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クジラ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
くじらから転送てんそう
ザトウクジラ
およそ80しゅにおよぶ現生げんなまのクジラるい

クジラくじらさんしょううおえい: Whale)は、哺乳類ほにゅうるいクジラ、あるいはくじら偶蹄ぐうていくじら凹歯るいぞくする水生すいせい動物どうぶつ総称そうしょうであり、その形態けいたいからハクジラヒゲクジラ大別たいべつされる。

ハクジラのうち、比較的ひかくてき小型こがた成体せいたい体長たいちょうが5 m前後ぜんご以下いか)のたねイルカ区別くべつすることがおおいが、クジラるいをイルカとクジラに大別たいべつするのは人為じんい分類ぶんるいである。

分類ぶんるい進化しんか

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アンブロケトゥス復元ふくげん

クジラの祖先そせんは、新生代しんせいだいはじめしん初期しょきみなみアジアで陸上りくじょう生活せいかつをしていた肉食にくしょくせい哺乳類ほにゅうるいパキケトゥス仲間なかまとされている。かつては、あかつきしん原始げんしてきゆう蹄類であるメソニクスとの類縁るいえん関係かんけいかんがえられたが、近年きんねんでは現在げんざいカバ共通きょうつう祖先そせんつとかんがえられている。当時とうじはインド大陸たいりくがアジア大陸たいりく衝突しょうとつしつつあって、両者りょうしゃあいだにはのちヒマラヤ山脈ひまらやさんみゃくとして隆起りゅうきするあさうみひろがっており、クジラるいりくから海中かいちゅうへの進出しんしゅつは、その環境かんきょう適応てきおうしたものとされる。

上位じょうい分類ぶんるい

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1. ホッキョククジラ、2. シャチ、3. セミクジラ、4. マッコウクジラ、5. イッカク、6. シロナガスクジラ、7. ナガスクジラ、8. シロイルカ

クジラるいくじらるい)は哺乳類ほにゅうるいのうちローラシアじゅう上目うわめふくまれる。これまでは「クジラ order Cetacea」とリンネしき階層かいそう分類ぶんるい体系たいけいにおける階級かいきゅうかれていた。

近年きんねん分子ぶんし系統けいとう解析かいせきにより、クジラるい偶蹄ぐうているい内包ないほうされ、そのなかでもとくカバ姉妹しまいぐんをなすということがあきらかになっている[1][2]。これらをまとめたクレードくじら河馬かばがたるい Whippomorpha命名めいめいされた[3]

クジラるいのぞきゅう偶蹄ぐうていがわ系統けいとうとなるため分岐ぶんき分類ぶんるいがくにおける分類ぶんるいぐんたん系統けいとうぐんクレード)としてみとめられなくなる。そこでこれを解消かいしょうするため、クジラきゅう偶蹄ぐうていわせたたん系統けいとうぐん くじら偶蹄ぐうてい Cetartiodactyla新設しんせつするこうえと[2]あたらしい分類ぶんるいぐんめいもちいるべきではなく偶蹄ぐうてい Artiodactyla をクジラるいふくむことでたん系統けいとうとなるように拡張かくちょうすべきとするかんがえがある[4]。クジラるい上位じょういにこのいずれかのいた場合ばあい、クジラ階級かいきゅうとしてあつかうことはできないため、その場合ばあいクジラるい下目しためinfraorder Cetacea相当そうとうとすることがある[5]

下位かい分類ぶんるい

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クジラるい現生げんなまたねヒゲクジラハクジラけられる。ヒゲクジラるい濾過ろか摂食せっしょく適応てきおうし、しょうさかなプランクトンよう小型こがた生物せいぶつおもべるが、ハクジラるいおも魚類ぎょるいやイカるいべる。

ハクジラるい
一生いっしょうあいだかならっており、「くじらひげ」はない。そと鼻孔びこう1個いっこであるが、すこちゅうはいったところで2みちかれている。現生げんなま種類しゅるいは10、30あまりぞく、70しゅにのぼる。マッコウクジラアカボウクジラゴンドウクジラぞくなどにぞくするやく20しゅのぞくハクジラるいはみな小型こがたで、いわゆるイルカるいといわれている。

分布ぶんぷ

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クジラには一定いってい生息せいそく場所ばしょはないが、元来がんらい比較的ひかくてき暖海だんかいのものとかんがえられる。それが水温すいおん高低こうていたいして適応てきおう範囲はんいひろくなり、かつ食物しょくもつとう関係かんけい寒冷かんれいごくうみまで近寄ちかよるようになったものとおもわれる。たとえばシロナガスクジラナガスクジライワシクジラなどのヒゲクジラるいにおいては世界中せかいじゅう海洋かいよう分布ぶんぷしているが、食物しょくもつもとめる回遊かいゆうのため南北なんぼく両極りょうきょく付近ふきんあつまるのは有名ゆうめいである。しかし南北なんぼくりょう半球はんきゅうではぶしぎゃくのため、くじら赤道せきどうえて回遊かいゆうすることはほとんどない。ただしザトウクジラでは観測かんそくれいもある[6]

生物せいぶつがくてき形質けいしつ

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ハクジラとヒゲクジラの特徴とくちょうかく部位ぶい

ヒゲクジラおよびハクジラことなるため、それぞれのこう参照さんしょう。また、クジラの骨格こっかく特徴とくちょうについてくわしくは鯨骨げいこつ参照さんしょう

形態けいたい

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  • 前肢ぜんしさかなむねびれのようなかたち変化へんかしている。つめ存在そんざいしない。むねびれがない個体こたい存在そんざいする。
  • 後肢あとあし退化たいか外見がいけんじょう見当みあたらないが、その名残なごりともえる腰骨こしぼねが、孤立こりつしたほねとして筋肉きんにくなかうずもれて存在そんざいする。
  • はよく発達はったつし、その先端せんたんびれがあり、遊泳ゆうえいやくをなしている。びれは魚類ぎょるいちがって横向よこむき(水平すいへい)であり、クジラがからだ上下じょうげにくねらせて推進すいしんりょくすのに適応てきおうしたものである(魚類ぎょるいは、エイなどの例外れいがいのぞからだ左右さゆうにくねらせる。
  • 頸椎陸生りくせい哺乳類ほにゅうるいおなじように7あるが、ひらたくなり、あるしゅるいでは癒合ゆごうすうすくなくえる。このため、外見がいけんじょうくびにあたる部分ぶぶんがくびれていないのでさかなかたちている。
  • 鼓膜こまく三半規管さんはんきかんひとしはあるが耳殻じかくがなく、みみあなもふさがっている。聴覚ちょうかくほね伝導でんどうによりおこなっている。
  • 体毛たいもうくちまわりにすこのこっていて、いぬねこのひげに感覚かんかくであり、その部位ぶいには見当みあたらなく、またうろこもない。
  • 鼻孔びこうは、「テレスコーピング現象げんしょう」というクジラ独自どくじ進化しんか特徴とくちょう獲得かくとくしたため頭頂とうちょう移動いどうして、呼吸こきゅうをすることが容易よういになっている。テレスコーピング現象げんしょうは、クジラの進化しんかとき系列けいれつを、かたるうえで指針ししんとなる特徴とくちょうでもある。
  • セミクジラるいシロイルカなどわずかなものをのぞき、びれつ。ヒゲクジラではちいさいが、ハクジラるいではおおきく発達はったつしている。

