台湾たいわん地区ちく

台湾たいわん地区ちく（自由じゆう地区ちく）を構成こうせいする島々しまじまとその行政ぎょうせい区画くかく（南海なんかい諸島しょとうを除のぞく）

台湾たいわん地区ちく（たいわんちく）は、中華民国ちゅうかみんこく政府せいふが1955年ねんの大だい陳ひね島とう撤退てったい以降いこうも引ひき続つづき実効じっこう支配しはいしている地域ちいきを指さす、政治せいじ的てきな配慮はいりょを伴ともなった法律ほうりつ用語ようご。

自由じゆう地区ちく（じゆうちく）とも呼よばれるほか、同義語どうぎごとして台たい澎金馬ば（たいほうきんば）があり、国際こくさい的てきに使用しようされている（詳細しょうさいは下記かき参照さんしょう）。対義語たいぎごは、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの支配しはい地域ちいきを指さす中国ちゅうごく大陸たいりく（ちゅうごくたいりく）あるいは大陸たいりく地区ちく（たいりくちく）。

範囲はんい

中華民国ちゅうかみんこくの法律ほうりつである「台湾たいわん地区ちくと大陸たいりく地区ちくの人民じんみん関係かんけい条例じょうれい」第だい2条じょう第だい1項こうでは、台湾たいわん地区ちくを次つぎのように定義ていぎしている。

第だい二に条じょう（語法ごほうの定義ていぎ） 　　本ほん条例じょうれいの語法ごほうは以下いかの如ごとく定義ていぎする： 　　一いち、台湾たいわん地区ちく：台湾たいわん、澎湖、金かね門もん、馬うま祖そ及および政府せいふの統治とうち権けんが及およぶ場所ばしょのその他た地区ちくを指さす。 　　二に、大陸たいりく地区ちく：台湾たいわん地区ちく以外いがいの中華民国ちゅうかみんこくの領土りょうどを指さす。 　　三さん、（以下いか省略しょうりゃく）

この定義ていぎは、中華民国ちゅうかみんこく教育きょういく部ぶ編纂へんさんの国語こくご（標準ひょうじゅん中国語ちゅうごくご）辞典じてんである『教育きょういく部ぶ重じゅう編へん國語こくご辭典じてん修訂しゅうてい本ほん』にも掲載けいさいされている。

法律ほうりつ・辞典じてんに書かかれた「政府せいふの統治とうち権けんが及およぶ場所ばしょのその他た地区ちく」の具体ぐたい的てきな範囲はんいとしては、中国ちゅうごく大陸たいりく沿岸えんがんにある烏がらす坵島と、南海なんかい諸島しょとうの島々しまじま（東ひがし沙すな諸島しょとう、南沙なんさ諸島しょとうの太平おうひら島とうと中洲なかず島とう）が該当がいとうする。

なお、中華民国ちゅうかみんこくが領有りょうゆう権けんを主張しゅちょうしている釣魚台ちょうぎょだい列れつ嶼（尖閣諸島せんかくしょとう）は、行政ぎょうせい区分くぶん上うえ台湾たいわん省しょうに分類ぶんるいされているものの、日本にっぽんが実効じっこう支配しはいし中華民国ちゅうかみんこくの統治とうち権けんが及およんでいないため、定義ていぎ上じょう「台湾たいわん地区ちく」に該当がいとうしないとしている。台湾たいわん地区ちくの行政ぎょうせい区画くかくについては、台湾たいわんの行政ぎょうせい区分くぶんを参照さんしょうのこと。

沿革えんかく

交通こうつう部ぶ郵政ゆうせい総局そうきょく（今日きょうの中華ちゅうか郵政ゆうせい）が1957年ねん9月3日にちに発行はっこうした「保衛やすえ金きん馬ば」（金かね門もん・馬うま祖そを守まもり抜ぬこう）をテーマとした郵便ゆうびん切手きって。台湾たいわん地区ちく全体ぜんたいが描えがかれている。

