与那国よなぐに

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与那国よなぐに
与那国よなぐに方言ほうげん
与那国よなぐにぶつげん/ドゥナンムヌイ
与那国よなぐに空港くうこうにある看板かんばん
はなされるくに 日本にっぽん
地域ちいき 与那国島よなぐにじま
話者わしゃすう 393にん (2010ねん)
言語げんご系統けいとう
言語げんごコード
ISO 639-3 yoi
Glottolog yona1241[1]
消滅しょうめつ危険きけん評価ひょうか
Severely endangered (Moseley 2010)
 
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与那国よなぐに(よなぐにご)または与那国よなぐに方言ほうげん(よなぐにほうげん)は、沖縄おきなわけん与那国島よなぐにじまはなされている言語げんごもしくは琉球りゅうきゅう方言ほうげんである。地元じもとではドゥナンムヌイばれる。琉球りゅうきゅう諸語しょご琉球りゅうきゅう琉球りゅうきゅう方言ほうげん)のひとつ。

話者わしゃすう[編集へんしゅう]

国立こくりつ国語こくご研究所けんきゅうじょ推計すいけいによれば、話者わしゃは2010ねん時点じてんで393にん当地とうち住民じゅうみんでも60だいなかばをさかいはなせるものまれになり、年少ねんしょうしゃはなせず理解りかいすることもできない[よう出典しゅってん]。2009ねん2がつユネスコにより消滅しょうめつ危機きき言語げんごの「重大じゅうだい危険きけん」(severely endangered)と分類ぶんるいされた[2][3][ちゅう 1]

音韻おんいん[編集へんしゅう]

音韻おんいん体系たいけい[編集へんしゅう]

  • 母音ぼいん音素おんそ/i, a, u/
  • 半母音はんぼいん音素おんそ/j, w/
  • 子音しいん音素おんそ/h, kʔ, k, g, ŋ, tʔ, t, d, n, c, s, z, r, p, b, m/
  • はく音素おんそ/N/

与那国よなぐにはa、i、uの3母音ぼいん体系たいけいで、にち琉諸なかもっと母音ぼいんすうすくない。そのためそれぞれの具体ぐたいてき音声おんせいにはかなりのゆれがある。母音ぼいん/i/は、[i]~[e]のひろがりをったおとであり、[ji]、[ʔi]のおとつ。また強調きょうちょうするときには[sagei](さけだよ!)のように[ei]とも発音はつおんされる[4][5]母音ぼいん/u/も、[u]~[o]のゆれがあり、[ʔu]、[wu]のおとつ。助詞じょし[duː](よ)などでは[dɔu]のようにひろく[ɔu]と発音はつおんされる[5][4]

母音ぼいん長短ちょうたん弁別べんべつてきでないとされるが、助詞じょしなどがかない1モーラのかたり基本きほんてきちょう母音ぼいんする。[6]したがって、[naː]()、[kiː](木)もくのようになる。

半母音はんぼいん音素おんそのうち、/j/は語頭ごとうつことができないが、すべての子音しいんむすびつくことができる[5]。/w/は、/ŋ, m, c, r/以外いがいすべての子音しいんむすびつくことができる[5]

子音しいんでは軟口蓋なんこうがい破裂はれつおん歯茎はぐき破裂はれつおんに、ゆうおん(k, t)と喉頭こうとうおん(kʔ, tʔ)との区別くべつがあるのがおおきな特徴とくちょうである。きた琉球りゅうきゅう諸語しょごでも区別くべつがあるが、宮古みやふる八重山やえやまではみとめられない。またこの区別くべつは、与那国よなぐにでは語頭ごとうのみにみとめられ、かたりちゅうではほとんど喉頭こうとうおんとして実現じつげんする(よってほんこう以下いか記述きじゅつではかたりちゅうʔ省略しょうりゃくして表記ひょうきする)[7]。/c/および/p/も音声おんせいてきには喉頭こうとうおとだが、対応たいおうするゆうおんけており弁別べんべつてき特徴とくちょうではない[5]

ゆうごえ軟口蓋なんこうがいおんは、鼻音びおんの/ŋ/が破裂はれつおん/g/と対立たいりつしている。ŋは琉球りゅうきゅう諸語しょごのなかでは与那国よなくに奄美あまみ喜界島きかいじまにしかみとめられない。また/z/はかたりれいきわめてすくなく、語頭ごとうにおいて/za/、/zja/としてあらわれるのみでちゅう語尾ごびではあらわれない[5]

はく音素おんそには/N/(撥音はつおん)があり、/Q/(促音そくおん)は与那国よなくにみとめられない。/N/の音声おんせいは、後続こうぞく子音しいんおうじて[m, n, ŋ]としてあらわれる。(れい)[mmi](つめ)、[nta](土)、[ŋkadi](百足むかで)[8]

以下いか与那国よなくにあらわれるはく一覧いちらん。//にかこまれた部分ぶぶん音素おんそ表記ひょうき、[]にかこまれた部分ぶぶん具体ぐたいてき音声おんせいである。

与那国よなぐにはく体系たいけい[9]
/i/ /a/ /u/ /ja/ /ju/ /wa/
/Ø/ /i/
[ʔi]
[ji]
/a/
[ʔa]
/u/
[ʔu]
[wu]
/ja/
[ja]
/ju/
[ju]
/wa/
[wa]
/h/ /hi/
[çi]
/ha/
[ha]
/hu/
[ɸu]
/hja/
[ça]
/hju/
[çu]
/hwa/
[ɸa]
/kʔ/ /kʔi/
[kʔi]
/kʔa/
[kʔa]
/kʔu/
[kʔu]
/kʔja/
[kʔja]
  /kʔwa/
[kʔwa]
/k/ /ki/
[ki]
/ka/
[ka]
/ku/
[ku]
/kja/
[kja]
/kju/
[kju]
/kwa/
[kwa]
/g/ /gi/
[gi]
/ga/
[ga]
/gu/
[gu]
/gja/
[gja]
  /gwa/
[gwa]
/ŋ/ /ŋi/
[ŋi]
/ŋa/
[ŋa]
/ŋu/
[ŋu]
/ŋja/
[ŋja]
   
