京 言葉
| |
| |
| |
ISO 639-3 | — |
歴史
[イメージ
[区分
[京都 市内 (戦後 に編入 された旧 郡部 を除 く) -進行 「-てる」。終 助詞 「ぜ」「で」の使用 少 ない。いわゆる京 言葉 (「どす」「おす」「やす」など)を使用 。- その
他 -進行 「-たる」あり。終 助詞 「ぜ」「で」あり。京都 市内 と比 べて荒 い。
中京 ことば -中京 区 を中心 として、室町 の問屋 街 などで話 されることば。西陣 の職人 ことば -西陣 の機屋 (西陣織 )の人々 のことば。祇園 の花街 ことば -祇園 を中心 とする花街 の舞妓 や芸妓 によって話 されることば。客 の前 など口頭 では都合 の悪 いやりとりをする際 には、簡易 的 な手話 のような「身振 り語 」も用 いられる。伝統 産業 語 -京 焼 ・京 友禅 ・京 扇子 といった伝統 工芸 の現場 で話 される職業 語 (業界 用語 )。
このほか、
発音
[母音
[その
- イ→エ:しらみ→しらめ、にんじん→ねんじん
- エ→イ:
前垂 れ→まいだれ、羽二重 →はぶたい - ウ→オ:うさぎ→おさぎ、たぬき→たのき、
室町 →もろまち
子音
[「さかい・さけ(
その
- [s]→[ʃ]:
鮭 →しゃけ - [m]→[b]:
蝉 →せび
その他
[「
アクセント
[-ました | ( |
|||
-はった | ( | |||
かがみ | かがみ かがみ かがみ |
かがみ | 2000 |
文法
[動詞
[いか- いこ-[21] |
いき- | いく | いく | (いきゃ) (いったら) |
いけ | |
で- | で- | でる | でる | (でりゃ) (でたら) |
でー | |
き- | き- | きる | きる | (きりゃ) (きたら) |
きー | |
カ |
き- こ- |
き- | くる | くる | (くりゃ) (きたら) |
きー こい |
し- せ- |
し- | する | する | (すりゃ) (したら) |
しー せー |
- ハ
行 (現代 仮名遣 いではア行 ・ワ行 )五 段 動詞 に「-た」「-て」が後続 する際 にウ音便 が起 こるが、2音節 語 以外 は短音 化 することが多 い[22]。またサ行 五 段 動詞 のイ音便 が「差 す」に限 って起 こる[22]。 活用 表 の命令 形 に加 えて、連用形 を用 いた「-なさい」に相当 する軽 い命令 表現 がある。女性 層 では後 ろに「よし」を付 けることがあるが、楳垣によると大正 末期 に川東 (鴨川 よりも東側 の地域 )から広 まった表現 で、元 は山科 あたりの言葉 だったかもしれないと推測 している[23]。また女性 層 では、共通 語 の「-てごらん」に相当 する「-とおみ」という命令 表現 もある(「-て御 見 」が変化 したもの)。例 :走 り(走 りなさい)例 :はよ行 きよし(早 く行 きなさい)[23]例 :見 とおみ(見 てごらん)
継続 には共通 語 と同 じく「雨 が降 ってる」のように「-てる」を使 うが、「降 っとる」のような「-とる」も使 う(男性 語 的 )[24]。南山城 地方 では「降 ったる」のように「-たる」を継続 に使 うところが多 いほか、宇治田原 町 や笠置 町 などでは「降 りよる」のように「-よる」を使 う[24]。京都 市 などでは「-たる」は結果 を表 し(楳垣は、短音 にならず「-たある」と言 うとしている[25])、「-よる」は動作 主 への軽 い卑蔑を表 す(男性 語 的 )[24]。この軽蔑 的 な「-よる」は「書 いてよる」のように「て」を介 して使 うこともある[26]。例 :あいついつでも悪 いことしよる[24](宇治田原 や笠置 などでは「悪 いことをしている」、京都 市 などでは「悪 いことをしやがる」という意味 )
