江 州 弁
概要 [編集 ]
方言 区画 [編集 ]
湖東 地方 湖西 地方 湖南 地方 湖北 地方
なお、
での | |||||||||
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A | B | C | |||||||
( |
|||||||||
そ の |
|||||||||
そ の |
|||||||||
音声 [編集 ]
- その
他 - ワ
行 音 に続 く語頭 のイがユとなることがある。「鰯 →ユわし」「言 わん→ユわん」「岩 →ユわ」など。 湖東 から湖北 にかけて、ツァ・ツォが促音 とともに現 れることがある。「御馳走 →ごッツォ」「お父 さん→おとッツァん」「鰹 →かッツォ」など。特定 の語彙 で口蓋 化 ・有 声 化 ・無声 化 が起 こることがある。「さぼてん→シャぼてん」「草履 →ジョうり」「洗濯 →せんダく」「とかげ→とかケ」など。湖北 から湖東 にかけての一部 で、ダ行 音 が無声 化 することがある。「仏壇 →ぶっタん」「鉄道 →てっト」「2時 間 →にチかん」など。濁音 ・鼻音 の前 で撥音 が添加 されることがある。「ごぼう→ごンぼ」「鳶 →とンび」「昨日 →きンのー/きンにょ」など。語 中 や語尾 で撥音 化 や撥音 の省略 が起 こることがある。「小刀 →こがたン」「幽霊 →ゆーれン」「甲良 町 在士 →ざンじ」など。清音 だけでなく、濁音 の前 でも促音 が添加 されることがある(特 に湖南 )。「手伝 う→てッたう」「鍛冶屋 →かッじゃ」「有 るぞ→あッど」など。北陸 方言 に特徴 的 な間 投 イントネーションが湖北 ・湖西 の一部 でも聞 かれる。
- ワ
アクセント[編集 ]
榑ヶ |
||||||||||
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1 |
えぇ(が) | |||||||||
けぇ(が) | けぇ(が) | けぇ(が) | けぇ、けぇが | けぇ(が) | けぇ(が) | けぇ(が) | ||||
えぇ、えぇが | えぇ(が) | えぇ、えが | えぇ(が) | |||||||
2 |
あめ(が) ※ | |||||||||
いし(が) ※ |
いしぃ、いしが | いし、いしが ※「 |
いし(が) | |||||||
あと、あとが | あと(が) | あと(が) | あと(が) ※「 |
あと、あとが ※「 |
あと、あとが | あと(が) ※「 | ||||
あかぁ、あかが | あか、あかが | あかぁ、あかが | あか(が) ※「 |
あかぁ、あかが | あか、あかが | |||||
2 |
○○ | ○○ | ○○ | ○○ | ○○ | |||||
○○ | ○○ ※「 |
○○ぅ | ○○ | ○○ | ||||||
○○ | ○○ | ○○ | ○○ | |||||||
3 |
○○○ | ○○○ | ○○○ | |||||||
○○○ | ○○○ | ○○○ ※「 |
○○○ | ○○○ ※「 | ||||||
○○○[ |
○○○ | ○○○ | ○○○ | |||||||
○○○ | ○○○ | ○○○ | ○○○ | |||||||
○○○ | 「 「 ※「 |
○○○ | 「 「 |
「 その |
「 「 |
○○○ | ||||
4 |
○○○○ | ・○○○○( ・○○○○( ・○○○○( |
○○○○ | ○○○○ | ○○○○ | ○○○○ | ○○○○ | |||
「 その |
○○○○ | |||||||||
○○○○ | ○○○○ | ○○○○ | ||||||||
2 |
○○ | ○○ | ○○ | ○○ | ○○ | ○○ | ○○ | |||
3 |
○○○ | ○○○ ※「 |
○○○ | ○○○ | ○○○ | ○○○ | ||||
4 |
○○○○ | ○○○○ ※ |
○○○○ | ○○○○ | ○○○○ |
表現 [編集 ]
活用 など[編集 ]
動詞
特殊 活用 は「おます」「おす」「わす」の3語 (「#待遇 」も参照 )。「借 る」「足 る」「染 む」などは五 段 活用 の形 を比較的 保 っている。また「蹴 る」の下 一 段 活用 が「けます」「け合 う」など限 られた用法 で残 っており、旧 朽木 村 など一部 地域 の高齢 層 では「死 ぬる」のようなナ変 活用 も残 る。- 「
言 うた」「買 うて」のようなア・ワ行 五 段 動詞 の連用形 ウ音便 は江 州 弁 でも盛 んである。3音節 語 では「思 うた→おもた」「笑 うて→わろて」のように音便 を短音 化 することが多 い。 一部 の高齢 層 では、中世 ・近世 に盛 んだった「落 といた」「貸 いてくれ」のようなサ行 五 段 動詞 の連用形 イ音便 を現在 も用 いる。また、湖東 から湖南 にかけて、サ行 五 段 動詞 の連用形 が「落 とイサ」「貸 イセくれ」と特殊 な音 変化 を起 こすことがある。同様 の音 変化 は「明日 →あイサ」「あの人 →あのシと→あのイソ」のように特定 の語彙 でも起 こる。近畿 地方 の限 られた地域 にのみ点在 する、全国 的 にも珍 しい音 変化 である。
よま-ん | よも-(ー) | よみ-ます | よん-だ | よむ | よみゃ(ー) | よめ | ||
み-ん | み-よ(ー) | み-ます | みる | みりゃ(ー) | みよ、みい | |||
ね-ん | ね-よ(ー) | ね-ます | ねる | ねりゃ(ー) | ねよ、ねえ | |||
カ |
こ-ん、き-やはる | こ-(ー)、こ-よ(ー) | き-ます | くる | くりゃ(ー) | こい | ||
する | せ-ん、さ-す、し-やはる | しょ-(ー)、し-よ(ー) | し-ます | する | すりゃ(ー) | せよ、せー | ||
おます | おませ-ん、おまへ-ん | おまし-た | おます | おましゃ※ | ||||
おす | おせ-ん、おへ-ん | おし-た | おす | おしゃ※ | ||||
わす | わせ-ん | わし-た | わす | わしゃ※ |
- ※は
稀 な用法 。
形容詞
特殊 活用 は「無 い」「良 い」「憂 い」の3語 。京都 と同様 、連用形 でウ音便 があり、詠嘆 には「あー、こわー」「あっつー!」のような語幹 用法 と「さっむい寒 い」「さっむ寒 い」のような畳語 を多用 する。「さびしない/さぶしない(淋 しい)」「いとしげない(愛 おしい)[注 10]」のような一見 否定 形 に思 える形容詞 がいくつかあるが、これは「せわしない」などの「ない」に類 するものである。
あかかろ-(ー) | あかかっ-た | あこ(ー)-て | あかい | あかけりゃ(ー)、あかけら | ||
ほしかろ-(ー) | ほしかっ-た | ほしゅ(ー)て、ほし(ー)て | ほしい | ほしけりゃ(ー)、ほしけら | ||
なかろ-(ー) | なかっ-た | のー-て | ない | なけりゃ(ー)、なけら | ||
よかろ-(ー) | よかっ-た | よー-て | よい、ええ | よけりゃ(ー)、よけら | ||
うーかろ-(ー) | うーかっ-た | うー-て | うい | うーけりゃ(ー)、うーけら |
形容動詞
終止 形 の「だ」が「や/じゃ」に換 わるほか、「いつも達者 な(=達者 だなあ)」のような軽 い詠嘆 を表 す連体 終止 法 がある。「静 かやのに」と「静 かなのに」の併用 など、終止 形 と連体 形 の使 い分 けが不 明確 な場合 がある。
しずかやろ-(ー) | しずか-で しずか-に |
しずかやっ-た | しずかや | しずかな | しずかなら |
存在 動詞 [編集 ]
アスペクト[編集 ]
待遇 [編集 ]
- お(
連用 +)やす
最 も上品 で敬意 の高 い尊敬 語 。湖東 ・湖北 では語頭 の「お」を省略 することがある。旧 今津 町 では「読 みやすか→読 めすけ」のような変形 もある。全 県 で丁寧 な命令 表現 や挨拶 語 に多用 され、働 いている人 には「おきばりやす」、他家 を訪 れた際 には「ごめんやす」、それに対 して「おいでやす」、夕暮 れ時 に帰 り仕度 をする人 には「おしまいやす」、仕事 を終 え家路 につく人 や床 につく人 には「おやすみやす」、というように「-やす」は滋賀 県 の言語 文化 に欠 かせない言葉 であった[14]。「読 んでやす」のように補助 動詞 としても用 いる(「-ていやす」の略 )。
- ござる
- 「いる」「
来 る」の尊敬 語 。現在 では主 に高齢 層 が古風 な表現 として用 いる。「読 んでござる」のように補助 動詞 としても用 いる。
- わす、おます、おす
- 「わす」は「おわす」の
転 で、「来 る」の尊敬 語 。下 一 段 形 「わせる」とも。「おます」と「おす」は「ある」の丁寧 語 で、共通 語 の「ございます」と同様 、「よろしゅーおます/おす」のように形容詞 を丁寧 に言 ったり、「ここでおます/おす」のように丁寧 な断定 を表 したりする。「おます」は湖南 ・湖東 、「おす」は湖北 に多 い。いずれも衰退 しつつあり、特 に「わす」は高齢 層 でもほとんど聞 かれなくなっている。
- (
連用 +)ます
丁寧 語 。推量 形 は「-ますやろ/まっしゃろ」とし、意志 形 「-ましょ(ー)」は「-まひょ(ー)」となることがある。
- (
連用 +)なはる
- 「なさる」の
転 。命令 形 には「-なされ/なはい/ない」の3種類 があり、「-ない」には柔 らかで打 ち解 けたニュアンスがある。「読 んでなはる」のように補助 動詞 としても用 いる(「-ていなはる」の略 )。
- (
五 段 未然 +)はる/(その他 未然 +)やはる
- 「
読 みなはる→読 みゃはる→読 まはる」の転 。かつてはくだけた尊敬 語 とされていた[注 11]が、「-なはる」や「-やす」が衰退 した現在 では最 も一般 的 な尊敬 語 となっており、全 地方 の全 世代 で多用 する。同輩 以上 への親愛 語 のように用 いることもあり、特 に大津 市 中心 部 では尊敬 語 ・親愛 語 ともに「-はる/やはる」で済 ませる傾向 がある(京都 的 )。現在 は五 段 以外 も「未然 +やはる」から「未然 +はる」に移 りつつあり(例 :しやはる→しはる、来 やはる→きはる、見 やはる→見 はる)、湖南 の都市 部 では大阪 のように「五 段 連用 +はる」という形 も聞 かれる。「読 んではる/やはる」のように補助 動詞 としても用 い(「-ていやはる」の略 )、湖南 ・湖西 では京都 のように「読 んではる→読 んだはる」とすることがある。
- (
五 段 未然 +)ーる/(その他 未然 +)やーる