/tʔ/ /tʔi/
[tʔi]
/tʔa/
[tʔa]
/tʔu/
[tʔu]
/tʔja/
[tʔja]
/tʔju/
[tʔju]
/tʔwa/
/tʔwa/
/t/ /ti/
[ti]
/ta/
[ta]
/tu/
[tu]
/tja/
[tja]
/tju/
[tju]
/twa/
[twa]
/d/ /di/
[di]
/da/
[da]
/du/
[du]
/dja/
[dja]
  /dwa/
[dwa]
/c/ /ci/
ʔi]
/ca/
[tsʔa]
/cu/
[tsʔu]
/cja/
ʔa]
   
/s/ /si/
[ʃi]
/sa/
[sa]
/su/
[su]
/sja/
[ʃa]
/sju/
[ʃu]
/swa/
[swa]
/z/   /za/
[dza]
  /zja/
[dʒa]
   
/r/ /ri/
[ɾi]
/ra/
[ɾa]
/ru/
[ɾu]
/rja/
[ɾja]
   
/n/ /ni/
[ni]
/na/
[na]
/nu/
[nu]
/nja/
[ɲa]
  /nwa/
[nwa]
/p/ /pi/
[pʔi]
/pa/
[pʔa]
/pu/
[pʔu]
/pja/
[pʔja]
  /pwa/
[pʔwa]
/b/ /bi/
[bi]
/ba/
[ba]
/bu/
[bu]
/bja/
[bja]
/bju/
[bju]
/bwa/
[bwa]
/m/ /mi/
[mi]
/ma/
[ma]
/mu/
[mu]
/mja/
[mja]
   
はく音素おんそ /N/
[n, m, ŋ, ɴ]

日本語にほんごとの対応たいおう[編集へんしゅう]

与那国よなぐにでは、日本語にほんご本土ほんど方言ほうげん)のeがiに、oがuになっている。ただしス、ツ、ズにたいしては、与那国よなぐにでは/i/が対応たいおうする。

母音ぼいん対応たいおう関係かんけい
日本語にほんご
与那国よなぐに /a/ /i/ /u/ /i/ /u/
子音しいん対応たいおう関係かんけい
日本語にほんご 与那国よなぐに
k(かたりちゅう g
g(かたりちゅう ŋ
j(語頭ごとう d
w b
z d

与那国よなぐにでは、かたりちゅうのカぎょう子音しいん濁音だくおんし/g/となる。ただしキは/ti/が対応たいおうする。(れい)[agiruɴ](ける)、[iti](いき)。一方いっぽう本来ほんらいのガぎょう子音しいん鼻音びおん/ŋ/となる。(れい)[aŋaruɴ](がる)。ただしギは/gi/または/di/となる[5][10]。またヤぎょう子音しいん与那国よなくにではおも語頭ごとうで/d/が対応たいおうしている。かたりちゅうではjのものもある。(れい)[damuɴ](む)、[uja](おや)。みなみ琉球りゅうきゅう諸語しょご共通きょうつうする特徴とくちょうとして、ワぎょう子音しいんは/b/が対応たいおうする。(れい)[bagaɴ](わかい)、[buɴ](る/をる)。サぎょうでは、日本語にほんごのサ・セ・ソは/sa/、/si/、/su/となるが、シ・スは/ci/となる[11]。ザぎょう子音しいんは/d/となる[5]。(れい)[adi](あじ)、[kidi](きず)。タぎょうでは、日本語にほんごのタ・テ・トは/ta/、/ti/、/tu/だがチ・ツは/ci/となる[11]。ハぎょう子音しいんは/h/となっており、pをとどめている宮古みやこ八重山やえやまとはことなっている。ただしヒは/ci/となっている。以上いじょうのように与那国よなくにでは、日本語にほんごのイだんおん子音しいん変化へんかさせているれいおおい。ナぎょうおよびマぎょうでは、ナ:/na/、ニ・ネ:/ni/、ヌ・ノ:/nu/、マ:/ma/、ミ・メ:/mi/、ム・モ:/mu/と対応たいおうしている[11]。ラぎょう子音しいんは/r/となるが、リの場合ばあいはrが脱落だつらくしiとなる[11]。また日本語にほんごのロ/ro/に/du/が対応たいおうすることもある[12]

与那国よなぐに喉頭こうとうおとは、語頭ごとうにおいて無声むせい阻害そがいおん+せま母音ぼいん連結れんけつ無声むせい子音しいんまえにあった場合ばあいに、だい1はく脱落だつらくし、その代償だいしょうとしてだい2はく子音しいん喉頭こうとうという特徴とくちょうくわわったものである[13]。(れい)[kʔuɴ](く)、[kʔuruɴ](つくる)、[kʔuriruɴ](ふくれる)、[kʔuɴ](ほこり)、[kʔuɴ](く)、[tʔaː](した)、[tʔuː](ひと)、[tʔiː](き)、[tʔiː](月)げつ[14]

また、kir・kus・sir・hirをふくかたりでは、rがsに音韻おんいん変化へんかこしたのちだい1はく脱落だつらくによってだい2はくのsがcに変化へんかしている[15][5]。(れい)[tsʔuɴ](る)、[tsʔaː](くさ)、[tsʔudaːri](しろい)、[tsʔuːma](昼間ひるま)。変化へんかは、宮古みやふるで[ffu](くろ)[16]八重山やえやまで[kisuɴ](る)[17]のようにあらわれる。

また、阻害そがいおん+せま母音ぼいん連結れんけつゆうごえ子音しいんまえにあった場合ばあい、/N/に変化へんかしている[18]。(れい)[ŋgi](ひげ)、[nni](ふね)、[ndai](ひだり)。

音調おんちょう(アクセント)[編集へんしゅう]