生理学せいりがくてき特徴とくちょう

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  • エコーロケーションというちょう音波おんぱ使つか情報じょうほう知覚ちかくし、周辺しゅうへん環境かんきょう確認かくにん獲物えもの採取さいしゅ役立やくだてているといわれる。またれのなか意思いし疎通そつうも、エコーロケーションでおこなっているとかんがえられていて、調査ちょうさ研究けんきゅうすすんでいる。具体ぐたいてき研究けんきゅう結果けっかにおいては、エコーロケーションにより「レントゲンのように対象たいしょうぶつ骨格こっかくまで認識にんしきしているのではないか」ということや、シャチなどは、れの生活せいかついき距離きょりはなれていたり、家系かけい血筋ちすじとおざければ方言ほうげんなどにより「意思いし疎通そつうむずかしいのではないか」ということが推論すいろんされている。
  • 摂食せっしょくから出産しゅっさん育児いくじまですべて水中すいちゅうおこな完全かんぜん水生すいせい動物どうぶつである。睡眠すいみん水中すいちゅうるが、研究けんきゅう結果けっかによれば、右脳うのう左脳さのう同時どうじ睡眠すいみん状態じょうたいにせず交互こうごやすませているので、睡眠すいみんしながらおぼれることなくおよつづけることができる。なお、このような右脳うのう左脳さのう交互こうごやすませる睡眠すいみんは、鳥類ちょうるいおおくの哺乳類ほにゅうるいには一般いっぱんてきなものであることがられている。
  • うみむクジラはみずかこまれているのでみず必要ひつようがないようにおもわれがちだが、海水かいすい体液たいえき浸透しんとうあつによりすこしずつ水分すいぶん体外たいがいうしなわれて、水分すいぶんなんらかのかたちまないとんでしまう。クジラは、さかなのように海水かいすいから塩分えんぶん直接ちょくせつ濾過ろかして水分すいぶん器官きかんたないため、水分すいぶんのほぼすべてをえさからることになる。すなわち、えさ脂肪しぼう糖類とうるいタンパク質たんぱくしつなどが体内たいない代謝たいしゃによって燃焼ねんしょうしたときにできるみずである。これは、乾燥かんそう地帯ちたいカンガルーネズミいち生涯しょうがいみずまず、水分すいぶんえさだけにたよっているのとている。なお、クジラは一般いっぱん哺乳類ほにゅうるいくらべて尿にょう濾過ろかできるように腎臓じんぞう進化しんかさせ、水分すいぶん消失しょうしつ極力きょくりょくおさえながら余分よぶん塩分えんぶんなどを効率こうりつ排泄はいせつしている。
  • 皮膚ひふ乾燥かんそうえられないことや、自重じちょうにより内臓ないぞう圧迫あっぱくされ臓器ぞうき不全ふぜんこすことなどから、りくがることは短時間たんじかんであるか、もしくはまったくできない。
  • 陸生りくせい哺乳類ほにゅうるいおなじく鼻孔びこう噴気ふんきあな)をゆうし、はい空気くうき呼吸こきゅうをする。
  • 体温たいおんはほとんどの魚類ぎょるい[注釈ちゅうしゃく 1]のように外海がいかい温度おんど左右さゆうされることなく一定いっていゆたかである(種類しゅるいによりちがうがおおむね35℃-36℃)。
  • 普通ふつういち母体ぼたい子宮しきゅううち成長せいちょうし、出生しゅっしょう一定いってい期間きかん母乳ぼにゅう保育ほいくされる。

くじら生態せいたいけい

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くじら海洋かいようにおけるバイオマスのおおきさはふるくからられるところであり、その生態せいたいけいでの役割やくわりけっしてちいさくはない。

くじらしょうさかなオキアミなどのえさ大量たいりょうべ、同時どうじ大量たいりょう排泄はいせつするくそ動物どうぶつプランクトンしょうさかなえさとなり、植物しょくぶつプランクトン必要ひつよう栄養えいようしおとなって光合成こうごうせい促進そくしんする。植物しょくぶつプランクトンの増加ぞうか動物どうぶつプランクトンやイワシなどの魚類ぎょるい栄養えいよう豊富ほうふえさあたえて生育せいいくうながすことは自明じめいであるが、現在げんざい[いつ?]問題もんだいとなっている二酸化炭素にさんかたんそ大幅おおはば増加ぞうか懸念けねんされる。なかでもマッコウクジラ垂直すいちょく方向ほうこうへも栄養えいようしおはこぶ。すなわち、深海しんかい生物せいぶつえさにすることで、一旦いったんしずんだ栄養えいようしお海面かいめんまでげている[7]

おもにヒゲクジラの仲間なかまには魚類ぎょるいがつき下記かきのえびす伝承でんしょう根拠こんきょとなっており、とくカツオクジラニタリクジラカツオがつくのは共生きょうせいであると指摘してきされるが、ノルウェーでは1900年代ねんだいから、アイスランドの沖合おきあいでじゅうねんあいだくじらくした(1300とうほどれたものが、最終さいしゅうてきに15とうしかれなくなった)さいに、くじらについて回遊かいゆうする性質せいしつさかなまでいなくなり、一般いっぱん漁民ぎょみんからの抗議こうぎがあり、ノルウェー政府せいふりょう海外かいがいでの捕鯨ほげい推奨すいしょうした事例じれいがある[8]

くじら死後しご分解ぶんかいされ、海底かいていにおいては鯨骨げいこつ生物せいぶつ群集ぐんしゅう形成けいせいしているが、陸上りくじょう座礁ざしょうした死骸しがいカラスクマキツネなどの動物どうぶつべられて生物せいぶつ分解ぶんかいされる。うみりくでは動植物どうしょくぶつふくまれる窒素ちっそ同位どういたい割合わりあいことなり、環境かんきょうちゅうでの窒素ちっそ同位どういからだ測定そくていすることによって海洋かいよう生物せいぶつ陸上りくじょう生物せいぶつ栄養えいようげん(窒素ちっそげん)になっていることがあきらかになっている。同様どうように、捕食ほしょくされたくじら遺骸いがいふくまれる「うみミネラル」がくそなどをかいして、陸地りくち植物しょくぶつ吸収きゅうしゅうされ重要じゅうよう栄養分えいようぶんになり利用りようされる。含有がんゆうするミネラルには植物しょくぶつ成長せいちょうはやめる効果こうかもある。

知性ちせい

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クジラは指導しどう学習がくしゅう協力きょうりょく計画けいかく苦悩くのうすることでられている。おおくのクジラしゅしん皮質ひしつは、2007ねん以前いぜんはヒトのみに存在そんざいするとされた細長ほそなが紡錘形ぼうすいけい神経しんけい細胞さいぼう存在そんざいする。人間にんげんではこれらの神経しんけい細胞さいぼう社会しゃかいてき接触せっしょく情動じょうどう判断はんだん精神せいしん理論りろん関連かんれんする。クジラの紡錘形ぼうすいけい神経しんけい細胞さいぼうは、人間にんげん紡錘形ぼうすいけい神経しんけい細胞さいぼう位置いち相当そうとうするのう部分ぶぶんにあり、同様どうよう機能きのうゆうするとかんがえられる。

以前いぜんのうおおきさは動物どうぶつ知性ちせいおも指標しひょうとしてかんがえられていた。のうのほとんどの部分ぶぶん身体しんたい機能きのう維持いじ使用しようされるため、のう重量じゅうりょうたかければたかいほど、より複雑ふくざつ認知にんち技能ぎのう利用りようできるのう重量じゅうりょうえることを示唆しさする。アロメトリー分析ぶんせきによると、哺乳類ほにゅうるいのうおおきさは体重たいじゅうやく2/3じょうまたは3/4じょう比例ひれいする。動物どうぶつのうおおきさをアロメトリー分析ぶんせきもとづいて予想よそうするのうおおきさと比較ひかくするものにのう指数しすうがあり、この指数しすう動物どうぶつ知性ちせい指標しひょうひとつとして使用しようされる。マッコウクジラは地球ちきゅうじょう動物どうぶつでは最大さいだいのう重量じゅうりょうゆうし、成長せいちょうしたゆう平均へいきんのうおおきさは8000 cm3立方りっぽうセンチメートルであり、重量じゅうりょうは7.8 kgキログラムである。これに比較ひかくすると成人せいじん男子だんし平均へいきんのうおおきさは1450 cm3である。ベルーガやイッカクとうのハクジラののう重量じゅうりょう人間にんげんいでたかい。

小規模しょうきぼなクジラは複雑ふくざつ遊戯ゆうぎおこなうことでられている。れいとして、水中すいちゅう安定あんていしたそらしんのドーナツじょう渦巻うずまきリングや「バブルリング」をつくあそびがある。バブルリングの作成さくせいには、水中すいちゅう急速きゅうそく空気くうきき、これが水面すいめんじょうにリングとして表出ひょうしゅつするものと、反復はんぷくてきにリングじょうおよ停止ていしすることでらせんうず空気くうき噴出ふんしゅつする、おもな2つの方法ほうほうがある。かれらはまた渦巻うずまじょうのリングをむことをたのしむようで、多数たすう別々べつべつのバブルにみ、急速きゅうそく水上すいじょう上昇じょうしょうしたりする。これをあるしゅのコミュニケーションとかんがえるものもいる。クジラはまたりょうのためにバブルネット(あわあみ)をつくることでられている。

