ぶんるいされるが、ひとつの文字もじが複数ふくすうの役割やくわりを果はたすことがある[10]。表ひょう語ご文字もじは原則げんそくとしてシュメール語ごの文字もじをアッカド語ごで訓読くんよみする。たとえばシュメール語ごのLUGAL「王おう」という文字もじは、同おなじ意味いみを持もつアッカド語ごでšarrumと読よまなければならない。表ひょう語ご文字もじにはしばしば読よみを補完ほかんするための表音ひょうおん文字もじが附属ふぞくする[11]。

膠着こうちゃく語ご的てきなシュメール語ごと無関係むかんけいな屈折くっせつ語ごであるアッカド語ごの表記ひょうきに楔形文字くさびがたもじは不向ふむきであり、またシュメール語ごにない音おとの区別くべつは不完全ふかんぜんにしか表あらわすことができなかった。例たとえば無声音むせいおん、有声音ゆうせいおん、強つよ勢いきおい音おとの区別くべつは不完全ふかんぜんであり、声門せいもん閉鎖へいさ音おんを表記ひょうきするための専用せんようの文字もじは中期ちゅうき以降いこうに初はじめて出現しゅつげんし、母音ぼいんのiとeもしばしば区別くべつされなかった。また複数ふくすうの字じが同おなじ音おんを表あらわす同音どうおん性せいや、逆ぎゃくにひとつの文字もじが複数ふくすうの音おとを表あらわす多た音おと性せいの問題もんだいもあった[12]。

CVC型がたの音節おんせつを表記ひょうきするのにCV-VCのように分わけて書かく書かき方かたがあり、たとえば「王おう」を意味いみするšarrumを音節おんせつ文字もじで表記ひょうきするのに、šar-rum、ša-ar-rum、šar-ru-um、ša-ar-ru-um、ša-rumなどのさまざまな書かき方かたが可能かのうだった。どの書かき方かたをするかは筆記ひっき者しゃの好このみによった。母音ぼいんの長短ちょうたんは古こアッカド語ごと古ふるアッシリア語ごでは区別くべつされなかったが、古こバビロニア語ごは余分よぶんな母はは音字おんじを加くわえる方法ほうほうが発達はったつした。同様どうように重じゅう子音しいんも子音しいんを重かさねることで表記ひょうきされるようになった[13]。

音声おんせい[編集へんしゅう]

アッカド語ごは古代こだいに消滅しょうめつした言語げんごであるため、正確せいかくな音声おんせいを知しることはできない[14]。

セム祖語そごの29の子音しいんに対たいして、アッカド語ご（古こアッカド語ごを除のぞく）は20しか子音しいんがない。セム祖語そごの「喉のど音おん」ʾ /ʔ/, h, ḥ /ħ/, ʿ /ʕ/ および ǵ /ɣ/は声門せいもん閉鎖へいさ音おんのみになり[15]、多おおくの位置いちでは消滅しょうめつしたと考かんがえられている（古こアッカド語ごでは区別くべつされていたという説せつもある[16]）。強つよ勢いきおい音おとはおそらく放出ほうしゅつ音おんで、ṣ /tsʼ/, ṭ /tʼ/, q /kʼ/ の3種類しゅるいのみだった[17]。摩擦音まさつおんではセム祖語そごのś /ɬ/はšに融合ゆうごうした。ṯ /θしーた/は古こアッカド語ごでは区別くべつがあったが、それ以降いこうはやはりšに融合ゆうごうした。3つの強つよ勢いきおい音おとの摩擦音まさつおんも同様どうようにしてṣの1音おとのみになった。有ゆう声ごえのḏ /ð/はzに融合ゆうごうした[18]。

アッカド語ごの子音しいん（半母音はんぼいん y wを除のぞく）
両りょう唇音しんおん 歯音しおん/歯茎はぐき音おん/後部こうぶ歯茎はぐき音おん 軟口蓋なんこうがい音おん/口蓋垂こうがいすい音おん 声門せいもん音おん
破裂はれつ音おん p b t d ṭ /tʼ/ k g q /kʼ/ ʾ /ʔ/
鼻音びおん m n
破やぶ擦ず音おと s /ts/ z /dz/ ṣ /tsʼ/
摩擦音まさつおん š /s - ʃ/ ḫ /x/ r /ɣ - ʁ/
側面そくめん接近せっきん音おん l

上うえの表ひょうの破やぶ擦ず音おとは後のちに摩擦音まさつおん化かし、バビロニア語ごでは s が/s/、š が/ʃ/になったが、アッシリア語ごでは逆ぎゃくに s が/ʃ/、š が/s/だった[19]。