与那国よなぐにには3パターンの音調おんちょうがた存在そんざいし、研究けんきゅうによってAがた・Bがた・Cがた[19]/こうがたていかた下降かこうがた[20]などとばれる。Aがた/こうがたいち音節おんせつ場合ばあいたかく、音節おんせつ以上いじょうかたり場合ばあい最初さいしょ音節おんせつのみひくく、それ以降いこうたか発音はつおんされる。Bがた/ていかた場合ばあい音節おんせつすうかかわらず全体ぜんたいひく発音はつおんされる。Cがた/下降かこうがた少々しょうしょうわりだねであり、かたり最後さいご音節おんせつ軽音けいおんぶしならばAがた/こうがたおなじになるが、最後さいご音節おんせつじゅう音節おんせつ(ちょう母音ぼいん重母音じゅうぼいん撥音はつおんわるかたり)ならばその音節おんせつ下降かこうして発音はつおんされる。軽音けいおんぶしかたりでAがた/こうがたとCがた/下降かこうがた見分みわけるには、たとえば=n「も」をけ、じゅう音節おんせつ形成けいせいすればよい。[21]たとえば下表かひょうのように「はし」「はし」は単語たんご単独たんどく場合ばあいどちらもていこう発音はつおんされるが、=nをうしろにつけると「はし」のほうにのみかくれていた下降かこう調ちょうあらわれる。

かくれた下降かこう調ちょう出現しゅつげん
音調おんちょうがた 接尾せつびなし =n「も」
Aがた /haci/ ていこうはし

[haʧʔi]

/haci=n/ ていこうはしも」

[haʧʔiŋ]

Cがた /haci/ ていこうはし

[haʧʔi]

/haci=n/ ひくくだはしも」

[haʧʔiŋ]

ただし与那国よなくに音程おんていはばちいさく、かたりがどの音調おんちょうがたぞくするのか判断はんだんしにくい。[22]またCがた/下降かこうがたかたりではすえ音節おんせつ軽音けいおんぶしでもはん下降かこう実現じつげんする場合ばあいがあるという研究けんきゅうもある。[23]さらに上野うえの(2010)では、上記じょうきの3種類しゅるい音調おんちょうがたおさまらないものがあるとしている。[24][ちゅう 2]

文法ぶんぽう[編集へんしゅう]

動詞どうし形態けいたいろん[編集へんしゅう]

規則きそく活用かつよう動詞どうし[編集へんしゅう]

与那国よなぐに動詞どうし基本きほんてき構造こうぞうは、つぎひょうあらわされる[25]。このうち0と5の要素ようそのみが必須ひっすであり、たい極性きょくせいそう時制じせいによりあいだに1 - 4が挿入そうにゅうされる[25]。5の命令めいれい禁止きんし勧告かんこく中止ちゅうし接辞せつじは、3・4に接続せつぞくすることはない[25]

与那国よなぐに動詞どうし構造こうぞう[25]
0 1 2 3 4 5
語根ごこん 使役しえき
-(a)mir-
受身うけみ
-arir-
否定ひてい
-anu-
完了かんりょう
-(j)a-/-(j)u-
現在げんざい
∅/-u-
過去かこ
-(i)ta-
直接ちょくせつ
-N
連体れんたい
-∅/-ru
過去かこ
-(i)ta-
状況じょうきょう
-uba/-iba
条件じょうけん
-ja
命令めいれい
-i
禁止きんし
-(u)Nna
勧告かんこく
-(i)NdaNgi
中止ちゅうし
-i

与那国よなぐに動詞どうし語形ごけい変化へんかは、にち琉語ぞくなかでおそらくもっと複雑ふくざつなシステムをっている[25]動詞どうし語根ごこん接辞せつじ両方りょうほうに、複数ふくすう形態けいたいがあり、そのわせパターンから動詞どうしは15しゅのクラスにけられる。

ある動詞どうし命令めいれいがた完了かんりょうがたふたつをれば、音韻おんいん環境かんきょうによって動詞どうしクラスを機械きかいてき特定とくていできる。[26]与那国よなぐに動詞どうしはグループ>しょうグループ>クラスのさん段階だんかいけられ、[ちゅう 3]命令めいれいがたることでしょうグループまで特定とくていできる(ただし命令めいれいがた語根ごこん母音ぼいん語根ごこん場合ばあいのぞく)。いで完了かんりょうがたればクラスが特定とくていでき、これで活用かつようがたまさしくみちびすことができる。なお命令めいれいがた接辞せつじは-iであり、ただいちとおりしかない。したがって、たとえば命令めいれいがたがkagiとあればかならずkag-iと分解ぶんかいできる。