だい規模きぼなクジラもある程度ていどあそぶとかんがえられている。たとえばセミクジラはひれを水上すいじょうげ、長時間ちょうじかんそのままのポジションをたもつ。これは「セーリング」としてられる行動こうどうで、あそびの一種いっしゅかんがえられ、アルゼンチンやみなみアフリカの沿岸えんがんもっともよくられる。ザトウクジラもこれをおこなう。

コミュニケーション

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くじら反響はんきょう定位ていい

クジラの発声はっせいいくつかの目的もくてきたすとかんがえられている。ザトウクジラなどの特定とくていたねぞくするクジラはクジラのうたとしてられるメロディのようなおとはっして交信こうしんする。クジラはしゅによってきわめておおきなおとはっする。ザトウクジラのはっするおとはクリックおんなどの突発とっぱつおんであるが、ハクジラるいは2まんワットのおと(+73dBでしべるmまたは+43dBでしべるw)をはっするソナーを使用しようし、そのおと遠方えんぽうからでもこえるとされる。

捕獲ほかくされたクジラは人間にんげんのスピーチを模倣もほうすることでられている。科学かがくしゃにはクジラは人間にんげんとの意思いし伝達でんたつつよ希望きぼうするが、人間にんげんとはことなる発声はっせい構造こうぞうつため相当そうとう努力どりょくはらって人間にんげんのスピーチを模倣もほうするというせつ提唱ていしょうするものもいる。

クジラはホイッスルとクリックスとばれる音響おんきょう信号しんごうはっする。クリックスは広帯域こうたいいきでの急速きゅうそく突発とっぱつおんで、ソナーに使用しようされるが、ひく周波数しゅうはすうたい発声はっせいはコミュニケーションのようなエコロケーション用途ようと使用しようされることがある。れいとしてベルーガがはっするパルスおんがある。一連いちれんのクリックおんのパルスは35-50ミリセカンドの間隔かんかくはっせられ、一般いっぱんてきにクリックおん間隔かんかくはターゲットにたいするおと往復おうふく時間じかんより多少たしょうながい。ホイッスルはせま帯域たいいき周波数しゅうはすう変調へんちょう(FM)信号しんごうで、交信こうしんなどのコミュニケーションの目的もくてき使用しようされる。

クジラと人間にんげん環境かんきょう

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人間にんげん間接かんせつてきにクジラの脅威きょういになることがある。クジラが商業しょうぎょう漁業ぎょぎょうあみあやまって付随ふずい漁獲ぎょかくぶつとしてっかかったり、ばりをのみむことがある。クジラやその海洋かいよう哺乳類ほにゅうるいおおきな原因げんいんもうもうりょうがある。アカボウクジラは漁網ぎょもう頻繁ひんぱんからまる。クジラはまた海洋かいよう汚染おせんにも影響えいきょうされる。これらの動物どうぶつ食物しょくもつ連鎖れんさ上位じょういにあり、大量たいりょう有機ゆうき薬品やくひん体内たいない蓄積ちくせきしやすい。とくにハクジラはヒゲクジラと比較ひかくして食物しょくもつ連鎖れんさ上位じょういにあるため多量たりょう脂肪しぼうそうゆうし、母親ははおや毒素どくそ授乳じゅにゅうによりクジラに伝達でんたつされることがある。これらの汚染おせん物質ぶっしつ胃腸いちょうガンをこしたり、感染かんせんびょうにかかりやすくなる体質たいしつ形成けいせいしたりする。また、プラスチックのふくろなどの廃棄はいきぶつみ、汚染おせんされることがある。環境かんきょう保護ほごろんしゃ高度こうど海軍かいぐんのソナーがクジラを危険きけんにさらすとかんがえる。科学かがくしゃなかには、クジラが減圧げんあつ障害しょうがい経験けいけんする症候しょうこう指摘してきし、ソナーがクジラの浜辺はまべげをこすことを示唆しさするものもいる。

環境かんきょう保全ほぜん

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IWCは南極なんきょくかいくじらサンクチュアリとインド洋いんどよううみくじらサンクチュアリというふたつのクジラ保護ほご指定していした。南極なんきょくかいくじらサンクチュアリは30,560,860平方へいほうキロメートル(11,799,610平方へいほうマイル)を範囲はんいとし、南極なんきょくふくむ。インド洋いんどよううみくじらサンクチュアリは南緯なんい55以南いなんインド洋いんどよう禁漁きんぎょ指定していする。IWCは有志ゆうし団体だんたい条約じょうやくではない。いかなるくに国民こくみんもこれに束縛そくばくされることはなく、IWCはどう団体だんたいさだめるほう施行しこうすることはできない。

2013ねん時点じてん国際こくさい自然しぜん保護ほご連合れんごう(IUCN)は86しゅのクジラしゅ認識にんしきし、そのうち40しゅはクジラと考慮こうりょされる。6しゅが「深刻しんこく危機きき」(タイセイヨウセミクジラ)、「危機きき」(シロナガスクジラ、セミクジラ、イワシクジラ)、「危急ききゅう」(マッコウクジラ)に分類ぶんるいされ、危機ききひんしていると認識にんしきされる。21しゅは「データ不足ふそく」と分類ぶんるいされる。南極なんきょく北極ほっきょく生息せいそくするたね最近さいきん気候きこう変動へんどうとくうみごおりしょうける時期じき影響えいきょう危機ききひんしていると考慮こうりょされる。

くじら言葉ことば

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万葉集まんようしゅうでは、いまくじら(クジラ)をすとされる言葉ことばは「イサナ(くじらぎょくじらめい勇魚いさな不知ふちぎょ伊佐いさぎょ)」または「イサ」であり、捕鯨ほげいは「イサナトリ」「イサナトル」である。[9]

くじらさんしょううお(けいげい)」という呼称こしょう一般いっぱんてきであった。

「クジラ」というかたり歴史れきし

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貝原かいばら益軒えきけんちょ日本にっぽんしゃくめいちゅうさかな元禄げんろく13ねん1700ねん)や新井あらい白石はくせきちょあずまみやびじゅうきゅう鱗介りんかいとおる4ねん1719ねん)によれば、「ク」は古語こごくろあらわし「シラ」はしろあらわし「黒白くろしろ」で「クシラ」であった。その「シ」は「チ」にてんじて「クチラ」になり「チ」が「ヂ」にかわり「クヂラ」になったと解説かいせつしている。また、『日本にっぽん古語こごだい辞典じてん』では「ク」はかんで「だい」を意味いみし、「シシ」を「しし」、「ラ」を接尾せつびとしている。その、『大言たいげんうみ』では「クチビロ(口広くちひろ)が変化へんかしたものとし、『日本にっぽん捕鯨ほげい語彙ごいこう』では「クジンラ(きゅうひろ)」が変化へんかしたものとしている。

「クジラ」の表記ひょうき時代じだいによるうつわり
  • 奈良なら時代じだい(710 - 794ねん
    • 古事記こじき - 「ほどこせ」クヂラ。
    • 日本書紀にほんしょき - 「久治きゅうじりょう」クヂラ。記紀ききどもいまくじら(クジラ)をすかどうかは諸説しょせつある。
  • 平安へいあん時代じだい(794ねん-1185ねん
    • 新撰しんせんきょう - オスは「鼇(本来ほんらい大亀おおかめ意味いみ)」クチラ(久治きゅうじりょう)。メスは「さんしょううお」メクチラ(おんなひさし治良はるよし)。
    • 類聚るいじゅう名義めいぎしょう - オスは「きょきょうみぞきょうりゃくした文字もじとしている)」クヂラ、ヲクヂラ。メスは「さんしょううお」クヂラ、メクヂラ。

クジラにまつわる表現ひょうげん

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くじらからだあるいはくじらにくほんかわくろ表皮ひょうひしろ脂肪しぼうそう)に見立みたてた黒白くろしろのデザインに由来ゆらいするものがおおい。また、くじらおおきさをけた言葉ことばおおい。

