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公用こうよう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

公用こうよう(こうようご)とは、くにしゅうなど、ある集団しゅうだん共同きょうどう体内たいないおおやけにおいてもちいることを公式こうしき規定きていした言語げんごす。その集団しゅうだんゆうする公的こうてき機関きかんには義務ぎむされ、公的こうてき情報じょうほう発信はっしんするさいとうには公用こうようもちいなければならない。「公共こうきょう言語げんご」や標準ひょうじゅんとう間違まちがえないよう注意ちゅうい

あるくににおいて公用こうようとして複数ふくすう言語げんごさだめられた場合ばあいには、そのすべての言語げんごもちいて公的こうてき情報じょうほう国民こくみんつたえなければならない。したがってこの場合ばあい国家こっか(あるいは集団しゅうだん)の公的こうてき機関きかんは、すべての公用こうよう併記へいき通訳つうやくしてつたえることになる。これによって、指定していされた複数ふくすう言語げんごのうちどれかひとつの言語げんごだけを理解りかいする国民こくみん(や構成こうせいいん)にたいしても不利益ふりえきしょうじさせないという原則げんそくまもられる。

いち言語げんご集団しゅうだんだい多数たすうめる国家こっか圧倒的あっとうてきつよちからっている国家こっか場合ばあい公用こうよう法律ほうりつさだめていない場合ばあいもある。

概説がいせつ

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公用こうようは、ひとつの共同きょうどう体内たいない複数ふくすう言語げんご使用しようされている場合ばあいに、公的こうてき分野ぶんやにおいて意志いし疎通そつう円滑えんかつにする目的もくてきで、憲法けんぽう法律ほうりつなどのほう規範きはんによって指定していされるのが一般いっぱんてきである。これにたいし、方言ほうげんこそあるものの、ひとつの言語げんご話者わしゃ圧倒的あっとうてき多数たすうくにである場合ばあい法律ほうりつさだめるまでもなく、その言語げんご事実じじつじょう公用こうよう役割やくわりをしている場合ばあいがある。日本にっぽんにおける日本語にほんごがこれにあたる[注釈ちゅうしゃく 1](ただし、裁判所さいばんしょほうだい74じょうは「裁判所さいばんしょでは、日本語にほんごもちいる。」とさだめている)。圧倒的あっとうてき多数たすうどういち言語げんご話者わしゃがいる場合ばあいでも、法的ほうてきさだめをれいもある。

一方いっぽう国内こくない複数ふくすう言語げんご話者わしゃがいるにもかかわらず、公用こうよう正式せいしき指定していすることなく、政治せいじてき社会しゃかいてき上層じょうそう階級かいきゅうあいだはなされている言語げんご事実じじつじょう公用こうようになっている場合ばあいもある。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける英語えいごがこれにあたる。しかし、しゅうレベルでは、2004ねん現在げんざいぜん50しゅうちゅう27しゅう法律ほうりつ英語えいご公用こうようさだめている。このなかには、英語えいごだけを公用こうようとするしゅうもあれば、英語えいごの1つの言語げんご公用こうようとするしゅうもある。なお、連邦れんぽう最高裁さいこうさい英語えいごだけを公用こうようさだめていたアリゾナしゅう法律ほうりつについて、1998ねん4がつ違憲いけん判決はんけつくだしている。

くにだけでなく国際こくさい連合れんごう欧州おうしゅう連合れんごう (EU) などでも公用こうよう指定していされている(国際こくさい機関きかん公用こうよう一覧いちらん)。国連こくれん公用こうよう英語えいごフランス語ふらんすごロシア中国ちゅうごくスペインアラビアの6つである。これらは、だい世界せかい大戦たいせん戦勝せんしょうこく大国たいこくであるアメリカ・イギリスフランスソビエト連邦れんぽうロシア中華民国ちゅうかみんこく中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく公用こうように、おおくのくにはなされているスペインスペイン本国ほんごくくわえて、ブラジルのぞラテンアメリカ諸国しょこくにおける共通きょうつう言語げんごとなっている)とアラビア中東ちゅうとうきたアフリカにおける共通きょうつう言語げんご)をくわえたものである。