与那国よなぐに動詞どうしクラス
  1. Cグループ:命令めいれいがた語根ごこんがr以外いがい子音しいんわるもの。
    1. Kしょうグループ:命令めいれいがた語根ごこんがk,g,ŋでわるもの。
      1. K/YAクラス:命令めいれいがた語根ごこんがk,gでわり、完了かんりょうがたにjaをるもの。
      2. ŋ/YAクラス:命令めいれいがた語根ごこんがŋでわり、完了かんりょうがたにjaをるもの。
      3. K/Uクラス:完了かんりょうがたがuをるもの。
    2. Cしょうグループ:それ以外いがい
      1. C/YAクラス:このしょうグループはすべてこのクラスになる。完了かんりょうがたはjaのみである。
  2. Rグループ:命令めいれいがた語根ごこんがrでわるもの。
    1. VRしょうグループ:命令めいれいがた語根ごこんがarまたはurでわるもの。
      1. AR/Aクラス:命令めいれいがた語根ごこんがarでわるもの。完了かんりょうがたはaのみである。
      2. UR/Uクラス:命令めいれいがた語根ごこんがurでわり、完了かんりょうがたにuをるもの。
      3. UR/WAクラス:命令めいれいがた語根ごこんがurでわり、完了かんりょうがたにaをるもの。
    2. IRしょうグループ:命令めいれいがた語根ごこんがirでわるもの。
      1. IR/Uクラス:完了かんりょうがたにuをるもの。
      2. IR/YAクラス:完了かんりょうがたにjaをるもの。
      3. IR/YUクラス:完了かんりょうがたにjuをるもの。
      4. UIR/WAクラス:命令めいれいがた語根ごこんがuirでわり、完了かんりょうがたにaをるもの。
  3. Vグループ:命令めいれいがた語根ごこん母音ぼいんわるもの。*このグループのみ、しょうグループの特定とくてい完了かんりょうがたまたは中止ちゅうしがた情報じょうほう必要ひつよう
    1. VSしょうグループ:完了かんりょうがたおよび中止ちゅうしがた語根ごこんがsでわる。このしょうグループの完了かんりょうがたつねにjaになる。
      1. AS/YAクラス:命令めいれいがた語根ごこんがaでわり、完了かんりょうがたにjaをるもの。
      2. US/YAクラス:命令めいれいがた語根ごこんがuでわり、完了かんりょうがたにjaをるもの。
    2. Vしょうグループ:それ以外いがい
      1. A/Aクラス:命令めいれいがた語根ごこんがaでわり、完了かんりょうがたにaをるもの。
      2. U/WAクラス:命令めいれいがた語根ごこんがuでわり、完了かんりょうがたにaをるもの。

それぞれのしょうグループにはい動詞どうしには、たとえば以下いかのものがある[27][28]

  • 1.1.Kしょうグループ:sunk-u-N(く)、sag-u-N(く)、haŋ-u-N(くばる)、tʔiNg-u-N(つなぐ)、tudug-u-N(とどく)、birag-u-N(ひらく)、aig-u-N(あるく)、niŋ-u-N(ねがう)。
  • 1.2.Cしょうグループ:tat-u-N(つ)、niNd-u-N(ねむる)、kaNd-u-N(こうむる)、Nd-u-N(う)、Nn-u-N(る)、tub-u-N(ぶ)、dum-u-N(む)、c-u-N(る)、c-u-N(る)、mut-u-N(つ)、um-u-N(つむぐ)、nucim-u-N(ぬすむ)、tarum-u-N(たのむ)。
  • 2.1.VRしょうグループ:Ngar-u-N(れる)、hudur-u-N(成長せいちょうする)、kʔur-u-N(つくる)、Nkar-u-N(かう)、hadimar-u-N(はじまる)、maŋar-u-N(がる)、ar-u-N(あらう)。
  • 2.2.IRしょうグループ:bacir-u-N(わすれる)、kir-u-N(する)、hir-u-N(く)、ubuir-u-N(おぼえる)、ugir-u-N(きる)、aŋir-u-N(げる)、tir-u-N(る)、utir-u-N(ちる)、nadir-u-N(でる)、Nnir-u-N(ぬ)、abir-u-N(ぶ)、irir-u-N(れる)、abatir-u-N(あわてる)、cidikʔir-u-N(つづける)。
  • 3.1.VSしょうグループ:maga-N(く)、karaga-N(かわかす)、kja-N(す)、Nna-N(なす)、ugu-N(こす)、hu-N(す)、Nbu-N(ふかす)、kuru-N(ころす)、bata-N(わたす)、kaina-N(える)、pira-N(つぶす)。
  • 3.2.Vしょうグループ・Aクラス:hu-N(べる)、ku-N(う)、kʔu-N(使つかう)、baːru-N(わらう)。
  • 3.2.Vしょうグループ・Uクラス:dugu-N(やすむ)、u-N(う)、umu-N(おもう)。

このうちいくつかのクラスについて、おも接辞せつじ接続せつぞくした場合ばあい語形ごけいしめしたものが以下いかである[27]

クラス かたりれい 使役しえき 否定ひてい 条件じょうけん 現在げんざい直接ちょくせつ
(終止しゅうし)
命令めいれい 状況じょうきょう 禁止きんし 過去かこ 完了かんりょう
C/YA tatamiruN tatanuN tatja tatuN tati tatuba tatuNna tatitaN tatjaN
K/U sagamiruN saganuN sagja saguN sagi saguba saguNna satitaN satuN
AR/A れる NgaramiruN NgaranuN Ngarja NgaruN Ngari Ngaruba NgaNna NgataN NgaN
IR/U わすれる bacimiruN baciranuN bacirja baciruN baciri baciruba baciNna bacitaN bacuN
AS/YA magamiruN maganuN   magaN magai magaiba magaNna magataN magasjaN
US/YA hwamiruN hwanuN   huN hui huiba huNna hutaN husjaN
A/A べる hamiruN hanuN   huN hai haiba huNna hataN haN
U/WA やす dugamiruN duganuN   duguN dugui duguiba duguNna dugutaN dugwaN

Cクラスの「つ」の場合ばあいは、1種類しゅるい語根ごこんtat-が抽出ちゅうしゅつできるが、Kクラス「く」の場合ばあい語根ごこんがsag-とsat-の2種類しゅるいある。ARクラスの「れる」ではNgarとNgaの2種類しゅるいある。このように与那国よなくに動詞どうし語根ごこんには複数ふくすう形態けいたいがある。

与那国よなぐに形態けいたい動詞どうし接尾せつびには、使役しえき-(a)mir-、過去かこ-u-/-∅-、過去かこ-(i)ta-、状況じょうきょう(-すれば)-uba/-iba、禁止きんし-(u)Nna、連体れんたい-ru/-∅、完了かんりょう-(j)a-/-(j)u-がある。[29]このうち連体れんたいがた一部いちぶ変格活用へんかくかつようをする動詞どうし形容詞けいようしおよ完了かんりょうがた過去かこがたにのみ-ruを使つかい、それ以外いがい場合ばあい終止しゅうしがたから-Nをったかたち使つかう。[30]完了かんりょうがたで-a-けい使つかうか-u-けい使つかうかはほとんどの場合ばあい意味いみによってまり、主語しゅご動作どうさぬし場合ばあいはaけいを、そうでない場合ばあいはuけい使つかう。[31][ちゅう 4]。それ以外いがい接辞せつじをどのように選択せんたくするかは活用かつようクラスによってまっている。