母音ぼいんは少すくなくともa, i, u, eの4母音ぼいんがあり、長短ちょうたんの区別くべつがあった。oもあった可能かのう性せいが高たかいが、証拠しょうこが不足ふそくしている。e は歴史れきし的てきにはh ʿ ǵに隣接りんせつするaが変化へんかしたものであり、これらの子音しいんの消滅しょうめつにともなって音素おんそとして区別くべつされるようになった。方言ほうげんにより、ほかにもさまざまな原因げんいんによってeが発生はっせいした[20]。セム祖語そごの二に重母音じゅうぼいんayはバビロニア語ごでī、アッシリア語ごでēになり、awはūに変化へんかした[21]。

慣習かんしゅう的てきにセム祖語そご以来いらいの長ちょう母音ぼいんをā ī ū ēのようにマクロンで翻こぼし字じし、縮ちぢみ約やくによって二に次じ的てきに発生はっせいした長ちょう母音ぼいんをâ î û êのようにサーカムフレックスで翻こぼし字じする。しかし大だい部分ぶぶんのアッシリア学者がくしゃは両者りょうしゃに音韻おんいん的てきな区別くべつがあったとは考かんがえていない[22]。

文法ぶんぽう[編集へんしゅう]

他たのセム語ごと同様どうように3つの子音しいんによる語根ごこんに接辞せつじや母音ぼいんのパターン、重じゅう子音しいん化かなどを加くわえて形態けいたい変化へんかする屈折くっせつ語ごである。

名詞めいしは男性だんせいと女性じょせいの2つの性せい、主格しゅかく・対格たいかく・属ぞく格かくの3つの格かく、単数たんすう・双そう数すう・複数ふくすうの3つの数かずを区別くべつするが、単数たんすう以外いがいでは属ぞく格かくと対格たいかくは同一どういつの語形ごけいを取とり、しばしば「斜はす格かく」と呼よばれる。女性じょせいは多おおく単数たんすうで接尾せつび辞じ-tまたは-at（語幹ごかんが2つの子音しいんで終おわる場合ばあい）、複数ふくすうで-ātが加くわえられる。単数たんすうでは男性だんせいだが複数ふくすうでは女性じょせいまたは両性りょうせいの名詞めいしがかなりの数すう存在そんざいする。複数ふくすう形がたは通常つうじょう接尾せつび辞じによって示しめされ、アラビア語ごのように不規則ふきそくな複数ふくすう形がたを取とる語かたりは少すくない。また、独立どくりつ形がた・連語れんご形がた（他たの名詞めいし属ぞく格かくまたは代名詞だいめいし接尾せつび辞じに修飾しゅうしょくされるときに現あらわれる短縮形たんしゅくけい）・絶対ぜったい形がた（格かく語尾ごびのない形かたち）・叙述じょじゅつ形がた（代名詞だいめいし接尾せつび辞じを加くわえて述語じゅつごになるときの無む語尾ごび形がた）の4つの形かたちを持もっている。形容詞けいようしは名詞めいしと同様どうように変化へんかし（ただし男性だんせい複数ふくすうでは独自どくじの語尾ごび-ūtum/ūtimを使用しようする）、修飾しゅうしょくする名詞めいしと性せい・格かく・数かずを一致いっちさせる。定冠詞ていかんし（英語えいごのthe や、アラビア語ごのal [ال] に当あたる）は存在そんざいしない[23]。

ilum「神かみ」の変化へんか（古こバビロニア語ご）[24]
単数たんすう 双そう数すう 複数ふくすう
主格しゅかく 属ぞく格かく 対格たいかく 主格しゅかく 属ぞく格かく・対格たいかく 主格しゅかく 属ぞく格かく・対格たいかく
男性だんせい ilum ilim ilam ilān ilīn ilū ilī
女性じょせい iltum iltim iltam iltān iltīn ilātum ilātim

語末ごまつの鼻音びおん -m/-n は中期ちゅうきバビロニア語ご・中期ちゅうきアッシリア語ご以降いこうは失うしなわれ、時代じだいが新あたらしくなるにつれて格かくの区別くべつは曖昧あいまいになっていった。

人称にんしょう代名詞だいめいしは人称にんしょう、性せい（一人称いちにんしょう以外いがい）、数かず（単数たんすうと複数ふくすう。双そう数すうは古こアッカド語ごのみに見みえる）、格かく（主格しゅかく、属ぞく格かく・対格たいかく、与格よかく）によって異ことなる。独立どくりつした人称にんしょう代名詞だいめいしのほかに人称にんしょう接尾せつび辞じが発達はったつしている。関係かんけい代名詞だいめいしは古こアッカド語ごでは変化へんかしていたが、それ以降いこうは不ふ変化へんか語ごšaになった。疑問ぎもん代名詞だいめいしにはmannum「誰だれ」、mīnum「何なに」などがある[25]。