湖北 ・湖東 ・甲賀 では「-はる/やはる」を「-ーる/やーる」と変化 させることがあり、湖東 ではさらに「-る/やる」と短音 化 させることが多 い。サ変 は「しゃーる」や「さーる」、カ変 は「きゃーる」、また「居 る」は「やーる」になる。「読 んでやーる」のように補助 動詞 としても用 いる(「-ていやーる」の略 )。
- (
五 段 未然 +)る/(その他 未然 +)らる
全 県 で農村 部 を中心 に聞 かれるが、特 に湖南 ・湖西 で用 いるやや古風 な尊敬 語 ・親愛 語 。古語 「-る/らる」が五 段 活用 化 したものとされる。湖北 には下 一 段 形 もある。「読 んでらる」のように補助 動詞 としても用 いる(「-ていらる」の略 )。
- (
五 段 未然 +)れる/(その他 未然 +)られる
農村 部 を中心 に、共通 語 にはない特殊 な用法 がある。話 し手 にとって話 中 人物 が親 しい目上 (父親 や夫 、年上 の友人 など)で、かつ話 し手 とき手 の間 に改 まった感 じがある場合 において、「(夫 は)さっきまで戻 ってきられましたが、すぐまた余所 へ行 かれまして」のような身内 敬語 の用法 があり、湖東 ・湖南 の一部 では「(学校 の先生 に対 して)うちの子 が学校 で悪 いことをしられましてすみまへん」のように自分 の子供 について話 す際 にも用 いる。これらは話 中 人物 への敬意 というよりも、文中 に改 まった雰囲気 の「-れる/られる」を交 えることでき手 への敬意 を込 めているのである。
- (
五 段 未然 +)っさる/(その他 未然 +)さっさる
全 県 に点在 するが、特 に伊賀 に隣接 する甲賀 (とりわけ旧 甲南 町 ・甲賀 町 )で用 いる尊敬 語 。「-っしゃる/さっしゃる」とも。もとは近世 上方 語 で、共通 語 の「いらっしゃる」の「っしゃる」と同 源 である。
- みえる
米原 市 で「読 んでみえる」のように補助 動詞 として用 いる尊敬 語 。東海 地方 的 な表現 。
- (
五 段 未然 +)んす/(その他 未然 +)やんす
全 県 に点在 するが、特 に湖北 と湖西 で用 いる同輩 以下 への親愛 語 。もとは近世 上方 の尊敬 語 で、現在 も高齢 層 では軽 い尊敬 語 として用 いることがある。サ変 は「しゃんす」や「さんす(やや田舎 風 )」、カ変 は「きゃんす」や「こんす」や「ごんす(やや敬意 が高 く、田舎 風 )」、また「居 る」は「やんす」となる。長浜 市 中心 部 などで「五 段 連用 +やんす」、旧 新旭 町 では「読 まんす→読 めんす」、旧 朽木 村 では「しやんす→しえんす」とすることがある。「読 んでやんす」のように補助 動詞 としても用 い(「-ていやんす」の略 )、湖西 の一部 では「読 んでやんす→読 んだんす」とすることがある。湖北 弁 の代表 的 な表現 として知 られ、公共 物 の名称 などにもよく利用 される[15]。時代 劇 などで耳 にする「あっしは○○でやんす」のような丁寧 語 としての用法 はない。
- (
連用 +)やる
湖東 や甲賀 で用 いる同輩 以下 への親愛 語 。「ある」の転 で、元 は近世 上方 の尊敬 語 。「-よ(ー)る」と対照 的 に、女性 が多用 する。中年 層 以上 では、ア行 ・ワ行 を除 く五 段 動詞 のあとでは「読 みやる→読 みゃる」と拗音 化 させることが多 い。「-やある」の短音 形 「-やる」と同形 になることがあるが、アクセントによる区別 があり、例 えば「見 やる」の場合 、「見 やる」と発音 すると親愛 語 「-やる」、「見 やる」と発音 すると尊敬 語 「-やる」となる。「読 んでやる」のように補助 動詞 としても用 いる(「-ていやる」の略 )。
- (
連用 +)よ(ー)る
軽侮 語 。「おる」の転 で、軽蔑 の意 は比較的 軽 く、男性 層 では親愛 語 や打 ちくだけた語 としても多用 する。サ変 は「しょーる」、カ変 は「きょーる」、「居 る」は「よーる」となることがあるほか、五 段 に接続 する場合 、「書 きよる→書 っきょる」「飛 びよる→飛 っびょる/飛 んびょる」などと変形 することがあり、湖北 ではさらに「書 っこる」「飛 っぼる/飛 んぼる」と直音 化 する。「読 んでよ(ー)る」のように補助 動詞 としても用 いる(「-ていよ(ー)る」の略 )。
- (
連用 +)やがる、(連用 +)くさる、(連用 +)さらす
軽侮 語 。「読 んでやがる」「読 んでくさる」「読 んでさらす」のように補助 動詞 としても用 いる。また「さらす」は単独 で「する」の軽侮 語 を表 す。湖北 などでは「-やがる」のさらに敵意 ある表現 として「-やあんぐ」がある[16]。
- けつかる
- 「いる」の
軽侮 語 。軽蔑 ・罵倒 の意 が極 めて強 く、日常 ではあまり用 いない。「読 んでけつかる」のように補助 動詞 としても用 いる。湖東 では「けっこなる」とも[17]。
断定 [編集 ]
打 消 [編集 ]
上 一 段 ・・・連用 (+長音 )+ひん (例 )起 きやへん→起 きひん、見 やへん→見 いひん、居 やへん→居 いひん下 一 段 ・・・連用 (+長音 )+へん (例 )食 べやへん→食 べへん、寝 やへん→寝 えへん、出 やへん→出 えへんサ変 ・・・しやへん→せえへん/しいひん- カ
変 ・・・きやへん→こおへん[注 12]/きいひん
「-ん」の
命令 ・禁止 [編集 ]
授受 [編集 ]
助詞 [編集 ]
格 助詞 京阪 と同様 、「が」「と」「へ」「を」などは省略 することが多 い。また多賀 町 保月 では「あが家 」のように所有 格 「が/がの」を用 いる。接続 助詞 原因 ・理由 には「さかい(に)」を多用 し、大阪 では死語 となりつつある現在 も、滋賀 県 では比較的 勢力 を保 っている。「さけ(に)」「はかい(に)」「はけ(に)」などとも(「さけ(に)」は湖西 、「はかい(に)」は湖北 に多 い傾向 がある)。加 えて湖北 ・湖東 ・甲賀 では「で」を併用 する。「で」は近世 に多用 された表現 で、現代 では滋賀 県 のほかに福井 県 ・三重 県 ・東海 地方 などで盛 ん。大阪 的 な「よって(に)」、京都 的 な「し」を用 いることもあり、特 に「し」は湖南 ・湖東 などで女性 が終 助詞 的 に余情 を含 ませて多用 する。逆接 としては、共通 語 「ても」に当 たる「かて」(「でさえ」の意 で副 助詞 としても用 いる)があるほか、「けれど」は「けど」や「けんど」と転 ずる。「けど」と「けんど」は接続詞 としても用 いる。湖東 ・湖北 には東海 地方 と共通 して「とさいが」がある(「と最後 」の転 か)。接続 助詞 「と」を強 めたもので、「さいが」自体 には特 に意味 はない。「とさい」や「とさぇが」「とさぇご」「とさいな/とさぇにゃ」などとも。 (例 )そうするとさいが。 こう暑 いとさいが、やる気 が出 んわいな。- このほか、「
喋 りもって飯 食 うな」のような「ながら」に当 たる「もって(以 て)」、「行 きしなに会 うた」のような「がけに」「途中 に」に当 たる「しな/しま/し」、「どうなっとせー(=どうにでも好 きにしろ)」のような「なりと」の転 「なっと」を多用 する。 副 助詞 - 「どこぞ」「
誰 ぞ」のような疑問 詞 を強 める「ぞ」を全 県 的 に用 いる。また湖北 ・湖東 ・甲賀 を中心 に「くらい」を「当然 ……とも」または「……とする(なら)」の意 で、「そんなもん、誰 かてできるくらい」「誰 かてできるくらいなら苦労 せんわ」のように用 いる。また甲賀 などでは係 り結 び「こそあれ」が「親 ならこされ(=親 ならばこそ)」「それこされ(=それだよそれ)」など、「こされ」の形 で慣用 的 に残 されている。 終 助詞 京阪 と同様 「ぜ/で」「ぞ/ど(主 に男性 )」「がな」「わ」「ねや/ねん/ね/にゃ」「やんか/やんけ(主 に男性 )/やん」「え(主 に女性 )」を多用 するが、近江八幡 市 など県内 各地 で「ぞ」を「じょ」とすることがあり、また「がな」に相当 する表現 として「が」(全 県 的 )や「がね」(湖北 )、「がえ」(高島 市 )などがある。そのほか、特徴 的 な終 助詞 には次 のものがある。
- ほん
柔 らかな念 押 しや主張 、意志 の強調 を表 す。彦根 を中心 に、湖東 から湖北 ・旧 マキノ町 にかけて用 いる。副詞 「本 に」から転 じたとされ、多賀 町 保月 には「ほに」という形 がある。ある程度 の確証 や自信 が伴 う表現 であり、不 確定 ・不 確実 な主張 や意志 には用 いない。間 投 助詞 「な」を後 ろに付 けることもある。 (例 )えーほんえーほん(=いいよいいよ、いいっていいって)。明日 は晴 れるほん(=明日 はきっと晴 れるよ)。 そろそろ行 ってこほんな(=そろそろ行 ってこようかね)。
- さ
西日本 各地 で疑問 ・(連用 )命令 ・助詞 などを強 めるのに「いな」「いや」(エ音 に続 く場合 は「えな」「えや」)を用 いるが、湖南 ・甲賀 ・湖東 などではそれに加 えて「いさ」(エ音 に続 く場合 は「えさ」)も用 いる。「いな」「いや」に比 べると女性 的 な響 きがある。甲賀 などでは三重 県 のように「さ」単独 や「わさ」の形 で強調 の終 助詞 としても用 いる。 (例 )何 いさー(=何 よ)。読 んでーさ(=読 んでよ)。 はよしーさー(=早 くしなさいってば)。 ええやんかいさ(=いいじゃないのよ)。行 くわさ(=行 くよ)。
- にー
相手 に同意 を求 め、誘 う表現 。三重 県 と共通 する表現 であり、伊賀 に隣接 する甲賀 で用 いる。 (例 )行 こにー(=行 こうよ)。 どーしょーにー(=どうしようか)。
- け
疑問 ・反語 を表 す。「か」に比 べて粗野 な表現 で、主 に湖北 以外 の男性 が親 しい間柄 での会話 で用 いる。旧 朽木 村 など湖西 の一部 では「こ」とも。「かい」または「かえ」の転 。なお、反語 表現 において、「かい(な/や)」および「け」は終止 形 に接続 する場合 と未然 形 に接続 する場合 がある。未然 形 接続 の例 としては、「あろかい(=あるだろうか、いやないだろう)」や「あこかい/あっかい/あっけ(=あくだろうか、いやアカンだろう)」など。
丁寧 語 +終 助詞
- 「どす」「です」「ます」「おます」「おす」に