以下いかに、クラスごとの語根ごこん接辞せつじわせをひょうにする。ただし完了かんりょうがただけがことなるクラスについてはおなぎょうにし、完了かんりょうがたれつのみ/でけてしめした。語根ごこんまつれつにある「C」は任意にんい子音しいんあらわす。なお、与那国よなぐにでは以下いか音素おんそ配列はいれつ規則きそくがあるため、ひょうちゅうの※しるし箇所かしょではこの規則きそく適用てきようされる。たとえばAクラスのhu-N(べる)の完了かんりょうがた//ha-a-N//は、音素おんそ配列はいれつ規則きそく3により実際じっさいには/haN/となる。UIRクラスのubuir-u-N(おぼえる)の使役しえきがた//ubui-amir-u-N//は、規則きそく1によりubuamiruNとなったものにさらに規則きそく2が適用てきようされて/ubwamiruN/となる。

音素おんそ配列はいれつ規則きそく[27]
  1. 母音ぼいんまたはjのまえのiが削除さくじょされる。(ij→j、ii→i、ia→a、iu→u)
  2. aのまえのuがwに置換ちかんされる。(ua→wa)
  3. おな母音ぼいん連続れんぞくするときは一方いっぽう削除さくじょされる。(aa→a、ii→i、uu→u)
与那国よなぐに活用かつよう体系たいけい動詞どうし語根ごこん接辞せつじわせ)[27][28]
グループ
クラス
語根ごこんまつ 接辞せつじ
志向しこう 使役しえき 否定ひてい 受身うけみ 条件じょうけん 命令めいれい3 終止しゅうし 連体れんたい 命令めいれい 状況じょうきょう 命令めいれい2 禁止きんし 過去かこ 中止ちゅうし 終止しゅうし2 完了かんりょう
C C C -C- -uː -amir- -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba   -uNna -ita- -i -i -ja-
K K -k/kʔ/g- -uː -amir- -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba   -uNna        
-t-                         -ita- -i -i -ja-/-u-
ŋ -ŋ- -uː -amir- -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba   -uNna        
-d-                         -ita- -i -i -ja-
R VR AR -ar- -uː -amir- -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba            
-a-                       -Nna -ta- -i -i -a- ※3
UR -ur- -uː -amir- -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba            
-u-                       -Nna -ta- -i -i -a- ※2/-u- ※3
IR IR -ir- -uː   -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba            
-i   -mir-                   -Nna -ta- -i ※3 -i ※3 -ja- ※1/-u- ※1/-ju- ※1
UIR -uir- 不明ふめい   -anu- -arir- -ja 不明ふめい -u-N -u -i -uba         不明ふめい  
-ui- -amir-
※1、2
                -Nna -ta- -i ※3 -a- ※1、2
V VS AS -Ca- -amir-
※3
-anu-
※3
-arir-
※3
    -∅-N -∅ -i -iba -iba -Nna -ta-      
-Cas-                           -i -i -ja-
-C-[ちゅう 5]         -jaː         -uba            
US -u- -amir-
※2
-anu-
※2
-arir-
※2
    -∅-N -∅ -i -iba -iba -Nna -ta-      
-us-                           -i -i -ja-
V A -a-   -amir-
※3
-anu-
※3
-arir-
※3
        -i -iba -iba   -ta- -i -i -a- ※3
-u-           -∅-N -∅       -Nna        
U -C- -uː -amir- -anu- -arir-                        
-Cu-             -∅-N -∅ -i -iba -iba -Nna -ta- -i -i -a- ※2
グループ
クラス
語根ごこんまつ 志向しこう 使役しえき 否定ひてい 受身うけみ 条件じょうけん 命令めいれい3 終止しゅうし 連体れんたい 命令めいれい 状況じょうきょう 命令めいれい2 禁止きんし 過去かこ 中止ちゅうし 終止しゅうし2 完了かんりょう
接辞せつじ

※1 - 3については上記じょうき音素おんそ配列はいれつ規則きそく」を参照さんしょう

現在げんざいがた(終止しゅうしがたから-Nをのぞいたかたち)に接辞せつじには、-na(Yes/No疑問ぎもん)、-Nga(疑問ぎもん疑問ぎもん)、-Ndi(引用いんよう)、-Nsu(名詞めいし)とうがある[27][25]連体れんたいがた接辞せつじには、-ka(間接かんせつ疑問ぎもん)、-hadi(推測すいそく)とうがある[27][25]中止ちゅうしがた接辞せつじに、-ti(継起けいき)、-bi(理由りゆう)、-datana(同時どうじ)、-busa-N(願望がんぼう)、-war-u-N(尊敬そんけい)、-bu-N(完結かんけつしょう)とうがある[27][25]

変格活用へんかくかつよう動詞どうし[編集へんしゅう]

以上いじょうのルールにてはまらない変則へんそく活用かつよう動詞どうしがある。/aN/(「ある」もしくはコピュラ)、/buN/「いる」、/cuN/「る」、/iruN/「やる」、/kuN/「る」、/hajuN/「はいる」がそうである。このうち連体れんたいがた接辞せつじに-ruをるのは/aN/,/buN/,/cuN/のみっつで、それぞれ/aru/,/buru/,/curu/となる。

形容詞けいようし[編集へんしゅう]

与那国よなぐに形容詞けいようしは、ふる語根ごこんに「さあり」のいたかたち由来ゆらいし、のちに「さ」が脱落だつらくしたものである。たとえば終止しゅうしがたは、「たかさありむ」が八重山やえやま石垣いしがき方言ほうげんのようなtakasanとなり、「さ」がけてtaganとなった。[32]tagasanというかたち存在そんざいするようだが、taganとのちがいはいまのところ不明ふめいである。[33]

