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かく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

かく(かく、英語えいご: Case)とは、名詞めいし代名詞だいめいし形容詞けいようし分詞ぶんしなどに付与ふよされて、そのかたりふく意味いみてき統語とうごてき関係かんけいしめ標識ひょうしき体系たいけい[1]:1語形ごけいめる文法ぶんぽう範疇はんちゅう素性すじょうひとつである[2]:200

換言かんげんすると、典型てんけいてきかくとは、かたりかたちえることによって、主語しゅご目的もくてきといった統語とうごてき関係かんけいや、行為こういおこなわれる場所ばしょ物体ぶったい所有しょゆうしゃといった意味いみてき関係かんけいをそのかたりふくっていることをあらわすマークである。

かく機能きのう

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かくは、主語しゅご目的もくてきといった文法ぶんぽう関係かんけい混同こんどうされることもあるが、かく文法ぶんぽう関係かんけいとはかならずしも対応たいおうしない。同様どうように、情報じょうほう構造こうぞう話題わだいなど)や主題しゅだい役割やくわり動作どうさぬしなど)ともことなる。

れい:

  • 太郎たろうろうなぐった。
    太郎たろうが: 主格しゅかく主語しゅご動作どうさしゃ
    次郎じろうを: 対格たいかく目的もくてきどうしゃ
  • 次郎じろう太郎たろうなぐられた。
    次郎じろうが: 主格しゅかく主語しゅごどうしゃ
    太郎たろうに: 与格よかく補語ほご動作どうさしゃ
  • 太郎たろうにはおとうとがいる。
    太郎たろうには: 与格よかく主語しゅご所有しょゆうしゃ主題しゅだい
    おとうとが: 主格しゅかく目的もくてき所有しょゆうぶつ

かく種類しゅるい

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おおくの言語げんごられるかくには、主格しゅかく対格たいかく与格よかくだつかくしょかくぞくかくなどがある。

おなじようなかくでも、言語げんごによって名前なまえことなることがある。「太郎たろういぬみずあたえる」というぶんでは、一般いっぱんに「太郎たろうが」は主格しゅかく、「いぬに」は与格よかく、「みずを」は対格たいかくばれるが、それぞれ「がかく」、「にかく」、「をかく」とばれることもある。かくとは意味いみではなく標識ひょうしきなのでこのかた明確めいかくだが、言語げんごとの比較ひかくはできない。

かく基本きほんてきかく論理ろんりてきかく)と、場所ばしょてきかくけられる。前者ぜんしゃ主格しゅかくよびかく与格よかく対格たいかくのように、文中ぶんちゅうにおける論理ろんりてき関係かんけいあらわす。コーカサス諸語しょごや、フィンランドなどにはおおくのかく存在そんざいするが、そのおおくは場所ばしょてきかくである。たとえばアヴァルには20ちかくのかくがあるが、基本きほんてきかくは4しゅのみである。それ以外いがい場所ばしょてきかくであって、「静止せいし(で)・ちゃくてん(へ)・起点きてん(から)」の3種類しゅるい方向ほうこうと、「うえまわり・なかした・(中空なかぞらのものの)ちゅう」の5つの系列けいれつとのわせによる15種類しゅるいかく存在そんざいする。フィンランドではかぞかたにより14ないし15のかくがあり、うち6つは場所ばしょてきかくで、やはり3種類しゅるい方向ほうこうと2つの系列けいれつ内部ないぶ外部がいぶ)のわせによる[2]:200-209

静止せいし 起点きてん ちゃくてん
内部ないぶ うちかく 出格しゅっかく にゅうかく
外部がいぶ せっかく だつかく むかいかく

かく標示ひょうじ

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かくは、名詞めいしまたは名詞めいしにさまざまな方法ほうほう標示ひょうじされる。名詞めいし語形ごけい変化へんかによって標示ひょうじされる場合ばあい接頭せっとう接尾せつび声調せいちょう変化へんか語幹ごかん変化へんかといった手段しゅだんもちいられる。せっせっおけ場合ばあいには、前置詞ぜんちしこうおけ中置ちゅうちがある。このうちもっとおおくの言語げんごもちいられているのは接尾せつびやめつぎおおいのはおけである。

これらにくわえて、人称にんしょう語順ごじゅんによって従属じゅうぞくである名詞めいしとその主要しゅよう関係かんけいあらわされることがある。

マシュー・ドライヤーMatthew S. Dryer)が世界せかい1031の言語げんごについてった調査ちょうさ(Dryer 2013a)によると、接尾せつびによってかく標示ひょうじする言語げんごが452(朝鮮ちょうせんフィンランドロシアなどが該当がいとう、ただしアルメニアなどのようにどういち言語げんご方言ほうげんふくむ)、なん接辞せつじせっもちいない言語げんごが379(英語えいごスペインなどが該当がいとう)、こうおけせっによって標示ひょうじする言語げんごが123(日本語にほんご中国ちゅうごくなどが該当がいとう)あった。