特定 の終 助詞 が続 く場合 、「どすえ→どっせ」「ですさかい→でっさかい」「ますな→まんな」「おますわ→おまっさ」のように促音 化 ・撥音 化 することがある。大阪 弁 と違 って疑問 の終 助詞 「か」での促音 化 (例 :さいですか→さいでっか)は起 こりにくい。また大阪 弁 では「どないだす→どないだ」「これでおます→これでおま」のように「す」を脱落 させることがあるが、江 州 弁 では普通 脱落 させない。 間 投 助詞 京阪 と同様 「な(ー)」を多用 し、現在 は共通 語 の「ね(ー)」も一般 的 である。「のー」を用 いることもあり(主 に男性 )、特 に湖西 で盛 んである。旧 野洲 郡 などでは「のー」を「にょー」とも言 う。湖北 では「な(ー)」や「ね(ー)」の前 に撥音 が添加 されることがある。そのほか、特徴 的 な終 助詞 には次 のものがある。
- よ(ー)
湖東 ・湖南 ・甲賀 にかけて、農村 部 を中心 に用 いる表現 。接続 助詞 (特 に「で」と「し」)に盛 んに付 ける。体言 などには東京 の女性 語 のように直接 付 けることが多 い。強 めて「よい(な)」とも。 (例 )あのよー、こないだ言 うてた話 やけんどよー。 ほやでよ/ほやしよ(=だからさ)。 ほうよいな(=そうだともさ)。
- なーし
彦根 藩 の武家 言葉 「なあ申 し」に由来 するとされる上品 で改 まった表現 。彦根 を中心 に旧 野洲 郡 ・湖東 ・湖北 で用 いる。湖北 では短音 化 させて「なし」とも。現在 は主 に高齢 女性 が用 いる。 (例 )ほんでなーし。 すんまへんなーし。
- なーへ(ー)、なーえ
主 に女性 が同輩 以下 に用 いるやや丁寧 な表現 。京都 的 な表現 であり、湖南 で用 いる。短音 化 して「なへ」「なえ」とも。草津 市 では、「なーへ」よりも丁寧 な表現 として「なんた」も用 いた(「なああんた」の転 か)。「なーえ」は湖北 でも用 いるが、湖北 では「え」は中 舌 音 である。 (例 )よう来 たなーえ。
- かい
旧 蒲生 郡 から甲賀 にかけて用 いる。「つい」の意 で副詞 にも用 いる。
- その
他
湖南 と甲賀 の「わえ(ー)」、大津 市 膳所 の「へ」(女性 的 )、湖南 市 の「なーよ」、甲賀 (旧 甲南 町 ・甲賀 町 除 く)の「ねーな」など。いずれも共通 語 の「ね(ー)」に相当 する。
その他 [編集 ]
使役 は、五 段 活用 形 の「-す/さす」を用 いる。カ変 「こさす」を「きさす」、サ変 「さす」を「しさす」などとすることがある。受身 ・可能 は「-れる/られる」を用 いるが、カ変 は「こられる」と「きられる」、サ変 は「される」と「しられる」を併用 する。また可能 は可能 動詞 や「読 むことができる/でける」、「よう読 む」で表 すことが多 い。打 ち消 し推量 で「行 こまい」「見 よまい」のように「-まい/よまい」を用 いることがある。共通 語 と違 って未然 形 に接続 する(「行 こう」「見 よう」と「行 くまい」「見 まい」の混合 )。また湖南 以外 では「一緒 に行 こまいか」のように「-まい」を勧誘 に用 いることがあり、丁寧 形 として「連用 +ましょまいか」がある。「か」は省略 したり「け」とすることもある。
語彙 など[編集 ]
名詞 [編集 ]
- あおぢ
- 〔
不明 〕あおたん。内出血 。 - いじこ
- 〔
湖東 〕藁 で作 られたもっこ。穀物 を運 んだり、子 どもを入 れて遊 ばせておいたりする。 - いっけ
- 〔
不明 〕《一家 》分家 。日本 各地 で用 いられる語彙 だが、滋賀 県 以外 の多 くでは「親類 」や「親戚 」を表 す。 - うみ
- 《
海 ・湖 》単純 に方言 とは言 い難 いが、滋賀 県 においては琵琶湖 を「うみ」と呼 び親 しむことがある。「うみのこ」のように公共 物 にもよく用 いられる。 - おーやけ
- 《
大宅 》〔湖東 〕大 家族 。反対 に、少 人数 の家族 のことを「こやけ」という。 - おが
- 〔
湖南 ・湖西 ?〕カメムシ。「青 香 虫 」の転 か。 - おがまなとーさん/おがみのとーさん/おがみとーろ
- 〔
湖北 ・湖東 〕カマキリ。前肢 が拝 む姿 に見 えることから、「拝 まな通 さん(=拝 まねば通 さぬ)」→「拝 みの父 さん」「拝 みの蟷螂 」などと変化 。地域 によって様々 な語形 がある。 - おっさん
- お
坊 さん。「和尚 様 」の転 。「おっさん」(=おじさん)ではなく、「おっさん」と発音 する。- (
例 )そろそろおっさん来 やはるで(そろそろお坊 さんが来 られるよ)
- (
- がお(ー)
- 〔
湖東 〕化 け物 。おばけ。言 うことを聞 かない子 どもをしつけるのに言 う。「蒲生 」が転 じたものという(民間 語源 )。現在 「八日 市 は妖怪 地 」という町 おこしにも活用 されている。- (
例 )ほんな悪 さばっかししてたらガオが来 るほん!(そんな悪 さばっかりしていたらおばけが来 るぞ)
- (
- かたうま/かたんま
- 《
肩 馬 》肩車 。湖南 では「かたくま/かたこま/かたこんま(肩 駒 )」とも。 - かばた
- 《
川端 》水路 に設 けられた作業場 。「かわと(川戸 )」とも。2004年 にNHKのドキュメンタリー番組 で高島 市 新旭 町 針江 区 の川端 が紹介 され、注目 を集 めた。- (
例 )やっぱしかばたで冷 やしといたスイカは最高 やな(やっぱりカバタで冷 やしておいたスイカは最高 だね)
- (
- げべ/げべった/げべっちゃ
- 〔
湖西 ・湖北 ・湖東 〕最下位 。びり。- (
例 )また走 りごくでげべになってもた(また駆 けっこで最下位 になってしまった)
- (
- ごえんさん
- 《
御 院 様 》〔湖北 〕ご住職 さん。和尚 さん。お坊 さん。 - こびる/こーびる
- 《
小昼 》農作業 の合間 にとる軽食 ・おやつ。特 に昼食 と夕食 の間 に摂 るものをいい、地域 によっては午前 中 に摂 るものを「まえこびる」や「あさこびる」と言 う。同義語 として「けんずい」や「いっぷく(一服 )」など。- (
例 )ほな、そろそろ小昼 にしょーか(それでは、そろそろ軽食 にしようか)
- (
- ごもく/ごもくた
- ゴミ。
五目飯 や五目並 べの「五目 」ではなく、「ごみあくた」の転 とされる。 - こんめ/おこんめ
- お
手玉 。語源 としては、「米 」を布 に詰 めてお手玉 を作 ることから、または材料 を「込 め」て作 ることからか。「おじゃみ」とも。「おじゃみ」は西日本 各地 に分布 するが、「こんめ・おこんめ」は滋賀 県 とその周辺 にしか分布 しない。 - さいぜん
- 《
最前 》先程 。- (
例 )最前 、田中 さんに会 うてきたわ(さっき田中 さんに会 ってきたよ)
- (
- じしん
- 《
地震 》〔不明 〕「じ」にアクセントがくる。 - したまわり
下働 きの意 のほか、湖北 では「舌 が曲 がる」毒草 ということからヒガンバナを、湖東 では膳 の「下回 り」ということから料理 の添 え物 をも指 す。- じゅんじゅん
- すき
焼 き風 の鍋 料理 。具 の煮 える音 から。- (
例 )鰻 のじゅんじゅん(鰻 を使 ったすき焼 き風 鍋 。湖北 地方 などの郷土 料理 )
- (
- すいばら/すいばり/すじばら
- 〔
湖北 ・湖東 ・甲賀 〕(材木 の)トゲ。- (
例 )指 にすいばらが刺 さりよった!(指 にトゲが刺 さりやがった)
- (
- ぞーさ
- 《
造作 ・雑作 》〔湖北 ・湖東 〕面倒 。難儀 。- (
例 )ぞうさをおかけしてすんまへん(面倒 をおかけしてすみません)
- (
- ちょか/おちょか
軽率 で慌 てたり、調子 に乗 ったりすること、人 。またそうしたことで失敗 すること。おっちょこちょい。軽率 者 のことは「ちょかすけ」とも。動詞 形 は「ちょかる/ちょかつく」(後述 )。「ちょかちょか」で落 ち着 きのない様子 を表 す(湖東 )。- (
例 )おちょかせんとき(バタバタしないの)
- (
- つりぼし・つりんぼし・つりんぼ・つるんぼ・つるしんぼ・つるしぼし
- 《
吊 り干 し・吊 るし干 し》〔湖西 ・湖北 〕干 し柿 。「ぼ」には「坊 」も掛 かっている。地域 によって様々 な語形 がある。 - どろず
- 《
泥 酢 》〔湖東 〕酢味噌 。- (
例 )鯉 のあらいには泥 酢 つけて食 うのが一番 やで(鯉 のあらいには酢味噌 をつけて食 べるのが一番 だよ)
- (
- どんつき
- 《どん
突 き》突 き当 たり。よく「ドンと突 き当 たるところだからどんつき」と解 されるが、単 に「突 き当 たり」を接頭 語 「どん」で強調 したものともいう。- (
例 )どんつきを曲 がったとこが駅 ですわ(突 き当 りを曲 がったところが駅 ですよ)
- (
- なんぞ/なんど
- 《
何 ぞ・何 ど》〔湖西 ・甲賀 〕おやつ。子 が親 におやつをねだる際 の「なんぞええもんおくれ」を省略 したもの。- (
例 )なんぞやったらちゃぶ台 の上 に置 いといたで(おやつだったらちゃぶ台 の上 に置 いておいたよ)
- (
- なんば/なんばん
- 《
南蛮 》〔湖南 ・湖東 ・湖西 〕トウモロコシ。「南蛮 きび」の略 。湖北 ではトウモロコシのことは「こうらい」と言 う。「なんば」は近畿 地方 に広 く分布 し、「こうらい(きび)」は濃尾平野 に広 く分布 する表現 である[18]。- (
例 )夕飯 のおかずはなんばや言 うさかい楽 しみにしてたのに、唐辛子 のことかいな(夕飯 のおかずはトウモロコシだと言 うから楽 しみにしていたのに、唐辛子 のことかい)
- (
- なんば
- 《
南蛮 》〔湖北 〕トウガラシまたはシシトウガラシ。主 に天野川 以北 の表現 。南蛮 辛子 または南蛮 胡椒 の略 。トウガラシを「なんば」と言 うのは、北陸 地方 と共通 する特徴 [19]。 - ねき
- 《
根際 》〔湖北 ・湖東 ・湖南 ・甲賀 〕側 。脇 。近 く。(例 )もっとねき寄 って話 聞 けや(もっと近 くに寄 って話 を聞 けよ) - にゅー
- 〔
湖西 ・湖北 〕藁 や草 を積 んだもの。稲 むら。古語 「にほ」の転 。 - ひんず
- 〔
湖北 〕不意 。- (
例 )ひんずの費用 に蓄 えとこか(何 かあった時 のための費用 として蓄 えておこうか)
- (
- ぶげんしゃ/ぶえんしゃ
- 《
分限者 》金持 ち。- (
例 )田中 さんとこはぶげんしゃや(田中 さんの家 は金持 ちだ)
- (
- ぶんど
- 〔
湖北 〕エンドウなどの豆 。 - へんねし
- 〔
湖北 ・湖東 ・甲賀 〕嫉妬 。派生 語 に動詞 「へんねしがる」がある(湖東 )。- (
例 )へんねし起 こしてはるわ(嫉妬 をされているよ)
- (
- ほたれ/ほだれ
- 〔
湖北 ・湖西 ・湖東 〕つらら。「ほんだら」や「ほんだれ」などとも。『物 類 称呼 』にも近江 の方言 として記録 がある。- (
