エストニア語 ご (エストニアご、eesti keel [ˈeːsti ˈkeːl] ( 音声 おんせい ファイル ) )は、ウラル語族 ごぞく ・フィン・ウゴル語 ご 派 は ・バルト・フィン諸語 しょご に属 ぞく する言語 げんご 。話者 わしゃ は約 やく 110万 まん 人 にん で、エストニア の主要 しゅよう 言語 げんご であり、また公用 こうよう 語 ご となっている。フィンランド語 ご に近 ちか く、ハンガリー語 ご とも系統 けいとう を同 おな じくする。
南 みなみ エストニア方言 ほうげん とタリン 周辺 しゅうへん で使 つか われる北 きた エストニア方言 ほうげん の2つの方言 ほうげん があり、後者 こうしゃ は現在 げんざい の標準 ひょうじゅん 語 ご のもとになっている。
18世紀 せいき の初 はじ めから1918年 ねん に至 いた るまでエストニアはロシア帝国 ていこく の支配 しはい 下 か にあり、約 やく 20年 ねん 後 ご 再 ふたた びソ連 それん に併合 へいごう され、1991年 ねん に再 ふたた び独立 どくりつ したが、エストニア語 ご にはロシア語 ご の影響 えいきょう があまりない。むしろ、フィンランド語 ご やドイツ語 ご のほうが密接 みっせつ に関 かか わりを持 も っている[1] 。
フィンランド語 ご とエストニア語 ご は同 おな じウラル語族 ごぞく に属 ぞく しており、語彙 ごい の面 めん でも文法 ぶんぽう の面 めん でも共通 きょうつう 点 てん が多 おお い。また、ドイツ語 ご との関係 かんけい は中国 ちゅうごく 語 ご と日本語 にほんご の関係 かんけい に似 に ており、長期 ちょうき にわたってドイツ語 ご やその一方 いっぽう 言 げん 低地 ていち ドイツ語 ご から影響 えいきょう を受 う けてきた。その証拠 しょうこ として、エストニア共和 きょうわ 国 こく の首都 しゅと タリン には低地 ていち ドイツ語 ご で書 か かれた歴史 れきし 文書 ぶんしょ が大量 たいりょう に保管 ほかん されている[1] 。
エストニア語 ご には首都 しゅと ・タリン を中心 ちゅうしん にした北 きた 方言 ほうげん と、第 だい 二 に の都市 とし ・タルトゥ を中心 ちゅうしん にした南 みなみ 方言 ほうげん がある。現在 げんざい の標準 ひょうじゅん エストニア語 ご は北 きた 方言 ほうげん に基 もと づいている。
エストニア語 ご が文字 もじ を使 つか って書 か かれ始 はじ めたのは1520年代 ねんだい 以降 いこう だが、当時 とうじ はキリスト教 きりすときょう の教会 きょうかい に住 す んでいたドイツ人 じん がエストニア人 じん に布教 ふきょう するために使 つか われたもので、実際 じっさい に使 つか われていたエストニア語 ご とはかけ離 はな れたものだったという[2] 。また、1739年 ねん にはエストニア語 ご 訳 やく 聖書 せいしょ の全訳 ぜんやく が出 で た。
19世紀 せいき に入 はい るころには徐々 じょじょ にエストニア人 じん にも読 よ み書 か きのできる人々 ひとびと が学校 がっこう 教育 きょういく の普及 ふきゅう によって増 ふ え始 はじ め、そのころから新聞 しんぶん や小説 しょうせつ などが出 で るようになった[2] 。独立 どくりつ 直後 ちょくご の憲法 けんぽう 制定 せいてい 会議 かいぎ の議事 ぎじ 録 ろく はすでに現代 げんだい のエストニア語 ご とほぼ変 か わらないものだという。その後 ご 、ソ連 それん 時代 じだい を経 へ て、現在 げんざい に至 いた る。
他 た のバルト諸国 しょこく 同様 どうよう 、エストニアにはドイツ系 けい 移民 いみん が多 おお く、このためエストニア語 ご は語彙 ごい および統語 とうご 法 ほう の両面 りょうめん でドイツ語 ご の影響 えいきょう を強 つよ く受 う けている。言語 げんご 形態 けいたい 論 ろん 的 てき には、ウラル語族 ごぞく に多 おお い膠着 こうちゃく 語 ご からインド・ヨーロッパ語族 ごぞく に多 おお い屈折 くっせつ 語 ご (総合 そうごう 的 てき 言語 げんご )への移行 いこう 形態 けいたい を見 み せている。informatsioonやkontsertなどドイツ語 ご と発音 はつおん が似 に ている単語 たんご もしばしば見受 みう けられる。