新富しんとみまちのくじらようかん
  • 山鯨やまくじら(やまくじら) - おもいのししにく意味いみであるが、その獣肉じゅうにくとく野獣やじゅう)をさす場合ばあいもある。[10]
  • かわくじら(かわくじら) - くじらはらいろちがいをしてうつわくちくろくなっている茶碗ちゃわん湯呑ゆのみなどのこと。あるいはくじらにくほんかわ断面だんめんしたともいう。
  • くじらたい(くじらおび) - 昼夜帯ちゅうやおびという和服わふくおびひょううらがあり、くじらはらいろちがいをしてくじらたいばれる。
  • 鯨尺くじらじゃく(くじらじゃく) - くじらしともいい和裁わさいよう物差ものさし。もとくじらひげからつくられていた。
  • くじら豆腐とうふ(くじらとうふ) - 豆腐とうふ片面かためん昆布こぶなどで色付いろづけして白黒しろくろにしたもの
  • くじら羊羹ようかん(くじらようかん) - くじら羊羹ようかんとはくじらにく外観がいかんした和菓子わがし地域ちいきがある。
  • くじらもち(くじらもち) - くじらもちとはくじらにく外観がいかんした餅菓子もちがし地域ちいきがある。
くじらがね梵鐘ぼんしょう
  • 鯨幕くじらまく(くじらまく) - くろしろぬの交互こうごわせた(おも仏式ぶっしき葬儀そうぎさいもちいられる)まくくじらたい同様どうようくじらからだになぞらえて鯨幕くじらまくばれる。
  • くじらひゃくごう(くじらゆり) - ユリ料理りょうりほうひとつ。いたうすばすとかたちかわくじらるから「くじらひゃくごう」のいた。
  • 鯨飲げいいん(げいいん) - がぶがぶとさけよう
  • くじらおん(げいおん) - 釣鐘つりがねかねおとおとひびわたようくじらほえ(げいほう)もおな意味いみである。
  • くじらさんしょううお(けいげい・げいげい・げいじ) - くじらくじらさんしょううおめすくじらをさし、あわせてくじら意味いみする。おおきなくちちいさなえびさかなようから多数たすう弱者じゃくしゃ被害ひがいあたえる極悪ごくあくじんまたはその首謀しゅぼうしゃをさし、おおきな刑罰けいばつ罪人ざいにん意味いみする。
  • くじらがね(げいしょう) - 梵鐘ぼんしょうのことで、別称べっしょうとしてほかはなくじらきょくじらなどがある。金具かなぐ部分ぶぶん龍頭りゅうず)がりゅうしているのは、くじらおさえることができるのはりゅう以外いがいにないというせつがある。
歌川うたがわ国芳くによし:宮本みやもと武蔵むさしだいくじらくじら
  • くじら(げいどん) - おおきなくちちいさなえびさかなようから、強者きょうしゃ覇者はしゃ弱者じゃくしゃなどをむことや、つよくに地域ちいきよわくに地域ちいき吸収きゅうしゅう合併がっぺいまたは併合へいごうすることをさす。
  • 鯨波げいは(とき、げいは) - 大波おおなみときこえ「えいえい おうおう」をあらわす。「とき」という大和言葉やまとことばに「鯨波げいはかちどき」というてられたようで時間じかん間合まあいや機会きかいといった意味いみ使つかけられていたとするせつがある(一部いちぶ辞書じしょおなくくりになっている)くじらなみ(くじらなみ)くじら涛 (げいとう)も大波おおなみ意味いみする。
  • くじらおおとり(げいほう) - おおきいこと。または、おおきいもののたとえ。
  • すんくじら - 鹿児島かごしまべんはしすみ意味いみ
慣用かんよう
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  • 鯨波ときこえ(ときのこえ) - 上記じょうき鯨波げいはいてもおな意味いみである。ただし上記じょうきかちどきたたかいをしめすので戦場せんじょうでのだい人数にんずうこえあらわおもに「勝鬨かちどきこえ」と解釈かいしゃくされることもあるが、くじらほえという言葉ことばとの関連かんれん日本にっぽん合戦かっせんにおける史実しじつから合戦かっせん合図あいず大将たいしょうせんをはじめとする代表だいひょうせん名乗なのりなどという諸説しょせつがある。
  • くじらしゃち(くじらにしゃち) - きまとうことまたは、きまとって相手あいて被害ひがいあたえること。現在げんざいなら「ストーカー」とほとんど同意どういである。
  • くじら喧嘩けんか海老えびける(くじらのけんかにえびのせなかがさける) - 強者きょうしゃあらそいに弱者じゃくしゃまれ被害ひがいけること。
  • いわしもうくじら(いわしあみでくじらとる) - 予想よそうせずおおきな獲物えもの収穫しゅうかくること、おもいがけず幸運こううんめぐまれたりすることをさす。同義語どうぎごで「たなから牡丹餅ぼたもち」などがある。
  • ちょうくじら百川ももかわ うがごと(ちょうけいのひゃくせん すうがごとし) - だいさけのみのことでもと漢詩かんしである。
  • くじらさんしょううおあごにかく(けいげいのあぎとにかく) - くじらあごかりまれそうになったという言葉ことばから、九死きゅうし一生いっしょうよう体験たいけんをさす。
  • とらふく 野辺のべ くじらよせ うら(とらふす、のべ。くじらのよる、うら。) - とらくじら出没しゅつぼつするよう原野げんやうみがあるようところという言葉ことばから、未開みかいをさす。
クジラと文化ぶんか
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クジラと信仰しんこう

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クジラは世界せかいのさまざまな地域ちいき神聖しんせいされている。日本にっぽんにおいても、漁業ぎょぎょうしん漂着ひょうちゃくしん・「しん信仰しんこう」として神格しんかくされてきた。

世界せかい各国かっこく

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ノルウェー
ノルウェーなど北欧ほくおうでもくじらさかなんで豊漁ほうりょうをもたらすとの伝承でんしょうがあり、これもイワシクジラにSei(サイ)というさかなき、それをあつめるとされている[13]。なお、北欧ほくおう事例じれいについてはのちにはキリスト教きりすときょうむすびつけられて、かみ漁獲ぎょかくたすけとしてクジラをもたらしてくれているとの説明せつめい教会きょうかい関係かんけいしゃによってされたこともあったようである。ある教会きょうかい関係かんけいしゃは、漁民ぎょみんあらそいごとをおこすと、かみ不興ふきょうまねいてクジラがたすけてくれなくなるとの説明せつめいをしているが、一般いっぱんてき理解りかいであったかどうかは不明ふめいである。
ベトナム
ベトナムではクジラのことを cá ông (カー・オン)とんでふるくから信仰しんこう対象たいしょうとしてきた。cá は「さかな」の修飾しゅうしょくの ông は漢字かんじおう」に由来ゆらいし「おじいさん」の意味いみだが、年長ねんちょう男性だんせい一般いっぱんへの敬称けいしょうとしても汎用はんようされる言葉ことば全体ぜんたいとして「おやっさんぎょ」または“Sir fish”(さかなきょう)とでもうべき意味いみになるが、いずれにしても敬意けいい親愛しんあいじょうがこめられたである。
アボリジニ
オーストラリアきた海岸かいがんやその周辺しゅうへん島々しまじまアボリジニバンドウイルカトーテムとして神格しんかくし、シャーマンと交信こうしんして豊漁ほうりょうをもたらすとされる[14]

日本にっぽん

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アイヌ民族みんぞくくじらをもたらすとしてハクジラ(くじらるいシャチおきかみとしており、同様どうようれいとして捕鯨ほげいであった石川いしかわけん宇出津うしつ(うしつ)でも、捕鯨ほげい対象たいしょうくじらんでくれるシャチを「神主かんぬし」とんでいた。