否定 には助動詞 「-ん」「-へん」を使 う。「-へん」は五 段 動詞 では「行 かへん」のようにア段 に後続 し、その他 では連用形 に「や」を介 して後続 するが、「や」を介 さずに語幹 を長音 化 させるなどして後続 する形 もある(以下 のとおり)[27]。上 一 段 ・カ変 ・サ変 動詞 で現 れる「-ひん」は比較的 新 しい形 で、楳垣は1949年 に「近来 学童 の間 からミーヒン・キーヒン・シーヒンという形 が現 れ、追 々と勢力 を得 つゝある」と記録 している[27]。大阪 では五 段 動詞 で「行 けへん」のように「エ段 +へん」と言 うことがあり、「エ段 +へん」が不可能 を表 す京都 とはコミュニケーションギャップが生 じやすいとされるが、山城 にも通常 の否定 で「エ段 +へん」という形 を使 う地域 は存在 する(大阪 府 に近 い地域 と京都 市 の山間 部 各地 )[28]。下 一 段 (出 ない):でやへん、でーへん上 一 段 (見 ない):みやへん、みーへん(稀 )、みーひん- カ
変 (来 ない):きやへん、きーへん(稀 )、きーひん サ変 (しない):しやへん、せーへん、しーひん
意志 ・勧誘 には、五 段 動詞 では未然 形 (オ段 )を伸 ばし、一段 動詞 では未然 形 に「-よー」を付 けるが、短 く言 うことが多 い[29]。サ変 動詞 は「しょ(ー)」、カ変動 詞 は「こ(ー)」になる点 が共通 語 とは異 なる[30]。親 しみを含 んだ命令 を表 すことがある[30]。なお、共通 語 では「行 こう」が「行 くだろう」と同様 に推量 を表 すことがあるが、京 言葉 では推量 は「行 くやろ」のように「終止 形 +やろ」でのみ表 す[30]。可能 表現 は共通 語 と同 じく助動詞 「-れる」「-られる」を使 う[31]。五 段 動詞 において、大阪 では「行 ける」「行 かれへん」のように肯定 形 のみ可能 動詞 に移行 しているが、京都 では「行 ける」「行 けへん」のように肯定 形 ・否定 形 ともに可能 動詞 に移行 している[32]。不可能 を表 す場合 、「よー未然 +ん」というい方 もある。例 :よー走 らん
敬語
[- -はる:
京都 とその周辺 の最 も代表 的 な敬語 で、「なさる」が「なはる」を経 て変化 したものとされる[34]。五 段 動詞 では「書 かはる」のようにア段 に後続 し、その他 では「でやはる(出 る)」「きやはる(来 る)」「しやはる(する)」のように連用形 に「や」を介 して後続 する[35]。「はる」は五 段 活用 であるが、命令 形 はない[34](楳垣は男性 の親 しい間柄 で「そうしやはれ(そうしなさい)」のように言 うこともあると記録 している)[35]。「-はる」は京都 以外 の関西 各地 でも使 われるが、大阪 と比較 した場合 、「行 かはる(京都 )」「行 きはる(大阪 )」という形式 上 の違 いのほか、京都 の方 が日常 会話 での「-はる」の使用 率 が(特 に会話 の話題 に登場 する第三者 に対 して)高 く、大阪 では明確 に尊敬 語 として使 われるのに対 し、京都 では身内 ・目下 ・動物 などにも親 しみを込 めて使 われ、き手 に対 する丁寧 語 ・美化 語 も兼 ねるとされる[36]。例 えば1990年代 の調査 で、「父親 」「赤 ん坊 」を話題 にする際 に「-はる」を使 う割合 は、大阪 では男女 とも2割 程度 だったのに対 し、京都 では父親 に「-はる」を使 う者 は女性 9割 、男性 6割 、赤 ん坊 に「-はる」を使 う者 は女性 8割 、男性 でも4割 にのぼった[36]。例 :乗 って来 はるわ(乗 って来 られるよ)
- なはる:「する」の
尊敬 語 。「-なはれ」「-な(は)い」の形 で様々 な動詞 の命令 表現 にも使 うが、「-なはれ」は大阪 的 ない方 で京都 ではほとんど使 わない[35]。 - お