例 )子 どもの時分 はほだれねぶったりしてたなあ(子 どもの頃 はつららを舐 めたりしていたなあ)
- (
- みざら
靴 を履 きかえる場所 に敷 く板 。すのこ。学校 など公的 な場面 でも用 いられる。- (
例 )掃除 するで、みざらを一旦 あげてー(掃除 をするから、すのこを一旦 あげて)
- (
- め(ー)ぼ
- 《
目 疣 》麦粒腫 。ものもらい。大阪 などの「めばちこ」はほとんど用 いない。- (
例 )朝 起 きたらめいぼ出来 たった(朝 起 きたらものもらいが出来 ていた)
- (
- やまいき
- 《
山 行 き》〔甲賀 〕山 へ仕事 に行 くこと。特 に共有 林 の奉仕 作業 のこと。 - もんどり
川 魚 を獲 る籠 。一度 引 っかかると逃 げられない作 りになっている。「戻 り」の転 。- よけのまい/よけまい
- 〔
湖北 ・湖東 ・甲賀 〕余計 。余分 。「余計 の米 」が語源 か。- (
例 )あの話 はちょっとよけのまいやったな(あの話 はちょっと余計 だったな)
- (
- よさり
- 《
夜 去 り》〔湖西 ・湖南 ・湖東 〕夜 。古語 由来 。- (
例 )よさりに寄 せてもらうでな(夜分 に寄 せてもらうからね)
- (
人称 代名詞 [編集 ]
一人称 一般 的 なのは「わし」で、主 に男性 が用 いるが、高齢 層 では女性 も用 いる。「わし」のくだけた形 に「わい」があり、都市 部 以外 の男性 が用 いる。中年 以下 の女性 では「うち」や「わたし」の勢力 が強 く、男性 も改 まった時 には「わたし」を用 いる。このほか、「わたし」のくだけた形 で主 に都市 部 の女性 が用 いる「わて/あて」、「おら」の転 で下品 とされる「うら」などがある。「わい」と「うら」は粗野 な二人称 にも用 いる。各地 の特殊 なものとして、「あ(多賀 町 保月 )」「ここら(彦根 市 、複数 形 でのみ使用 )」「のし(長浜 市 木之本 町 川合 )」「らあ(近江八幡 市 武 佐 )」「わはい(湖南 市 下田 )」などがある。二人称 一般 的 なのは「おまえ/おまい」と「あんた」で、前者 は男性 、後者 は女性 が盛 んに用 いる。丁寧 なものとして「あんたさん」や「おまはん」または「おまん」がある。このほか「てまえ/てまい」「われ」「おのれ/おどれ」「わごりょ」などがあり、いずれも下品 な表現 とされる。「てまえ/てまい」「われ」「おのれ/おどれ」は一人称 からの転 で、「われら」は「わんら/わんだ(大津 市 真野 )」、「おのれら」は「おのんら/おんら」などとも。「わごりょ」は古語 に由来 するもので、地域 によって「わごら/わごん/わごんら/わごんじょ/わんじょ」など様々 な語形 がある。各地 の特殊 なものとして、「おれ(米原 市 甲津原 )」「そち(高島 市 朽木 雲洞谷 、長浜 市 旧 西浅井 町 、長浜 市 旧 びわ町 )」「そなた(米原 市 旧 米原 町 、彦根 市 、高島 市 朽木 雲洞谷 )」などがある。三人称 一般 的 なのは「あのひと」で、親 しい同輩 以下 には「あのこ」とも(大人 であっても「子 」)。やや下品 ではあるが、「あいつ」「そいつ」「こいつ」も男性 がよく用 いる。このほか、下品 とされる表現 として「あのじん」「(あの)てき」「あのごれ」などがある。
指示 語 [編集 ]
動詞 [編集 ]
- いぬ
- 《
去 ぬ・往 ぬ》帰 る。古語 由来 。「いんでくる」(「いぬ」+「来 る」)とも。- (
例 )ほな、いんでこほん(それでは、帰 るよ。辞去 の挨拶 語 として慣用 表現 化 している)
- (
- えがむ
- 〔
湖東 ・甲賀 〕「歪 む」の転 「いがむ」がさらに転 じたもの。曲 がる。傾 く。- (
例 )この柱 だいぶえがんどんなあ(この柱 、だいぶ傾 いているなあ)
- (
- おいねる
- 《
負 いねる》〔湖北 ・湖東 ・甲賀 〕背負 う。おんぶする。- (
例 )小 さい頃 は姉 ちゃんによう負 いねてもろたわ(小 さい頃 は姉 によくおんぶしてもらったよ)
- (
- かす
- 《
浸 す・淅す》米 を研 ぐ、ゆすぐ。- (
例 )米 ごんごー、かしといてや(米 を五 合 、研 いでおいてよ)
- (
- げこする
- 《
下向 する》〔湖東 〕寺 の仏事 から帰 る。- (
例 )皆 げこしてやるで、法事 終 わったみたいやな(みんな帰宅 されているから、法事 が終 わったみたいだね)
- (
- こぼつ
- 《
毀 つ》〔湖北 ・湖東 ・甲賀 〕壊 す。古語 由来 。彦根 市 の一部 では「こぼる」とも。 - しまえる
- 《
仕舞 える》〔湖北 ・湖東 〕「しまう」の自動詞 形 。なくなる。尽 きる。- (
例 )灯油 しまえたで、買 いに行 かんと(灯油 が切 れたから、買 いに行 かないと)
- (
- ちびる
摩耗 していくこと。ラ行 五 段 活用 [要 出典 ]。- ちょかる
- 〔
湖東 〕調子 に乗 る。軽 はずみをする。「ちょかつく」とも(全 県 )。名詞 形 は「ちょかり」。2010年 11月に行 われた『3月のライオン』の「全国 47都道府県 駅 貼 りポスター「ライオンの旅 」キャンペーン」で、滋賀 県 の方言 として採用 された[22]。- (
例 )ちょかってんなや(調子 に乗 ってんなよ)
- (
- といれる
- 《
取入 れる》〔湖北 ・湖東 〕干 しておいたものを取 り込 む。- (
例 )洗濯 もん、といれといてえ(洗濯 物 を取 り込 んでおいて)
- (
- なぶる
- 《
嬲 る》手 で触 れる。いじる。手 を入 れる・修理 する(甲賀 )。共通 語 にあるようなマイナスの意味合 いを持 たずに用 いることがある。- (
例 )土 なぶった後 は、よう手 ぇ洗 わなあかんで(土 を触 った後 は、よく手 を洗 わないといけないよ)
- (
- びちかく/びちがく
- 《びち
掻 く》〔湖西 ・湖北 ・甲賀 〕指先 でつねる。つねりながら引 っ掻 く。 - ふてる
- 〔
湖北 ・湖東 ・湖南 〕捨 てる。「ほかす」「ほる」とともに併用 。- (
例 )ほんなもんふてとけ!(そんなもの捨 てておけ)
- (
- ほたえる
騒 ぐ。ふざける。- (
例 )部屋 の中 でほたえたらあかんがな!(部屋 の中 で騒 いだら駄目 でしょうが)
- (
- ももける
- セーターなどに
毛 玉 が出来 る。毛羽立 つ。- (
例 )背中 のとこの生地 、ももけてるで(背中 のところの生地 が毛羽立 っているよ)
- (
- もらう
- 《
貰 う》〔湖北 ・湖東 〕子 どもを授 かる。- (
例 )まあ可愛 らしい子 ぉもらわって(あらまあ可愛 い子 を授 かられて)
- (
- もりこす
- 《
盛 り越 す》湯水 などが容器 の容量 を超 えて溢 れること。- (
例 )うわ、お風呂 のお湯 が盛 りこしたるで!(うわ、お風呂 のお湯 が溢 れているよ)
- (
- もんる
帰 る。戻 る。「戻 る」の転 。「もんてくる/もんでくる」(「もんる」+「来 る」)の形 でよく用 いる。2005年 に開業 した長浜 駅 前 の商業 施設 「モンデクール長浜 」の名称 の由来 の一 つ[23]。- (
例 )盆 にはもんてきいや(盆 には帰 ってきなさいよ) - (
例 )あいつはまだもんらんのけ(あいつはまだ戻 らないのか)
- (
- よばれる
- 「
御馳走 に呼 ばれる」から用法 が拡大 し、「食 う」の丁寧 語 として用 いることがある。さらに派生 して「よぶ」を「御馳走 する」「(飲食 物 などを)やる」などの意 で用 いることがある。- (
例 )こんなんしかあらへんけんど、なんなっとよばれて(こんなのしかないけど、なんなりと召 し上 がれ) - (
例 )夕飯 よんでもろた(夕飯 を御馳走 してもらった) - (
例 )たばこよんで(たばこをちょうだい)
- (
形容詞 [編集 ]
- あじない/あんない
- 《
味 無 い》美味 しくない。味 が薄 い。- (
例 )この味噌汁 、ちょっとあんないな(この味噌汁 、ちょっと味 が薄 いな)
- (
- いかい/いがい
- 《
厳 い》〔湖西 ・湖北 ・湖東 〕大 きい。大変 な。大層 。古語 「いかし」に由来 。近畿 地方 とその周辺 では滋賀 県 ・福井 県 と岐阜 県 の一部 に分布 する[24]。- (
例 )しばらく見 んまにいこうなってえ(しばらく見 ない間 に大 きくなってまあ) - (
例 )いかいなりして、そんなんも分 からんのか(大人 のくせして、そんなことも分 からないのか)
- (
- うい
- 《
憂 い》恥 ずかしい。憂鬱 だ。可愛 らしい。(世話 になって・面倒 をかけて)申 し訳 ない。古語 「憂 し」に由来 。派生 語 に動詞 「憂 うがる」がある。- (
例 )ほんなことしてもろて憂 いこっちゃ(そんなことをしてもらって申 し訳 ないねえ)
- (
- うたてい/うたとい
- 《
転 てい・転 とい》〔湖東 ・甲賀 〕鬱陶 しい。古語 「うたてし」の転 。形容動詞 形 「うたて」とも。 - えらい
- 「
偉 い」「とても」「とんでもない」のほかに、「しんどい」「つらい」の意 で多用 する。- (
例 )えらい風邪 引 いて、えらいわ(ひどく風邪 を引 いて、しんどいよ)
- (
- おーさらしい
- 〔
湖東 〕大袈裟 だ。仰々 しい。同義語 に、形容動詞 「おおさな/おおさわな(湖北 ・湖東 ・湖西 )」がある。- (
例 )おおさらしい話 やなあ(大 げさな話 だなあ)
- (
- きんまい
立派 だ。美 しい。愉快 だ。「金 米 」の転 とされる。- (
例 )きんまい花 やなあ(立派 な花 だなあ)
- (
- けなるい/けなりい
羨 ましい。古語 「異 なり」に由来 (普通 とは異 なっている→際立 っている→秀 でている→そのようであるのが羨 ましい)。- (
例 )あんたとこの嫁 さん、えらいべっぴんでけなりいわ(あなたの奥 さんはとても美人 で羨 ましいよ)
- (
- ずつない
- 《
術無 い》辛 い。苦 しい。古語 「ずちなし」に由来 。「気 ずつない」で「恥 ずかしさや申 し訳 なさなどで気 が滅入 る、心苦 しい」の意 。- (
例 )ようけ食 べたさかい、ずつないわ(たくさん食 べたから、腹 が苦 しいよ) - (
例 )人前 でヘマしてもて、気 ずつなかったわ(人前 でヘマをしてしまって、心苦 しかったよ)
- (
- なまずけない
怠 けている。不精 だ。だらしがない。『日 葡辞書 』に記録 がある。- (
例 )部屋 ちっとも片付 けんと! なまずけないやっちゃなあ!(部屋 をちっとも片 づけないで! だらしない奴 だなあ!)