動詞どうしのアスペクトまたは時制じせいには継続けいぞく（現在げんざい）、完了かんりょう、過去かこ、命令めいれいの4種類しゅるいがあり、それぞれ異ことなる語幹ごかんを使用しようする。第だい2語根ごこんと第だい3語根ごこんの間あいだに置おかれる母音ぼいんのパターンには4種類しゅるいがあり、動詞どうしによってどのパターンに属ぞくするかが異ことなる。√prs「切きる」（不定ふてい形がた parāsum）という語根ごこんについて言いえば、継続けいぞく形がたparras、完了かんりょう形がたptaras、過去かこ形がたprus、命令めいれい形がたpurus（命令めいれい形がたは過去かこ形かたちと同おなじ語幹ごかんだが接頭せっとう辞じがつかず、語根ごこんの第だい1子音しいんの後うしろに、第だい2子音しいんの後うしろと同おなじ母音ぼいんが加くわえられる。二人称ににんしょうのみ）。これに主語しゅごの人称にんしょう・性せい・数かず（単数たんすうと複数ふくすう）を表あらわすための接頭せっとう辞じと接尾せつび辞じが加くわわる[26]。西にしセム諸語しょごでは完了かんりょうと未み完了かんりょうで人称にんしょう接頭せっとう辞じ・接尾せつび辞じがまったく異ことなるが、アッカド語ごでは共通きょうつうである。

三人称さんにんしょう男性だんせい 三人称さんにんしょう女性じょせい 二人称ににんしょう男性だんせい 二人称ににんしょう女性じょせい 一人称いちにんしょう
単数たんすう iparras taparras taparrasī aparras
複数ふくすう iparrasū iparrasā taparrasā niparras

動詞どうしからの派生はせい語ごには動どう形容詞けいようし（状態じょうたい分詞ぶんしとも）(parsum)、（能動のうどう）分詞ぶんし(pārisum)、不定ふてい詞し(parāsum)がある[27][28]。

他たのセム語ごと同様どうよう、語根ごこんから幾いくつかの語幹ごかんが派生はせいされる[29]。継続けいぞく形がたと過去かこ形がたの三人称さんにんしょう単数たんすうで示しめすと

  • 基本きほんとなるG語幹ごかん[注ちゅう 2](iparras / iprus)
  • n-を接頭せっとうさせたN語幹ごかん（ヘブライ語ごのニフアル、アラビア語ごの第だい7形かたち）は受身うけみを表あらわす。アッカド語ごでは音韻おんいん変化へんかの結果けっか重じゅう子音しいんになる(ipparras / ipparis)。
  • 第だい2語根ごこん子音しいんを重複じゅうふくさせたD語幹ごかん[注ちゅう 3]（ヘブライ語ごのピエル、アラビア語ごの第だい2形かたち）は他動詞たどうし性せいを強つよめる。人称にんしょう接頭せっとう辞じの母音ぼいんがuに変化へんかする(uparras / uparris)。
  • š(a)-を接頭せっとうさせたŠ語幹ごかん（ヘブライ語ごのヒフイル、アラビア語ごの第だい4形かたち）は使役しえきを表あらわす。人称にんしょう接頭せっとう辞じの母音ぼいんがuに変化へんかする(ušapras / ušapris)。
  • 上記じょうきの4種類しゅるいの語幹ごかんそれぞれに -ta- 接せっ中ちゅう辞じを加くわえたt語幹ごかん(Gt,Nt,Dt,Št、ただしNtはまれ)。Gtは相互そうご的てき動作どうさや反射はんしゃを表あらわす。DtとŠtはDとŠの受身うけみを表あらわす。
  • 4種類しゅるいの語幹ごかんそれぞれに -tan- 接せっ中ちゅう辞じを加くわえたtn語幹ごかん(Gtn,Ntn,Dtn,Štn)は反復はんぷく動作どうさを表あらわす。

多おおくのセム語ごと異ことなり、語順ごじゅんは基本きほん的てきにSOV型がたである。この語順ごじゅんはシュメール語ごの影響えいきょうで生うまれたものとも考かんがえられている。しかし実際じっさいの語順ごじゅんはかなり自由じゆうである[30]。

語彙ごい[編集へんしゅう]

アッカド語ごの語彙ごいの多おおくは他たのセム語ごと共通きょうつうする。

  • šarrum「王おう」 < *śarr- （ヘブライ語ご: שַׂר śar「高官こうかん」）
  • ilum「神かみ」< *ʾil- （ヘブライ語ご: אֵל ʾēl）
  • bītum「家いえ」（バビロニア語形ごけい）< *bayt-（ヘブライ語ご: בַּיִת bayiṯ）
  • rabûm「大おおいなる」< *rabi-（ヘブライ語ご: רָבָה rāḇâ「増ふやす」）
  • anāku 一人称いちにんしょう単数たんすう代名詞だいめいし < *ʾanāku（ヘブライ語ご: אָנֹכִי ʾānōḵī）