連用形 +やす:「はる」よりも敬意 の高 い敬語 表現 。「お行 きやさへん」(お行 きにならない)のように活用 させて使 うのは京都 市 とその周辺 に限 られるが、命令 表現 としては山城 ・口 丹波 一帯 で使 われ、「おやすみやす」「おいでやす」「ごめんやす」など「やす」を使 った挨拶 語 はさらに広範囲 で使 う[34]。相手 への確認 のための強調 として、「やっしゃ」とも。 - -といやす:「ておいやす」の
変形 。例 :しといやした(していらっしゃいました)
- お
連用形 +る:必 ずしも丁寧 とは限 らず、ごく親 しい感情 を込 めた表現 。楳垣によると、江戸 末期 から、音便 を使 わない「行 きて」「行 きた」のようない方 に「お」を冠 して使 うようになり、そこから「お行 きる」のような終止 形 が逆 成 されたものだという[37]。「お+連用形 」の後 ろに助詞 「な(いな)」を付 けて禁止 を表 したり、否定 助動詞 「-ん」+助詞 「か」「かい」「かいな」などを付 けて勧誘 や命令 を表 したり、否定 助動詞 「-ん」+助詞 「と」を付 けて条件 を表 したりもする[37]。以上 のうち、禁止 ・勧誘 ・命令 表現 の場合 は「お」を省略 することができる[37]。 - おす:「ある」の
丁寧 語 で、大阪 の「おま(す)」に相当 。形容詞 の後 ろにもつく。例 :誰 もおへん(誰 もいません)例 :おいしおすなぁ(美味 しいですねぇ)
- どす:
断定 の丁寧 語 で、京都 市 を中心 に口 丹波 から山城 の広範囲 で使 う[38]。「で+おす」が変化 したものとされる[39]。「どす」の活用 は共通 語 の「です」に似 るが、「でしょー」に当 たるい方 は「どしょー」ではなく「どっしゃろ(どすやろ)」[38]。「ことどす→こっとす」「へんのどす→へんのす」「どすのや→どんにゃ」のように前後 の語 によって発音 が変 わったり「ど」が省略 されたりすることもある[40]。否定 形 は「やおへん」と言 う[40]。「江戸 べらぼうに京 どすえ」という諺 があるように京 言葉 を代表 する表現 だが、現在 では高齢 層 や芸妓 など限 られた場面 でしか聞 かれない。
形容詞
[連用形 は「なごーなる(長 くなる)」「おしゅーなる(惜 しくなる)」「あつーなる(暑 くなる)」「おもーなる(重 くなる)」のようにウ音便 が起 こるが、語幹 がイのもの(シク活用 )は「おしーなる」のように終止 形 と同 じ形 で言 う傾向 がある(特 に「て」が続 く時 )[41]。「ない」が続 く時 は、シク活用 以外 でも連用形 が終止 形 と同 じ形 になることがあり、楳垣は1949年 時点 で「学童 用語 に近来 目立 って来 た」と指摘 している[41]。連用形 は短音 化 することがあり、特 に短音 化 した連用形 を繰 り返 して意味 を強調 する用法 (畳語 )は京 言葉 の特徴 である[41]。「はよーにたのんどいた」(早 くに頼 んでおいた)のように連用形 に「に」を続 けることもあるが、大阪 と違 ってシク活用 では「に」を続 けない[41](奥村 は、伏見 や山城 南西 部 では多少 見 られると指摘 している[42])。感嘆 文 では終止 形 語尾 が省略 され(語幹 用法 )、シク活用 では感嘆 文 以外 でも省略 が起 こることがある[41]。仮定 形 は「長 ければ→長 けりゃ/長 けら」のように「ば」を融合 させるが、通常 「長 かったら」「長 いんなら」「長 いんやったら」のようない方 で代用 する[41]。推量 に「長 かろう」のような形 はほとんど使 わず、動詞 と同様 、「長 いやろ」のように「終止 形 +やろ」で表 す[43]。
形容動詞 ・断定 辞