表記 ひょうき にはラテン文字 もじ を用 もち いる。ただし c, f, q, w, x, y, z, š, žは外国 がいこく 語 ご 由来 ゆらい の語 かたり にのみ用 もち いられる[3] 。また、c, q, w, x, yは言語 げんご のつづりのまま表記 ひょうき される場合 ばあい のみ、f, z, š, žは比較的 ひかくてき 新 あたら しい外来 がいらい 語 ご に用 もち いられる[3] 。
エストニア語 ご 独自 どくじ の文字 もじ としては、š, ž, ä, ö, ü, õ がある。ä 、ö、 üはドイツ語 ご と同 おな じでそれぞれのaとe、oとe、uとeの中間 ちゅうかん の音 おと となり õ は非 ひ 円 えん 唇 くちびる の o である。 基本 きほん 的 てき にロ ろ ーマ字 まじ 読 よ みが可能 かのう である。
エストニア語 ご の母音 ぼいん
以下 いか の母音 ぼいん は日本語 にほんご にないため、注意 ちゅうい が必要 ひつよう である。
uは、英語 えいご のboo kのoo の音 おと 。唇 くちびる を丸 まる く して発音 はつおん 。
äは、英語 えいご のca tのa の音 おと 。
öは、ドイツ語 ご のö。舌 した を/e/の形 かたち にして唇 くちびる を丸 まる めたもの。
õは、日本語 にほんご のう の音 おと に近 ちか い。(ただし、同 おな じではない。)
üは、ドイツ語 ご のü。舌 した を/i/の形 かたち にして唇 くちびる を丸 まる めたもの。
詳 くわ しい発音 はつおん や、音声 おんせい データはそれぞれの項目 こうもく を参照 さんしょう 。
母音 ぼいん の長短 ちょうたん には短 たん ・長 ちょう ・超 ちょう 長 ちょう 母音 ぼいん の三 さん 段階 だんかい の変化 へんか がある[4] 。また、ウラル語族 ごぞく の特徴 とくちょう である母音 ぼいん 調和 ちょうわ は現在 げんざい は消失 しょうしつ している。
b, d, gと p, t, kはそれぞれ同 おな じp, t, kの音 おと をあらわす。例 れい )paar -baar 「対 たい 、組 くみ 」-「バー(酒場 さかば )」[5] 。但 ただ し、母音 ぼいん にはさまれている場合 ばあい は、p, t, kは「長 なが い」p, t, kとなる。(日本語 にほんご の「坂 さか (さか)」と「作家 さっか (さっか)」に近 ちか い。)
語頭 ごとう のhは読 よ まない話 はな し手 て も多 おお い。また、šとžはともに[ʃː] (無声 むせい 後部 こうぶ 歯茎 はぐき 摩擦音 まさつおん 、英語 えいご のsh )をあらわし、šは「長 なが く」、žは「短 みじか く」発音 はつおん する(pとbの違 ちが いと同 おな じ)[6] 。
また、jはドイツ語 ご などと同様 どうよう に/j /をあらわす(ヤ行 ぎょう の音 おと )[4] 。
<促音 そくおん >
<超 ちょう 長 ちょう 母音 ぼいん >
名詞 めいし に性 せい はないが、単数 たんすう と複数 ふくすう の数 かず をもち、また14の格 かく 変化 へんか を有 ゆう する。形容詞 けいようし は名詞 めいし 同様 どうよう に数 かず および格 かく 変化 へんか を有 ゆう する。対格 たいかく を持 も たず、直接 ちょくせつ 目的 もくてき 語 ご は属 ぞく 格 かく あるいは分 ぶん 格 かく によって表 あらわ す。直接 ちょくせつ 目的 もくてき 語 ご は否定 ひてい 文 ぶん においてはつねに分 ぶん 格 かく となる。肯定 こうてい 文 ぶん におけるこの区別 くべつ は動詞 どうし の相 そう における完了 かんりょう 相 しょう と不 ふ 完了 かんりょう 相 しょう の対立 たいりつ におおまかに対応 たいおう しており一般 いっぱん に可算 かさん である個体 こたい に対 たい しては属 ぞく 格 かく 、非 ひ 可算 かさん な非 ひ 個体 こたい に対 たい しては分 ぶん 格 かく を用 もち いる。また動詞 どうし の不定 ふてい 詞 し は2つあり-ma不定 ふてい 詞 し と-taまたは-da不定 ふてい 詞 し が存在 そんざい する。
エストニア語 ご の名詞 めいし はさまざまな格 かく 変化 へんか をする。また、属 ぞく 格 かく は必 かなら ず終 お わりが母音 ぼいん で、分 ぶん 格 かく は終 お わりが母音 ぼいん 、もしくは子音 しいん のt,dである[7] 。
単数 たんすう 属 ぞく 格 かく 形 かたち に-dをつけることで複数 ふくすう 主格 しゅかく 形 がた をあらわす[8] 。