おさめ方言ほうげんの「たかい」の活用かつようしめす。

  連用形れんようけい1 条件じょうけんがた1 条件じょうけんがた2 連用形れんようけい2 終止しゅうしがた 連体れんたいがた 接続せつぞくがた
たか tagagu tagaru tagarjaː taga tagan tagaru taga
おも接辞せつじ narun(なる) ba(ば) minun(ない)
ŋisan(そうだ)
bi(て)
biti(て)

動詞どうし複雑ふくざつ仕組しくみをつのにたいして、形容詞けいようしすべ補助ほじょ動詞どうしanの接尾せつびによってつくられるため、1種類しゅるい活用かつようパターンしかない単純たんじゅん仕組しくみになっている。形容詞けいようし語根ごこんかならずaでわり、上述じょうじゅつのtagan(終止しゅうしがた)ならばtaga-nと分析ぶんせきされ、原則げんそくてき語根ごこんはtaga-のいちとおりしかない。[34]また語根ごこんに-guをけると副詞ふくしつくれる(taga-n⇒taga-gu:たかい⇒たかく)。[35]

敬語けいご[編集へんしゅう]

与那国よなぐに敬語けいごのルールは日本語にほんご標準ひょうじゅんことなっており、社会しゃかいてき関係かんけい心理しんりてき距離きょり、フォーマルさなどに関係かんけいなく、純粋じゅんすい年齢ねんれいのみによって敬語けいご使つかうかどうかがまる。ぶん種類しゅるいによって2種類しゅるい敬語けいごがある。ひと敬語けいごでは補助ほじょ動詞どうしとしてwarunが、普通ふつう語形ごけい補充ほじゅうがたとしてujan(がる)、warun(いらっしゃる)、mairun/maisun/kan-narun(くなる)がある。ふた敬語けいごでは補助ほじょ動詞どうしとしてwaranが、普通ふつう語形ごけい補充ほじゅうがたとしてcarirun(もうげる)、ujan(げる)、動詞どうし中止ちゅうしがた+ujan(してげる:turan「くれる/あげる」に対応たいおう)がある。なお参考さんこうとして尊敬そんけい謙譲けんじょうわけせているが、以下いかしるすようにひと敬語けいごかならずしも尊敬そんけいではなく、ふた敬語けいごかならずしも謙譲けんじょうではない。[36]

ひと敬語けいごは、ぶん与格よかくこうたないか、もしくは与格よかくこう人間にんげんでない場合ばあい適用てきようされうる。そのようなぶんで、ぶん主格しゅかくこう発話はつわしゃよりも年長ねんちょうである場合ばあい敬語けいご使つかわれる。

  • asa=ja ma i ujasj-a-n. : おじいさん=は もう ごはん(を) がった

ふた敬語けいごは、ぶん人間にんげん与格よかくこうち、かつ与格よかくこう主格しゅかくこうより年長ねんちょう場合ばあいもちいられる。

  • aŋa asa=nki unu ca=nu na cari-ta-n. : わたしが おじいさん=に その くさ=の 名前なまえ(を) もうげた

なお上記じょうきの2例文れいぶんでは、ひと敬語けいご尊敬そんけいふた敬語けいご謙譲けんじょうであるようにえるが、実際じっさいはそうではない。

たとえばつぎぶんは、「発話はつわしゃ<よしみさん<おばさん」という年齢ねんれいじゅんしたかたられるものである。おばさんが主格しゅかくこうであるが、このぶんにはよしみさんという人間にんげん与格よかくこうがあるため、ひと敬語けいご適用てきようされず、年長ねんちょうしゃたいする尊敬そんけい同値どうちではないことがわかる。さらに与格よかくこう主格しゅかくこうより年少ねんしょうのため、ふた敬語けいご適用てきようもない。結果けっか敬語けいご一切いっさい使つかわないぶんになっている。

  • obasan=ŋa josimisan=nki nnani c-ami-ta-n. : おばさん=が よしみさん=に 着物きもの(を) せた

またつぎぶん発話はつわしゃ自身じしん与格よかくこうであり、主格しゅかくこうのケイタが自分じぶんより年少ねんしょうという場合ばあいである。この場合ばあい年齢ねんれいのルールにしたがってふた敬語けいご使つかわれるため、これが謙譲けんじょう同値どうちでないことがわかる。

  • Keita=ŋa anu=nki nnani c-am-i wara-ta-n. : ケイタ=が わたし=に 着物きもの(を) せた

おも単語たんご[編集へんしゅう]

おさめ方言ほうげん

代名詞だいめいし[編集へんしゅう]

かたりうしろの記号きごう音調おんちょう。=はAがた、_はBがた、]はCがたあらわす。音調おんちょう不明ふめい部分ぶぶんしるしていない。[ちゅう 6]

代名詞だいめいし一覧いちらん
単数たんすう わけ 複数ふくすう わけ
一人称いちにんしょう anu] わたし banu] banunta] わたしたち(除外じょがいがた)
banta] わたしたち(包括ほうかつがた)
二人称ににんしょう nda= あなた ndi= ndinta= あなたたち
近称きんしょう ku= これ kuntati これら
中称ちゅうしょう u= それ untati_ それら
遠称えんしょう kari= あれ、かれ/彼女かのじょ kantati_ あれら、かれ
再帰さいき sa= 自分じぶん si 自分じぶんたち
再帰さいき du] 自分じぶん
dunudu
場所ばしょ近称きんしょう kuma] ここ kumanta ここら、ここらへん
場所ばしょ中称ちゅうしょう uma] そこ umanta そこら、そこらへん
場所ばしょ遠称えんしょう kama= あそこ kamanta あそこら、あそこらへん
疑問ぎもん有性ゆうせい ta= だれ tanta だれ
疑問ぎもん無性むしょう nu] なに
場所ばしょ疑問ぎもん nma] どこ
時間じかん疑問ぎもん ici] いつ
数量すうりょう疑問ぎもん iguci= いくつ
igurati= いくら