接頭せっとうによってかく表示ひょうじする言語げんごは38あった。アフリカ南部なんぶバントゥーぐんみなみアフリカ共和きょうわこくズールーコサンデベレアンゴラおよびナミビアンドンガなど)や北部ほくぶベルベルモロッコシルハなど)、インドネシアスマトラ島すまとらとう周辺しゅうへん言語げんごニアスなど)、セイリッシュ語族ごぞくカリスペルKalispel; 米国べいこく)およびシュスワプ(カナダ)などにられる。

接頭せっとうによるかく標示ひょうじれいタマズィフト
ičča u-ryaz aḵsum
べる.PRF.3SG.M ERG-おとこ にく
おとこにくべた」

ぜんおけせっによる標示ひょうじをする言語げんごは17あった。フランス語ふらんすごアラビアイラク方言ほうげんおよびシリア方言ほうげん英語えいごばん、ルワンダなどがこれに該当がいとうする。

inpositional clitics[訳語やくご疑問ぎもんてん] による標示ひょうじをする言語げんごは7つあった。すべオーストラリア言語げんごであり、クークターヨレKuuk Thaayorre)やヤウルYawuru)などが該当がいとうする。

    ヤウル
[kayukayu=ni  buru]  i-na-nya-rn-dyarra-yirr  mudiga 
[やわらかい=erg  すな 3-trans-つかまえる-ipfv-1 aug.dat-pl  自動車じどうしゃ 
やわらかいすなわたしたちのくるまらえていった。

きわめてめずらしいかく標示ひょうじ方法ほうほうとして声調せいちょう変化へんかによるものが5(マリドゴンジャマサイ方言ほうげん Jamsayチャドマバみなみスーダンシルク Shillukケニアナンディ、ケニアおよびタンザニアマサイ[ちゅう 1]語幹ごかん変化へんかによるものが1(みなみスーダンおよびエチオピアヌエル)あった。いずれもアフリカの言語げんごで、うちシルク、ヌエル、ナンディ、マサイナイル諸語しょごぞくす。以下いかにナンディ例文れいぶんげるが、その出典しゅってんはCreider & Creider[4]:12 からのもので、アクサンテギュは高音こうおん調ちょう、アクサングラーヴはてい下降かこう調ちょうなんダイアクリティカルマークもついていないものはてい音調おんちょうあらわ[4]:12。また、ナンディ母音ぼいん/a, e, i, o, u/ の5つを基本きほんとし、それぞれに長短ちょうたん前方ぜんぽう舌根ぜっこんせい(ATR)の有無うむ区別くべつがある[4]:12, 23ため、声調せいちょう区別くべつかんがえなければ20とおりの母音ぼいん存在そんざいする。

声調せいちょう変化へんかによるかく標示ひょうじれいナンディ
a. kè̘ːr-é̘j kí̘pe̘ːt la̙ːkwé̙ːt
る-ipfv キベート.nom 子供こども.obl
慣用かんようつづり: Kerei Kibet lakwet.)「キベートが子供こどもている」(語順ごじゅんはVSO)
b. kè̘ːr-é̘j kpe̘ːt kí̘pro̘ːno̘
る-ipfv キベート.obl キプロノ.nom
慣用かんようつづり: Kerei Kibet Kiprono.)「キプロノがキベートをている」(語順ごじゅんはVOS)

語形ごけい変化へんかによるかく

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インド・ヨーロッパ語族ごぞくおおくの言語げんごでは、名詞めいし形容詞けいようし語形ごけい変化へんかきょくよう)によってかく標示ひょうじする。

インド・ヨーロッパ祖語そごには8つのかくがあったとされるが、現在げんざいではかく標示ひょうじ手段しゅだんによっておこなわれ、語形ごけい変化へんか衰退すいたいしている言語げんごおおい。ふるインド・ヨーロッパれいとして、以下いかラテン語らてんご名詞めいしかく変化へんかいちれいしめす。

homoひと」のかく変化へんか
単数たんすう 複数ふくすう
主格しゅかく homo homin-es
ぞくかく homin-is homin-um
与格よかく homin-i homin-ibus
対格たいかく homin-em homin-es
だつかく homin-e homin-ibus
よびかく homo homin-es