公用こうよう指定していかんしては様々さまざま基準きじゅんがあるが、一般いっぱんてきにその集団しゅうだんない使用しようするものかずもっとおお言語げんご高度こうど概念がいねん表現ひょうげんしうる言語げんごえらばれる。しかし、政治せいじてきつよ権力けんりょくをもった民族みんぞく言語げんごおおくの国民こくみんはん公用こうよう指定していされることもある。民族みんぞく言語げんご密接みっせつむすびつき、しばしば深刻しんこく問題もんだいこすので、複数ふくすう言語げんご公用こうようさだめているくにおおい。

ニュージーランドパプアニューギニア韓国かんこくなどでは手話しゅわ公用こうようさだめている。

ヨーロッパ、カナダの公用こうよう

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英語えいごフランス語ふらんすご併記へいき標識ひょうしき(カナダの首都しゅとオタワ

ヨーロッパには複数ふくすう公用こうようくにがある。くに全体ぜんたいで、2つ以上いじょう公用こうようみとめられている場合ばあいもあれば、特定とくてい地方ちほう国家こっか全体ぜんたい公用こうよう以外いがい言語げんご、つまり地方ちほう公用こうようさだめられている場合ばあいもある。

たとえば、ベルギーではフランス語ふらんすごオランダフラマン)・ドイツスイスではドイツフランス語ふらんすごイタリアロマンシュアイルランドではアイルランド英語えいごフィンランドではフィンランドスウェーデン公用こうようとしている。スペインでは、くに全体ぜんたい公用こうようであるカスティーリャ(スペイン)のほかに、自治じちしゅう憲章けんしょうによってカタルーニャバレンシア)、バスクガリシアがそれぞれの地方ちほう公用こうよう制定せいていされている。カナダでは英語えいごフランス語ふらんすご公用こうようとしている。それぞれの国内こくないではすべての公用こうよう情報じょうほうわたるようになっている。たとえば、国内こくない生産せいさんされるお菓子かし内容ないよう表示ひょうじ道路どうろ標識ひょうしきなども複数ふくすう言語げんごによる併記へいきとなっており、教育きょういくマスコミなどにおいてもその使用しよう保証ほしょうされている。

きゅう植民しょくみん国家こっか公用こうよう

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アジアアフリカなどのきゅう植民しょくみん国家こっかでは、実際じっさい母語ぼご話者わしゃきわめて少数しょうすうであるにもかかわらず、きゅう宗主そうしゅこく言語げんご英語えいごフランス語ふらんすごスペインおよポルトガル)が現在げんざい公用こうようとされていることおおい。これはおも以下いかのような理由りゆうによる。

  • その地域ちいき多数たすう言語げんご存在そんざいし、意思いし疎通そつう困難こんなんである
  • 文字もじ言語げんごがなく、文書ぶんしょ記述きじゅつすることができない
  • 政治せいじ経済けいざい教育きょういくなど近代きんだいてきしょ制度せいど運営うんえいしていくうえで、それら制度せいど用語ようご充実じゅうじつしたきゅう宗主そうしゅこく言語げんご使用しようせざるをえない
  • 独立どくりつ運動うんどう国家こっか運営うんえい指導しどうするインテリそうが、きゅう宗主そうしゅこく言語げんご高等こうとう教育きょういくけている
  • きゅう宗主そうしゅこくくわえ、きゅう宗主そうしゅこく言語げんご使つかしょ外国がいこくとのつながりがいまでもつよく、イギリス連邦れんぽうフランコフォニー国際こくさい機関きかん、またポルトガル諸国しょこく共同きょうどうたいなどをつうじた国際こくさい連携れんけい観点かんてんからきゅう宗主そうしゅこく言語げんご必須ひっす

このようなくにでは、きゅう宗主そうしゅこく言語げんご公用こうようとして使用しようする場合ばあいと、もっと使用しようするものかずおお部族ぶぞく言語げんご公用こうようとしている場合ばあいがある。植民しょくみんがわ言語げんごには文字もじがないことおおく、アルファベットの発音はつおんをあててアルファベット表記ひょうきすることがおおい。

ケニアではスワヒリ英語えいごフィリピンではタガログ基本きほんとするフィリピン英語えいご公用こうようになっており、これらはそれぞれ義務ぎむ教育きょういくによって全国ぜんこく教育きょういくされている。また、これらのくにには非常ひじょうおおくの地方ちほう言語げんご存在そんざいすることから、地方ちほう言語げんご多数たすう部族ぶぞく言語げんご公用こうようきゅう宗主そうしゅこく言語げんご公用こうようわせると、おおくの少数しょうすう民族みんぞくは3つの言語げんご使用しようすることになる。ただし公用こうようされない地方ちほう言語げんごには文字もじがないことがおおく、公用こうよう普及ふきゅうともにそのほとんどが消滅しょうめつしていく傾向けいこうにある。