一部いちぶ代名詞だいめいしかくによって不規則ふきそく語形ごけいる。一人称いちにんしょう代名詞だいめいしたいして主格しゅかく=ŋa(が)、ぞくかく=nu(の)が場合ばあいと、場所ばしょ代名詞だいめいしところかく=ni(に)が場合ばあい以下いかのように変則へんそくてき語形ごけいになる。場所ばしょ代名詞だいめいしかんしては、語末ごまつのaがiに交代こうたいすることでところかく表現ひょうげんになる。

代名詞だいめいし不規則ふきそく語形ごけい
基本形きほんけい かく 特殊とくしゅ語形ごけい わけ
一人称いちにんしょう単数たんすう anu] 主格しゅかくぞくかく a=ŋa わたしが、わたし
一人称いちにんしょう複数ふくすう

(除外じょがいがた)

banu] 主格しゅかくぞくかく ba=ŋa

ba/banta]

我々われわれ

我々われわれ

banunta]
どう(包括ほうかつがた) banta]
場所ばしょ近称きんしょう kuma] ところかく kumi] ここに
場所ばしょ中称ちゅうしょう uma] umi] そこに
場所ばしょ遠称えんしょう kama= kami= あそこに
場所ばしょ疑問ぎもん nma] nmi] どこに

かく助詞じょし[編集へんしゅう]

与那国よなぐに付属ふぞく[37]
かたり わけ 例文れいぶん 例文れいぶんやく
=ja ~は kari=ja ku-n かれ
=du ~ぞ u=ŋa=du これぞ(まさに)
=ŋa ~が kari=ŋa ku-n かれ
=nu ~の kari=nu suŋuti かれほん
=nki ~へ

~に

isu=nki hir-u-n

kari=nki tura-n

いそ

かれにあげる

=ni (場所ばしょ)で、に

(時間じかん)に

isu=ni amb-u-n

isu=ni bu-n

unu basu=ni

いそあそ

いそにいる

そのとき

=gara ~から isu=gara su-ta-n いそから
=tu ~と kari=tu ku-n かれ
=si ~で katana=si cu-n かたな
  • =n
  • =bagin
~も
  • kari=n ku-n
  • kari=bagin ku-n
かれ
=ka ~より ku=ka maci これよりよい
=nta ~たち、~とか agami=nta 子供こどもたち
=ndi ~と ku-n=di n-ta-n るとった
=su ~の(じゅんからだ助詞じょし) n-ta-n=su=ja ったのは
=nni ~のよう u=nni=nu このような

「~の」にたる助詞じょしが=nuと=suに、「~と」にたる助詞じょしが=tuと=ndiにかれていることに注意ちゅうい。=niと=nkiはどちらも受動じゅどうぶん動作どうさぬしあらわすのに使つかえる。

与那国よなぐにでは目的もくてきかくあらわす「を」は存在そんざいせず、目的もくてきつねしるべになる。一方いっぽう主格しゅかくあらわ助詞じょしは=ŋa、主題しゅだいあらわ場合ばあいは=jaをる。主格しゅかくの=ŋaは他動詞たどうしぶんならばかなら使つかわれるが、自動詞じどうしぶん場合ばあいれがある。また、琉球りゅうきゅう諸語しょごでは主格しゅかくに「の」相当そうとうぞくかく助詞じょし(与那国よなくに=nu)を使つか用法ようほうられるが、与那国よなぐにには存在そんざいしない。[38][ちゅう 7]

数詞すうし類別るいべつ[編集へんしゅう]

数詞すうし[39]
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
与那国よなぐに数詞すうし tʔu tʔa mi du ici mu nana da kugunu tu
類別るいべつ[39]
かぞえる対象たいしょう 人間にんげん 動物どうぶつ 無生物むせいぶつ たいらなもの 樹木じゅもく にち 回数かいすう 歩数ほすう にぎ
与那国よなぐに類別るいべつ -taintu -gara -ci -ira -mutu -ka/-ga -muruci -mata -ka

たとえば「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ」であれば"tʔuci, tʔaci, mici, duci"('とぅち、'たち、みち、どぅち)のようになる。


与那国よなぐに方言ほうげんばんあめニモマケズ」

「アミンキン マギラヌ」 (あめニモマケズ)

アミンキー マギラヌンキ (あめニモマケズ)

カディンキー マギラヌンキ (ふうニモマケズ)

フユヌヒーサー ナチヌ アッツァンキ マギラヌンキ (ゆきニモなつあつサニモマケヌ)

ガーリナ ドゥバダ ムティ (丈夫じょうぶナカラダヲモチ)

ドゥグ ムタヌンキ (よくハナク)

イカナチン クンドゥンディラヌンキ (けつシテ瞋ラズ)

イッチン トゥグトゥ バライ=ブイ (イツモシヅカニワラッテヰル)

チニ ヌーマイ ドゥチク゜トゥ (いちにち玄米げんまいよんごうト)

ンストゥ イビタティヌ ダサイバ ハイ (味噌みそしょうシノ野菜やさいヲタベ)

ヌンクン (アラユルコトヲ)

ドゥヤ サンミンキ イリラヌンキ (ジブンヲカンジョウニにゅうレズニ)

ンニ トゥミ 'ティー トゥミ バガイ=ブイ (ヨクミキキシワカリ)

ウニティ バチラヌンキ (ソシテワスレズ)

ヌヌ マチ=キヌ ムリクヌ カタスバヌヌ (野原のはらまつはやしかげノ)

グマータティヌ カヤダティニ ブイティ (しょうサナかやブキノ小屋こやニヰテ)

アカ゜バラニ ダミ=ブル アガミカ゜ンナリタヤ (ひがし病気びょうきノコドモアレバ)

イティティ ンニ=トゥラシ (くだりッテ看病かんびょうシテヤリ)

イリバラニ バリ=キー=ワル アブタカ゜ンナリタヤ (西にしニツカレタははアレバ)