[形容動詞 語尾 および断定 の助動詞 には「や」を使 う[42]。否定 形 は「静 かやない」のような「やない」であるが、「ない」というい方 を避 けて「静 かやらへん」のような形 をよく使 う[42]。仮定 形 には「やったら」を使 うが、「なら」もある程度 使 う[42]。「えろー静 かなやな(大層 静 かなんだね)」のように、形容動詞 連体 形 「な」にさらに「や」を続 けることがある[44]。
助詞
[格 助詞 「を」「が」と係 助詞 「は」がよく省略 される[45]。「が」の省略 は「を」ほど多 くなく(特 に主語 が無生物 の場合 )、「が」の省略 が起 こる際 には、主語 の長音 化 や別 の助詞 「のん」が伴 うことが多 い[46]。- 「しか」の
用法 が共通 語 よりも広 く、「より以外 は」という意味 のほかにも、「よりも」という意味 [46]や「の方 が」という意味 [45]でも使 う。「しか」は「ほか」とも言 う[46]。 原因 ・理由 の接続 助詞 に「さかい」「よって」「し」があり、「さかい」は「はかい」「さけ」「はけ」と変化 させることも多 いが[45]、「はかい」「はけ」は「さけ」ほど多 くなく、特 に南山城 などではあまり見 られない[46]。「さかい/はかい/さけ/はけ」「よって」は後 ろに「に」を付 けて言 うこともある[46]。確定 逆接 の接続 助詞 に「けど」を使 うが、旧 愛宕 郡 や南山城 の一部 では「けんど」と言 う[46]。仮定 逆接 には「かて」を使 うが、京都 市 とその周辺 では「て」もかなり見 られる(共通 語 のように「って」とは言 わない)[46]。「かて」は「でさえ」「でも」を意味 する係 助詞 でもある[45]。副 助詞 「なりと」を「なと」と略 して共通 語 の「でも」の意味 で使 う[45]。並列 助詞 に「やら」を使 うほか[46]、不定 の副 助詞 「やら」を「や」と略 すことが多 い[45]。また、共通 語 の「か」に当 たる不定 の副 助詞 には「ぞ」を使 う[46]。疑問 の終 助詞 には一般 的 に「か」を使 い、ぞんざいな表現 として「け」も使 う(なお、口 丹波 では「け」はやや丁寧 な表現 とされる)[46]。南山城 地方 などでは目下 に対 する疑問 表現 に「や」(必 ず「や」でアクセントが下 がる)も使 う[46]。告知 の終 助詞 「ぜ」「ぞ」は「で」「ど」と言 うことが多 く、「ぞ/ど」よりも「ぜ/で」の方 がやや丁寧 とされるが、他 の山城 各地 と比 べて京都 市内 ではいずれも使用 が少 ない[46]。また他人 の疑問 や決定 を反駁 する終 助詞 として「がな」がある[45]。その後 「やん(か)」も使 われるようになったが、「〜なんだよ、それでね」という意味 で「やんかー」を使 う際 に、京都 と大阪 でい方 に違 いが生 じている[16](京都 では「ねん+やんかー」を「ねんかー」、「てん+やんかー」を「てんかー」と変化 させる)。例 :昨日 、梅田 に行 ってんかー(昨日 、梅田 に行 ったんだよ、それでね)(大阪 では「昨日 、梅田 に行 ってんやんかー」になる)[16]。
共通 語 の「よ」に当 たる終 助詞 に「え」と「わ」を使 う[46]。「わ」には「行 くわ」のように「わ」で下 がる場合 と「行 くわ」のように「わ」を高 く発音 する場合 があり、前者 は山城 だけでなく丹波 などでも広 く見 られるものの、後者 は山城 に限 られ、より丁寧 で柔 らかい[46]。間 投 助詞 としては「なー」を最 もよく使 い、やや丁寧 な場面 では「ねー」を使 う[46]。京都 市 とその周辺 の女性 層 では、相手 の関心 を強 く引 こうとする際 に「なー」を「なーへー」と言 う[46]。「なー」「ねー」は「なー、母 ちゃん」のように自立 語 としても使 う[46]。
会話 術
[婉曲
[語彙
[名詞
[- あめさん -
飴 。女性 語 。「お」は付 けない。[49] - おあげさん -
油揚 げ[49] - おいた - カマボコ。[50][49]
- おーさん -