- (
- はしかい
- 《
芒 い》(細 かいトゲなどが当 たって)ちくちくと痛 い。風邪 などで喉 の奥 がひりひりする。「はしか」とは、病気 の「麻疹 」ではなく、稲 や麦 の穂 にある突起 のこと。- (
例 )風邪 ひいたんかしらん、のぞがはしかいわ(風邪 を引 いたのかな、のどが痛 いよ)
- (
- ひどい
- 《
酷 い》悪 い意味 だけでなく、ひどい条件下 で働 く人 に対 するねぎらいの挨拶 言葉 としても用 いる。特 に湖東 で、「おきばりやす」とほぼ同義 で「おひどいな」や「おひどうすな」と言 う。- (
例 )こんな暑 いなか、ひどいなあ(こんな暑 いなか、大変 だね)
- (
- ほえない
- 〔
湖西 〕あっけない。「映 え無 い」の転 か。 - むっかい
- 〔
不明 〕「むつかしい」のくだけた形 。滋賀 県 の若者 言葉 。- (
例 )今日 のテスト、めっちゃむっかかった(今日 のテスト、とてもむずかった)
- (
- よぞい
- 〔
湖北 ・湖東 ・甲賀 〕嫌 だ。不快 だ。毛嫌 いすべきさま。おぞましい。甲賀 の一部 では鬱陶 しいの意 。- (
例 )えらいよぞい話 やで(ひどく気持 ち悪 い話 だよ)
- (
形容動詞 ・副詞 [編集 ]
- あくしょーな
- 《
悪性 な》〔甲賀 〕随分 な。- (
例 )悪性 な言 われようやな(随分 な言 われようだな)
- (
- えんやらやっと
- 〔
湖東 ・湖西 〕やっとのことで。 - がいっと
- 〔
湖北 ・湖東 〕力 を入 れて勢 いよく行 う様子 。- (
例 )もっとがいっと押 して(もっとぐっと押 して)
- (
- かなな
- 〔
湖西 ・湖南 〕《仮名 な》たやすい。簡単 な。甲賀 では形容詞 形 「かなるい」。- (
例 )こうする方 がかなな方法 やな(こうする方 が簡単 な方法 だな)
- (
- かにここ
- 〔
湖西 〕やっとこのことで。大津 市 北部 では「かなり」または「もう少 し」の意 。 - ごんぎりめ
- 〔
湖東 ・湖北 〕一生懸命 。- (
例 )ごんぎりめに頑張 っとるな(一生懸命 に頑張 っているね)
- (
- せんど
- 《
千 度 》何 度 も。さんざん。長 い間 。「せんどする」で「(さんざん作業 をさせられて)飽 きる・くたびれる」(湖北 ・湖東 ・湖南 )。「おせんどさん」で「お疲 れさん」という意 の挨拶 言葉 (湖西 ・湖北 ・湖東 )。- (
例 )ああ、せんどした(ああ、くたびれた)
- (
- ちゅんちゅん
- 〔
湖東 など〕湯 などが沸 いている様子 を表 す擬態語 。- (
例 )風呂 、ちゅんちゅんに焚 いといてな(風呂 、熱々 に焚 いておいてね)
- (
- どーで
- 〔
湖東 〕どうして。何故 。- (
例 )どうでほんなこと言 うにゃ(どうしてそんなことを言 うんだ)
- (
- とっと
全 くもって。十分 に。いかにも。- (
例 )とっと埒 があかん(全 くもって埒 があかない) - (
例 )とっと頂戴 いたしました(確 かに頂戴 いたしました)
- (
- どぼどぼ
- ずぶ
濡 れな様子 を表 す擬態語 。びしょびしょ。「どぼ濡 れ」とも。- (
例 )にわか雨 で服 がどぼどぼになってもたがな(にわか雨 で服 がびしょびしょになってしまったよ)
- (
- にごはち
- 《
二 五 八 》〔湖北 ・湖東 ・甲賀 〕ちょうどではないこと。いい加減 。大体 。まあまあ。「二 五 十 」に満 たないことから。- (
例 )にごはちな仕事 やな(いい加減 な仕事 だな)
- (
- はい
早 くも。「早 」の転 。「もうはい」「はいから」「もうはいから」の形 でよく用 いる。- (
例 )もうはい夜 か、はよ帰 らんと(もう夜 か、早 く帰 らないと) - (
例 )はいから帰 るんかいな、だしかいね(もう帰 るのかい、まだいいじゃないか)
- (
- はんちゃらけ・はんちらけ
仕事 などを中途半端 に投 げ出 すこと。同義語 に「なまはんじゃく・なまりはんじゃく」などがある。- (
例 )あいつ、仕事 はんちゃらけで帰 りよったんや(あいつ、仕事 を中途半端 に投 げ出 して帰 りやがったんだ)
- (
- ほっこり
- 「ほっこりする」で「(
一 仕事 を終 えて)ほっと疲 れる」。「ほっこりせん」で「ぱっとしない」(湖北 ・湖東 )。「ほっこりや」で「うんざりだ」(湖北 )。湖北 などでは「おせんどさん」と合 わせた「ほっこりおせんどさん」という挨拶 語 もある。 - めめくそ/まめくそ/まねくそ
- 《
目 目糞 》ほんの少 し。ほんの僅 か。「―かす」とも。- (
例 )まだお茶碗 に米 粒 がまめくそほど残 ったあるがな(まだお茶碗 に米 粒 がちょっと残 っているよ)
- (
- りんちょく
- 〔
湖北 ・湖東 ・甲賀 〕几帳面 。「凜+率直 」ということか。- (
例 )あの人 はほんまにりんちょくな人 やわいな(あの人 は本当 に几帳面 な人 だよ)
- (
感動 詞 ・連語 など[編集 ]
- かなん
- 《
敵 ん》嫌 だ。つらい。「かなわぬ」の転 。- (
例 )こうも暑 い日 ぃ続 くとかなんな(こうも暑 い日 が続 くとやってられないね)
- (
- げなげなばなし
- 《げなげな
話 》噂 話 。聞 き伝 え。伝聞 の助動詞 「げな」から。- (
例 )げなげな話 は嘘 じゃげな(いい加減 な噂 話 を洒落 めかして戒 める言葉 )
- (
- ごーがわく
- 《
業 が沸 く》〔湖北 ・湖東 ・湖南 〕業 を煮 やす。腹 が立 つ。- (
例 )あいつは業 の沸 くやっちゃ(あいつは腹 の立 つ奴 だ)
- (
- こつきがわるい
- 《こつきが
悪 い》〔湖東 〕愛想 が悪 い。「取 っ付 きが悪 い」の転 か。- (
例 )こつきの悪 い顔 しとる(愛想 の悪 い顔 をしている)
- (
- -したらわ
- 〔
湖東 ?〕勧誘 や提案 を表 す女性 語 。-してはどうかしら。- (
例 )見 に行 ってみたらわ?(見 に行 ってみたらどう?)
- (
- -しとー/しとん
- 〔
湖南 〕-しておくれ。-して。京都 と共通 する表現 。- (
例 )ちょっと待 っとお!(ちょっと待 ってちょうだい)
- (
- -しとみない/しとむない
- 〔
湖東 〕-するのは気 が引 ける。-するのはなんとなく嫌 だ。- (
例 )行 きとみないなあ(行 く気 がしないなあ)
- (
- じゃこももろこも
- 《
雑魚 も諸子 も》玉石混交 。なんでもかんでも。「もろこ」とは、美味 な魚 として珍重 される琵琶湖 固有 種 ホンモロコのこと。 - しらんてる/しらんとる
- 《
知 らんてる・知 らんとる》知 らないでいる。- (
例 )知 らんてるまに終 わっとった(知 らない間 に終 わっていた) - (
例 )あの人 、ほんまになんも知 らんてはったんや(あの人 、本当 に何 も知 らずにおられたんだ)
- (
- そこそーば/そこそーばい
- 〔
湖北 など〕そんな場合 では。それどころでは。- (
例 )そこそうばやないがな!(それどころじゃないってば)
- (
- そこよかろよーに
- 《其処
良 かろ様 に》〔湖東 ・甲賀 〕その場 が上手 く行 くように、適当 に済 ませるさま。- (
例 )その件 はまあ、そこよかろようにやっといてんか(その件 については上手 い具合 にやっておいてくれ)
- (
- そこらそこらに
- 《其処
等 其処等 に》〔湖東 〕適当 なところで。大概 のところで。「そこよかろように」とほぼ同義 。 - たい/たえ
- 〔
湖東 〕下 さい。頂戴 。古語 「賜 べ」の転 。- (
例 )ほれ貸 いせたい(それを貸 しておくれ) - (
例 )たばこ1本 たい(たばこを一本 おくれ)
- (
- だしかいな/だしかいね
- 〔
湖北 〕相手 の辞去 を引 き留 める挨拶 語 。まだまだ良 いじゃないか。遠慮 しなさんな。 - だんない/だじない/だしない
差 し支 えない。大丈夫 だ。どうもない。「大事無 い」の転 。- (
例 )なんやえらい物音 したけど、だんないか?(何 やらすごい物音 がしたけど、大丈夫 か?)
