標準ひょうじゅん

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標準ひょうじゅん(ひょうじゅんご、えい: standard languageどく: Standardssprache)とは、公共こうきょう言説げんせつにおいて人々ひとびと集団しゅうだん民族みんぞく共同きょうどうたい国家こっか組織そしきなど)によってもちいられる言語げんご変種へんしゅである[1]。あるいは、言語げんご変種へんしゅ文法ぶんぽう辞書じしょにおける記述きじゅつのために整理せいりされ、こういった参考さんこう文献ぶんけんにおいて記号きごうされるさいこる標準ひょうじゅん過程かていることによって標準ひょうじゅんとなる[1]典型てんけいてきには、商業しょうぎょう政治せいじ中心ちゅうしんはなされている方言ほうげん標準ひょうじゅんされる言語げんご変種へんしゅとなる。なお、同義どうぎてきなものとして、特定とくてい言語げんご地域ちいきえてもちいられる「共通きょうつう」が存在そんざいする。

標準ひょうじゅん複数ふくすう中心地ちゅうしんち言語げんごたとえばアラビア英語えいご標準ひょうじゅんドイツペルシアセルボ・クロアチアフランス語ふらんすごポルトガルスペインけん[2])にも単一たんいつ中心地ちゅうしんち言語げんごたとえばアイスランドイタリア[3]日本語にほんご[4]ロシア[4])のいずれもがえらばれる事例じれいである[5]標準ひょうじゅん書記しょき言語げんごは「シュリフトシュプラーヘ」(Schriftsprache、ドイツ文章ぶんしょう)とばれることがある。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

ある言語げんご変種へんしゅ標準ひょうじゅんとなるために唯一ゆいいつ必要ひつよう条件じょうけんは、それが公共こうきょうまたは公共こうきょう言説げんせつにおいて頻繁ひんぱん使つかうことができることである[1]規範きはんてき標準ひょうじゅん創造そうぞう国家こっか主義しゅぎてき文化ぶんかてき政治せいじてき社会しゃかいてき一体いったいせいへの願望がんぼうからしょうじる。標準ひょうじゅんには以下いかのような一般いっぱんてき特徴とくちょうがある。

歴史れきし[編集へんしゅう]

歴史れきしてきには、国民こくみん国家こっか成立せいりつに、国内こくないことなる言語げんご話者わしゃ同士どうしのコミュニケーション円滑えんかつ、ひいては国家こっか国民こくみん統一とういつのために、しゅ方言ほうげんあるいはしゅ言語げんごもと国語こくごとして形成けいせいされてきたものであり、おおくは方言ほうげんおよび少数しょうすう言語げんご廃滅はいめつ念頭ねんとういていた。とくに、フランス絶対ぜったい王政おうせいときされたフランス語ふらんすご標準ひょうじゅん政策せいさくれい顕著けんちょである。

標準ひょうじゅん一覧いちらん[編集へんしゅう]