欧州おうしゅう連合れんごう公用こうよう

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欧州おうしゅう連合れんごうでは、1958ねん4がつ15にち採択さいたくされた欧州おうしゅう経済けいざい共同きょうどうたい理事りじかい規則きそく No.1 のだい1じょうにおいて欧州おうしゅう連合れんごう公用こうようさだめている。この規則きそく幾度いくど改正かいせいされており、2013ねん7がつ1にち以降いこう欧州おうしゅう連合れんごう公用こうようとなっているのはブルガリアクロアチアチェコデンマークオランダ英語えいごエストニアフィンランドフランス語ふらんすごドイツギリシアハンガリーアイルランドイタリアラトビアリトアニアマルタポーランドポルトガルルーマニアスロバキアスロベニアスペインスウェーデンけい24の言語げんごである。原則げんそくとしてかく加盟かめいこく公用こうよう欧州おうしゅう連合れんごう公用こうようとしているが、ルクセンブルク公用こうようの1つであるルクセンブルクと、キプロス公用こうようの1つであるトルコふくまれていない。すべての欧州おうしゅう連合れんごう公式こうしき文書ぶんしょはこの24の公用こうよう翻訳ほんやくされている。ただし、アイルランドについては、特例とくれいもとづき、一部いちぶのみ提供ていきょうされている。具体ぐたいてきにはEU官報かんぽう主要しゅよう立法りっぽう、および国際こくさい条約じょうやく一部いちぶのみである[1]。なおイギリスがEUを離脱りだつしても、英語えいごはアイルランドとマルタの公用こうようひとつであるためEU公用こうようにとどまる[2]。また加盟かめいこくえると公用こうようえることがある。欧州おうしゅう連合れんごう加盟かめいこく拡大かくだい目指めざしているものの、それにともな公用こうよう増大ぞうだいにより相互そうご翻訳ほんやく作業さぎょう級数きゅうすうてき増大ぞうだいし、微妙びみょう翻訳ほんやく表現ひょうげんちがいも問題もんだいしている。

公用こうよう役割やくわり重要じゅうようせい

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複数ふくすう公用こうようさだめる場合ばあいには、どちらか一方いっぽう言語げんごのみを使用しようするもの不利益ふりえきあたえてはならないため、役所やくしょはじめ、通訳つうやく翻訳ほんやくおよび併記へいき必要ひつようせいしょうじ、また、複数ふくすう言語げんご精通せいつうした役人やくにんくなど多大ただいなコストがかかる。

公用こうよう指定していされた言語げんごにはまった表記ひょうきほう存在そんざい会話かいわ言語げんごのような方言ほうげんてき誤謬ごびゅうがない。そのためその域内いきない標準ひょうじゅんとなる言語げんご統一とういつされ情報じょうほう末端まったんまで正確せいかくつたわることになる。このことは情報じょうほう伝達でんたつ手段しゅだんとしては大変たいへん有効ゆうこうであるが、一方いっぽう公用こうよう指定していされない少数しょうすう話者わしゃ言語げんご人為じんいてき消滅しょうめつすることとなる。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 日本にっぽんには日本語にほんご話者わしゃほかに、ポルトガル、スペイン英語えいご中国ちゅうごく朝鮮ちょうせんなど日本語にほんご話者わしゃ多数たすう存在そんざいしている。

出典しゅってん

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  1. ^ Official Journal”. EUR-Lex. 2019ねん9がつ21にち閲覧えつらん
  2. ^ About the EU > EU languages” [EUについて > EU公用こうよう] (英語えいご). 欧州おうしゅう連合れんごう. 2020ねん1がつ16にち閲覧えつらん。 “The EU has 24 official languages. These are: Bulgarian, Croatian, Czech, Danish, Dutch, English, Estonian, Finnish, French, German, Greek, Hungarian, Irish, Italian, Latvian, Lithuanian, Maltese, Polish, Portuguese, Romanian, Slovak, Slovenian, Spanish, Swedish”

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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