- (
- どーなろ
単 に「どうなろうか」の意 だけでなく、湖東 では強 い否定 ・拒否 表現 に用 いることがある。- (
例 )ほんなことしてどうなろ(そんなことをして何 になろうか)
- (
- ないない
- 〔
湖東 〕はい。承知 ・承諾 の意 を表 す。かつて彦根 の城下町 特有 の表現 として有名 だった(参考 リンク)。 - -ね/ねん
- 「-の
家 」の縮 まったもの。同義語 に「とこ」。- (
例 )うちね遊 びにきいな(我 が家 に遊 びにきなよ) - (
例 )田中 さんねは立派 や(田中 さんの家 は立派 だ)
- (
- のどへつり
- 《
喉 剥 り》〔甲賀 〕おやつ時 に訪 ねて相伴 をあずかった際 の挨拶 語 。特 に土山 で言 う。「へつる」とは削 る・減 らすの意 。- (
例 )えらいのどへつりしましたなあ(大層 おやつをご相伴 させていただきました)
- (
- はいらこ/わいらこ
- 〔
湖東 〕祭 りの掛 け声 。 - ほどのよい
- 《
程 の良 い》〔湖東 〕万事 調子 の良 いことを言 って、その場 を程々 にやり過 ごすこと。- (
例 )あの人 はほんまに程 の良 い人 やで(あの人 は本当 に調子 の良 い人 だよ)
- (
- ほんでに
接続詞 。それだから。そうだから。- (
例 )最近 雨 降 らへんやろ、ほんでに野菜 枯 れてしまいよったんや(最近 雨 降 らないだろう、だから野菜 が枯 れてしまったんだ)
- (
- まいらしてもらう
- 《
参 らして貰 う》単 に神仏 に参詣 するの意 だけでなく、特 に湖東 や湖北 で、極楽往生 の意 にも用 いる。- (
例 )わしもええ歳 やでな、はよ参 らしてもらわな(私 もいい歳 だからね、早 く往生 させてもらわないと)
- (
- むしろうりこもにねる
- 《
筵 売 り菰 に寝 る》〔湖北 〕自分 の専門 分野 に限 って、かえって自分 自身 には顧 みないこと。紺屋 の白 袴 。 - よーあんた(さん)/よーおまえさん
- 「おおきに」「おきばりやす」などと
声 を掛 けられた時 の返 し言葉 。農村 に多 い表現 。「ようこそあなた」の転 か。どういたしまして。こちらこそ。 - よーかよーか
- 〔
湖東 〕可能 性 を強 く否定 する表現 。よくもよくもそんなことができようか、いやできっこない。- (
例 )歩 いて琵琶湖 一周 て、ようかようか(歩 いて琵琶湖 一周 だなんて、とてもとても)
- (
- よー -して
- 〔
湖東 〕「よう -してくれた」の略 。相手 の行為 への感謝 や歓迎 を表 す。- (
例 )よう言 うて(よくぞ言 ってくれた) - (
例 )よう来 てやほん(よく来 てくれたねえ)
- (
- よーゆーとくれる
- 〔
湖東 〕自分 のことをよく言 ってくれたことに対 する感謝 を表 す言葉 。またはひどいことを言 ってきたことに対 する皮肉 的 な返 し言葉 。 - よーそーやろぞ
- 〔
甲賀 〕「よくそうであろうぞ」の転 。相手 の謝意 や挨拶 に対 する反語 的 な返 し言葉 。とんでもない。- (
例 )「うちの者 が色々 ご迷惑 をおかけするかと存 じます。どうぞ宜 しくお願 い致 します」「ようそうやろぞ、こちらこそ宜 しくお願 い申 し上 げます」
- (
- よーな/よーね
- 〔
湖北 ・湖東 〕ありがとう。「おおきに」よりも古風 な物言 いとされる。甲賀 では「よーえ」や「よーや」。湖西 では「よーよー」。- (
例 )お結構 なものいただいて、ようなやほん(結構 なものをいただいて、どうもありがとう)
- (
接頭 語 ・接尾 語 [編集 ]
強調 接頭 語 には「ど/どん」「どか」、接頭 語 には「くさい」「たれ(め)」「らしい/たらしい」などがあり、また接頭 ・接尾 兼用 に「くそ」がある。罵倒 や卑 しめ、不満 を表 すのに男性 がよく用 いて聞 く者 に荒 い印象 を与 えるが、語 自体 は江 州 弁 特有 といえるような珍 しいものではない。- (
例 )ど阿呆 、どえらい/どいらい、どじらしい(=ずるい)、どすこい(=こすい)、どんじり、どんびゃくしょう(=百姓 )、阿呆 くさい、遅 くさい、邪魔 くさい、くそ忙 しい、ぼろくそ、げんくそ(=縁起 )、ごくたれ、貧乏 たれ、知 ったらしい(=知 った風 な)、馬鹿 たらしい 敬称 - 「さん」を
多用 する。「さん」は親 しみを込 めて「はん」「つぁん」「やん」「ちゃん」とくだけることがある。愛称 やあだ名 には「ぼん(「坊 」の転 )」や「べい」なども用 いた。(例 )姉 さん→ねえやん、兄 (あに)さん→あんやん/あんにゃん、幸夫 →さちぼん、けい子 →けいべい - くろしい
- 「
苦 しい」の転 。特定 の形容詞 の語尾 に付 けて、嫌悪 や不満 の気持 ちを強 める。暑 くろしい(暑苦 しい)、よぞくろしい(とても気持 ちが悪 い)など。 - べら/べた
- 「-
側 」を表 す接尾 語 。「ほっぺた」の「ぺた」と同 源 と思 われる。あっちべら(あちら側 )、こっちべら(こちら側 )、向 こうべら(向 こう側 )、みなべら(南側 )など - め
一般 には「ばかめ」や「わたくしめ」のように罵倒 や卑下 に用 いる接尾 語 だが、湖北 などでは特定 の動物 名 につけて親愛 の接尾 語 とする(福井 弁 と共通 )。あいめ(鮎 )、がにめ(蟹 )、へるめ(蛭 )、とりめ(鶏 )、うしめ(牛 )など。- ら
一般 には「ここら」「こちら」のように場所 をぼやかす表現 に用 いる接尾 語 だが、湖北 と湖東 の一部 では「方角 +ら」で「方角 +隣 (の家 )」という意味 を表 す。また湖北 には「北 ら」の転 とされる「きとろ」という名詞 がある(「北 の方 」または「近所 」の意 )。- (
例 )東 らは今 留守 にしてはるわ(東側 のお隣 さんは今 留守 にされているよ)
- (
備考 [編集 ]
森川 許六 (彦根 藩 の俳人 )がまとめた俳文 集 『風俗 文選 』に「鶯 に きとろはさぶい みなべらの うららがとこの軒 にけよやれ」という歌 (よみ人 しらず)が「鄙歌 」「あふみぶり」として収録 されている。県内 各地 の特徴 的 な俚言 を並 べた「大津 ソヤガサ(またはソヤガナ[25])小松 のウラ言葉 彦根 ナイナイ高島 ソヤケンド栗太 グライは野洲 のカイ神崎 なまりは トットホラホーヤ」という戯 れ歌 がある[26]。彦根 の特徴 的 な俚言 を並 べた戯 れ歌 として、「ウラ ワゴン ホーヤサカイニ クダシカレ ナイナイ ナーシ トントホッコリ」[27]や「うら わごれ そうじゃさかいに かいも はい ないないねーに こまり ほっこり ほん」[28]がある。- 2000
年 にNHKが『ふるさと日本 のことば』で行 ったアンケート調査 によると、「21世紀 に残 したい滋賀 のことば」として滋賀 県民 からの支持 を集 めた言葉 は、「おきばりやす」「おおきに」「おしまいやす」「おせんどさん」「うい」「だんない」「にごはち」「きんまい」「きゃんす」であった。 - 「
始 めさせていただきます」のような「させてもらう/させていただく」敬語 は、近江 の浄土真宗 信徒 が「他力本願 」の思想 から用 い出 し、近江 商人 によって全国 に広 まった言葉 であるとする説 がある[29]。 暴露 ウイルスによる個人 情報 漏洩 を表 すインターネットスラング「つこうた」は、草津 市議 の息子 が漏洩 事件 を起 こした際 に市議 が「息子 がウィニーをつこうた」と発言 したことに由来 する[30][31]。- 『
出身 地 が分 かる!気 づかない方言 』では、東京 在住 の滋賀 県 出身 者 へのアンケート調査 から分 かる滋賀 県民 の「気 づかない方言 」として、「水臭 い(=塩気 が薄 い)」をその代表 として挙 げ、ほかに「えらい(=しんどい)」「かしわ(=鶏肉 )」「大学 〜回生 」「マクド」などを挙 げている。いずれの言葉 も滋賀 県 だけに限 られる表現 ではないが、特 に「えらい」の地元 使用 度 ・東京 使用 度 は全 都道府県 で滋賀 県 出身 者 がトップクラスであったという[32]。 京阪神 では「なんぼ」を個数 を尋 ねる場合 と値段 を尋 ねる場合 の両方 に用 いるが、滋賀 県 では値段 を尋 ねる場合 にしか用 いない地域 が多 い[33][34]。京阪神 では「片 づける」のことを「なおす」と言 う地域 が多 いが、滋賀 県 では用 いる地域 が比較的 少 ない[35]。
作品 など[編集 ]
外村 繁 『澪標 』の一節 (1960年 )[39]- 「
赤 ん坊 はなあし、神 さんが授 けておくれやすのどす」 - 「ふうん、
誰 にでも授 けておくれやすのか」 - 「いんえ、お
嫁 に行 くと、おいに、授 けておくれやすのどす」 - 「ほんでも、かねはお
嫁 になんか、行 ってやはらへなんだやないか」 - 「あれは、
悪 い神 さんどしたんどす」 - 「ふうん、ほすと、
悪 い神 さんはお嫁 に行 かん女 (ひと)にも授 けやすんか」 - 「へえ、うっかりしてると、
授 けやすのどす」 - 「
悪 い神 さんやな。とよもうっかりせんといてな」 - 「ほんなもん、わたしら、
大丈夫 どす」
- 「
- イカイいかだでイカッタ - YouTube、
形容詞 「いかい」および尊敬 語 「ある」。 野洲 のおっさんカイツブリ - YouTube、尊敬 語 「らる」。- さしすせほの
歌 - YouTube、ソとホの交替 。
例文 [編集 ]
- 1957
年 に収録 された多賀 町 萱原 の老人 男女 2人 の会話 の一部 [41]。
男 :ほーや、ほや、うん、もー、わしらの子供 の時分 にはやなー、あー、はよ、おかさんが言 うのにはや、米 の、われ、1俵 も2俵 も、おー、おどい搗 いてらっで、よさり毎晩 。どういうのやったで、「やがて[注 13]子 ー産 むと、ハッ、腹 が大 きなったり、産 んだら搗 けん」ゆて。ほらほーだわい。- そうだ、そうだ、うん、もう、
私 達 が子供 の時分 にはだね、お母 さんが言 うことには、米 の、あなた、1俵 も2俵 も、たくさん搗 いておられるから、夜毎 晩 。どういうわけかと聞 くと、「今 に子供 を産 むと、腹 が大 きくなったり、産 んだりして搗 けない」と言 って。そりゃそうだよ。
- そうだ、そうだ、うん、もう、
女 :ほりゃー、ほーやったくらい(笑)- そりゃあ、そうだったでしょうよ。
男 :(笑)ほいて(笑)、米 を搗 き置 きしといてー。- そして、
米 を搗 き置 きしておいて。
- そして、
女 :うん、せんだくもんし置 きして。- うん、
洗濯 物 をし置 きして。
- うん、
男 :ほして、ほのー、子供 [注 14]、親 というものは賢 いでよ、ほら、ほんまになー、ほんなもの、われ、えー、ちゃーんと米 をさーんと搗 いて、可笑 し[注 15]。ぎょーさん毎晩 ついてるが、ともあや、やーこー産 む前 で「も、搗 けんよーになんのや」ちゅーてる。- そしてその、
親 というものは賢 いからさ、それは本当 にねえ、そんなもの、あなた、えー、ちゃんと米 をさっと搗 いて、ああ可笑 しい。たくさん毎晩 搗 いているよ、と思 えば、赤 ん坊 を産 む前 で「もう搗 けなくなるのよ」と言 っている。
- そしてその、
- 1958
年 に収録 された旧 朽木 村 市場 の老人 男女 2人 の会話 の一部 [41]。
男 :なんとおばさん、珍 しのー[注 16]。- おやおばさん、