シュメール語ごからの借用しゃくようがアッカド語ごの語彙ごいの約やく1割わりに達たっするという統計とうけいもあるが、古こアッカド語ごでは借用しゃくよう語ごは極きわめて少すくない。古こバビロニア語ごではシュメール語ごに由来ゆらいする語かたりが529語ごあるが、うち102語ごは語彙ごい集しゅうにのみ出現しゅつげんし、おそらく生いきた語彙ごいではない。これらのうち古ふるアッカド語ごにも見みられるのは4語ごに過すぎない。シュメール語ごのほかに、アムル語ご（英語えいご版ばん）、エジプト語ご、エラム語ご、ギリシア語ご、ヒッタイト語ご、フルリ語ご、カッシート語ご（英語えいご版ばん）、古代こだいペルシア語ご、スバルトゥ語ご、ウラルトゥ語ご、及および西にしセム諸語しょごに属ぞくする様々さまざまな言語げんご（特とくにアラム語ご）からの借用しゃくようが見みられる[31]。

アッカド語ご文学ぶんがく[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「アッカド語ご文学ぶんがく（英語えいご版ばん）」を参照さんしょう

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
注ちゅう
  1. ^ 原語げんご表記ひょうきおよび翻こぼし字じについては、ウィクショナリーの記事きじを参考さんこうにした。Akkadian （英語えいご）を参照さんしょうされたい。
  2. ^ ドイツ語ご: Grundstamm「基本きほん語幹ごかん」の頭文字かしらもじ。英語えいご: basic stemによって「B語幹ごかん」とも呼よぶ
  3. ^ ドイツ語ご: Doppelungsstamm「重複じゅうふく語幹ごかん」の頭文字かしらもじ
出典しゅってん
  1. ^ ブリタニカ国際こくさい大だい百科ひゃっか事典じてん 小しょう項目こうもく事典じてん - アッシリア語ご コトバンク. 2018年ねん10月がつ12日にち閲覧えつらん。
  2. ^ ブリタニカ国際こくさい大だい百科ひゃっか事典じてん 小しょう項目こうもく事典じてん - バビロニア語ご コトバンク. 2018年ねん10月がつ12日にち閲覧えつらん。
  3. ^ a b 百科ひゃっか事典じてんマイペディア コトバンク. 2018年ねん10月がつ12日にち閲覧えつらん。
  4. ^ ブリタニカ国際こくさい大だい百科ひゃっか事典じてん 小しょう項目こうもく事典じてん コトバンク. 2018年ねん10月がつ12日にち閲覧えつらん。
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  12. ^ Huehnergard & Woods (2004) pp.226-228
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  17. ^ Huehnergard & Woods (2004) pp.230-231
  18. ^ Huehnregard (2004) pp.235-236
  19. ^ Huehnergard & Woods (2004) p.231
  20. ^ Huehnergard & Woods (2004) pp.231-233,236
  21. ^ Huehnergard & Woods (2004) p.241
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  29. ^ Huehnergard & Woods (2004) pp.255-258
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  31. ^ Huehnergard & Woods (2004) pp.276-277

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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  • Caplice, Richard (1980). Introduction to Akkadian. Rome: Biblical Institute Press. (1983: ISBN 88-7653-440-7; 1988, 2002: ISBN 88-7653-566-7) (The 1980 edition is partly available online.)
  • Jeremy G. Black, Andrew George, Nicholas Postgate: A Concise Dictionary of Akkadian. Harrassowitz-Verlag, Wiesbaden 2000. ISBN 3-447-04264-8
  • Buccellatti, Giorgio (1997). “Akkadian”. In Robert Hetzron. The Semitic Languages. Routledge. pp. 69-99. ISBN 9780415412667 
  • Huehnergard, J. A Key to A Grammar of Akkadian . Harvard Semitic Studies. Eisenbrauns., (1998), ISBN 0-78850-427-4
  • Huehnergard, J. A Key to A Grammar of Akkadian, 2nd ed. . Harvard Semitic Studies. Eisenbrauns., (2005), ISBN 1-57506-924-5
  • Huehnergard, J. A Grammar of Akkadian. Harvard Semitic Museum Studies 45., (2000), ISBN 1-57506-905-9
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  • Huehnergard, J. A Grammar of Akkadian, 3rd ed.. Harvard Semitic Museum Studies 45., (2011), ISBN 978-1-57506-941-8
  • Huehnergard, John; Woods, Christopher (2004). “Akkadian and Eblaite”. In Roger D. Woodard. The Cambridge Encyclopedia of the World's Ancient Languages. Cambridge University Press. pp. 218-280. ISBN 9780521562560 

アッカド語ご出土しゅつど場所ばしょ[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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