言語げんご 標準ひょうじゅん 規範きはん標準ひょうじゅん機関きかん 標準ひょうじゅん方言ほうげん
アラビア 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅんアラビア クルアーン』、複数ふくすうのアラビアアカデミー アーンミーヤ
アルバニア 標準ひょうじゅんアルバニア ティラナアルバニアがく研究所けんきゅうじょ、プリシュティナアルバニアがく研究所けんきゅうじょ ゲグ・アルバニア
アフリカーンス 標準ひょうじゅんアフリカーンス Die Taalkommissie英語えいごばん アフリカーンス#方言ほうげん
バスク 標準ひょうじゅんバスク エウスカルツァインディア バスク方言ほうげん英語えいごばん
ブルガリア 標準ひょうじゅんブルガリア ブルガリア研究所けんきゅうじょ ブルガリア方言ほうげん英語えいごばん
オランダ 標準ひょうじゅんオランダ オランダ連合れんごう オランダ方言ほうげん英語えいごばん
デンマーク 標準ひょうじゅんデンマークデンマークばん デンマーク国立こくりつ国語こくご審議しんぎかい研究所けんきゅうじょ 英語えいごばん デンマーク方言ほうげん英語えいごばん
カタルーニャ 標準ひょうじゅんカタルーニャ標準ひょうじゅんバレンシア カタルーニャがく研究所けんきゅうじょ英語えいごばんバレンシア言語げんごアカデミー英語えいごばん カタルーニャ方言ほうげん
中国ちゅうごく粤語もとにしたはな言葉ことば 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅん粤語〔広州こうしゅう標準ひょうじゅん粤語(広東かんとん)、香港ほんこんマカオ標準ひょうじゅん粤語(香港ほんこん)〕 公務員こうむいん事務じむきょく香港ほんこん)、行政ぎょうせい公職こうしょくきょく(マカオ) 粤語の方言ほうげん広東かんとんばん
中国ちゅうごく
官話かんわもとにしたはな言葉ことば
標準ひょうじゅん中国語ちゅうごくご
普通ふつうばなし中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく)、国語こくご中華民国ちゅうかみんこく/台湾たいわん
国家こっかげん文字もじ工作こうさく委員いいんかいPRC)、国語こくご推行委員いいんかい英語えいごばんROC/台湾たいわん)、推広はな理事りじかい英語えいごばんシンガポール 中国ちゅうごく変種へんしゅ英語えいごばん官話かんわ北京ぺきん台湾たいわんはなシンガポールシンガポール英語えいごばんマレーシア英語えいごばんフィリピンはな英語えいごばん
ペルシア 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅんペルシア標準ひょうじゅんイラン・ペルシア英語えいごばんテヘラン方言ほうげんもとづく)、標準ひょうじゅんダリー(アフガン・ペルシア)、標準ひょうじゅんタジク ペルシア・ペルシア文学ぶんがくアカデミー英語えいごばん ペルシア#歴史れきし
フランス語ふらんすご 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅんフランス語ふらんすごアフリカの標準ひょうじゅんフランス語ふらんすごベルギーの標準ひょうじゅんフランス語ふらんすごカンボジアの標準ひょうじゅんフランス語ふらんすご英語えいごばんカナダの標準ひょうじゅんフランス語ふらんすごラオスの標準ひょうじゅんフランス語ふらんすご英語えいごばんフランスの標準ひょうじゅんフランス語ふらんすご英語えいごばんスイスの標準ひょうじゅんフランス語ふらんすごベトナムの標準ひょうじゅんフランス語ふらんすご英語えいごばん(ベルギー、カナダ、スイスをのぞくほとんどの標準ひょうじゅんフランス語ふらんすご方言ほうげんすべてフランスの標準ひょうじゅんフランス語ふらんすごもとにしている。)〕 アカデミー・フランセーズケベックしゅうフランス語ふらんすご事務じむきょく英語えいごばんルイジアナ・フランス語ふらんすご振興しんこう会議かいぎ英語えいごばん フランス語ふらんすご変種へんしゅ英語えいごばん
ドイツ 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅんドイツオーストリアの標準ひょうじゅんドイツ標準ひょうじゅんドイツスイスの標準ひょうじゅんドイツ英語えいごばん ドイツ正書法せいしょほう評議ひょうぎかい英語えいごばん ドイツ方言ほうげん英語えいごばん高地たかちドイツ低地ていちドイツ
アイルランド 標準ひょうじゅんアイルランド英語えいごばん アイルランドちょう英語えいごばん コノート・アイルランド英語えいごばんマンスター・アイルランド英語えいごばんアルスター・アイルランド英語えいごばん
イタリア 標準ひょうじゅんイタリア クルスカ学会がっかい イタリア方言ほうげん英語えいごばんイタロ・ダルマチアガロ・イタリアサルデーニャ