珍 しいねえ。
- おやおばさん、
女 :おいの、せんど会 わなんだのー。- あら、
長 い間 会 わなかったねえ。
- あら、
男 :おー、まー、せんどっちゅーこともないけんどー、わしもはたんだん(=地名 。畑 ん谷 )の山 い行 てきて。わりゃー、わりゃー田 んぼか。- おお、まあ、
長 い間 ってこともないけれど、私 もはたんだんの山 へ行 ってきて。お前 は、お前 は田 んぼか。
- おお、まあ、
女 :あー、うらー、はたのした[注 17](=地名 。畑 の下 )のー、田 ーから、今 、昼 やしー。- ああ、
私 ははたのしたの田 から。今 、昼 だし。
- ああ、
男 :あー、なるほど、そーか。や、わし[注 18]も、つい(=じきに)ひるーまらしさけ、もーって来 たんじゃがー。- ああ、なるほど、そうか。いや、
私 も、じきに昼間 らしいから、戻 ってきたんだよ。
- ああ、なるほど、そうか。いや、
女 :今日 はえーお天気 で暑 かったのー。今日 は良 いお天気 で暑 かったねえ。
男 :おー、のくとて、もうあってあって[注 19]、もう苦 してしゃーなぇーのー。- おお、
暖 かくて、もう暑 くて暑 くて、もう苦 しくて仕方 ないねえ。
- おお、
女 :そやのー、けどまー、お天気 で結構 や。- そうだねえ、けどまあ、お
天気 で結構 だ。
- そうだねえ、けどまあ、お
男 :おー、困 ったこっちゃー、こら、まー、んでも、水 も欲 しいわい。- おお、
困 ったことだ、これはまあ、それでも、雨水 も欲 しいよ。
- おお、
甲良 町 辺 りの方言 会話 写 録 の一部 [42]。
- A:こない
悪 うてふさっていたんやが、今日 はちょぼっと気持 ちがええで、ちっとない仕事 に手 がつくやろと思 てるとこへ、前 のべっちゃらこい顔 のおばあが入 ってくるなり、のっけからなんやかや、八 家 九 宗 (はっけくしゅう)しゃべくりまわした挙句 、おまけに新 やんとこのおじいのことをあるだけ曝けだし、あくぞもんぞ言 うて、つっきりにけり、ひとつも仕事 をささんと、ひんなか棒 に振 ってしもたが、ほんまに踏 んだり蹴 ったりや。- このあいだ、
体調 が悪 くて横 になっていたんだが、今日 はちょっと気分 がいいから、少 しくらい仕事 に手 がつくだろうと思 っているところへ、前 の平 たい顔 のおばあが入 ってくるなり、のっけからなんだかんだ、ことごとく喋 りまくった挙句 、おまけに新 やんの家 のおじいのことをあるだけ曝 け出 して、隅 から隅 まで言 って、最後 まで一 つも仕事 をさせずに、昼間 ずっと棒 に振 ってしまったが、本当 に踏 んだり蹴 ったりだ。
- このあいだ、
- B:ほうやほうや、なんせあのおばあときたら、
人 の顔 さえ見 たら、隣 の悪口 が言 いたいしょうやで、いっぱしはあのおばあにゃ、なんぞ狐 でも憑 いとるやろって言 うとったくらいやもん。言 うて言 うて、百 万 陀羅しゃべってしゃべってしもたら、けろんこんとしてらるが、まあどうやろ、ようまああっこのおにいが黙 っとると思 てさ。- そうだそうだ、なんせあのおばあときたら、
人 の顔 さえ見 たら、隣 の悪口 が言 いたい性 だから、一時 はあのおばあには、何 か狐 でも憑 いているだろうと言 っていたくらいだもの。言 って言 って、たくさん喋 ってしまったら、けろっとしておられるが、まあどうだろう、よくまああそこのおにいが黙 っていると思 ってさ。
- そうだそうだ、なんせあのおばあときたら、
- 1983
年 に収録 された旧 甲賀 町 神 の老人 男女 の会話 の一部 [43]。
女 :なあおとっつぁん、こんなはよから、どこ行 きどすねな。こんなにまあ空 が悪 いのに、もし降 ってきたら、どうしやはるな。- ねえお
父 さん、こんなに早 くから、どこ行 きですか。こんなにまあ空模様 が悪 いのに、もし雨 が降 ってきたら、どうなさるの。
- ねえお
男 :そうやなあ。雨 が降 るかもわからんけど、まあ行 こと思 て。蓑 、どこにあるねやな。- そうだねえ。
雨 が降 るかもしれないけど、まあ行 こうと思 って。蓑 はどこにあるんだい。
- そうだねえ。
女 :蓑 、どこへしもたやろ。わからんけど、いっぺん調 べてみるわ。捜 してみるわ。そんでまあどこの川 へ行 かはるねな。蓑 、どこへしまっただろう。わからないけど、一度 調 べてみるよ。捜 してみるよ。それでまあどこの川 へ行 かれるの。
男 :そうやなあ。川 がええと思 て、ぬめりがわへ行 こかしらんと思 てんねわ。- そうだねえ。
川 がいいと思 って、ぬめりがわへ行 こうかなあと思 っているんだよ。
- そうだねえ。
女 :そんなもん、ぬめりがわみたいなところに行 くてよ。滑 らんといとくれや。こんな空 によ。あんなぬめりがわ辺 りに行 てよ、ほんまに今 にも降 ってくるのによ。気 をつけて行 て。- そんな、ぬめりがわみたいなところへ
行 くなんてさ。滑 らないでよ。こんな空模様 の時 にさ。あんなぬめりがわ辺 りに行 くなんてさ、本当 に今 にも降 ってくるのにさ。気 を付 けて行 って。
- そんな、ぬめりがわみたいなところへ
男 :大丈夫 や。そんなに心配 するけど、曇 った日 の方 がよう釣 れるさかいにな。大丈夫 だ。そんなに心配 するけど、曇 った時 の方 がよく釣 れるからね。
女 :そうやろか。ふーん。まああてにせんと待 ってるけんどよ。釣 られに行 かんといとくれや。ほやまん、きばって釣 ってきとくれ。- そうだろうか。ふーん。まああてにせずに
待 っているけどさ。釣 られに行 かないでよ。それじゃあまあ、頑張 って釣 ってきてね。
- そうだろうか。ふーん。まああてにせずに
- 1985
年 に収録 された旧 甲賀 郡 の男子 中学生 の会話 [44]。
- B:ほんで、
売 れてなー、そのお金 でなー、ジュースとかケーキ買 って食 ててん、とか、嘘 ばっかり言 いよんね。あ、ほんでからなー、あの、長浜 の方 でよー、つららが落 ってくるやつがよー、ある、ひ、一人 のやつが歩 いとってよー、友達 か。ほんで、こうやって、つららが落 ってきて頭 に刺 さってよー、頭 の上 に刺 さってよー、そのまま家 に帰 ってよー、ほんで、お母 さんが見 やってなー、つららが頭 に刺 さったって、うわー、てなってなー。そんなん言 うとった。言 うとらへんた? - A:
知 らん。知 らない。
- B:
嘘 や、言 うとったで。嘘 だ、言 っていたよ[注 20]。
- A:
嘘 や。嘘 だ。
- B:ほんま。つららが
刺 さったまま帰 ってなー、お母 さんがびっくりしゃった、言 うて。本当 。つららが刺 さったまま帰 ってねえ、お母 さんがびっくりした[注 21]、と言 って。
- A:なんかなあ。
- なんだかなあ。
- B:そんなもん、
気付 くに決 まったる。つららがぼこって頭 に刺 さってよ。- そんなもの、
気付 くに決 まっている。つららがぼこって頭 に刺 さってさ。
- そんなもの、
- 2002
年 に収録 された旧 能登川 町 乙女浜 の老人 と調査 者 (大橋 )の会話 の一部 [45]。
大橋 :何 かー、変 な天気 んなってきましたねー。老 男 :ほーよー。のくとい よいー日 やったけんど。- そうそう。
温 かい良 い日 だったけど。
- そうそう。
大橋 :もーそろそろーお仕事 皆 さん始 まるんですか。老 男 :いま⤵ なわしろやがな。今 は苗代 だよ。
大橋 :あー。苗代 ねー。あー。老 男 :えー⤵。手 ーでー 蒔えてー⤵。芽 ー出 やえてー⤵。- ええ。
手 で蒔 いて。芽 を出 させて。
- ええ。
- ほれを
田 ーんぼえ もてってー。- それを
田 んぼへ持 って行 って。
- それを
- もの、ま、けさでー、まー、あのー、
田 え もってくのが なえとりやけんど。まー、もーちょっと ハウスがあるさけーに。ハウスえ もっていごおけえなー⤵。おらー まー⤵ もー ばーさん(=妻 のこと)とでも やれるさけえに、つとめに出 らうてもええけんど。- (
訳 不明 )で、まあ、あの、田 へ持 っていくのが苗 取 りだけれど。まあ、もうちょっとハウスがあるから。ハウスへ持 って行 こうかな。私 はまあもう妻 とでもできるから、勤 めに出 なくてもいいけれど。
- (
- このー
土 曜日 曜日 の あいだにー田 んぼへ出 すのわ やっとかんとなー⤴。- この
土曜日 日曜日 の間 に田 んぼへ出 すのはやっておかないとねえ。
- この
調査 の世話人 :そーですねー。大橋 :じゃー、明日 は かき入 れで。明日 は大変 だ。老 男 :えー、で、まー おれにも かんじょー あわえんしー⤴。(笑 )- ええ、それで、まあ
私 にも勘定 が合 わないといけないし。
- ええ、それで、まあ
- ながなが ほー おもうよーに いかんがなー。へーえー。へへ。
- なかなかそう
思 うようにいかないよ。ええ、へへ。
- なかなかそう
江 州 弁 ゆかりの著名 人 [編集 ]
伊藤 忠兵衛 (二 代 ) -犬上 郡 豊郷 町 出身 の実業 家 。言葉 への関心 が高 く、昭和 30年代 初頭 に郷里 の方言 調査 を発願 したことがある。これを受 けて藤谷 一 海 らが方言 調査 を行 い、1975年 に『滋賀 県 方言 調査 』が刊行 された。田中 養 達 -彦根 市 (旧 南 青柳 村 )出身 の政治 家 。江 州 弁 丸出 しの毒舌 を交 えた演説 で知 られた[46]。田中 理紗 -近江八幡 市 出身 のNHKアナウンサー。新潟放送 時代 、新潟 県 のローカル番組 『NEXT!』で「今 すぐ使 える滋賀 弁 講座 」コーナーを担当 していた。西村 頼子 -女優 。NHK連続 テレビ小説 『スカーレット』で滋賀 ことば指導 を担当 。野村 正 育 -草津 市 出身 のNHKアナウンサー。NHK教育 の番組 『ことばおじさんのナットク日本語 塾 』の「アナウンサーの方言 ファイル」コーナーで「いこう(=「いかい」の連用形 )」「ほやほや」「三方 よし」を紹介 したことがある。橋本 奈穂子 -長浜 市 (旧 木之本 町 )出身 のNHKアナウンサー。『ことばおじさんのナットク日本語 塾 』の「アナウンサーの方言 ファイル」コーナーで「だんない」「うい」「きゃんす」を紹介 したことがある。松居 一代 -近江八幡 市 出身 の女優 。NHKの番組 『ふるさと日本 のことば』で滋賀 県 のゲストに登場 し、ずっと使 われてほしい滋賀 県 の方言 として「ごきげんさん」を紹介 した。
脚注 [編集 ]
注釈 [編集 ]
- ^ #
筧 1982に「滋賀 県 方言 は京都 の言語 文化 圏 に属 し、京都 と共通 の特徴 をもっていることは、今 さら例 をあげるまでもない。」とある。 - ^ #
井之口 1961に「大津 の娘 に、大津 ことばと京 ことばとの相違 を聞 いたら、『大津 は京都 の田舍 弁 ですよ』と答 えてくれた。」とある。 - ^
京都 市内 で働 く滋賀 県 出身 女性 へのインタビュー(廣戸 惇 「特集 ・壁 としての敬語 方言 敬語 から共通 語 へ」『言語 生活 』1982年 4月 号 、筑摩書房 )
―御 郷里 の言葉 と京都 のことばの違 いは。
そうですね。京都 のことばが滋賀 の言葉 よりやわらかいですね。滋賀 県 の方 が汚 い。
―どんなところですか。急 には思 い出 せませんけども、京都 の人 は、ソーエと言 わはるところが、エは最後 につけるでしょう。そういうところを滋賀 県 では言 ウテハッタデなど、品 が悪 いのではと。