托鉢 僧 。「おーのぼーさん」又 は「おーやはん」とも言 う。「法 」と唱 える声 が「おー」に聞 こえることから。[49] - おかちょー -
蚊帳 。[50][49] - おかぼ - カボチャ。
大聖寺 門跡 では「かぼ」とも言 う。[50][49] - おくどさん -
竃 (かまど)。かまどの神様 。[49] - おせな -
背中 。幼児 語 、女性 語 。[49] - おしたじ、むらさき -
醤油 。「むらさき」は特 に飲食 店 などで使 う。[50][49] - おちゃやの ばんとー - テントウムシ。
戦前 によく使 われた。[49] - おっさん -
和尚 。「おじさん」はおっさん。[49] - おつむ -
頭 。御所 言葉 だが、一般 でも児童 や婦人 が使 う。[49] - おねもじ - ネギ
- おばんざい -
普段 のおかず。[49] - およなが -
夜食 。[50][49] - およね -
米 [50] - かにここ -
赤子 の初 便 または臨終 の人 の便 。ぎりぎり、やっとこさという意味 の副詞 でもある。平成 元 年度 の時点 で、60代 の京都 市民 でも分 からないと答 える人 が多 くなっていた。[49] 東上 -東京 へ行 くこと。東京 行幸 以前 は、東京 へ行 くことを「東下 」、東京 を含 む京都 以外 の地方 へ行 くことを「下向 」と言 った。京都 に来 ることは「上京 」。
形容詞 ・形容動詞
[- こーとな -
地味 で上品 。質素 。「はんなり」と対照 的 な言葉 。[49] - ざんない - だらしない。くだらない。
物 を贈 る際 に「えらいざんないもんどすけど、お使 いやしとくれやす」のように謙遜 して言 う。[49]
副詞
[- えんばんと - あいにく。
折 あしく。宇治 ・城陽 ・南山城 では「えんばと」「えんがと」とも言 う。京北 では「ちょうど」という意味 で使 う。[49] - はんなり、はんなり -
陽気 で上品 な明 るさ。明 るくて物柔 らか。「花 」に状態 を表 す接尾 語 「り」を付 け、撥音 化 したもの。「はんなりした」という形 でよく使 う。[49] - まったり - とろんとした
口当 たり。重厚 な感 じの人 を形容 する際 にも使 う。[49]
慣用 表現
[- いけのはたの ずいき -
池 の端 の芋茎 。「いけず」のシャレ言葉 。女 の子 が遊 びで意地悪 された時 に「いーけのはーたのずいき」と茶化 してい返 す。[49] - いよっ、まっ、おわい - まぁお
入 り。西陣 において、信用 している仲 買 いに対 して問屋 が掛 ける言葉 。[49] - いりまへんか -
入 り用 ではありませんか。白川 女 が花 を売 り歩 く際 に「花 、いりまへんかー」と言 っていたほか、一般 の商家 でも使用 。[49] - おいでやす、おこしやす - いらっしゃい。「よーおこし」とも
言 う。「おこしやす」の方 が丁寧 で、最上級 の丁寧 語 では「おこしやしとくれやす」。[49] - おーきに - ありがとう。
尼 門跡 では「おーきに」を使 わず、「ありがとー」を食事 の前後 や挨拶 への返事 などに使 う。[49] - おきばりやす -
頑張 ってください。祇園 花街 では女将 が「そろそろ旦那 をお取 りなさい」と芸子 に言 う際 に「そろそろ おきばりやす」と言 う。[49] - おくたぶれさんどした -
仕事 を終 えて帰 る際 の祇園 花街 の挨拶 。現在 は「おつかれさんどした」と言 う。[49] - おくち べっぴん -
表面 的 には優雅 だが、裏 の意味 があるという京 言葉 の特性 をい表 した言葉 。[49] - おことーさんどす -
年末 、正月 準備 が忙 しくなる時 の挨拶 。大晦日 には「ご繁昌 で何 より」という意味 で使 う。現在 は祇園 花街 で12月13日 の事始 めの日 (12月13日 )に芸妓 が言 うが、以前 は室町 の商家 でも使 った。[49] - おしずかに -