1945年ねん9月、中国ちゅうごく大陸たいりくを統治とうちする中華民国ちゅうかみんこく国民こくみん政府せいふは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんに敗北はいぼくした大日本帝国だいにっぽんていこくから台湾たいわんと澎湖群島ぐんとうを接収せっしゅう（台湾たいわん光こう復ふく）し、台湾たいわん省しょうとして編入へんにゅうした。しかし、同どう時期じきに勃発ぼっぱつした第だい二に次じ国共こっきょう内戦ないせんの結果けっか、中華民国ちゅうかみんこく政府せいふは中国ちゅうごく大陸たいりくの支配しはい地域ちいきを相次あいついで喪失そうしつし、1949年ねん6月がつの首都しゅと・南京なんきん陥落かんらくと共ともに「中国ちゅうごく政府せいふ」としての機能きのうを果はたせなくなった。中華民国ちゅうかみんこく政府せいふは同年どうねん12月に中国ちゅうごく大陸たいりくから台湾たいわんへと避難ひなんした。しかし、遷台後ごも中華民国ちゅうかみんこくは実効じっこう支配しはい領域りょういきの喪失そうしつが止とまらず、1955年ねんの大だい陳ひね島とう撤退てったいでようやく現在げんざいの台湾たいわん地区ちくが実効じっこう統治とうち範囲はんいとして定さだまった。

中華民国ちゅうかみんこく政府せいふを台湾たいわんで再さい組織そしきする際さい、中華民国ちゅうかみんこくの実効じっこう支配しはい地域ちいきが劇的げきてきに縮小しゅくしょうしたにもかかわらず、蔣介石せきは基本きほん的てきに中国ちゅうごく大陸たいりくも支配しはいしていることを前提ぜんていとした組織そしきづくりを行おこなった。これは、国共こっきょう内戦ないせんが公式こうしきには終結しゅうけつしていない状況じょうきょう下かで、将来しょうらい的てきに「反はん政府せいふ組織そしき・共きょう匪（中共ちゅうきょう）」の「占領せんりょう地域ちいき」（淪陥区く）を武力ぶりょくで奪還だっかん（大陸たいりく反攻はんこう）する方針ほうしんを政府せいふが維持いじし続つづけたためで、政府せいふ機構きこうのあり方かたと実効じっこう統治とうち区域くいきの乖離かいり状態じょうたいは一時いちじ的てきなものとして問題もんだい視しされなかった。その後ご、アメリカの反対はんたいや中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの核兵器かくへいき保有ほゆうといった情勢じょうせいの変化へんかを受うけ、中華民国ちゅうかみんこく政府せいふは1972年ねんに大陸たいりく反攻はんこうの計画けいかくを撤廃てっぱいした。しかし、1970年代ねんだい以降いこうも中華民国ちゅうかみんこく政府せいふは政府せいふ組織そしきの修正しゅうせいを行おこなわなかったため、中華民国ちゅうかみんこくでは政府せいふ組織そしきを運営うんえいする上じょうで様々さまざまな矛盾むじゅんが蓄積ちくせきして行いき、蔣経国こく時代じだいの1980年代ねんだいには民主みんしゅ化かと共ともに理想りそうと現実げんじつの矛盾むじゅん解消かいしょうを求もとめる声こえが大おおきくなっていった。

1988年ねんに総統そうとうに就任しゅうにんした李り登輝とうきは、中華民国ちゅうかみんこく憲法けんぽうを修正しゅうせいして政府せいふ組織そしきを現状げんじょうの実効じっこう統治とうち範囲はんいに適てきしたものへ是正ぜせいすることにした。その際さい、中華民国ちゅうかみんこく政府せいふの実効じっこう統治とうち範囲はんいを指さす法律ほうりつ上じょうの適切てきせつな呼称こしょうが今いままで無なかったため、名目めいもく上じょうの中華民国ちゅうかみんこく全土ぜんどとは別べつに中華民国ちゅうかみんこく政府せいふの実効じっこう統治とうち区域くいきのみを指さす概念がいねんとして「自由じゆう地区ちく」が生うみ出だされ、1991年ねんの第だい1次じ憲法けんぽう修正しゅうせい時じに初はじめて法律ほうりつ上うえの用語ようごとして使用しようされた。更さらに、1992年ねんには自由じゆう地区ちくと同おなじ意味いみを持もつ「台湾たいわん地区ちく」が、「台湾たいわん地区ちくと大陸たいりく地区ちくの人民じんみん関係かんけい条例じょうれい」（中国ちゅうごく大陸たいりくとの民間みんかんの各種かくしゅ往来おうらいについて定さだめた法律ほうりつ）内ないにて使用しようされた。なお、単たんに「台湾たいわん」としなかったのは、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく側がわから「一ひとつの中国ちゅうごく」原則げんそくの放棄ほうきと受うけ取とられる恐おそれがあること、また中華民国ちゅうかみんこく政府せいふ側がわも、かつて中国ちゅうごく国民党こくみんとうが主張しゅちょうした法理ほうり独立どくりつにつながりかねないため、政治せいじ色しょく（台湾たいわん独立どくりつを想起そうきさせる表現ひょうげん）を無なくす意図いとがあったからである。