日本にっぽんではくじら捕獲ほかく対象たいしょうであると同時どうじ信仰しんこう対象たいしょうであった。

恵比寿えびすとのどういち
恵比寿えびす
日本にっぽんでは、たい釣竿つりざお姿すがたられ漁業ぎょぎょうかみでもある「恵比寿えびす」とのどういちがなされた。由来ゆらいについては諸説しょせつあるが、現在げんざいでも漁師りょうしが、くじらカツオがつく様子ようすを「くじらき」とぶように、さかなぐん水先案内みずさきあんないとしてくじらるい目印めじるしとしていて、そのさかなぐんつけちから神聖しんせいしていたためといわれる。東北とうほく近畿きんき九州きゅうしゅうかく地方ちほうをはじめ日本にっぽん各地かくちで、くじらるい[注釈ちゅうしゃく 2]を「エビス」とんでいて、恵比寿えびす化身けしんかり姿すがたとらえて「神格しんかく」していた。これらはニタリクジラカツオいたり、イルカキハダマグロがつくように、くじらるいおなえさいわしなどの群集ぐんしゅうせいしょう魚類ぎょるい)をべるさかな生態せいたいからまれた伝承でんしょうであるとかんがえられ、水産庁すいさんちょう加藤かとう秀弘ひでひろはニタリクジラとカツオの共生きょうせい関係かんけいおよび、えびす信仰しんこうとの共通きょうつうてん指摘してきしている。
漂着ひょうちゃくしん
日本にっぽんにおいて「くじら」・「ながくじら[注釈ちゅうしゃく 3]ばれた漂着ひょうちゃくくじら[注釈ちゅうしゃく 4]もエビスとんで、後述こうじゅつのような資源しげん利用りようさかんであり、「しん信仰しんこう」の起源きげんともいわれている。とく三浦半島みうらはんとう能登半島のとはんとう佐渡さどとうなどに顕著けんちょのこり、伝承でんしょうされている。くじら到来とうらいは、七浦ななうらうるおうともいわれ、恵比寿えびすていして住民じゅうみんめぐみをもたらしてくれたものという理解りかいもされていた。もっとも土地とちによってぎゃく解釈かいしゃくもあり、恵比寿えびすであるくじらべると不漁ふりょうになるという伝承でんしょう存在そんざいした。
水神すいじん
海浜かいひん地域ちいきにおいて海上かいじょう安全あんぜん大漁たいりょう祈願きがんなどの「漁業ぎょぎょうかみ」としてまつっているが、いくつかの地域ちいきでは内陸ないりくにおいても河川かせん水源すいげんちかくにあるいわいしくじら見立みたてて、くじらせきくじらがんび、治水ちすい水源すいげんの「みずかみ」としてまつっているところもある。

捕鯨ほげい

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太地たいじまち - 和歌山わかやまけん日本にっぽんにおける捕鯨ほげい発祥はっしょうであるとわれている。

くじら利用りよう

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鯨骨げいこつ

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クジラの骨格こっかく標本ひょうほん

鯨骨げいこつ(クジラのほね)は先史せんし時代じだいから世界せかい各地かくち狩猟しゅりょうとして加工かこう利用りようされてきたことが、貝塚かいづか発掘はっくつから判明はんめいしている。

日本にっぽんにおいては縄文じょうもん時代じだい弥生やよい時代じだい貝塚かいづかから狩猟しゅりょうだけでなく、工業こうぎょう製品せいひん加工かこうする作業さぎょうだいや、宗教しゅうきょう儀式ぎしき使つかわれたと推察すいさつされる装飾そうしょく刀剣とうけん発見はっけんされ、色々いろいろかたちでクジラのほね利用りようがなされてきた。

江戸えど時代じだいにはくじら細工ざいくとして根付ねつけをはじめさまざまな工芸こうげいひん日本にっぽん伝統でんとう文化ぶんかとしてがれている。近代きんだいにおいて、マッコウクジラのは、象牙ぞうげなどと同様どうようものなどの工芸こうげいひん加工かこうされることがある。パイプ印材いんざいなどにもちいられたれいがある。

古来こらいからイヌイットはそだたない環境かんきょうきてきたため、住居じゅうきょ骨組ほねぐみにクジラのほね使つかっている。また近年きんねんではカナダアメリカ先住民せんじゅうみんであるイヌイットや、ニュージーランド先住民せんじゅうみんであるマオリが、歴史れきしてきにクジラを利用りようしてきた経緯けいいから、クジラのほね加工かこうした工芸こうげいひん作製さくせいしている。

イッカクきばは、ちゅう近世きんせいではくすりとしてもちいられた(ただし、一角獣いっかくじゅうかくとされ、くじらであることがられずに使つかわれることもおおかった)。

くじらにく

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ふるくからクジラから採取さいしゅしたにくかわべる習慣しゅうかんがあるくに地域ちいき存在そんざいする。 日本にっぽんインドネシアフィリピンノルウェーアイスランドグリーンランドフェロー諸島しょとうアラスカカナダなどであり、民族みんぞくてき文化ぶんかてき伝統でんとう食材しょくざいとして、調理ちょうりほう多岐たきわたっている。日本にっぽんでも多様たよう高度こうど洗練せんれんされた調理ちょうりほう存在そんざいし、和食わしょく文化ぶんか重要じゅうよう一部分いちぶぶんめている。食用しょくよう部位ぶい赤身あかみにくのみならず、あぶらがわ内臓ないぞう軟骨なんこつなどくに地域ちいきによって多様たようである。イギリスフランスなどの西にしヨーロッパでも食用しょくよう習慣しゅうかんがなかったわけではないが、近海きんかい資源しげん枯渇こかつなどから消滅しょうめつした。

くじらひげ

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クジラのヒゲ

くじらひげ」はヒゲクジラるいにのみられる部位ぶいで、うえあごの本来ほんらいえるべき部分ぶぶん皮膚ひふ変化へんかしてできたものである。つめおなじく終始しゅうしのびつづける特性とくせいち、両側りょうがわあわせて600まいちかくになることもある。くじらひげ捕食ほしょくさいかわりをおこなうもので、ヒゲクジラるい大量たいりょう海水かいすいとともにえさいこんだのち海水かいすいだけをきだしてえさだけをべるのだが、このときにえさくちのなかにとどめておくフィルターの役割やくわりたすのがひげである。おもえさちがいから、くじらしゅによって形状けいじょう性質せいしつはかなりことなる。 くじらひげ適度てきどかたさと柔軟じゅうなんせいかるさをそなえており、捕鯨ほげい発達はったつした地域ちいきでは、プラスチックがなかった時代じだいには工芸こうげいなどの分野ぶんやさかんにもちいられた。とくにセミクジラのものが長大ちょうだい柔軟じゅうなんなため珍重ちんちょうされた。日本にっぽんにおけるくじらひげ利用りよう釣竿つりざお先端せんたん部分ぶぶんぜんまいかみしも肩衣かたぎぬ整形せいけいするための部品ぶひんなど多岐たきにわたるが、とく有名ゆうめいなのは呉服ごふくざし(ここからいわゆる「鯨尺くじらじゃく」という単位たんいまれた)と文楽ぶんらく人形にんぎょうあたまうごかすための操作そうささくである。西洋せいようではコルセットドレスこしふくらませるためのほねとしてももちいられた。

鯨油げいゆ

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鯨油げいゆはクジラのあぶらがわほねなどから採取さいしゅしたあぶらであって、シロナガスクジラナガスクジライワシクジラひとしヒゲクジラるいからとったナガス鯨油げいゆと、マッコウクジラツチクジラひとしハクジラるいからとったマッコウ鯨油げいゆがあるが、たん鯨油げいゆといった場合ばあい前者ぜんしゃすことがおおい。

鯨油げいゆふるくから灯用とうよう石鹸せっけん原料げんりょうグリセリン原料げんりょう製革せいかく工業こうぎょう減摩げんまざいとう使用しようされていたが、近年きんねんでは硬化こうか鯨油げいゆとして食用しょくようマーガリン原料げんりょうなど)、化粧けしょうひん原料げんりょうなどさらに広範囲こうはんい利用りようされた。 クジラいちとうかられるあぶらりょうはシロナガスクジラでやく120バレルである。シロナガスクジラからとれるあぶらりょうのクジラからとれるあぶらりょう最小公倍数さいしょうこうばいすうであったため、捕鯨ほげい頭数とうすうなどはシロナガスに換算かんさんして表示ひょうじされた(BWU方式ほうしき)。