ふるインド・ヨーロッパではかく変化へんかによってかく明示めいじされるため、語順ごじゅんはかなり自由じゆうであった。現代げんだい言語げんごでは語順ごじゅんさだまる傾向けいこうがあり、とく英語えいごロマンスフランス語ふらんすごスペインイタリアなど)では代名詞だいめいしのぞいてかく変化へんか消失しょうしつしたため、かく表示ひょうじはほぼ完全かんぜん語順ごじゅんおよび前置詞ぜんちしたよっている。ドイツかく変化へんかたもっているが、名詞めいし自体じたいかく変化へんかはかなりうしなわれており、冠詞かんし形容詞けいようしかく変化へんかにより間接かんせつてき名詞めいしかくしめされる。

語形ごけい変化へんかによってかくをマークするシステムについては、ほとんどの言語げんご学者がくしゃかくぶことに同意どういしている[5]:3。それ以外いがいにも名詞めいし意味いみてき統語とうごてき関係かんけい標示ひょうじする体系たいけいはいろいろ存在そんざいするが、どこまでをかくとしてとらえるかは言語げんご学者がくしゃによってことなる。

せっおけ接辞せつじによるかく

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前置詞ぜんちしこうおけ助詞じょし)などのせっおけ接頭せっとう接尾せつびなどの接辞せつじ分析ぶんせきてきかく標識ひょうしきかんがえることができる[1]:9, 47

日本語にほんごかく助詞じょしはこの典型てんけいてきれいである。フィンランドハンガリーなどのウラル語族ごぞくは、場所ばしょ移動いどうかんするかく発達はったつしている。たとえば、エストニアは14種類しゅるいかくがあることでられる。

こうおけによるかく標示ひょうじれい日本語にほんご
太郎たろう 花子はなこ ほん あげた
NOM DAT ACC
こうおけによるかく標示ひょうじれいバスク
Jon =ek Miren =i liburu =a eman dio
ヨン =ERG ミレン =DAT ほん =SG =ABS あげた
「ヨンがミレンにほんをあげた」

動詞どうしによるかく

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かく標示ひょうじ動詞どうしがわおこな言語げんごもある。エスキモー・アレウト語族ごぞくでは、

  • wája hanwaswilswálhi 「かれはナイフでそれをった」[6]:30

において、wája(ナイフ)にかく標示ひょうじはついていないが、動詞どうし han-wa-swilswál-hi の -wa- の部分ぶぶんによってそれがかくであることをしめす(なお、主語しゅご目的もくてき三人称さんにんしょうであることも動詞どうしがわしめされている)。

語順ごじゅんによるかく

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主語しゅご目的もくてきについては名詞めいしかく標示ひょうじくわえず、固定こていされた語順ごじゅんによって表現ひょうげんする言語げんごおおい。

中国ちゅうごくでは語順ごじゅんによってかくさだまるが、かい前置詞ぜんちし)ももちいられる。ただ、日本語にほんごならかく助詞じょし使つかうところを動詞どうし+目的もくてきわせで表現ひょうげんすることもある。たとえば、「汽車きしゃ北京ぺきんく」は「汽車きしゃすわって北京ぺきんく」(すわしゃじょう北京ぺきん)のように表現ひょうげんできる。実際じっさいかいおおくは歴史れきしてきには動詞どうしで、つねにほかの動詞どうしわせて使つかわれるようになったものである。

かく一致いっち

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日本語にほんごではかく助詞じょし名詞めいしのちにつくだけである(それにより名詞めいし全体ぜんたいかく標示ひょうじされる)。インド・ヨーロッパ語族ごぞくでは、名詞めいし修飾しゅうしょくする形容詞けいようしは、修飾しゅうしょくされる名詞めいしかく一致いっちさせる。

かく標示ひょうじのアラインメント

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主語しゅご目的もくてきといった主要しゅようこうを、文法ぶんぽうてき区別くべつするパターンをアラインメントという。アラインメントの言語げんご類型るいけいろんでは、自動詞じどうしたんいちこう(いわゆる主語しゅご)を S とする。また、他動詞たどうしの2つのこうのうち、動作どうさぬしてきこう(いわゆる主語しゅご)を A 、もう一方いっぽうこう(いわゆる目的もくてき)を P(または O )とする。

S・A・P をかく標示ひょうじによって区別くべつするおもなパターンには、対格たいかくがたのうかくがたがある。

対格たいかくがたかく組織そしきは、S と A をおなかくで、P をべつかく標示ひょうじする。このとき、S と A のかく主格しゅかく、P のかく対格たいかくう。典型てんけいてきには、主格しゅかくしるべ引用いんよう形式けいしき単独たんどく発話はつわされるとき形式けいしき〕と同形どうけい)、対格たいかくゆうしるべである。