韓国かんこく朝鮮ちょうせん 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅん朝鮮ちょうせん大韓民国だいかんみんこく標準ひょうじゅんおよび朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく文化ぶんか 国立こくりつ国語こくごいん社会しゃかい科学かがくいん語学ごがく研究所けんきゅうじょ 朝鮮ちょうせん方言ほうげん
現代げんだいギリシア 標準ひょうじゅん現代げんだいギリシア 1976ねんコンスタンディノス・カラマンリス政権せいけん公用こうよう 現代げんだいギリシア変種へんしゅ英語えいごばん
ヒンドゥスターニー(ヒンディー・ウルドゥー 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅんヒンドゥスターニーヒンディーおよびウルドゥー ヒンディーきょく英語えいごばんパキスタン国立こくりつ言語げんごきょく英語えいごばん ヒンディーベルト英語えいごばん
マケドニア 標準ひょうじゅんマケドニア英語えいごばん クルステ・ミシルコフ・マケドニア研究けんきゅう機構きこう英語えいごばん マケドニア方言ほうげん英語えいごばん
マレー 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅんマレー(マレーシア、ブルネイ、シンガポールの国語こくごとして。インドネシアの地域ちいき言語げんごとして。)、マレーシアインドネシアBahasa Indonesia yang Baik dan Benar マレーシア国立こくりつ言語げんご図書としょ研究所けんきゅうじょ英語えいごばん(マレーシアおよびブルネイにおけるマレーについて)、インドネシア共和きょうわこく教育きょういく文化ぶんかしょう言語げんご育成いくせい振興しんこうきょく英語えいごばん(インドネシア)、ブルネイダルサラーム・インドネシア・マレーシア言語げんご審議しんぎかい英語えいごばん マレー語族ごぞく英語えいごばん
ノルウェー ニーノシュクブークモール ノルウェー言語げんご諮問しもん委員いいんかい英語えいごばん(Språkrådet) ノルウェー方言ほうげん英語えいごばん
ポーランド 標準ひょうじゅんポーランド ポーランド評議ひょうぎかい英語えいごばん ポーランド方言ほうげん英語えいごばん
ポルトガル 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅんポルトガルブラジルの標準ひょうじゅんポルトガルおよびヨーロッパの標準ひょうじゅんポルトガル リスボン科学かがくアカデミー文学ぶんがく部門ぶもん英語えいごばんブラジル文学ぶんがくアカデミー ポルトガル方言ほうげん英語えいごばん
ルーマニア 標準ひょうじゅん文語ぶんご)ルーマニア ルーマニアにおけるアカデミア・ロムーナ英語えいごばん(ルーマニア) (ヨルグ・ヨルダン–アレクサンドル・ロセッティ言語げんごがく研究所けんきゅうじょつうじて)およびモルドバ共和きょうわこくにおけるモルドバ科学かがくアカデミー ルーマニア方言ほうげん英語えいごばん
セルビア・クロアチア 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅんセルビア・クロアチアボスニアの標準ひょうじゅんセルビア・クロアチアクロアチアの標準ひょうじゅんセルビア・クロアチアモンテネグロの標準ひょうじゅんセルビア・クロアチアセルビアの標準ひょうじゅんセルビア・クロアチア サラエボ大学だいがく英語えいごばんザグレブ大学だいがくモンテネグロ大学だいがくベオグラード大学だいがく; マティツァ・フルヴァツカ英語えいごばんおよびマティツァ・スルプスカ英語えいごばん みなみセルビア方言ほうげんトルラク方言ほうげん)および西にしクロアチア方言ほうげんカイ方言ほうげんおよびチャ方言ほうげん
スロベニア 標準ひょうじゅんスロベニア スロベニア芸術げいじゅつ科学かがくアカデミー スロベニア方言ほうげん英語えいごばんプレクムリェ・スロベニア英語えいごばんレジア方言ほうげん英語えいごばん
ソマリ 標準ひょうじゅんソマリ 地域ちいきソマリアカデミー英語えいごばん ソマリ語族ごぞく英語えいごばん
スペイン 複数ふくすう中心ちゅうしん標準ひょうじゅんスペイン英語えいごばん複数ふくすう中心ちゅうしんのアメリカしゅう標準ひょうじゅんスペイン英語えいごばんカナリア諸島かなりあしょとう標準ひょうじゅんスペイン英語えいごばん欧州おうしゅう標準ひょうじゅんスペイン英語えいごばん レアル・アカデミア・エスパニョーラスペインアカデミー連合れんごう英語えいごばん スペイン方言ほうげん変種へんしゅ英語えいごばん
スワヒリ 標準ひょうじゅんスワヒリザンジバル方言ほうげんKiungujaにもとづく) 領土りょうどあいだ言語げんご委員いいんかいスワヒリばん モンバサ方言ほうげんなど
スウェーデン 標準ひょうじゅんスウェーデン英語えいごばん スウェーデン評議ひょうぎかい英語えいごばん スウェーデンきょく英語えいごばん(Svenska språkbyrån) スウェーデン方言ほうげん英語えいごばん