その部位ぶい

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メロンたい
マッコウクジラ頭部とうぶメロンたい周囲しゅうい繊維せんいたば千筋せんすじ)は、テニスラケットのガットにもちいられた。メロンたい皮膜ひまくは、太平洋戦争たいへいようせんそうなかには皮革ひかく原料げんりょう使用しようされた。
特別とくべつ部位ぶい
マッコウクジラのちょうない生成せいせいぶつ竜涎香りゅうぜんこうしょうし、香料こうりょうとして珍重ちんちょうされた。
一部いちぶ部位ぶい薬品やくひんるい原料げんりょうにももちいる。肝臓かんぞうからは肝油かんゆ採取さいしゅされる。脳下垂体のうかすいたい膵臓すいぞう甲状腺こうじょうせんなどからはホルモンざい生産せいさんされていた。
残滓ざんし利用りよう
鯨油げいゆ採取さいしゅしぼりかすや、食用しょくようがいにくなどは、肥料ひりょうよう使用しようされることがあった。日本にっぽんではくじらこえばれた。にくほねかわなどを石臼いしうすなどで粉砕ふんさいしたものであり、いわしこえなどと同様どうよう海産かいさん肥料ひりょうとして使つかわれた。江戸えど時代じだいから鯨油げいゆしぼかすさい利用りようとうとしておこなわれている。ただし鯨油げいゆ採取さいしゅしぼりかすは食用しょくようあぶらかす)にされることもあった。
明治めいじ時代じだい以降いこう近代きんだい捕鯨ほげい基地きちとして使つかわれた宮城みやぎけん牡鹿おしかまち鮎川あいかわはまげん石巻いしのまき)などでは、くじらこえ生産せいさん地場じば産業さんぎょうとしてさかえていた[注釈ちゅうしゃく 5]
食用しょくよう習慣しゅうかんのないおおくの近代きんだい欧米おうべい諸国しょこくでは、採油さいゆかない赤身あかみ主要しゅよう用途ようとであった。同様どうよう飼料しりょうにももちいられたことがある。とく毛皮けがわようミンク飼料しりょうおおもちいられた。イギリスなどではペットフードようにももちいた。

観光かんこう・ホエールウォッチング

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2008ねんには北極ほっきょく地方ちほうのぞくすべての海洋かいようで1300まんにん人々ひとびとがホエールウォッチングに参加さんかした。クジラへのがい最小さいしょうするためにルールや行動こうどう規範きはん制定せいていされた。アイスランド、日本にっぽん、ノルウェーには捕鯨ほげいとホエールウォッチングのりょう産業さんぎょう存在そんざいする。ホエールウォッチング・ロビイストはボートに近付ちかづいたり、ホエールウォッチングトリップで観光かんこうきゃくたのしませるもっと探究たんきゅうてきなクジラがどう領域りょういき捕鯨ほげい再開さいかいされたとき捕鯨ほげい最初さいしょ対象たいしょうになるのではと懸念けねんしている。ホエールウォッチングは世界中せかいじゅう旅行りょこう産業さんぎょう年間ねんかん21おくあめりかドル(14おくいぎりすポンド)の収益しゅうえき計上けいじょうし、やく13000にん雇用こようする。これにたいし、捕鯨ほげい産業さんぎょう捕鯨ほげいいち禁止きんしふくんでも年間ねんかん3100 あめりかドル(2000まんいぎりすポンド)の収益しゅうえき計上けいじょうする。産業さんぎょうおおきさときゅう成長せいちょうのために、クジラの自然しぜん資源しげんとしての最善さいぜん使用しようかんする複雑ふくざつ論争ろんそう捕鯨ほげい産業さんぎょうとのあいだこり、いまだに継続けいぞくしている。

ホエールウォッチングは、クジラが到来とうらいする地域ちいき貴重きちょう観光かんこう資源しげんとなっている。エリック・ホイト英語えいごばんによる2000ねん調査ちょうさによると、ぜん世界せかいでホエールウォッチングにおとずれるきゃくかずは1130まんにん(おそらく「/とし」)で、産業さんぎょう規模きぼとしては14おくドル以上いじょうとなっているという。

くじらしょくえさ消費しょうひりょう

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世界せかい海洋かいようにおけるくじらるい食物しょくもつ消費しょうひりょう

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財団ざいだん法人ほうじん日本にっぽんくじらるい研究所けんきゅうじょ計算けいさんによると、世界中せかいじゅうくじらるい(クジラ・イルカ・シャチ)がしょくするえさ消費しょうひりょうさかなイカなどの軟体動物なんたいどうぶつオキアミなどの甲殻こうかくるいわせると、2.5 - 4.3おくトンとされている。これは、1996ねん当時とうじにおける世界中せかいじゅう人間にんげんさかな消費しょうひりょう9せんまんトン[15] の3ばい-5ばい計算けいさんされる[16]保護ほごされたためにえすぎたくじらによって海洋かいようバイオマス生物せいぶつ資源しげん)は減少げんしょうしており、捕鯨ほげい海洋かいよう生物せいぶつ資源しげん保全ほぜんつながるという意見いけんもある。

クジラの消費しょうひするバイオマスのりょうについては、捕鯨ほげい賛成さんせい反対はんたいのそれぞれの立場たちばからの説明せつめいとなってしまうことがおおいが、かならずしも捕鯨ほげい賛成さんせい反対はんたい立場たちばからのみ発生はっせいした見解けんかいるとかぎることはできない。

  • 試算しさんには、捕鯨ほげい対象たいしょうしゅ以外いがいたねふくんでおり、捕鯨ほげい禁止きんしというかたち保護ほごされているのはくじらるいぜん80しゅあまりのなかの IWC で管理かんりされた13しゅぎない。
  • 世界中せかいじゅうくじらべるえさ種類しゅるいによってことなり、さかなやイカのなかには漁業ぎょぎょう競合きょうごうしないものや、プランクトンや深海しんかい棲のイカなどは、そもそも食用しょくよう資源しげんかないものもあり、直接ちょくせつ競合きょうごうしているのはわり程度ていどである。
  • 人類じんるい利用りようしにくい資源しげんをよりおお利用りようするため、リンさん資源しげん鯨油げいゆとして使用しようするなど食用しょくよう不向ふむきなクジラの利用りよう推奨すいしょうされることもある。たとえば深海しんかい棲のハクジラるい生息せいそくすう南極なんきょくにおいてクロミンククジラよりもおおいにもかかわらず資源しげんとして利用りようされていない[注釈ちゅうしゃく 6]。だが、深海ふかうみ棲のハクジラであるマッコウクジラ調査ちょうさ捕鯨ほげい対象たいしょうとしてもわずか5とう程度ていどしかられていないが、これは鯨油げいゆ需要じゅようすくなく、経済けいざい価値かちがほとんどないからである[17][注釈ちゅうしゃく 7]

といった事実じじつから、捕鯨ほげいがどの程度ていどとくにクジラをのぞ生物せいぶつ資源しげん管理かんり役立やくだつのか明確めいかくでないてんおおく、それをしめ研究けんきゅう結果けっかすくない。

現在げんざい群集ぐんしゅう生態せいたいがくによれば、実際じっさい生態せいたいけいはピラミッドじょう単純たんじゅん食物しょくもつ連鎖れんさではなく、食物しょくもつもうばれるもうのような複雑ふくざつ関係かんけいにあるとする知見ちけんられてきている[19]食物しょくもつもう概念がいねんによれば、たとえどのあみ箇所かしょでもれば全体ぜんたい影響えいきょうゆがみをあたえ、それと同様どうように、乱獲らんかく過剰かじょう保護ほご[注釈ちゅうしゃく 8]などの極端きょくたん資源しげん運営うんえいおこなえば、バイオマスのバランスがくずれる要因よういんになる。近年きんねんではEcopath with Ecosimなどの生態せいたいけいモデル (Ecosystem model) が開発かいはつされ、日本にっぽんでもクジラと漁業ぎょぎょう競合きょうごう関係かんけい調しらべるためにジャルパン2 (JARPN II) とばれる研究けんきゅうおこなわれており、その目的もくてきひとつがクジラをふくめたFood webを数値すうちモデルするための科学かがくてきデータの提供ていきょうとされる[20][21]

くじら食害しょくがいろん

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日本にっぽんくじらるい研究所けんきゅうじょ大隅おおすみ清治きよじ田村たむらつとむによる『世界せかい海洋かいようにおけるくじらるい食物しょくもつ消費しょうひりょう』をもとにしたとされるのが、くじら食害しょくがいろんである。

世界せかい海洋かいようにおけるくじらるい食物しょくもつ消費しょうひりょう』がくまでも食物しょくもつもう研究けんきゅうから、漁業ぎょぎょうくじらるい捕食ほしょく競合きょうごうしめそうとしているのにたいして、こちらの論説ろんせつでは、「くじらえすぎると魚類ぎょるいくす」という論旨ろんしであり、水産庁すいさんちょうなどが監修かんしゅうした一般いっぱん書籍しょせきにはおおられる。日本にっぽん捕鯨ほげい協会きょうかいによる簡単かんたん説明せつめい以下いかとおりである[22]