のうかくがたかく組織そしきは、S と P をおなかくで、A をべつかく標示ひょうじする。このとき、S と P のかく絶対ぜったいかく、A のかくのうかくう。典型てんけいてきには、絶対ぜったいかくしるべのうかくゆうしるべである。

じゅうはすかくがたさんだてがた

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分裂ぶんれつのうかく

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かつかくかつかく

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ゆうしるべ主格しゅかく

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典型てんけいてきかく標示ひょうじのアラインメントでは、自動詞じどうし主語しゅご標示ひょうじする主格しゅかく絶対ぜったいかくしるべとなるが、そうでない言語げんごもある。

たとえば、対格たいかくしるべ主格しゅかくゆうしるべ言語げんごがある。このような言語げんご主格しゅかくゆうしるべ主格しゅかくう。ゆうしるべ主格しゅかく言語げんご世界せかいてきにはめずらしいが、アフリカの言語げんごにはよくられる。

また、日本語にほんご朝鮮ちょうせんは、主格しゅかく対格たいかくゆうしるべである。

のうかくがたかく組織そしきでも、のうかくしるべ絶対ぜったいかくゆうしるべ言語げんごニアスのみ[7])、絶対ぜったいかくのうかくゆうしるべ言語げんごトンガなどのポリネシア諸語しょご)が存在そんざいする。

かく研究けんきゅう

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西洋せいよう

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西洋せいようにおけるかく概念がいねんは、古代こだいギリシアの「プトーシス」(πぱいτたうῶσις ptōsis)にさかのぼる。プトーシスとは「たおれること」という意味いみで、「まっすぐな」かたちである基本形きほんけいちがって「たおれた」かたち言葉ことばだった。もともとは、名詞めいしのみならず動詞どうしにももちいられた。これのラテン語らてんごやくが「カースス」(casus) であり、英語えいごの「ケース」(case) など西洋せいよう文法ぶんぽう言語げんごがく用語ようごもとになった。

また、基本きほんてきかく名前なまえ古代こだいギリシアにはしはっする。ヘレニズム文法ぶんぽうがくものサモトラケのアリスタルコス一派いっぱギリシアいつつのかく設定せっていし、弟子でし一人ひとりであったディオニュシオス・トラクスがその文法ぶんぽうしょ文法ぶんぽう技法ぎほう』で下表かひょうのように命名めいめいした。これをもとにして、古代こだいローマ文法ぶんぽう学者がくしゃレンミウス・パラエモン英語えいごばんが1世紀せいきころラテン語らてんごかく名前なまえをつけた。このラテン語らてんごかくが、現代げんだい西洋せいよう文法ぶんぽう言語げんごがくにおいてもちいられるかたり起源きげんである。

かく名前なまえ
ギリシャ ラテン語らてんご 英語えいご 日本語にほんご
ὀρθή (orthē)「まっすぐな」 nominativus「名前なまえの」 nominative 主格しゅかく
γενική (genikē)「種族しゅぞくの」 genetivus「生来せいらいの」 genitive ぞくかく
δοτική (dotikē)「あたえる」 dativus dative 与格よかく
αあるふぁἰτιατική (aitiatikē)「影響えいきょうされた」 accusativus「告訴こくその」[ちゅう 2] accusative 対格たいかく
κλητική (klētikē)「ぶ」 vocativus vocative よびかく

この名前なまえかた示唆しさするように、ギリシア・ローマにおいては、それぞれのかく特定とくてい意味いみ機能きのう関連かんれんづけられていた。たとえば、与格よかくは「なにかをあたえられるもの」のかくであり、よびかくは「ばれるもの」のかくであると観念かんねんされていた。

紀元前きげんぜん4世紀せいきごろのパーニニによるサンスクリット文法ぶんぽうでは、かく名前なまえけることはせず、下表かひょうのように番号ばんごうった。

サンスクリットのかく番号ばんごう
番号ばんごう देव (deva)「かみ」の変化へんか 日本語にほんごめい
1 देवः (devaḥ) 主格しゅかく
2 देवम् (devam) 対格たいかく
3 देवेन (devena) かく
4 देवाय (devāya) 与格よかく
5 देवात् (devāt) だつかく
6 देवस्य (devasya) ぞくかく
7 देवे (deve) しょかく

パーニニはこれらのかく規則きそくてきにある意味いみあらわすことを、カーラカ理論りろんばれる仕組しくみで表現ひょうげんした。カーラカ (कारक kāraka) とは「行為こういしゃ」の意味いみで、動詞どうしあらわ事態じたいかかわる「行為こういしゃ」がどのような役割やくわりっているかをしめしたものである。パーニニはつぎむっつのカーラカを定義ていぎしている[8]:278