イティティ ウヌ マイヌ タバ カタミ (くだりッテソノいねノ朿ヲヒ)

ハイバラニ ンニンダギヌ 'トゥカ゜ワタヤ (みなみニサウナじんアレバ)

イティティ 'トゥーン シバキラヌンキ ンサンドンディ ンディ (くだりッテコハガラナクテモイヽトイヒ)

ニンバラニ ムンドゥ アラシグトゥカ゜ウグリ=ブイカ゜シヤ (きたニケンクヮヤソショウガアレバ)

バリンナ ウンニヌ クトゥ キンナンディ ンディ (ツマラナイカラヤメロトイヒ)

サリヌ バスヤ ヌダ ウトゥシ (ヒドリノトキハナミダヲナガシ)

ヒサル ナチヤ トゥンカ トゥンカ アイティ (サムサノナツハオロオロアルキ)

ブールニ キナラヌ=ムヌンディ ンダリ (ミンナニデクノボートヨバレ)

フミラリラヌタンティン (ホメラレモセズ)

クチサ ミヌンキー (クニモサレズ)

ウンニヌ ムヌンキドゥ (サウイフモノニ)

アヌヤ ナイブサル (ワタシハナリタイ)

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 2009ねん2がつ19にち発表はっぴょうアイヌ(15にん)より話者わしゃすうおお
  2. ^ たとえば/aragu/「非常ひじょうに、すごく」は平山ひらやま中本なかもと(1964)ではAがた/こうがたとされているが、上野うえの 2010調査ちょうさでは/a[raː!gu/となっている([は上昇じょうしょう、!ははん下降かこう)。また/itʔin/「一番いちばんもっとも、非常ひじょうに」は前者ぜんしゃ研究けんきゅうではAがた/こうがただが後者こうしゃ調査ちょうさでは/itʔin]/(Cがた/下降かこうがた)とあわせて/[it!tʔin/という音調おんちょう報告ほうこくしている。
  3. ^ グループ・しょうグループ・クラスによるさん段階だんかい分析ぶんせきは、山田やまだ 2016, pp. 270–271。
  4. ^ ただし/ŋarun/(れる)は意志いしてき動詞どうしだが完了かんりょう接辞せつじに-a-をり/ŋan/となり、/hirun/(く)は意志いしてき動詞どうしだが完了かんりょう接辞せつじに-ju-をって/hjun/となる。
  5. ^ このくだり活用かつようがたは、内間うちま(1984)でのみ報告ほうこくされている。
  6. ^ 以下いか代名詞だいめいし山田やまだ, ペラール & 下地したじ 2013, p. 297。
  7. ^ 当該とうがい論文ろんぶんでは、自動詞じどうしぶん主語しゅご動作どうさぬしせいたかいほど=ŋaをりやすいという可能かのうせいたかいとしている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Yonaguni”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/yona1241 
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  3. ^ 八丈はちじょう世界せかい2500言語げんご消滅しょうめつ危機きき 日本にっぽんは8対象たいしょう方言ほうげん独立どくりつ言語げんご ユネスコ”. 朝日新聞あさひしんぶん (2009ねん2がつ20日はつか). 2014ねん3がつ29にち閲覧えつらん
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  6. ^ 山田やまだ, ペラール & 下地したじ 2013, p. 291.
  7. ^ 中本なかもと 1976, p. 197.
  8. ^ 加治かじこう 1984, p. 346.
  9. ^ 中本なかもと 1976, pp. 188–189.
  10. ^ 中本なかもと 1976, pp. 199.
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  16. ^ 加治かじこう 1984, p. 262.
  17. ^ 加治かじこう 1984, p. 310。鳩間島はとまじまれい
  18. ^ Thorpe 1983, p. 48
  19. ^ 上野うえの 2010.
  20. ^ 山田やまだ, ペラール & 下地したじ 2013, pp. 293–294.
  21. ^ 山田やまだ, ペラール & 下地したじ 2013, p. 294.
  22. ^ 山田やまだ, ペラール & 下地したじ 2013, p. 293.
  23. ^ 中澤なかざわ 2018, p. 133.
  24. ^ 上野うえの 2010, p. 3.
  25. ^ a b c d e f g h 山田やまだ, ペラール & 下地したじ 2013.
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  27. ^ a b c d e f g 山田やまだ 2018.
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  35. ^ 山田やまだ, ペラール & 下地したじ 2013, p. 295.
  36. ^ 山田やまだ 2016b, pp. 148–156.
  37. ^ 狩俣かりまた 2015, p. 242.
  38. ^ 山田やまだ 2016, p. 174.
  39. ^ a b 山田やまだ, ペラール & 下地したじ 2013, p. 296.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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  • 山田やまだしんひろし与那国よなくに敬語けいご体系たいけい」『琉球りゅうきゅう諸語しょご 記述きじゅつ文法ぶんぽうⅢ』狩俣かりまたしげるひさへん)、琉球大学りゅうきゅうだいがく、2016ねんNCID BB21768049 
  • 山田やまだしんひろし「ドゥナン(与那国よなぐに)動詞どうし形態けいたいろん」『琉球りゅうきゅう諸語しょご古代こだい日本語にほんご 琉祖再建さいけんにむけて』田窪たくぼこうそく、ジョン・ホイットマン、平子ひらこ達也たつや (へん)、くろしお出版しゅっぱん、2016ねんISBN 978-4874246924 
  • 山田やまだしんひろし与那国よなくに動詞どうし形容詞けいようし活用かつようパラダイムと調査ちょうさ習得しゅうとく方法ほうほう」『「日本にっぽん消滅しょうめつ危機きき言語げんご方言ほうげん記録きろくと ドキュメンテーションの作成さくせい研究けんきゅう発表はっぴょうかいより』国立こくりつ国語こくご研究所けんきゅうじょ、2018ねん 
  • Thorpe, Maner Lawton (1983), “Ryūkyūan language history”, University of Southern California  博士はかせ論文ろんぶん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]