かく言語げんごにおける標準ひょうじゅん[編集へんしゅう]

日本語にほんご[編集へんしゅう]

日本語にほんごにおいては、近世きんせい以前いぜん平安へいあん時代じだい京都きょうと貴族きぞくもとづく文語ぶんごたい標準ひょうじゅんてき書記しょき言語げんごとしてひろ通用つうようし、口頭こうとう言語げんごについても、江戸えど言葉ことば成熟せいじゅくする江戸えど時代じだい後期こうきまではきょう言葉ことば中央ちゅうおうであり、京都きょうと中心ちゅうしん新語しんご日本にっぽん各地かくち伝播でんぱしていったとされる[7]方言ほうげんしゅうけんろんアホ・バカ分布ぶんぷ参照さんしょう)。京都きょうと方言ほうげんがかつて中央ちゅうおうだった名残なごり現代げんだい共通きょうつうにものこっており、れいとして、古風こふう文体ぶんたいで「わしはっとるのじゃ」のような近世きんせい上方かみがたふう表現ひょうげん使つかわれること(老人ろうじん参照さんしょう[8]、「のこっており」「かんございます」「ありませ」などの文語ぶんご敬語けいご表現ひょうげん、「こわい」「しあさって」「梅雨つゆ(つゆ)」などの語彙ごいげられる。

明治維新めいじいしん標準ひょうじゅんはなかなかさだまらなかった。標準ひょうじゅんあんとしては以下いかのようなものがあった[9]

  • 古語こごあん
    • 古語こご=みやび言葉ことばもとにする(天皇てんのう使用しようしている言葉ことばでもある)
  • 現代げんだいあん
    • 西にしきょう鴨川かもがわのほとりの言葉ことばもとにする
    • ひがしきょう言葉ことばもとにする
    • 日本にっぽんこくちゅう言葉ことば調しらべて、人口じんこうてきもっとおおくのひともちいている言葉ことばもとにする

明治めいじ中期ちゅうきから昭和しょうわ前期ぜんきにかけて、おも東京とうきょうやま教養きょうようそう使用しようする言葉ことばやま言葉ことば)をもと標準ひょうじゅん整備せいびしようというこころみが推進すいしんされた[10][11]天皇てんのうおよ京都きょうと言葉ことばをベースにするあん有力ゆうりょくではあったが、明治めいじ初期しょき東京とうきょうやま地方ちほう出身しゅっしんわか官僚かんりょうたちの居住きょじゅうであり、天皇てんのうよりも社会しゃかいてき政治せいじてきちからった[9]。これに文壇ぶんだん言文げんぶん一致いっち運動うんどうおおきな影響えいきょうあたえて、「標準ひょうじゅん」とばれる言語げんご基礎きそきずかれた。なお、「標準ひょうじゅん」という用語ようご岡倉おかくら由三郎よしさぶろうによるStandard Language日本語にほんごやくである。官公庁かんこうちょう公式こうしき文書ぶんしょなどには、普通ふつうぶんおももちいられる。

明治維新めいじいしんからすうじゅうねんった1903ねんはつ国定こくてい教科書きょうかしょ尋常じんじょう小学しょうがく読本とくほん』が刊行かんこうされ、「東京とうきょう山手やまて教育きょういくある中流ちゅうりゅう家庭かてい言葉ことば」が標準ひょうじゅんとなっていった。1925ねんにラジオ放送ほうそうはじまり、方言ほうげん忌避きひつよまった[9]

だい大戦たいせん国家こっかてき営為えいいとしての標準ひょうじゅん政策せいさくおこなわれなくなり、各地かくち方言ほうげん見直みなおうごきがあらわれたり、国家こっか特定とくてい日本語にほんご標準ひょうじゅん規定きていすることに否定ひていてきかんがえがまれたりした[12]。そのようななか進駐軍しんちゅうぐんもちいた「Common Language」をもとに「(全国ぜんこく共通きょうつう」という用語ようご登場とうじょう[13]一部いちぶ識者しきしゃは「Common Language」をして普通ふつう解釈かいしゃくした論文ろんぶんる)、NHKなど一部いちぶでは「標準ひょうじゅん」が「共通きょうつう」にいいかえられるようになった。