食事 を人 に進 める際 に「ごゆっくり」という意味 を込 めて使 う。また、人 を送 り出 す際 に「何事 もないように」という意味 を込 めて使 う。[49] - おせんすになる -
縁談 がほぼまとまること。結納 前 に扇子 の交換 をするしきたりがある。[49] - おやかまっさん(どした) - お
邪魔 しました。辞去 の挨拶 。[49] - おやすみやす - おやすみなさい。[49]
- かんにんえ - ごめんね。
女性 語 。「かんにして」「かにんして」「かにしてや」「かんにしとくりゃっしゃ」とも言 う。祇園 では「かんにんどっせ」を多用 。[49] - ごめんやす - ごめんなさい。ごめんください。ちょっとすみません。
特 に丁寧 に言 うと「ごめんやしておくれやす」。[49] - どこいきどす - どこかへ
出 かける近所 の人 に対 して掛 ける挨拶 。「どこいきや」とも言 う。掛 けられた方 は「ちょっとそこまで」や「ちょっと」などと返 す。[49] - どなたさんも おさきどす - お
先 に失礼 いたします。医院 の待合室 などで、自分 の番 が済 んで帰 る際 、待 っている人 に掛 ける挨拶 。[49] - なかなか - いえいえ。
軽 くいなす時 の言葉 。[49] - はしじかどすけど -
奥 へ招 くほどではない客 を応対 する際 、玄関 のかまちや縁先 で「端近 なところですが」と言 って座布団 を進 める。[49] - はばかりさん - ご
苦労 さん。少 し世話 になった時 に言 う。[49]
例文
[設定 した文 を近畿 各地 の方言 に訳 してまとめた『近畿 方言 の総合 的 研究 』の「近畿 方言 文例 抄 」から、旧 山城 国 の範囲 の方言 を抜粋 する[51]。なお、読 みやすさのため、カタカナ表記 をひらがな表記 に改 めた。- おまえら
六 時 までに起 きなければ いけないよ。 - よくご
覧 これとそれと どちらが長 い。京都 市 :よーみてみ/みとーみ こえとそえと どっちが ながい。宇治田原 :よーみてみー こいつとそいつと どっちゃ ながい。中和 束 :よーみなはれ こいつとそいつと どっちゃが ながい。
去年 は行 かれなかったけれど今年 は是非 行 くつもりだ。京都 市 :きょねんわ いけへなんだけど ことしわ どしても いくつもりや。宇治田原 :きょねんわ いけへんだけど ことしわ きっと いくつもりや。中和 束 :きょねんわ いかれへなんだけど ことしわ きっと いくつもりや。
- このみかんは
酸 いから捨 てよう。とても食 べられるものか。京都 市 :このみかん すいさかい すてよ。どしても たべられへん。宇治田原 :このみかんわ すいさかい すてよ。とても たべられるもんかい。中和 束 :こんなみかん すいよって ほかそ。めったに たべられるもんか。
- おまえら
- 1964
年 に京都 市内 で記録 された当時 20代 の女性 2人 の会話 [52]。なお、読 みやすさのため、ロ ーマ字 表記 を漢字 ひらがな表記 に改 めたほか、誤記 等 を一部 修正 した。- A:
第 一 あんた今日 なーんで ものっすご長 いこと待 ってたんえ第 一 あなた今日 なぜ。ものすごく長 いこと待 ってたのよ。
- B:どこで
- どこで。
- A:
都 ホテルの上 で あの ロビーで都 ホテルの上 で。あの ロビーで
- B:いや あの
電話 したんや ほんで うちー 5時 きっちりに- いや あの
電話 を したのよ それで私 5時 きっかりに。
- いや あの
- A:おかしーな おかしーな
- おかしいな おかしいな。
- B:ほな
通 じひんかったんや- じゃあ
通 じなかったんだ。
- じゃあ
- A: ものすご
混線 してたやろ- ものすごく
混線 してたでしょ。
- ものすごく