格 かく 変化 へんか の内訳 うちわけ は主格 しゅかく 、属 ぞく 格 かく 、分 ぶん 格 かく 、入 にゅう 格 かく 、内 うち 格 かく 、出格 しゅっかく 、向 むかい 格 かく 、接 せっ 格 かく (所 ところ 格 かく )、奪 だつ 格 かく (離 はなれ 格 かく )、変格 へんかく 、様 さま 格 かく 、到 いた 格 かく (英語 えいご 版 ばん ) 、欠格 けっかく 、共 きょう 格 かく の14種類 しゅるい [9] 。
このうち、場所 ばしょ をあらわす格 かく は六 ろく 種類 しゅるい ある。詳細 しょうさい は以下 いか の表 ひょう を参照 さんしょう 。
ただし、「中 なか 」、「上 うえ 」というのはあくまで目安 めやす のようなものである。また、以上 いじょう の語尾 ごび は全 すべ て単数 たんすう 属 ぞく 格 かく 形 がた につける[10] 。
人称 にんしょう 代名詞 だいめいし [ 編集 へんしゅう ]
人称 にんしょう 代名詞 だいめいし [11]
単数 たんすう
複数 ふくすう
1人 ひとり 称 しょう
mina(ma)
meie(me)
2人 ふたり 称 しょう
sina(sa)
teie(te)
3人称 にんしょう
tema(ta)
nemad(nad)
カッコ内 ない は強 つよ 勢 ぜい のない短 たん 形 がた と呼 よ ばれる形 かたち 。反対 はんたい に、入 はい っていないものを長 ちょう 形 かたち という。また、3人称 にんしょう には英語 えいご やドイツ語 ご のような男女 だんじょ の区別 くべつ はない。
動詞 どうし の-maで終 お わる形 かたち を不定 ふてい 詞 し という。-maを取 と り除 のぞ いた形 かたち を不定 ふてい 詞 し 語幹 ごかん という[11] 。
エストニア語 ご は主語 しゅご の人称 にんしょう によって動詞 どうし が変化 へんか する。ここでは、動詞 どうし elama (生 い きている、住 す んでいる)を例 れい に挙 あ げる。
動詞 どうし の活用 かつよう (直接 ちょくせつ 法 ほう 現在 げんざい )[12]
単数 たんすう
複数 ふくすう
1人 ひとり 称 しょう
ela-n
ela-me
2人 ふたり 称 しょう
ela-d
ela-te
3人称 にんしょう
ela-b
ela-vad
不定 ふてい 詞 し 語幹 ごかん に「-」以下 いか の部分 ぶぶん をつけると、文 ぶん が成立 せいりつ する。また、エストニア語 ご の現在 げんざい 形 がた は非 ひ 過去 かこ をあらわすため、未来 みらい のこともあらわす[13] 。
エストニア語 ご の英語 えいご で言 い うbe動詞 どうし に当 あ たるもの(コピュラ )はエストニア語 ご ではolema という。olemaは不規則 ふきそく 動詞 どうし で、動詞 どうし の規則 きそく に当 あ てはまらない[11] 。
olemaの活用 かつよう (直接 ちょくせつ 法 ほう 現在 げんざい )
単数 たんすう
複数 ふくすう
1人 ひとり 称 しょう
ole-n
ole-me
2人 ふたり 称 しょう
ole-d
ole-te
3人称 にんしょう
on
on
また、否定 ひてい 形 がた を作 つく る際 さい は否定 ひてい の小 しょう 詞 し 「ei 」を動詞 どうし の前 まえ に置 お く。例 れい )Ma olen eestlane. → Ma ei ole eestlane.(私 わたし はエストニア人 じん です→私 わたし はエストニア人 じん ではありません[14] 。)
ただし、ei oleに限 かぎ っては、特殊 とくしゅ な否定 ひてい 形 がた pole を代 か わりに使用 しよう することもある[14] 。
動詞 どうし の活用 かつよう (直接 ちょくせつ 法 ほう 過去 かこ )[15]
単数 たんすう
複数 ふくすう
1人 ひとり 称 しょう
ela-si-n
ela-si-me
2人 ふたり 称 しょう
ela-si-d
ela-si-te
3人称 にんしょう
ela-s
ela-si-d
以上 いじょう のように、elamaという動詞 どうし は人称 にんしょう 語尾 ごび の直前 ちょくぜん に-si-をつけている。これはエストニア語 ご の動詞 どうし の多 おお くが持 も つ特徴 とくちょう である[15] 。(ただし、olemaはsiの代 か わりにiを使 つか う。)
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