現在げんざい日本にっぽんには標準ひょうじゅん規定きていする法律ほうりつ公的こうてき機関きかん存在そんざいしないが、一般いっぱんに「標準ひょうじゅん」とった場合ばあい日本にっぽん首都しゅとである東京とうきょう方言ほうげんから特定とくてい地域ちいき階層かいそうかたよ要素ようそ下町したまち地域ちいきられるシとヒの交替こうたいなど)をのぞいたものをすことがおおい。口頭こうとう言語げんごではアナウンサーのアクセントイントネーション標準ひょうじゅんてきとして認識にんしきされているが、時代じだいとも変化へんかしている。たとえば、「電車でんしゃ」のアクセントは従来じゅうらいンシャ」がただしいとされてきたが、「デンシャ」(太字ふとじたか発音はつおん)もひろがりつつあり、メディアやえき案内あんない放送ほうそうでも2とおりのアクセントが混在こんざいしている[14]

朝鮮ちょうせん[編集へんしゅう]

大韓民国だいかんみんこくでは、首都しゅとソウル方言ほうげんもと国立こくりつ国語こくごいんによって標準ひょうじゅんさだめられている(標準ひょうじゅん (大韓民国だいかんみんこく)参照さんしょう)。朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこくでは、首都しゅと平壌ぴょんやん方言ほうげんもとにした文化ぶんか標準ひょうじゅんとしてさだめているが、実際じっさいには文化ぶんかもソウル方言ほうげん土台どだいとなっている。

中国ちゅうごく[編集へんしゅう]

あきらでは官話かんわ方言ほうげん北方ほっぽう方言ほうげん)の一種いっしゅである南京なんきん官話かんわ官吏かんりあいだ標準ひょうじゅんとして使つかわれ、欧米おうべいからは「官僚かんりょう言葉ことば」として「マンダリン」とばれた。きよしになり首都しゅと南京なんきんから北京ぺきんに遷ると、標準ひょうじゅん南京なんきん官話かんわから北京ぺきん官話かんわわった。中華民国ちゅうかみんこく成立せいりつすると北京ぺきん官話かんわ近代きんだい白話はくわもとに「国語こくご」がさだめられた。「国語こくご」は中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでも「普通ふつうばなし」とえてがれ、簡体字かんたいじ導入どうにゅうなどをて、義務ぎむ教育きょういくやメディアなどでひろ使用しようされている。なお、普通ふつうばなし北京ぺきん発音はつおんなどがもとになっているため、普通ふつうばなしのことを「北京ぺきん」とぶことがあるが、普通ふつうばなし北京ぺきん市民しみん日常にちじょうてき使つか北京ぺきん完全かんぜんおなじではない。

台湾たいわん場合ばあい元々もともとは、台湾たいわん多数たすうめるかん民族みんぞく本省ほんしょうじん)は台湾たいわん中国ちゅうごく方言ほうげんきゃくなど)を母語ぼごとするものおおく、また台湾たいわん原住民げんじゅうみんあいだでは様々さまざま少数しょうすう言語げんご使用しようされていた。日本にっぽん統治とうち時代じだい台湾たいわんでは日本語にほんご公用こうようとなり民族みんぞくあいだ共通きょうつうとして機能きのうしたが、戦後せんご中華民国ちゅうかみんこく台湾たいわん上陸じょうりくすると北京ぺきんをベースとする「国語こくご」を標準ひょうじゅんとした。現在げんざいでは、標準ひょうじゅん中国語ちゅうごくご浸透しんとうしている。1980年代ねんだいまでは学校がっこうでの台湾たいわん使用しよう禁止きんししたり、メディアでの台湾たいわん使用しよう制限せいげんしたりしていた。そうした国策こくさく影響えいきょうにより、台湾たいわんはなせる台湾たいわんじんとく若年じゃくねんそうすくなくなっている。

英語えいご[編集へんしゅう]