- B:あー そうやー
- ああ そうだ。
- A:なんでやろ あれ
- なぜだろう あれ。
- B:
知 らん あそこ電話 代 はろーたはらへんの ちゃうんかて ゆーてんえ おーきーし分 からない。あそこ電話 代 を払 っておられないん じゃないのかって言 ったのよ大 きいし。
- A:そーや
待 っても待 っても あんた きーひんし もー忘 れてるし もー よっぽど電話 しよかなー思 たんやけど もー ちょっと待 ってみよ思 たら呼 び出 さはったん- そうだ。
待 っても待 っても あなたが来 ないから。もう忘 れてるから。もう よっぽど電話 しようかなあと思 ったんだけど もう ちょっと待 ってみようと思 ったら呼 び出 されたの。
- そうだ。
- B:あー そーか あたし あれ にへんめ? あんたの
電話 聞 いたん ふん- ああ そうか。
私 。あれ二 度目 ? あなたが電話 を聞 いたのは。うん。
- ああ そうか。
- A:ほんま わたし
呼 び出 されんの大嫌 いや本当 に私 は呼 び出 されるのが大嫌 いだ。
- B:かんにんえ
- ごめんね。
- A:かっこわるいやろ
格好 悪 いでしょ。
- A:
脚注
[- ^ a b
佐藤 編 (2009)、210-217頁 。 - ^ 楳垣(1949), 26
頁 。 - ^ 楳垣(1950)、32-34
頁 。 - ^
岸 江 信介 ・井上 文子 『京都 市 方言 の動態 』1997年 、近畿 方言 研究 会 。 - ^
方言 がかわいい「都道府県 」ランキング、gooランキング、2019年 12月12日 更新 、2020年 5月 20日 閲覧 。 - ^ 楳垣(1949), 4-5
頁 。 - ^ a b c
奥村 (1962), 262-267頁 。 - ^ 楳垣
編 (1962), 14頁 。 - ^ 楳垣
編 (1962), 428頁 。 - ^
井之口 ・堀井 (1992), 289-290頁 。 - ^
井之口 ・堀井 (1992), 290頁 。 - ^ 楳垣
編 (1962), 17-18頁 。 - ^ a b c d e f
奥村 (1962), 269-273頁 。 - ^ a b c d e f
井之口 ・堀井 (1992), 302-306頁 。 - ^ 楳垣(1949), 131-137
頁 。 - ^ a b c
松丸 (2018) - ^
中井 幸 比 古 『京阪 系 アクセント辞典 』、2002年 、勉 誠 出版 、52頁 。 - ^
奥村 (1962), 275-276頁 。 - ^ 楳垣(1949), 168
頁 。出典 では五 段 活用 だけ語幹 を省略 して書 き表 しているが、ここでは他 の活用 形 に合 わせて五 段 活用 にも語幹 を補 った。 - ^
出典 は歴史 的 仮名遣 いの関係 から「四 段 」としている。 - ^
出典 は歴史 的 仮名遣 いで「行 か(う)」としているが、引用 にあたって現代 仮名遣 いに改 めた。 - ^ a b c d e 楳垣(1949),170-171
頁 。 - ^ a b 楳垣(1950), 34
頁 。 - ^ a b c d
奥村 (1962), 288-289頁 。 - ^ 楳垣(1949), 177
頁 。 - ^ 楳垣(1949), 179
頁 。 - ^ a b 楳垣(1949), 185-187
頁 。 - ^
奥村 (1962), 283頁 。 - ^
奥村 (1962), 285頁 。 - ^ a b c d e 楳垣(1949), 183-185
頁 。 - ^
奥村 (1962), 280頁 。 - ^
真田 監修 (2018), 150-152 - ^ 楳垣(1950), 28-29
頁 。 - ^ a b c
奥村 (1962), 280-283頁 。 - ^ a b c d e f g h i 楳垣(1949), 191-194
頁 。 - ^ a b