世界中せかいじゅうくじらるい捕食ほしょくする海洋かいよう生物せいぶつりょうは、世界せかい漁業ぎょぎょう生産せいさんりょうの3-5ばいのぼります。また、日本にっぽん近海きんかいにおいてくじらるいが、カタクチイワシサンマスケソウダラなど、漁業ぎょぎょう重要じゅうようぎょしゅ大量たいりょう捕食ほしょくしていることが内容ないようぶつ調査ちょうさあきらかになっています。くじらるい大量たいりょうさかな捕食ほしょくしていることは事実じじつであり、くじら間引まびくことでそのぶん人間にんげんさかな利用りようできることは間違まちがいありません。実際じっさいに、沿岸えんがん漁業ぎょぎょうしゃなどからクジラによる漁業ぎょぎょう被害ひがいたいする苦情くじょうており、早急そうきゅう対策たいさく必要ひつようです。
また、クジラはうみ食物しょくもつ連鎖れんさなかさい上位じょうい捕食ほしょくしゃであり、クジラだけをいたずらに保護ほごすることは海洋かいよう生態せいたいけいのバランスをくずすことになります。[22]

基本きほんてきに、クジラ二分にぶんするヒゲクジラくじらのほとんどは1ねんのうち1/4は極地きょくちえさし、のこりの3/4の期間きかん赤道せきどう付近ふきんえさべずに繁殖はんしょくおこなうため[23]れいとしてシロナガスクジラでは年間ねんかん自分じぶん体重たいじゅうの4ばい程度ていどしか食事しょくじをしないため、のイメージで大食漢たいしょくかんけられるものではないという意見いけんもある[24]とくにヒゲクジラくじら前述ぜんじゅつのように極地きょくちえさするため、地球ちきゅうじょう半分はんぶんである南半球みなみはんきゅうではしゅとして、南極なんきょくかいでもっとも豊富ほうふナンキョクオキアミ消費しょうひされるが、これは年間ねんかんすうせんまんトンの余剰よじょう資源しげんがある[25] とされる。ほかにもマッコウクジラはおも深海しんかい軟体動物なんたいどうぶつべ、ハクジラくじらるいには深海しんかい棲のイカるい依存いぞんするものがおおい。には砂浜すなはまゴカイなどのもの捕食ほしょくするコククジラやくじらるいそのものを捕食ほしょくするシャチなど、80しゅちかいクジラの生態せいたいおよびしょくせいはさまざまであり、また、ナガスクジラくじらしゅのようにその時期じきおおえさ生物せいぶつべるため、えさ生物せいぶつ特定とくていのものに限定げんていされるわけではないため[注釈ちゅうしゃく 9]人間にんげん漁業ぎょぎょう間接かんせつてきにしか競合きょうごうしていない部分ぶぶんおおきい。

科学かがくてき不確ふたしかな部分ぶぶんおおいと指摘してきたいして、田村たむらつとむはオキアミだけを捕食ほしょくしていた種類しゅるいもあり、不確ふたしかな部分ぶぶんおおく、このせつ世界せかいたただい提供ていきょうするためのものであると、それをみとめたうえでさらなる調査ちょうさ必要ひつようであるとしている[26]

後述こうじゅつとおり、ほんせつ様々さまざま批判ひはんけており、2009ねん6月の国際こくさい捕鯨ほげい委員いいんかい年次ねんじ会合かいごうにおいて、日本にっぽん政府せいふ代表だいひょう代理だいりとして参加さんかしていた森下もりした丈二じょうじ水産庁すいさんちょう参事官さんじかん)は、くじらるいによる漁獲ぎょかく被害ひがいせつ実質じっしつてき撤回てっかいしている[27]

批判ひはん

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イギリスの水産すいさん大臣だいじん当時とうじ)エリオット・モーリーは科学かがくてき不確ふたしかなてんおおく、くじら影響えいきょうからないので、商業しょうぎょう捕鯨ほげい再開さいかい理由りゆうたりえないとしている。

かつてくじらるい研究所けんきゅうじょ所属しょぞくしていた粕谷あらや俊雄としお教授きょうじゅくじらとくにナガスクジラくじら)は過去かこにはもっとおお生息せいそくしていたがさかながいなくなる現象げんしょうきておらず前提ぜんてい無理むりがある。漁獲ぎょかく対象たいしょうにしていない魚類ぎょるいくじらがどの程度ていどべているか明確めいかくでなく、あくまで仮定かていぎないとしている[26]粕谷あらやは、イルカなどの小型こがたくじらるいによる漁業ぎょぎょう資源しげんへの被害ひがいにも懐疑かいぎてき意見いけんしめしている[28]

研究けんきゅうしゃ関口せきぐちつよしゆう前述ぜんじゅつ捕鯨ほげいによって生物せいぶつもう調整ちょうせい漁業ぎょぎょう資源しげんやすあん現実げんじつせいについて、それはねつ帯域たいいきから極地きょくち生息せいそくするおよそ80種類しゅるいくじらるい管理かんりしなければならない、つまり地球ちきゅうじょう海洋かいよう全体ぜんたいのコントロールが可能かのうでなければできないことであり、現代げんだい科学かがく技術ぎじゅつでは当面とうめん不可能ふかのうである[29] とみている。

WWFジャパンはこの見解けんかいかんしては科学かがくてき根拠こんきょ不足ふそく指摘してきしている[30]

WWFジャパン自然しぜん保護ほご委員いいん松田まつだ横浜国立大学よこはまこくりつだいがく教授きょうじゅたしかに、日本にっぽんくじらるい研究所けんきゅうじょくじら沢山たくさん捕食ほしょくするのを証明しょうめいしているが、主要しゅよう生態せいたいがく教科書きょうかしょ引用いんようされる「ピーター・ヨッジスの間接かんせつ効果こうか理論りろん」によれば、食物しょくもつもう効果こうかかならずしも捕食ほしょく水産すいさん資源しげん減少げんしょうになるわけではないてん数学すうがくろんてき立証りっしょうされており、多数たすう生態せいたい学者がくしゃからも批判ひはんされていると農林水産省のうりんすいさんしょう会議かいぎ発言はつげんしている[31]

ミンククジラなどは、その海域かいいきおお生息せいそくするさかなべていると1998ねん報告ほうこくされた[32]

イギリスの環境かんきょう活動かつどうである George Monbiot国際こくさい通貨つうか基金ききん経済けいざい学者がくしゃとうは、クジラがリン鉄分てつぶん窒素ちっそ豊富ほうふふく栄養えいようしお海面かいめん供給きょうきゅうしたり死骸しがい海底かいていしずむことによって、表層ひょうそう生態せいたいけい基礎きそ生産せいさんひとしささえており、魚類ぎょるい植物しょくぶつプランクトン増加ぞうか二酸化炭素にさんかたんそ抑制よくせい炭素たんそ吸収きゅうしゅう貢献こうけんしていると指摘してきしており、くじら食害しょくがいろんたいしてぎゃく結論けつろんみちびいている[33][34]。このようなクジラによってもたらされる海洋かいよう生態せいたいけい循環じゅんかん機構きこうは「オキアミのパラドックス」とばれる場合ばあいもある[35][36]

大久保おおくぼ東海大学とうかいだいがく海洋かいよう学部がくぶ専任せんにん講師こうしは2009ねんのIWC会合かいごうでは日本にっぽん政府せいふ代表だいひょうだんが、くじらによる水産すいさん資源しげん減少げんしょうけてはいないとしたてんまえたうえで、前述ぜんじゅつ関口せきぐちつよしゆうせつつらなる、水産庁すいさんちょう目指めざくじらるい複数ふくすうしゅ一括いっかつ管理かんり実現じつげん可能かのうせいひく事実じじつ既存きそんのRMPを尊重そんちょうするべきであるとのこと)と仮説かせつにすぎないものを大々的だいだいてきにアピールするのは日本にっぽん科学かがく信頼しんらいせいそこねると農林水産省のうりんすいさんしょう会議かいぎ発言はつげんしている[37]

まえFAO水産すいさん局長きょくちょう野村のむら一郎いちろう上記じょうき松田まつだ大久保おおくぼ指摘してきする、このせつ科学かがくてき信憑しんぴょうせいひくてんまえて、捕鯨ほげい再開さいかいのためにくじらによる漁業ぎょぎょう被害ひがいをPRするのはむしろイメージてきくないのではないかとしている。

AAP通信つうしんによると世界せかい自然しぜん保護ほご会議かいぎにおいては、このせつ科学かがくてき証拠しょうこ不足ふそくしているとする動議どうぎに、日本にっぽんふくめた捕鯨ほげいこく署名しょめいする予定よていであったと報道ほうどうしている[38]