イギリス英語えいごにおいて、標準ひょうじゅん英語えいご英語えいごばん(Standard English、SE)とばれる標準ひょうじゅんは、中世ちゅうせいイングランドのだい法官ほうかん裁判所さいばんしょ英語えいごばん英語えいご歴史れきしてきもとにしている[15]。17世紀せいきと18世紀せいきには、「上流じょうりゅう社会しゃかい規範きはんとしてこの標準ひょうじゅん確立かくりつ[16]口語こうご標準ひょうじゅんは、よい教育きょういく社会しゃかいてき名声めいせいのしるしであるとられるようになった[17]。しばしば容認ようにん発音はつおん(RP)のなまりと関連付かんれんづけられるものの、SEはいかなるなまりでもはなすことができる[18]。BBCのアナウンサーが使つか英語えいごが「英国えいこく標準ひょうじゅん英語えいご」と説明せつめいされることもある[19]

歴史れきしてき原理げんり」で記述きじゅつされているオックスフォード英語えいご辞典じてんには方言ほうげん数多かずおお記載きさいされている。方言ほうげんつづ統一とういつしようとしたのがサミュエル・ジョンソン1755ねん完成かんせいさせた『英語えいご辞典じてん』である。この辞書じしょ以降いこう、「方言ほうげん地位ちい急落きゅうらくした。それは言葉ことば基準きじゅんさだまり、文章ぶんしょうは’ただしく'くべきだという圧力あつりょくたかまっていったことと関係かんけいがあった(中略ちゅうりゃく発音はつおん取締とりしまりたい登場とうじょうした。ひきいるのはトマス・シェリダン英語えいごばんというアイルランド出身しゅっしんおとこだった」[20]言語げんご改革かいかく英語えいごばん運動うんどうさかんになった。19世紀せいきにはウェールズまるWelsh Notという「方言ほうげんさつ」も登場とうじょうした。正字せいじほうたいして英語えいごのfishをghotiとすべきとったされるジョージ・バーナード・ショー方言ほうげんとくに「コックニー」をテーマとする『ピグマリオン (戯曲ぎきょく)』をいた。

フランス語ふらんすご[編集へんしゅう]

ルイ13せい治下ちか1635ねん2がつ10日とおかアカデミー・フランセーズ宰相さいしょうリシュリューによって正式せいしき設立せつりつされた。当初とうしょ役割やくわりフランス語ふらんすご規則きそくてきだれにでも理解りかい可能かのう言語げんご純化じゅんかし、統一とういつすることだった。その目的もくてき達成たっせいするために辞書じしょ文法ぶんぽうしょ編纂へんさん重要じゅうよう任務にんむにし、アカデミー・フランセーズ辞典じてん作成さくせいされた。くわしくはフランスの言語げんご政策せいさく参照さんしょう

イタリア[編集へんしゅう]

イタリア半島はんとうには近代きんだいになるまで統一とういつ国家こっか成立せいりつしなかったため、様々さまざま方言ほうげん地方ちほう言語げんご存在そんざいする。ルネサンスフィレンツェがイタリア半島はんとう文芸ぶんげい活動かつどう中心ちゅうしんだったため、フィレンツェでおも知識ちしき階層かいそうもちいていたトスカーナかたり慣例かんれいてき標準ひょうじゅんじゅんじる地位ちいとなった。そのため、統一とういつ国家こっか成立せいりつローマ首都しゅとさだめられたが、ローマの方言ほうげん標準ひょうじゅんにはならなかった。ながらく他国たこくでいう標準ひょうじゅんばれるものは存在そんざいしなかったが、イタリア放送ほうそう協会きょうかい(RAI)によって標準ひょうじゅん定義ていぎされ、普及ふきゅうした。

スペイン[編集へんしゅう]