カーラカとその定義ていぎ
カーラカ 定義ていぎ 日本語にほんごめい
अपादान (apādāna) なにかがされるてん 起点きてん
सम्प्रदान (sampradāna) karman をとおしてえるもの ちゃくてん
करण (karaṇa) もっと効果こうかてき手段しゅだん 道具どうぐ
अधिकरण (adhikaraṇa) 場所ばしょ 場所ばしょ
कर्मन् (karman) 行為こういしゃほっしているもの どうしゃ
कर्तृ (kartṛ) 独立どくりつしてうもの 行為こういしゃ

このように、かく形式けいしき意味いみ役割やくわり分離ぶんりすることで、ある意味いみ複数ふくすうかく対応たいおうする場合ばあい的確てきかく記述きじゅつしていた。

日本にっぽん

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日本にっぽんつたえられた悉曇しったんがくでは、サンスクリットのやっつのかくはちてんごえ(はってんじょう)とばれ、「からだごえ」「ごうごえ」「ごえ(またはさくごえ)」「ためごえ」「したがえごえ(またはこえ)」「ぞくごえ」「於声」「呼声よびごえ」としょうされた[9][10]

蘭学らんがくしゃ藤林ふじばやしひろしさんは、オランダむっつのかくに「主格しゅかく」「よびかく」などの訳語やくごをあてた[11]国学こくがくしゃつるみねつちのえさるは、蘭学らんがく影響えいきょうのもと日本語にほんごにもかく見出みいだし、きん現代げんだい日本語にほんごがく影響えいきょうあたえた[11]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ なお、これら5言語げんごにもつぎのように優勢ゆうせい語順ごじゅんというものは存在そんざいする。ドゴンジャマサイ方言ほうげんとマバ: SOVがた; シルク: SVOがた; ナンディとマサイ: VSOがた[3]
  2. ^ ギリシア aitiatikē には複数ふくすう意味いみがあり、ディオニュシオスは「影響えいきょうされた」という意味いみもちいたのだが、レンミウスは「うったえられた」という意味いみ誤解ごかいして、accusativus告訴こくその」を訳語やくごとしてえらんでしまった[5]:14

出典しゅってん

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  1. ^ a b Blake, Barry J. (2001). Case. Cambridge: Cambridge University Press 
  2. ^ a b 亀井かめい, こう千野ちの, 栄一えいいち河野こうの, 六郎ろくろう言語げんごがくだい辞典じてんだい6かん術語じゅつごへん三省堂さんせいどう東京とうきょう、1995ねん 
  3. ^ Dryer, Matthew S. (2013) "Order of Subject, Object and Verb". In: Dryer, Matthew S.; Haspelmath, Martin, eds. The World Atlas of Language Structures Online. Leipzig: Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology. http://wals.info/ 
  4. ^ a b c Creider, Chet A.; Creider, Jane Tapsubei (1989). A Grammar of Nandi. Hamburg: Helmut Buske Verlag 
  5. ^ a b Butt, Miriam (2006). Theories of Case. Cambridge: Cambridge University Press 
  6. ^ 宮岡みやおか, はくじんきた言語げんご : 類型るいけい歴史れきし三省堂さんせいどう東京とうきょう、1992ねん 
  7. ^ WALS Online - Chapter Alignment of Case Marking of Full Noun Phrases”. wals.info. 2022ねん12月24にち閲覧えつらん
  8. ^ Verhagen, Pieter Cornelis (1994). A History of Sanskrit Grammatical Literature in Tibet, Volume 2 Assimilation into Indigenous Scholarship. Handbook of Oriental Studies. Section 2 South Asia. 8/2. BRILL 
  9. ^ 秋山あきやま, がく慈雲じうん南海なんかいよせ内法うちのりでん解纜かいらん鈔』の現代げんだいてき意義いぎ -「動詞どうし語根ごこんからの古典こてん古代こだいがく」にけて-」『テクストたちの旅程りょてい-移動いどう変容へんようなか文学ぶんがく-』2008ねん、146-166ぺーじISBN 9784903554273 
  10. ^ 漢語かんご八囀聲學則 カンゴ ハッテンジョウ ガクソク
  11. ^ a b 服部はっとり紀子のりこ江戸えどらん語学ごがくにおける日本語にほんごかく理解りかい」『日本語にほんご研究けんきゅう』13かん1ごう日本語にほんご学会がっかい、2017ねんNAID 130007051084。18fぺーじ

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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