同義語どうぎごの使用しよう状じょう況きょう

現在げんざい、法律ほうりつや公文書こうぶんしょ等とうで使用しようされる言葉ことばには4種類しゅるいがある。

• 自由じゆう地区ちく - 中華民国ちゅうかみんこく憲法けんぽう増ぞう修おさむ条文じょうぶんにて主おもに使用しよう。
• 台湾たいわん地区ちく - 両りょう岸きし人民じんみん関係かんけい条例じょうれい等ひとし、両りょう岸きし関係かんけいを規定きていする法律ほうりつで主おもに使用しよう。また、民間みんかんにおいても比較的ひかくてき通用つうようする。
• 台たい澎金馬ば個別こべつ関税かんぜい領域りょういき - 一部いちぶの政府せいふ文献ぶんけんにて使用しようされる他ほか、国際こくさい組織そしきへ加入かにゅうする際さいに「中華ちゅうか台北たいぺい」と同様どうようの中華民国ちゅうかみんこくを指さす呼称こしょうとしても使用しよう。これは、中華民国ちゅうかみんこく実効じっこう統治とうち区域くいきの主要しゅような構成こうせい要素ようそである台湾たいわん本島ほんとう、澎湖諸島しょとう、金きむ門もん島とう、馬うま祖そ島とうの頭文字かしらもじに由来ゆらいする。
• 台たい閩地区ちく - 一部いちぶの政府せいふ文献ぶんけんにて使用しよう。これは、中華民国ちゅうかみんこくの行政ぎょうせい区域くいきである台湾たいわん省しょうと福建ふっけん省しょう（「閩」は中華ちゅうか圏けんで多用たようされる福建ふっけん省しょうの略称りゃくしょう）に由来ゆらいする。

認識にんしきの差異さい

「台湾たいわん地区ちく」の概念がいねんに対たいする認識にんしきは、政治せいじ的てき・思想しそう的てきな立場たちばの違ちがいによって差異さいがある。

• 中華民国ちゅうかみんこく：現在げんざいの中華民国ちゅうかみんこくにおける二に大だい政治せいじ陣営じんえいである泛藍連盟れんめいと泛緑連盟れんめいでは解釈かいしゃくが異ことなっている。
  • 泛藍連盟れんめい - 「一ひとつの中国ちゅうごく」は中華民国ちゅうかみんこくという発想はっそうのもと、憲法けんぽう第だい4条じょうが規定きていする「中華民国ちゅうかみんこく固有こゆうの領域りょういき」内ないが現状げんじょうでは「中華民国ちゅうかみんこく統治とうち区域くいき」と「中共ちゅうきょう統治とうち区域くいき」の2つに分わかれているとみなし、あくまでも「大陸たいりく地区ちく」との対比たいひ語ごとして使用しようする。「台湾たいわん地区ちく」は中華民国ちゅうかみんこくの領土りょうどを構成こうせいする中国ちゅうごくの一いち地域ちいきである。
  • 泛緑連盟れんめい - 中華民国ちゅうかみんこくと中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくは一辺いっぺん一いち国こくの関係かんけいという発想はっそうのもと、中華民国ちゅうかみんこくの領土りょうどは総統そうとうや立法院りっぽういん議員ぎいんを選出せんしゅつする中華民国ちゅうかみんこく政府せいふの実効じっこう統治とうち区域くいき（いわゆる台湾たいわん）のみとみなし、台湾たいわんをあえて「地区ちく」付つけで呼よぶ行為こういを台湾たいわんを軽視けいし・矮小わいしょう化かする行為こういとして否定ひてい的てきにみる。「台湾たいわん地区ちく」は即すなわち台湾たいわんであり、中華民国ちゅうかみんこくそのものである。
• 中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく：「一ひとつの中国ちゅうごく」は中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくという発想はっそうのもと、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく成立せいりつ後ごの中華民国ちゅうかみんこく政府せいふを非合法ひごうほうな存在そんざいとみなし、中国共産党ちゅうごくきょうさんとう率ひきいる統一とういつ戦線せんせんが「人民じんみん解放かいほう戦争せんそう」勝利しょうり後ごも国民党こくみんとう蔣介石せき派はの残党ざんとう勢力せいりょくから「解放かいほう」できていない地域ちいきとして使用しようする。「台湾たいわん地区ちく」は中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの領土りょうどを構成こうせいする中国ちゅうごくの一いち地域ちいきである。

関連かんれん項目こうもく

• 台湾たいわんの名称めいしょうの一覧いちらん