スペインスペイン本国ほんごくのみならず中南米ちゅうなんべい諸国しょこく米国べいこくなどでも幅広はばひろ使つかわれており、標準ひょうじゅん定義ていぎ簡単かんたんではない。特定とくてい国内こくないであればそのくに首都しゅと(スペインであればマドリードメキシコであればメキシコシティコロンビアであればボゴタアルゼンチンであればブエノスアイレス)の方言ほうげん標準ひょうじゅんとみなされる傾向けいこうにある一方いっぽうレアル・アカデミア・エスパニョーラはスペインもっと権威けんいのある辞書じしょ編纂へんさんしているが、フランス語ふらんすごにおけるパリのフランス語ふらんすごのように、スペインけん全体ぜんたいにおいて規範きはんてき地位ちい標準ひょうじゅん存在そんざいしない。また、米国べいこく制作せいさくされ中南米ちゅうなんべい諸国しょこくけに放送ほうそうされるテレビ番組ばんぐみあるいは映画えいがえなどでは、特定とくていくにだけで使つかわれる単語たんご中立ちゅうりつてき表現ひょうげんもちいる傾向けいこうつよい。とはいえ、方言ほうげんあいだでの比較的ひかくてきちいさく、通常つうじょう意思いし疎通そつうさまたげるほどではない。

ポルトガル[編集へんしゅう]

ポルトガル場合ばあいには、ポルトガルイベリアポルトガル)とブラジルブラジルポルトガル)の2つの変種へんしゅ標準ひょうじゅんとなっており、この両者りょうしゃあいだではとく発音はつおんめんで、そして語彙ごいめんでも相当そうとうちがいがある。欧州おうしゅうないではポルトガルがEU加盟かめいこくであることもあり、イベリアポルトガル標準ひょうじゅんとされる傾向けいこうつよく、1970年代ねんだいまでポルトガルの植民しょくみんであったアフリカ諸国しょこくでもイベリアポルトガル標準ひょうじゅんあつかいをけているが、とく南米なんべい諸国しょこく日本にっぽんにおいては、ブラジルの圧倒的あっとうてき存在そんざいかんからブラジルポルトガル標準ひょうじゅんとされている。ただ、ポルトガルけんではブラジル以外いがいであってもマスメディアや音楽おんがくなどをつうじてブラジルポルトガルしたしむ機会きかいおお一方いっぽうとくにブラジルではイベリアポルトガルせっする機会きかいすくないことから、イベリアポルトガルのききとりに支障ししょうきたひとすくなくない。

ノルウェー[編集へんしゅう]

ノルウェー標準ひょうじゅんにはブークモールニーノシュクの2種類しゅるい存在そんざいする。ブークモールは、ノルウェーデンマーク支配しはいにあった時代じだい成立せいりつしたもので、デンマーク文語ぶんご影響えいきょうつよけている。一方いっぽうニーノシュクは、デンマークからの独立どくりつ、デンマーク影響えいきょうける以前いぜんのノルウェー回帰かいきしようとしてつくられたもので、ノルウェー複数ふくすう方言ほうげん人工じんこうてきわされている。現在げんざい公文書こうぶんしょ放送ほうそうではブークモールとニーノシュクの両方りょうほう使つかわれているが、実際じっさいにはニーノシュクが標準ひょうじゅんとして使つかわれる場面ばめんすくなく、外国がいこくじんけのノルウェー教材きょうざいでも通常つうじょうブークモールが使つかわれている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

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  3. ^ Italian language. language-capitals.com
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  5. ^ Daneš, František (1988). “Herausbildung und Reform von Standardsprachen [Development and Reform of Standard Languages]”. In Ammon, Ulrich; Dittmar, Norbert; Mattheier, Klaus J. Sociolinguistics: An International Handbook of the Science of Language and Society II. Handbücher zur Sprach- und Kommunikationswissenschaft 3.2. Berlin & New York: Mouton de Gruyter. p. 1507. ISBN 3-11-011645-6. OCLC 639109991 
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  8. ^ かねすいさとし『ヴァーチャル日本語にほんご 役割やくわりなぞ』(2003ねん
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  12. ^ 標準ひょうじゅん設定せっていかく個人こじんがその設定せっていしゃであるべく、すくなくとも責任せきにんしゃであるべし」石黒いしぐろ魯平昭和しょうわ25ねん)『標準ひょうじゅん』、「関西かんさいべん基盤きばんとした標準ひょうじゅん存在そんざいみとめよ」うめ掉忠おっと昭和しょうわ29ねん)『だい標準ひょうじゅんろん』(真田さなだ信治しんじ(1987ねん)『標準ひょうじゅん成立せいりつ事情じじょう』PHP研究所けんきゅうじょより)
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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]