―語尾 ですか。
ええ、語尾 。 - ^ 「キョートベンガ スコシ キタナク ナッタノガー ゴーシューベント ユーノカ。ハイ。ホーイニ イワレマス ネー⤵。(
京都 弁 が少 し汚 くなったのがあ江 州 弁 というのか。はい。そのように言 われますねえ。)<老 ・男 >」当 地点 地元 の人 のこの言 が、よく当 方言 の話 し調子 一般 を代弁 してくれている。(#大橋 2003) - ^ 「
滋賀 のことばは、京 ことばに似 ていますが、単刀直入 に話 し、行動 的 でことばが荒 くて強 い感 じを受 けます。しかし、そこに思 いやりがあり、温 かみがあります。(後略 )」(#NHK2005、松居 一代 のコメント) - ^ NHK『ふるさと
日本 のことば・滋賀 県 』内 のインタビューで、滋賀 県 の方言 について訊 ねられた大津 市民 は次 のように答 えている。(#熊谷 2003)
サーファー「滋賀 県 に方言 なんて、ありまへんで」女子 高校生 「滋賀 の方言 なんて、ないな」漁師 の一人 「ひどう、かわりまへんで」 - ^
琵琶湖 博物館 の区画 を除 き、#筧 1982によった。 - ^ 『
日本語 方言 辞典 <別巻 > ―全国 方言 会話 集成 ―』(2002年 、藤原 与一 、東京 堂 出版 )によると、1955年 の朽木 村 での方言 調査 でガ行 鼻濁音 が確認 されている。 - ^ #
服部 1990によると、湖東 地方 3地点 の60代 以上 の話者 への調査 で、以下 の語 で「○○○」という発音 も観察 されたという。近江八幡 市 沖島 の話者 - 「いごく(=動 く)」彦根 市 河原 ・能登川 町 垣見 の話者 - 「(金 が)かかる」「(これに)限 る」「(目 に)余 る」「頼 む(強 い依頼 口調 )」「(あれだけ働 いたら金 が)残 る」「(お前 が言 うことは良 う)わかる」「(わしはそう)思 う」「(そんなことされたら)困 る」(話者 によっては一部 のみ) - ^ 「いとしげ
無 い」ということで「憎 らしい」などの意 で用 いる地域 も少 なくない。 - ^
外村 繁 の小説 『澪標 』に次 のような一節 がある。
しかしその翌朝 から、たつは母 に叱 られ通 しである。まづ言葉 遣 ひが悪 いといつて叱 られる。
「目上 のお方 に、『来 やはつた』とはなんや。『来 なさつた』とか、『お出 でやした』とか言 ふもんや」 - ^
現在 関西 一 円 で使 われる「こーへん」は共通 語 の「来 ない」に影響 された新 方言 とされるが、それとは別 に湖北 では高齢 層 でも「こーへん」を用 いる。 - ^ 「あがて」に
近 い発音 。 - ^
言 い間違 い。 - ^
詠嘆 の語幹 用法 。 - ^ 「どー」に
近 い発音 。 - ^ 「ひた」に
近 い発音 。 - ^ 「わひ」に
近 い発音 。 - ^ 「
暑 て暑 て」の「つ」が無声 化 している。 - ^ a b c d e
軽 く見下 す気持 ちが込 められている - ^ a b
軽 い敬意 が込 められている
出典 [編集 ]
- ^ a b c d e #
井之口 ・福山 1952 - ^ a b c #
筧 1982 - ^
司馬 遼 太郎 『街道 をゆく』「近江 散歩 」 - ^
図録 ▽方言 に対 する感 じ方 (都道府県 比較 )、社会 実情 データ図録 、2009年 2月 16日 収録 、2010年 12月7日 閲覧 。 - ^ #
井之口 1961、153-154頁 。 - ^ #
筧 1962 - ^
琵琶湖 博物館 「2009年度 フィールドレポーター第 2回 調査 “近江 ことば いまむかし”調査 票 」2010年 3月 1日 閲覧 。 - ^ #
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筧 1982、63-64頁 。 - ^ #
筧 1982、64頁 。 - ^ a b #
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生田 早苗 「近畿 アクセント圏 辺境 地区 の諸 アクセントについて」『国語 アクセント論叢 』1951年 (井上 史雄 ほか編 『日本 列島 方言 叢書 13近畿 方言 考 1(近畿 一般 )』ゆまに書房 、1996年 に収録 。) - ^ #
平沢 1986 - ^ #
中山 1994 - ^
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月 10日 (火) 滋賀 県 長浜 市 に新規 オープン「モンデクール長浜 」開店 のお知 らせ”.平和 堂 (2005年 2月 ). 2022年 2月 5日 閲覧 。 - ^ 『
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参考 文献 [編集 ]
全般
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語彙
木村 恭 造 『生活 とことば―京都 ・滋賀 の暮 らし(方言 350語 )―』教育 出版 センター、1994年 。真田 信治 ・友定 賢治 『地方 別 方言 語源 辞典 』東京 堂 出版 、2007年 。中山 敬一 『北東 近江 の方言 』愚 林 工房 、1994年 。増井 金 典 編 『滋賀 県 方言 語彙 ・用例 辞典 』サンライズ出版 、2000年 。増井 金 典 編 『滋賀 県 ことば語源 辞典 』滋賀 ことばの会 、2001年 。
- その
他
服部 匡 「言語 島 ・滋賀 県 能登川 町 北部 のアクセント」『言語 学 研究 第 9号 』、京都 大学 言語 学 研究 会 、1990年 。大橋 勝男 「日本 諸 方言 についての記述 的 研究 (43)滋賀 県 神崎 郡 能登川 町 乙女浜 方言 について」『新潟大学 教育 人間 科学 部 紀要 人文 ・社会 科学 編 』第 5巻 第 2号 、新潟大学 、2003年 、ISSN 13442953、NAID 110004463560。滋賀 県 文化 振興 事業 団 『湖 国 と文化 第 103号 』サンライズ印刷 出版 、2003年 。増井 金 典 「日本語 と滋賀 の言葉 」熊谷 直孝 「地域 にみる、滋賀 の方言 の特徴 」
- NHK
放送 文化 研究所 、柴田 実 監修 『NHK 21世紀 に残 したい ふるさと日本 のことば④近畿 地方 』学習研究社 、2005年 。
関連 項目 [編集 ]
- 『ぼてじゃこ
物語 』 - 1971年 に放送 された花 登 筺(大津 市 出身 )脚本 のドラマ。滋賀 県 が舞台 であり、題名 の「ぼてじゃこ」とは「腹 がぼてっとした取 るに足 らぬ小 魚 (そこから転 じて、ぼて腹 の妊 婦 )」を意味 する俚言 である。 滋賀 県立 彦根 東 高等 学校 - 1970年代 半 ば「方言 研究 クラブ」が存在 し、熊谷 直孝 の指導 の元 で、主 に湖東 地方 の滋賀 県 方言 調査 を活発 に行 っていた。- 『Axis powers ヘタリア』 - ベルギーを
擬人 化 させたキャラクターの口調 が「滋賀 弁 」と設定 されている。
外部 リンク[編集 ]
日本 のふるさとことば集成 〜近畿 〜[1] -国立 国語 研究所 が刊行 した全国 方言 談話 データーベース。滋賀 県 では甲賀 町 神 の方言 が収録 されており、一部 のサンプルを聞 くことができる。平山 輝男 関連 資料 近畿 -北 杜 市 金田一 春彦 記念 図書館 が所蔵 する平山 輝男 の方言 調査 資料 。湖北 地方 各地 および大津 市 、旧 愛知川 町 での音声 記録 が公開 されている。声 の玉手箱 —愛 荘 町 有線 放送 アーカイヴズから— -滋賀県立大学 細 馬宏 通 研究 室 による愛 荘 町 有線 放送 書 き起 こしプロジェクト。昭和 の旧 秦荘 町 ・愛知 川 町民 の肉声 を聞 くことができる。- ほっこりおせんどさんで(ウェブアーカイブ) -
滋賀 県 学習 情報 提供 システム「におねっと」にある、長浜 市 高月 町 井口 の方言 を紹介 するページ。 - Web
日本語 わたしの好 きなお国 ことば【第 38回 】われは「うみ」の子 (ウェブアーカイブ) - 47都道府県 ずつ、各界 著名 人 が好 きなお国 ことばを紹介 するコラム。滋賀 県 の回 では朝日放送 ディレクター松本 修 (高島 市 マキノ町 海津 出身 )が「うみ」にまつわる俚言 を取 り上 げている。 - アナウンサー
方言 ファイル(ウェブアーカイブ) - NHKアナウンサールームホームページにある、NHKアナウンサーが出身 地 の方言 を動画 で紹介 するコーナー。日本 地図 の滋賀 県 の箇所 を選択 すると、野村 正 育 と橋本 奈穂子 の動画 を視聴 できる。 - ネット
上 で閲覧 できる江 州 弁 に関 する主 な論文 佐藤 虎男 「近畿 ・中部 接 境 地方 方言 状態 の調査 報告 」『国文学 攷』第 17号 、広島大学 国語 国文 学会 、1957年 4月 、51-63頁 、ISSN 0287-3362、NAID 120000875437。江端 義夫 「滋賀 県 東浅井 郡 浅井 町 三田 方言 における身体 感覚 を表 すオノマトペ」『方言 資料 叢 刊 』第 2号 、方言 研究 ゼミナール、1992年 4月 、99-105頁 、ISSN 0917-3277、NAID 120000880041。橘 幸男 「滋賀 県 大津 市 坂本 方言 における身体 感覚 を表 すオノマトペ」『方言 資料 叢 刊 』第 2号 、方言 研究 ゼミナール、1992年 4月 、106-111頁 、ISSN 0917-3277、NAID 120000880266。井上 博文 「滋賀 県 伊香 郡 西浅井 町 塩津浜 方言 の助数詞 」『方言 資料 叢 刊 』第 6号 、方言 研究 ゼミナール、1996年 11月、184-191頁 、ISSN 0917-3277、NAID 120000879869。井上 博文 (dec 1997). “滋賀 県 伊香 郡 木之本 町 田居 方言 の待遇 表現 ”.方言 資料 叢 刊 (方言 研究 ゼミナール) (7): 104-110. ISSN 0917-3277. NAID 120000880103 .東 和枝 「滋賀 県 湖南 方言 における原因 ・理由 の接続 助詞 について」『阪大 社会 言語 学 研究 ノート』第 1号 、大阪大学 大学院 文学 研究 科 社会 言語 学 研究 室 、1999年 3月 、44-52頁 、doi:10.18910/23170、NAID 120004921933。井上 博文 「滋賀 県 高島 郡 安曇川 町 上小川 方言 の副 助詞 (日本語 方言 副 助詞 の研究 )」『方言 資料 叢 刊 』第 8巻 、方言 研究 ゼミナール、2000年 、144-150頁 、ISSN 09173277、NAID 120000879895。- “
近江 ことば いまむかし”調査 結果 報告 (2009年 、琵琶湖 博物館 ) 酒井 雅史 「滋賀 県 長浜 市 における待遇 表現 の記述 :日本語 諸 方言 の待遇 表現 記述 にむけて」『待兼山 論叢 』第 46号 、大阪大学 大学院 文学 研究 科 、2012年 、81-96頁 、ISSN 0387-4818、NAID 120005399661。全国 方言 文法 辞典 資料集 (2)活用 体系 滋賀 県 長浜 市 方言 (2014年 、酒井 雅史 )