アメリカ海洋かいよう大気たいききょく海洋かいよう漁業ぎょぎょうきょく北東ほくとう漁業ぎょぎょう科学かがくセンターに勤務きんむする Peter Corkeron は、このせつ裏付うらづける科学かがくてき証拠しょうこ存在そんざいしないとべたうえで、漁獲ぎょかく資源しげん減少げんしょう理由りゆうとしてこのせつすことで、人間にんげんによる乱獲らんかくという根本こんぽんてき問題もんだいへの対処たいしょおろかになるという問題もんだい指摘してきしている[39]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ マグロカジキアオザメなどごく一部いちぶ魚類ぎょるいもうばれる組織そしきによって体温たいおん海水温かいすいおんよりもたかたもつことができる。
  2. ^ イルカふくくじらとした。
  3. ^ ながくじら」、「くじら」の意味いみについては捕鯨ほげい参照さんしょう
  4. ^ ほかに漂着ひょうちゃくぶつ水死すいしたいなどをも同様どうよう信仰しんこう対象たいしょうとしたれいがある。詳細しょうさいえびす参照さんしょう
  5. ^ 鮎川浜あゆかわはま場合ばあい食用しょくようてきさないマッコウクジラが対象たいしょうくじらしゅであったことなどから食用しょくようとされたくじらにくはごく一部いちぶであり、余剰よじょうくじらにくしょうじていた。これらは当初とうしょ海洋かいよう投棄とうきされていたが、周辺しゅうへん海面かいめん汚染おせんするとして地元じもと漁民ぎょみん反発はんぱつけたこともあって工業こうぎょう資源しげんされ成功せいこうしたものである。
  6. ^ 南極なんきょくのミナミツチクジラやミナミトックリクジラかずはクロミンククジラに匹敵ひってきし、べるイカをオキアミ換算かんさんするとクロミンククジラを上回うわまわるが、食料しょくりょう資源しげんとしての調査ちょうさ自体じたいおこなわれていない。こういったハクジラるい数少かずすくない利用りようれい千葉ちばツチクジラであり、これは地域ちいきてき嗜好しこうによるものであり、特殊とくしゅ事例じれいである。
  7. ^ なお、小松こまつは「常識じょうしきはウソだらけ」 では「くじら80しゅすべ食用しょくようになる」ともコメントしている[18]
  8. ^ ぞく過剰かじょう保護ほご影響えいきょうであるかのようにいわれるクロミンククジラの増加ぞうかくまでもくじらしゅ乱獲らんかくされた生態せいたいけい破壊はかい結果けっかとされ(クロミンククジラ#形態けいたい生態せいたい参照さんしょう)、過剰かじょう保護ほごとは無縁むえん現象げんしょうである。たねでも過剰かじょう保護ほご具体ぐたいてきなにかをこした事例じれい未確認みかくにんである。
  9. ^ しょくせいかんしてはかくくじらしゅ項目こうもく参照さんしょう。ヒゲクジラくじらひげもまたえさ生態せいたいにあわせてさまざまな形態けいたい進化しんかしている。

出典しゅってん

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  2. ^ a b Montgelard, C.; Catzeflis, F.M.; Douzery, E. (1997). “Phylogenetic relationships of artiodactyls and cetaceans as deduced from the comparison of cytochrome b and 12S rRNA mitochondrial sequences”. Mol. Biol. Evol. 14 (5): 550-559. doi:10.1093/oxfordjournals.molbev.a025792. 
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  7. ^ ロイター「マッコウクジラの「排泄はいせつぶつ」、CO2削減さくげん貢献こうけんごう研究けんきゅう
  8. ^ 『クジラの世界せかい』イヴ・コアちょ宮崎みやざき信之のぶゆき監修かんしゅう つくもとしゃ 118ぺーじ
  9. ^ クジラに「さかな」がくのは、形状けいじょうからさかな認識にんしきされていたためである。
  10. ^ 仏教ぶっきょうでは、獣肉じゅうにくしょくすることは禁止きんしされていた。それを回避かいひするためにさかな認識にんしきされていたくじらもちいたとされている。類似るいじにウサギがうさぎ(う)ととりさぎ(さぎ)で、ウサギ。1、2かぞえる事例じれいおな理由りゆうである。
  11. ^ あ、それ違法いほうです! ─ イギリスのへん法律ほうりつニュースダイジェスト
  12. ^ ウィリアム・ブラックストン, Commentaries on the Laws of England(イギリスほう釈義しゃくぎ, book I, ch. 8 "Of the King's Revenue", ss. X, p. *280
  13. ^ スズキさかなSei Whaleもそれに由来ゆらいする(『ニタリクジラの自然しぜん土佐湾とさわん日本にっぽんくじら―』平凡社へいぼんしゃ加藤かとう秀弘ひでひろ、2000ねん、68ぺーじ)。
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  15. ^ 2018ねんにおける あたらしいFAOのレポート によれば、ぜん世界せかい漁業ぎょぎょう生産せいさんりょう推定すいてい1.7おくトンであり、当時とうじの2ばいちかくまで増加ぞうかしている。
  16. ^ "It is an important issue in the context of world food security since it is estimated that cetaceans consume three to five times the amount of marine resources harvested for human consumption.": Tsutomu Tamura (2001). “Competition for food in the ocean: Man and other apical predators”. Reykjavik Conference on Responsible Fisheries in the Marine Ecosystem. http://www.fao.org/tempref/FI/DOCUMENT/reykjavik/pdf/09Tamura.pdf. 
  17. ^ 小松こまつ正之まさゆき世界せかいクジラ戦争せんそう』PHP研究所けんきゅうじょ、2010ねん、138ぺーじISBN 978-4-569-77586-9 
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  19. ^ Fishing Down Marine Food Webs[リンク], Fisheries Centre, University of British Columbia
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  23. ^ ヒゲクジラるい#生態せいたい参照さんしょう
  24. ^ 『クジラはなぜ優雅ゆうがだいジャンプするのか』実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ中島なかじま将行まさゆき、1994ねん、162-164ぺーじとしに120にちしか食事しょくじをしないシロナガスクジラが毎日まいにち6トンのオキアミを捕食ほしょくすると年間ねんかん720トン。たいして人間にんげん年間ねんかん体重たいじゅうの15-16ばいりょう食事しょくじをするとされる。
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  28. ^ うみ哺乳類ほにゅうるい生存せいぞん影響えいきょうする人間にんげん活動かつどう
  29. ^ 『イルカをべちゃダメですか? 科学かがくしゃりょう体験たいけん光文社こうぶんしゃ、2010ねん、155-156ぺーじISBN 4-334-03576-0
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  31. ^ だい3かい くじらるい捕獲ほかく調査ちょうさかんする検討けんとう委員いいん会議かいぎごと概要がいよう 農林水産省のうりんすいさんしょう
  32. ^ 田村たむらつとむ北西ほくせいきた太平洋たいへいようおよび南極なんきょくかいにおけるミンククジラ Balaenoptera acutorostrataのえさ生態せいたいかんする研究けんきゅうかぶとだい4478ごう北海道大学ほっかいどうだいがく 博士はかせ論文ろんぶん、1998ねん3がつ25にちdoi:10.11501/3137194NAID 500000158070https://hdl.handle.net/2115/51479 
  33. ^ How Whales Change Climate” (英語えいご). 2019ねん1がつ29にち閲覧えつらん
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  38. ^ にちごうプレス (AAP). (2008ねん10がつ15にち).[リンク] ただし、オーストラリア代表だいひょうピーター・ギャレット環境かんきょうしょうが、この動議どうぎだいなしにした。
  39. ^ Peter Corkeron (2008) (英語えいご), Are whales eating too many fish, revisited., https://www.researchgate.net/publication/228530664_Are_whales_eating_too_many_fish_revisited 

関連かんれん項目こうもく

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クジラの遺骸いがい

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  • 鯨骨げいこつ生物せいぶつ群集ぐんしゅう死後しご遺体いたいあつまり生物せいぶつたちについて。
  • くじら爆発ばくはつ - げられたクジラの死骸しがいがもたらす災厄さいやく
  • みみあかせん - クジラの構造こうぞうじょう排出はいしゅつされずまっていくことにより、死亡しぼうして、クジラの年齢ねんれいやストレスホルモンや生息せいそく環境かんきょう推測すいそくサンプルとなる。

自治体じちたい

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その

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