岸 江 信介 「京阪 方言 における親愛 表現 構造 の枠組 み」『日本語 科学 』、国立 国語 研究所 、1998年 。 - ^ a b c d e f g h 楳垣(1949), 171-175
頁 。 - ^ a b
奥村 (1962), 287頁 。 - ^ a b c d 楳垣(1949), 190
頁 。 - ^ a b c d e f 楳垣(1950), 32
頁 。 - ^ a b c d e f g h i j k l m n 楳垣(1949), 151-165
頁 。 - ^ a b c d e
奥村 (1962), 277-279頁 。 - ^
奥村 (1962), 286頁 。 - ^ 楳垣(1949), 166
頁 。 - ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 楳垣(1949)
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w
奥村 (1962), 289-297頁 。 - ^
井之口 ・堀井 (1992), 296頁 。 - ^
井之口 ・堀井 (1992), 297頁 。 - ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an
堀井 ・井之口 (1992) - ^ a b c d e f
札 埜和男 『大阪 弁 「ほんまもん」講座 』2006年 、新潮社 、p122 - ^ 楳垣
編 (1962), 584-587頁 。 - ^
国立 国語 研究所 (上村 幸雄 、徳川 宗 賢 )「京都 市 方言 」『方言 録音 資料 シリーズ』第 11巻 、国立 国語 研究所 話 しことば研究 室 、1969年 。
参考 文献
[- 楳垣
実 『京 言葉 』高 桐 書院 、1949年 。旧 字 旧 仮名 表記 であるが、引用 等 する際 に表記 を一部 変 えた。 - 楳垣
実 「京都 方言 」『国語 学 』第 4輯26-38頁 、国語 学会 、1950年 。 - 楳垣
実 編 『近畿 方言 の総合 的 研究 』三省堂 、1962年 奥村 三雄 「京都 府 方言 」253-300頁
寿 岳 章子 『暮 らしの京 ことば』朝日新聞社 、1979年 木村 恭 造 『京 ことばの生活 』教育 出版 センター、1983年 井之口 有一 ・堀井 令 以知『京 ことば辞典 』東京 堂 出版 、1992年 、ISBN 4-490-10305-0加納 進 『京 ことば玉手箱 』ユニプラン、1993年 、ISBN 4-89704-017-5大淵 幸治 『丁寧 なほど、おそろしい「京 ことば」の人間 関係 学 』祥伝社 、2000年 、ISBN 4-396-61116-1佐藤 亮一 編 『都道府県 別 全国 方言 辞典 CD付 き』三省堂 、2009年 寺島 浩子 ・古川 悠 「京都 府 」
真田 信治 監修 『関西 弁 事典 』ひつじ書房 、2018年 松丸 真 大 「京都 府 の方言 概説 」54-64頁
関連 項目
[外部 リンク
[方言 録音 資料 -国立 国語 研究所 。1964年 に録音 された京都 市 の方言 音声 を公開 している。日本 のふるさとことば集成 〜近畿 〜 -国立 国語 研究所 。1983年 に録音 された京都 市 の方言 音声 を一部 公開 している。方言 ・音声 研究 会 -京都 の方言 に関 する研究 論文 を多数 公開 。京 言葉 -上記 研究 会 への寄稿 経験 を持 つ京 言葉 研究 家 によるサイト。京 ことばの会 京 ことばをき取 ろう - ウェイバックマシン(2018年 12月6日 アーカイブ分 )(京都 市 産業 観光 局 観光 MICE推進 室 )京 ことば - ウェイバックマシン(1997年 7月 10日 アーカイブ分 )(京都 新聞 )京 ことばニュース(FM79.7京都 三条 ラジオカフェ)京 ことば源氏物語